札幌市保健所 所長三觜。 論文記事

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札幌市保健所 所長三觜

第53巻第7号 2006年7月 介護保険3施設における施設内医療処置の状況 -公表統計データを用いた検討- 竹迫 弥生(タケザコ ヤヨイ) 田宮 菜奈子(タミヤ ナナコ) 梶井 英治(カジイ エイジ) 目的 介護老人福祉施設,介護老人保健施設,介護療養型医療施設の介護保険3施設内で医療処置を受けている者の在所者全体に対する割合を医療処置の種類別に明らかにする。 方法 厚生労働省が 2001 年に行った全国調査の公表データをもとに,施設種別ごと,要介護度別に,介護保険3施設内で行われた医療処置の状況について比較検討した。 結果 医療処置を受けている者の在所者全体に対する割合は,介護老人福祉施設と介護老人保健施設で約2割,介護療養型医療施設で約4割であった。 3施設ともに,要介護1~4の在所者では,医療処置を受ける者の割合は全体の3割以下であり,処置の内容としては,疼痛管理,モニター測定,点滴,膀胱カテーテルなどが高かった。 一方,要介護5の在所者では,介護老人福祉施設と介護老人保健施設で3割,介護療養型医療施設で6割の者が医療処置を受けており,処置の内容としては,経管栄養と喀痰吸引の割合が高かった。 また,経管栄養と喀痰吸引の処置を受けている者の割合は,在所者全体でも,要介護5の在所者のみでも,介護老人保健施設より介護老人福祉施設の方が高かった。 結論 施設内で何らかの医療処置を受けている在所者の割合は,介護療養型医療施設が介護老人福祉施設および介護老人保健施設の約2倍であった。 しかし,経管栄養と喀痰吸引の処置を受けている在所者の割合は,医療職員の少ない介護老人福祉施設の方が介護老人保健施設より高く,今後の課題と考えられた。 キーワード 介護保険施設,ナーシングホーム,医療処置,経管栄養,疼痛,褥瘡 第53巻第7号 2006年7月 地域がん登録事業におけるがん患者の 登録拒否に関する法的,実務的,倫理的検討 田中 英夫(タナカ ヒデオ) 目的 個人情報保護法制定に伴い,保健,衛生分野における個人情報の第三者提供のあり方に対する関心が高まっている。 地域がん登録事業におけるがん患者の登録拒否に関し,法的,実務的,倫理的側面から検討する。 方法 個人情報保護法の内容を医療・介護関係事業者用のルールとしてまとめられた「医療・介護ガイドライン」を法的検討の対象とする。 次に,地域がん登録事業にかかわる当事者間で扱う個人情報の流れを踏まえ,もし同事業に患者の登録拒否の意思表明を反映させる(オプトアウト)とすると,実務面でどのような状況が起きるかについて検討した。 また,登録拒否という行為を,複数の倫理的価値の対立面から考察した。 結果 「医療・介護ガイドライン」が示す個人情報の第三者提供に際しての本人同意原則の除外事例(地域がん登録でのがん患者,がん検診の精度管理での要精検者,児童虐待での親,医療事故調査での被害患者)は,いずれも共通してオプトアウトの容認と事業目的の遂行が両立し難い性質のものであると考えられることから,ガイドラインの意図に沿えば,同意認定手段としてのがん患者の拒否の有無の確認の効力は発生していないと考えられた。 オプトアウトを地域がん登録事業に導入すると,その実効性の確保のためには拒否者の個人識別情報を登録する必要が生じ,また拒否の内容,範囲によって,情報の取り扱いに関する相当の負担を医療現場に強いることが予測された。 結論 地域がん登録事業におけるオプトアウトの容認は,現行法の枠内では予定されない考えであると思われた。 また,もし実行に移した場合,実務面での障害が相当程度生じることが予測されるとともに新たな倫理的価値の対立を生むことが予想された。 キーワード 地域がん登録事業,個人情報保護法,第三者提供,オプトアウト,本人同意原則 , 倫理 第53巻第7号 2006年7月 食事の多様性と生活習慣,食品・栄養素摂取量との関連 -厚生労働省研究班による多目的コホート研究- 小林 実夏(コバヤシ ミナツ) 津金 昌一郎(ツガネ ショウイチロウ) 目的 住民ベースの大規模コホート研究( JPHC Study )5年後調査の断面データを用いて,多様な食品を摂取することと生活習慣,食品・栄養素摂取量との関連を明らかにすることを目的とした。 方法 対象者は 1995 年から 1999 年の間に 44 ~ 76 歳であった全国 11 保健所管内に居住する 42,227 名の男性と 51,345 名の女性である。 自記式質問票により,既往歴,飲酒,喫煙状況,運動習慣,食習慣,食品摂取量などの情報を収集した。 質問票に掲載されている 133 食品項目について,1日に何食品を摂取しているか算出した。 1日に摂取する食品の種類を5分位に分類し,群ごとの生活習慣,食品・栄養素摂取量を比較した。 結果 摂取食品数が多くなるほど,肥満ややせが少ない,喫煙率が低い,飲酒量が少ない,朝食の欠食率が少ない,習慣的な運動習慣があるなど,健康的な生活習慣との関連が明らかになった。 また,摂取食品数が多くなるほど,一人暮らしの割合が少ない,生活を楽しいと感じている人が多いなどの特徴が明らかになった。 一方,多様な食品を摂取する群ほどエネルギー摂取量は多く,栄養素・食品群摂取量も多く摂取しているものが多かったが、炭水化物,穀類,砂糖類の摂取は低く,アルコールや嗜好飲料の摂取も低かった。 結論 1日に摂取する食品に多様性があることは,健康的な生活習慣と関連があることが明らかになった。 また,多様な食品を摂取することと食物・栄養素摂取状況との関連も明らかになった。 キーワード 食事の多様性,生活習慣,食品・栄養素摂取,コホート 第53巻第7号 2006年7月 特別養護老人ホームの待機者の 入所希望時期に影響する要因の分析 岸田 研作(キシダ ケンサク) 谷垣 靜子(タニガキ シズコ) 目的 特別養護老人ホーム(以下,特養)の待機者の入所希望時期に影響する要因を明らかにすること。 方法 対象は,中国地方のA市に在住する無作為に抽出された 500 の特養待機者世帯である。 調査時期は 2004 年 10 月で,調査方法は郵送自記式である。 分析は,入所希望時期を被説明事象,世帯属性を独立変数とする順序ロジスティック回帰分析で行った。 結果 解析の対象となったのは,必要な変数に欠損値がない 199 世帯である(有効回収率 39. 8 %)。 在宅の待機者は, 27. 6 %であった。 入所希望時期の内訳は,「すぐにでも入所したい」( 30. 2 %),「できるだけ早く入所したい」( 23. 1 %),「しばらくは待つことができる」( 17. 6 %),「将来,必要になったときに入所したい」( 29. 1 %)であった。 早期の入所希望と関連していたのは,待機場所が老人保健施設または一般の病院であること,要介護度が3以上であることであった。 待機者本人の性別,年齢,世帯形態,待機期間,調査票記入者の属性と入所希望時期との関連はみられなかった。 考察 「将来,必要になったときに入所したい」と答えた者は,入所の順番が現時点でまわってきてもすぐには入所しないと考えられる。 したがって,入所希望時期を尋ねることで予約的な入所申請者を把握することは,計画的な施設整備を行う上で有益である。 老人保健施設や一般の病院での待機者世帯が早期の入所を希望する理由として,病院・施設から退所勧告を受けている可能性が考えられる。 また,要介護度が高い場合に早期の入所を希望した。 これは,在宅待機者の場合,家族の介護負担が大きいことを反映し,在宅外待機者の場合,要介護度が高い者の家族がすでに在宅介護を断念していることを反映していると考えられる。 キーワード 特別養護老人ホーム,待機者,入所希望時期,順序ロジスティック回帰分析 第53巻第8号 2006年8月 家族の介護意識と要介護者の自己決定阻害の関係に関する研究 -高齢者虐待の予防に向けて- 安梅 勅江(アンメ トキエ) 鈴木 英子(スズキ エイコ) 目的 高齢者虐待の予防のため,要介護者の自己決定阻害に焦点をあて,住民の介護意識,要介護者の自己決定阻害に関する意識および両者の関連を明らかにすることを目的とした。 方法 平成 12年に中部地方の大都市近郊の農村Sに在住する20歳以上の全住民を対象に質問紙調査を実施し,2,998名(有効回答率84. 7%)から回答を得た。 調査内容は,要介護者の自己決定の阻害に関連する意識と考えられる3項目(要介護者は「家族の意見に従うべき」「我慢すべき」「自己主張すべきでない」),介護意識4項目(「介護受容」「家族介護負担感」「世間体意識」「家族優先意識」),属性,介護の要不要,家族内の要介護者の有無,身体症状,入院・通院歴,日常生活動作能力,社会関連性,体力イメージ,サービス満足度,過去1年間のライフイベントであった。 結果 1 年齢・性別,要介護者の有無別,介護状態別に分析した結果,自己決定の阻害に関連する意識の割合は高年齢世代,介護経験あり,世間体を気にする場合に多くなっていた。 2 自己決定の阻害に関連する意識を目的変数とし,多重ロジスティック回帰分析を行った結果,いずれも「介護受容」「世間体意識」「家族介護負担感」「家族優先意識」のある場合に,ない場合に比較して要介護者は「家族の意見に従うべき」「我慢すべき」「自己主張すべきでない」とするオッズ比が高くなっていた。 結論 すべての地域住民を対象とした要介護者の自己決定を尊重するための啓発や,介護負担を軽減するためのサポート,介護の理解を深めるための情報提供や教育などが,地域における虐待リスクの軽減に有効である可能性が示唆された。 キーワード 高齢者虐待,自己決定,家族介護,予防 第53巻第8号 2006年8月 パンデミック時の抗ウイルス剤およびワクチンの 使用優先順位に関する調査研究 大日 康史(オオクサ ヤスシ) 菅原 民枝(スガワラ タミエ) 谷口 清州(タニグチ キヨス) 岡部 信彦(オカベ ノブヒコ) 目的 新型インフルエンザのパンデミック時には,抗インフルエンザウイルス薬や新型インフルエンザ用のワクチンが不足することが予想され,そのために治療あるいは予防のための薬剤の使用に関する優先順位付けを事前に行っておくことが重要となることから,現状での国民の意思を把握するために,一般住民調査を通じて優先順位について検討した。 対象と方法 2005年4月上旬に全国において実施された調査における回答を分析した。 調査内容は,12種類の人ロ集団に対して,優先順位付けを1位から12位まで行うことを求めた。 分析は優先順位について各順位での支配的な人口集団の分析と,代表的な人ロ集団である「高齢者」「妊婦,乳児の母親」「乳幼児・小学生」の最優先人口集団の選択に関する分析を行った。 結果 調査票は 880世帯に送付し,772世帯の20歳以上の成人1,220人から回収を得た。 優先順位付けに関しては,賛成,反対,わからないがほぼ同数であった。 1つ目の分析である優先順位は,第1位「乳幼児・小学生」,第2位「妊婦」,第3位「乳児の母親」,第4位「医療従事者」,第5位「60歳未満の慢性肺疾患患者,心疾患患者,腎疾患患者,代謝異常患者,免疫不全状態の患者」,第6位「特別養護老人ホーム・老人保健施設などの従業員」,第7位「健康な高齢者(65歳以上)」,第8位「警察・消防関係者」,第9位「通信・交通・電力・エネルギー業界関係者」,第10位「行政担当者」,第11位「他の項目に当てはまる人を除く健康な13歳以上65歳未満の人」,第12位「60歳以上の慢性肺疾患患者,心疾患患者,腎疾患患者,代謝異常患者,免疫不全状態の患者」,の順で選択されていた。 また,医療従事者と60歳未満の慢性肺疾患患者,心疾患患者,腎疾患患者,代謝異常患者,免疫不全状態の患者,特別養護老人ホーム・老人保健施設などの従業員と健康な高齢者(65歳以上),警察・消防関係者と通信・交通・電力・エネルギー業界関係者の間には有意な差はないので同じ順位であった。 また,この順位は抗インフルエンザウイルス剤,ワクチン接種の場合で共通であった。 2つ目の分析である代表的な人口集団における最優先人口集団に関する推定結果は,抗インフルエンザウイルス剤とワクチン接種において,優先順位で「幼児・小学生」を最優先とする確率は,幼児・小学生の同居家族はそうでない場合よりも,抗インフルエンザウイルス剤では9. 7ポイント,ワクチン接種では8. 0ポイント高かった。 逆に,「高齢者」を最優先とする確率は,高齢者はそうでない者よりも抗インフルエンザウイルス剤では4. 7ポイント,ワクチン接種では4. 8ポイント高かった。 結論 調査結果は,オランダでの優先順位に関する研究とは整合的であるが,新型インフルエンザ対策に関する検討小委員会報告での提言内容とは必ずしも整合的ではなかった。 キーワード パンデミックインフルエンザ,抗ウイルス剤,ワクチン,使用優先順位,パンデミックプラン 第53巻第8号 2006年8月 介護保険制度を利用した埼玉県の健康寿命の算出 池田 祐子(イケダ ユウコ) 生嶋 昌子(イクシマ マサコ) 長谷川 紀美子(ハセガワ キミコ) 徳留 明美(トクトメ アケ ミ) 高野 眞理子(タカノ マリコ) 峰岸 文江(ミネギシ フミエ) 丹野 瑳喜子(タンノ サキコ) 三浦 宜彦(ミウラ ヨシヒコ) 目的 埼玉県では,新たな健康づくり行動計画「すこやか彩の国 21プラン」を策定し,平成22年度を目標年とした健康づくり運動を推進中であり,このプランの達成度や効果が把握できる健康の総合指標として「埼玉県の健康寿命」を算出し,また同指標の算出が簡単に行えるソフトの作成を目的とする。 方法 生命表の作成には Chiangの方法を用い,「障害発生時点」を「介護保険制度における要介護等認定を受けた時点」としてとらえ,「要介護等認定を受けないで生活できる期間」を「健康寿命」とした。 また,平均余命に対する健康寿命の割合を健康割合とし,埼玉県全体と県内医療圏 13 別に分析した。 健康寿命算出ソフトの作成は,エクセルVBAマクロと関数を利用して行った。 結果 埼玉県の健康寿命は, 65歳男性で14. 73年,75歳で7. 78年,65歳女性で16. 35年,75歳で8. 13年であった。 65歳,75歳では女性の方が健康寿命が長いが,85歳になると,男性3. 09年,女性2. 43年と逆転した。 健康割合は,65歳男性で84. 5%,75歳で73. 1%であるが,女性はそれぞれ73. 4%,57. 4%で,65歳,75歳ともに女性の方が低かった。 医療圏別では,65歳健康寿命は男性が14. 16~15. 05年,女性が16. 01~16. 94年で,男女とも県南・県南東部で低かった。 65歳健康割合は,男性が83. 4~86. 2%,女性が71. 1~76. 7%で,男女とも県北部で高かった。 作成した健康寿命算出ソフトは,「埼玉県の健康寿命」をはじめ,平均寿命(余命)や健康割合などが医療圏別,市町村別に算出可能であり,最新データを追加することによって,今後も継続して活用することが可能である。 結論 介護保険制度を基に算出する健康寿命は,1)既存の統計資料の活用が可能であるため,継続的に算出可能で,経年評価ができる,2)全国的に統一された手順と基準に沿って要介護度の認定作業が行われていることから,自治体間の比較が可能である,3)健康づくり事業の達成度や効果が把握できる,などの特徴をもつ指標である。 また,作成した健康寿命算出ソフトは,エクセル上で稼働し,低コスト,簡単操作であり,集団の健康指標算出ツールとして利便性が高いものと言える。 キーワード 介護保険制度,健康寿命,健康割合,健康寿命算出ソフト 第53巻第8号 2006年8月 家庭における乳幼児のタバコ曝露の実態 -尿中ニコチン代謝物測定による検討- 矢野 公一(ヤノ コウイチ) 花井 潤師(ハナイ ジュンシ) 福士 勝(フクシ マサル) 菅原 有希(スガワラ ユキ) 毛利 優子(モウリ ユウコ) 高本 厚子(タカモト アツコ) 伊澤 栄子(イザワ エイコ) 藤田 晃三(フジタ コウゾウ) 目的 家庭における乳幼児のタバコ曝露の実態を,尿中ニコチン代謝物の測定によって明らかにすることを目的とした。 方法 2004年9~11月,札幌市南保健センターでの乳幼児健診児を対象に,36家族(38児)の母と児の尿中ニコチン代謝物(コチニン)を測定した。 結果 喫煙する 27家族中6家族の児がコチニン陽性であった。 陽性児の母はすべて喫煙者で,コチニン陽性であった。 母がコチニン陽性の児は20人で,このうち母乳栄養の9児中5児がコチニン陽性であった。 一方,非母乳栄養の11児では1児のみがコチニン陽性であった。 さらに,生尿と濾紙抽出液中の尿中コチニン濃度は良好な相関を示した。 キーワード 乳幼児,タバコ曝露,尿中コチニン,母乳栄養 第53巻第8号 2006年8月 施設入所高齢者におけるインフルエンザワクチンの 有効性と医療費削減効果の総合評価(予備解析結果) 井手 三郎(イデ サブロウ) 児玉 寛子(コダマ ヒロコ) 高山 直子(タカヤマ ナオコ) 堤 千代(ツツミ チヨ) 山崎 律子(ヤマサキ リツコ) 丸山 正人(マルヤマ マサト) 朔 義亮(サク ヨシスケ) 友田 信之(トモダ ノブユキ) 廣田 良夫(ヒロタ ヨシオ) 目的 インフルエンザワクチンの臨床的効果のみならず,個人レベルで実際の費用と効果に関するデータを積み上げて,ワクチン接種の医療費削減効果を検討する。 介護老人保健施設では89人(接種75,非接種14)を2003年1~3月の間,医療型療養病棟では92人 接種12,非接種80 を2003年12月~2004年3月の間,追跡観察した。 41,95%信頼区間0. 14-1. 17,p=0. 095)。 医療行為の実施率や超過医療費は,接種群において低い傾向を示したが,有意差を検出するには至らなかった。 59,95%信頼区間0. 07-4. 73,p=0. 619)。 また超過医療費の削減傾向も観察された。 3 両シーズンの観察結果をプールした解析において,インフルエンザ様疾患に対するワクチンの有効性は境界域の有意性を示した(ハザード比=0. 44,95%信頼区間0. 17-1. 12,p=0. 084)。 またワクチン接種は,インフルエンザ様疾患に関連する超過医療費を削減する傾向も観察された。 その他,ハイリスク者においては超過医療費が増大することが観察された。 結論 例数は不十分であるものの,インフルエンザワクチンは施設入所高齢者のインフルエンザ様疾患罹患防止に約 40~60%の有効率であることが示唆された。 また,インフルエンザ様疾患に関連する医療費の削減が期待される。 キーワード インフルエンザワクチン,有効性,費用対効果,医療費削減効果,後ろ向きコーホート研究,疫学 第53巻第10号 2006年9月 要介護認定者の日常生活自立度と生命予後との関連 寺西 敬子(テラニシ ケイコ) 下田 裕子(シモダ ユウコ) 新鞍 眞理子(ニイクラ マリコ) 山田 雅奈恵(ヤマダ カナエ) 田村 一美(タムラ ヒトミ) 廣田 和美(ヒロタ カズミ) 神谷 貞子(カミヤ サダコ) 岩本 寛美(イワモト ヒロミ) 上坂 かず子(コウサカ カズコ) 成瀬 優知(ナルセ ユウチ) 目的 要支援を含む新規要介護認定者において,性・年齢階級別に日常生活自立度と生命予後との関連を明らかにすることを目的とした。 方法 富山県のN郡3町村に居住し,2001 年4月から2004年12月に新規に要支援または要介護認定を受けた65歳以上の住民1,700人(男性616人,女性1,084人)を対象とした。 介護 保険認定審査会資料より初回認定時の情報として性,年齢,障害老人の日常生活自立度(ランクJ,A,B,C),主治医意見書に記載された診断名,2005 年3月現在の転帰(生存,転出,死亡)を把握した。 初回認定時の日常生活自立度別の累積生存率を,性・年齢階級別(65~74歳,75~84歳,85歳以 上)にKaplan-Meier法を用いて算出した。 生存曲線の有意性の検定にはlog-rank検定を行った。 また,性・年齢階級別に診断名と初回認定 時の年齢を共変量としたCoxの比例ハザードモデルを用いて,ランクJを基準とした日常生活自立度の死亡に対するハザード比を求めた。 結果 男性の65~74 歳,75~84歳,85歳以上の各年齢階級において日常生活自立度の違いによって累積生存率は有意に異なっていた。 同様に女性の各年齢階級においても有意 に異なっていた。 性・年齢階級別にそれぞれのランクJを基準として各日常生活自立度の死亡ハザード比を求めると,男女共に85歳以上以外の年齢階級で,ラ ンクCが最も高い死亡ハザード比を有意に示すことが共通して明らかとなった。 一方で,日常生活自立度の程度の低下による死亡ハザード比の上昇は性・年齢階 級別に異なる特徴を示し,年齢階級が上がると日常生活自立度の低さによる死亡ハザード比の上昇の程度が小さくなる傾向が,女性は男性よりも日常生活自立度 の違いによる死亡ハザード比の格差が小さい傾向が明らかとなった。 結論 要支援を含む要介護認定者の初回認定時の日常生活自立度の程度は,性・年齢階級別に解析し,診断名を調整しても生命予後と関連していることが明らかとなった。 また,その関連は性・年齢階級別に異なっていた。 グループホームの環境づくりにおいて,施設管理者などの自由に対する認識の 高さを反映していると考えられた。 また,外食も含めた近所や周辺地域との積極的な交流や入所者である認知症高齢者のストレスマネジメントの必要性が考えら れた。 キーワード 認知症高齢者,ホームライク,QOL,ブレインストーミング,KJ法 第53巻第10号 2006年9月 老人医療費と介護費の類似した 地域差の発生要因に関する分析 堀 真奈美(ホリ マナミ) 印南 一路(インナミ イチロ) 古城 隆雄(コジョウ タカオ) 目的 肥満は生活習慣病の原因として重要であり,生命予後を含めた健康の悪化要因とされる。 この肥満および体重変化が10年後の健康に及ぼす影響を,職域の定期健診結果と5年間の終末期を除く医療費を指標として検討した。 方法 対象は1992年度に定期健康診断を受けた40~59歳の男性で,2004年度末にも健在で健保に加入していた6,867名と,この間に死亡を理由に健保を脱退した182名である。 医療費は終末期の高額医療費を除くために1999~2003年度の5年間の診療報酬明細書から医科と調剤を用いて算出した。 結果 1992~1994年度の3年間の平均体重で求めたBMIを5分位で検討すると,医療費はBMIが大きいほど高額であった。 年齢調整累積死亡率が最も低かったのはBMI20. 9~22. 3の群であった。 2001~2003年度までの10年間の体重変化を5分位で検討すると,体重減少が最も大きい群で医療費は高額であった。 観察開始時のBMIで3群に分けて体重変化と医療費の関係をみても,体重の大きな減少は高額医療費と関連していた。 最も医療費が少ないのは,観察開始時BMIが小さい群では約3㎏増加,大きい群では約1㎏低下する群であった。 糖尿病では,観察開始時の肥満度に関係なく体重増加は高額医療費と関連した。 高額医療費を示す主な保険主傷病名は,虚血性心疾患,脳血管疾患,悪性新生物,高血圧などであり,糖尿病では体重増加にしたがってこれらの疾患頻度は増加傾向にあった。 喫煙に関しては,10年間の観察期間中の新たな禁煙群が最も医療費は大きかったが,この群で多くみられる体重増加は医療費に関係しなかった。 結論 肥満は10年後の終末期を除く医療費を高額とした。 死亡率が低かったのはBMI21~22の群であった。 10年間の体重の減少は医療費を高額とした。 体重低下と高額の医療費は重大な疾患に罹患したための二次的なものと考えるのが妥当である。 禁煙による体重増加は医療費を増加させなかった。 これらから男性では,「中年までの肥満の予防が重要であること」「BMI22~23を目標とした体重管理が好ましいこと」「糖尿病では体重の増加は高額の医療費をもたらすこと」「意図した体重の管理が重要であること」などが示唆される。 今後,意図した体重減少が長期的な健康に好ましいことを証明する研究が必要である。 キーワード 肥満,体重変化,定期健診,診療報酬明細書(レセプト),医療費,喫煙 第53巻第10号 2006年9月 地域在住高齢者における車両スピード認知 と身体能力との関係 内田 勇人(ウチダ ハヤト) 朝居 由香里(アサイ ユカリ) 藤原 佳典(フジワラ ヨシノリ) 新開 省二(シンカイ ショウジ) 目的 近年,公衆衛生領域では周産期の母親へのメンタルヘルス支援を行い,効果を挙げているが,ドメスティックバイオレンス(以下,DV)など多くの困難な出来事にさらされることによるメンタルヘルスの影響や,その援助への検討はいまだに取り組まれていない。 そのため様々な困難を抱えているであろう母子生活支援施設入所者を対象として,どのような支援が有効であるのかを明らかにすることを目的に調査を行った。 方法 東京都内母子生活支援施設(以下,支援施設)に入所中で調査協力の得られた母親を対象とし,自記式アンケート調査(匿名郵送回収)を行った。 調査項目は,基本的属性,ソーシャルサポート,メンタルヘルス(うつ評価尺度・解離性体験尺度),母親の子どもへの愛着(愛着形成障害評価尺度),子どもへの不適切な育児,実家との関係,パートナーとの関係など多面的な項目を設定した。 抑うつの要因については抑うつ傾向得点との関連が有意であった変数を独立変数,不適切な育児得点を従属変数として,強制投入法による重回帰分析を行った。 結果 143名から回答を得た。 調査結果から対象者の半数(49%)に抑うつ傾向がみられた。 また入所者の67. 4%がパートナーからの被暴力経験を持ち,95%がパートナーとの関係に葛藤性を抱えていた。 抑うつ傾向と各項目間では,ソーシャルサポート(がない),実家との関係(被虐待経験),解離傾向の有無,愛着障害得点,不適切な育児得点とに関連がみられた。 抑うつ傾向は子どもへの愛着障害にも影響し,さらに子どもへの攻撃性や放置などの育児行為にも影響していた。 結論 支援施設入所者の就労割合は78. 9%と高く,その約半数が抑うつ傾向を持ちつつ就労しており,生活・育児面にかなりの困難さを有しているであろうことが推測されたが,調査結果からも子どもへの愛着や不適切な育児への影響が確認された。 DVなどをはじめ,様々な困難を抱える母親には,子どもへの影響および世代間連鎖を阻止する視点からも,メンタルケアを含め経済・生活面への総合的支援が必要であることが示された。 キーワード 母子生活支援施設,抑うつ,ソーシャルサポート,愛着障害,不適切な育児,メンタルケア 第53巻第11号 2006年10月 一保健所管内の小・中学生を対象とした喫煙行動と関連要因に関する大規模調査研究(第2報) -小・中学生を対象とする禁煙外来のあり方について- 藤田 信(フジタ マコト) 目的 喫煙する小・中学生の禁煙外来に対する考えを明らかにして,禁煙外来受診を促進し,小・中学生の喫煙の解消に資することを目的とする。 方法 静岡県A保健所管内の小学校35校,2,428名,中学校17校,2,316名に対して,無記名自記式の調査票によるアンケート調査を実施した。 結果 過去に禁煙を試みた者は,小・中学生ともに約8割で,そのうち小学生で95%,中学生で78%の者が禁煙を達成していた。 過去に禁煙を試みたとき,誰にも相談しなかった者は小学生の男子女子ともに69%,中学生男子で71%,女子で75%であった。 現在の禁煙を試みる意思は,「今すぐ」「1カ月以内に」「3カ月以内に」やめたいとする者が,合わせて小学生の男子で69%,女子で57%,中学生の男子で43%,女子で38%であった。 禁煙外来受診時に希望する付き添いは,「父母」が小学生男子で34%,女子で27%,中学生男子で14%,女子で20%,「行きたくない」が同様に23%,23%,13%,11% であった。 禁煙外来に希望する担当医は,小学生では「学校医」と「顔見知りの医師」が比較的多く,中学生では「顔見知りの医師」と「顔見知りでない医師」 とでほぼ二分された。 禁煙外来受診の希望日時は,概して日曜日・祝日や夏休みなどの長期休業期間が多かった。 禁煙外来を安心して受診できる条件は,「学校 や氏名が分からないように」が小学生男子で44%,女子で46%,中学生男子で76%,女子で60%,「診察室は別で話が他に聞こえない」が同様に29%,36%,30%,34%であった。 保護者への喫煙と禁煙の告知について,「できない」が小学生男子で6%,女子で5%,中学生男子で20%,女子で11%,「話すつもりはない」が同様に9%,なし,27%,18%であった。 結論 小・中学生を対象とする禁煙外来は,匿名とし診察室を別にして話が他に聞こえない必要があり,診療日は日曜日・祝日または長期休業期間が望ましく,担当する医師は小学生では顔見知りの医師とすることが望ましい。 キーワード 禁煙外来,小・中学生,保健所,質問紙調査,喫煙の習慣性 第53巻第10号 2006年9月 主観的健康感と職業性ストレスとの関連について -MYヘルスアップ研究から- 豊川 智之(トヨカワ サトシ) 三好 裕司(ミヨシ ユウジ) 宮野 幸恵(ミヤノ ユキエ) 鈴木 寿子(スズキ トシコ) 須山 靖男(スヤマ ヤスオ) 井上 まり子(イノウエ マリコ) 井上 和男(イノウエ カズオ) 小林 廉毅(コバヤシ ヤスキ) 目的 金融保険系企業の従業員を対象としたMYヘルスアップ研究における調査により,労働者の主観的健康感(Self-Rated Health: SRH)と職業性ストレス,特に仕事の要求度とコントロールとの関連について検討した。 方法 職業性のストレス要因を,「高ストレイン」「パッシブ」「アクティブ」「低ストレイン」の4つに分け,これらを独立変数,SRH を従属変数とするロジスティック回帰分析モデルにより分析した。 共変量として年齢,職区分,婚姻状態,喫煙習慣,飲酒習慣,運動習慣,睡眠時間,現在治療 中の病気の有無,過去に治療した病気の有無を含め,「基本モデル」とした。 次に,周囲からの支援による,ストレスとSRHとの関連の変化を示すため,上 司,同僚,家族・友人からの支援を共変量としてモデルに入れ「支援ありモデル」とした。 結果 回帰モデル(支援ありモデル)によるオッズ比(OR) では,職業性ストレスについて,高ストレイン(男性OR;1. 88,女性OR;1. 70),パッシブ(男性OR;1. 23,女性OR;1. 40),アク ティブ(男性OR;1. 28,女性OR;1. 20)は,低ストレインと比較してSRHが低いことが示された。 女性では営業職が事務職に比べSRHが低いこ とが示された(OR;1. 85)。 男性では家族・友人からの支援(OR; 1. 80)がない場合,女性では上司(OR;1. 37)からの支援がない場合にSRHが低かった。 結論 仕事の要求度とコントロールによるストレスの違いに焦点を当てて分析を行った結果,高ストレインの労働者のSRH が低いことが明らかになった。 ストレスに関与する要因の中で,男性では家族・友人からの支援を得られない場合に,女性では上司や同僚からの支援を得られな い場合にSRHが低いことが示された。 男性では単身赴任していること,女性では独身でいることが低SRHと関連することが示され,これらの社会的関係性が SRHと結びついていることが示された。 キーワード 主観的健康感,職業性ストレス,カラセックモデル,社会的関係性 第53巻第11号 2006年10月 家族介護者の介護負担感と関連する因子の研究(第1報 -基本属性と介入困難な因子の検討- 平松 誠(ヒラマツ マコト) 近藤 克則(コンドウ カツノリ) 梅原 健一(ウメハラ ケンイチ) 久世 淳子(クゼ ジュンコ) 樋口 京子(ヒグチ キョウコ) 目的 介護負担感の関連因子を探る基礎作業として,年齢や性別などの介護者の基本属性,介護期間などの介入困難な因子について検討した。 方法 対象は,A県下の7保険者において,介護保険の在宅サービスを利用していたすべての要介護者の介護者(7,278人)である。 回収数(率)3,610(49. 6%)のうち,主介護者によって回答された3,149人を分析対象とした。 主観的介護負担感(8点から32点で,得点が高いほど介護負担感が高い)と主介護者の基本属性(性別,年齢,続柄),および介入困難な因子(要介護者の障害老人の日常生活自立度,認知症老人の日常生活自立度,要介護度,1日の平均介護時間,目の離せない時間,介護期間)の9因子との関連を検討した。 結果 介護負担感は,介護者が女性で,高齢,続柄が妻の場合に,有意に高かった。 しかし,例えば,男性の介護負担感の平均値は26. 3,女性は27. 4で,その差は0. 9点 と小さかった。 また,どの年齢・性別においても,障害が重く,介護時間が長くなるに伴い,介護負担感が有意に高くなる傾向がみられた。 ただし,その結果 は,介護負担感スケールで何点以上を「高い」とするのか,平均値でみるのかという変数の扱い方によっても変動した。 介護期間については,長いほど介護負担 感が高い傾向を示したが,統計学的な有意差は65歳未満の女性でのみみられた。 結論 介護負 担感は,介護者が女性で,高齢,続柄は妻で有意に高く,障害の重症度が重い群,もしくは介護時間が長い群で,介護負担感が高くなるという傾向が確認され た。 今後の介護負担感研究においては,介護負担感との間に統計学的に有意な関連が認められた(介護期間を除く)8つの交絡因子を考慮して分析を行うことが 望ましいと考えられた。 キーワード 要介護高齢者,家族介護,介護負担感,日常生活自立度,性差 第53巻第11号 2006年10月 藤沢市における個別健康支援プログラムの有効性の検討 鈴木 清美(スズキ キヨミ) 小堀 悦孝(コボリ ヨシタカ) 相馬 純子(ソウマ ジュンコ) 小野田 愛(オノダ アイ) 齋藤 義信(サイトウ ヨシノブ) 尾形 珠恵(オガタ タマエ) 李 廷秀(リ チョンスウ) 森 克美(モリ カツミ) 川久保 清(カワクボ キヨシ) 目的 藤沢市が厚生労働省から委託を受けて実施した「国保ヘルスアップモデル事業」(平成14~16年度)は,対象とする生活習慣病とその予備群を選定の上,健康度という概念と指標を設定し,個別健康支援プログラムの開発・実施と事業効果の分析・評価を行うものである。 本研究は,開発した藤沢市個別健康支援プログラムの有効性を検討することを目的とした。 方法 プログ ラムの有効性を検討するため,年1回の健康診断と健康相談を受けるコース1,コース1の内容に加えて半年後の効果測定と食生活相談を受けるコース2,コー ス2の内容に加えて週1回の運動トレーニングを行い,総合的に健康づくりを行うコース3の3種類のコースを設定した。 各コースについて,健診結果と生活習 慣調査結果のデータにより,正味2年間の介入前後の比較,事業に参加した介入群(979人)と対照群(4,570人)の変化量の比較を行った。 結果 介入群における介入前後の比較で数値データの変化をみると,コース2,3とも,体重,BMI,血清HDLコレステロール値が改善した。 またコース2では中性脂肪値が改善し,コース3では血圧値が改善した。 対照群との比較では,コース2,3とも,体重,BMI,収縮期血圧,血清総コレステロール値の変化が有意であった。 またコース2では中性脂肪値に,コース3では収縮期血圧,拡張期血圧,血清LDLコレステロール値に有意差があった。 生活習慣についてはコース1,2,3とも介入前後の比較で改善を示し,コース2,3は対照群との比較でも有意差があった。 結論 藤沢市 個別健康支援プログラムは,生活習慣の改善,身体状況の改善の両者において有効であることが実証された。 特にコース2参加者は中性脂肪値の改善が有意であ り,コース3参加者は血圧値の改善が有意であることが明らかになったことから,今後,この結果を踏まえた食生活および運動習慣を配慮した総合的健康づくり システムを構築していく方向性が示された。 キーワード 国保へルスアップモデル事業,個別健康支援プログラム,生活習慣病 第53巻第11号 2006年10月 地域福祉活動の住民満足度分析に関する研究 -地域福祉活動計画への活用- 増子 正(マスコ タダシ) 目的 地域福 祉は,住民の生活の満足度を向上させるという目標を有している。 本研究では,市町村社会福祉協議会が実施している地域福祉事業への住民満足度に影響を与え ている要因を分析して,地域福祉計画,地域福祉活動計画策定に反映させることで,住民ニーズに立脚した計画の策定とアカウンタビリティ(説明責任)確保の 遂行に寄与することを目的としている。 方法 著者が日本学術振興会の科学研究費補助を受けて開発した「ベンチマーク方式による社会福祉協議会の事業評価」の手法を活用して,秋田県A町在住の18歳以上の男女1,197名を対象に,同町社会福祉協議会が実施している地域福祉事業に対する住民意識調査の結果からデータベースを構築し,地域福祉活動や事業に対する住民の満足度に影響を及ぼしている要因を分析した。 結果 事業に対する満足度と,周知度,居住地,居住年数,年齢との関係を分析した結果,活動や事業に対する住民の周知度の違いが,それぞれの事業への期待度と満足度に大きく影響を及ぼしていて,事業に対する周知度が低い集団で満足度のスコアが極端に低いことがわかった。 結論 地域福祉計画,地域福祉活動計画の策定段階で,住民満足度を的確に分析し,ニーズ把握に活用することは,計画のアカウンタビリティ確保に有用であり,事業に対する住民の周知度を高めることが住民の生活の満足度の向上に寄与することが検証された。 計画策定の目標のなかに,地域福祉活動や事業に対する住民の認識度を向上させるための情報提供システムを再構築することの重要性が示唆された。 キーワード 地域福祉活動,住民満足度,地域福祉計画,地域福祉活動計画,事業評価 第53巻第11号 2006年10月 がん終末期患者の在宅医療・療養移行の課題 -病状説明,告知の現状- 沼田 久美子(ヌマタ クミコ) 清水 悟(シミズ サトル) 東間 紘(トウマ ヒロシ) 目的 終末期がん患者が在宅での医療・療養継続を希望した場合に,急性期病院(以下「急性期」)医師と地域での医療を担う(以下「地域」)医師の連携に重要となる課題およびそれぞれの役割を明らかにする。 方法 第7回日本在宅医学会大会に参加した医師を対象に調査用紙を配布・回収した。 医師は,急性期医師と地域医師の2群とし,それぞれ自記式での回答を求めた。 結果 調査対象医師数は185人で,回答者数123人(急性期医師35人,地域医師88人),回収率66. 5%であった。 急性期医師は年齢45. 2歳,医師経験18. 0年,在宅移行経験88. 6%,訪問診療経験77. 1%,地域医師は年齢47. 9歳,医師経験20. 2年,訪問診療経験93. 2%,在宅看取り経験93. 2%であった。 急性期医師の告知に関する回答は「病名はするが余命告知はしない」25. 7%,「病名・余命の告知をする」28. 6%,「家族の希望に沿う」が42. 9%であり,特に,訪問診療経験のない急性期医師は経験のある医師と比較して,余命告知をする割合が低かった(p<0. 05)。 また,「余命の告知をしないことで患者への対応に困難を感じた」との回答は急性期医師71. 4%,地域医師77. 3%とそれぞれ高率であった。 病状理解について,「退院時に患者・家族は病状理解ができている」と回答した急性期医師は85. 7%,地域医師では58. 0%と認識に差がみられたが,患者・家族の病状理解が不十分な時には急性期医師の80. 0%,地域医師では83. 0%が対応困難と感じていた。 また,「急性期医師よりの病状申し送り内容と患者の病状理解が一致していない」と地域医師の51. 2%が回答し,その医師は全員,対応困難を感じていた。 地域医師の回答で,退院時に「患者・家族が不安に思っていること」は「夜間の医療対応」71. 6%,「緊急時の病院対応」68. 2%,「介護への不安」46. 6%,「病状」が27. 3%であった。 多くの地域医師は,患者が余命告知をされていないことや病状理解が不十分なために対応困難を抱えており,患者・家族も退院に当たって病状について 大きな不安を抱いている。 急性期医師は在宅での医療・療養の特性を理解した上で,対応困難が生じると思われる事項を患者の入院中に改善し,患者・家族の置 かれている状況や療養上必要な情報を地域医師へ的確に引き継ぐことが重要である。 その上で,患者・家族の不安を地域医師と共有し,それぞれの役割を生かし た連携を行うことが望まれる。 キーワード 在宅医療,がん終末期患者,アンケート調査,在宅移行連携,医師の認識 第53巻第13号 2006年11月 昭和ヒトケタ男性の寿命 -世代生命表による生存分析- 岡本 悦司(オカモト エツジ) 久保 喜子(クボ ヨシコ) 目的 1980年代に社会的関心を集めた「昭和ヒトケタ短命説」について,その寿命への影響を世代生命表を用いて30歳以降の生存率により定量的に検証した。 方法 1920~1949年出生の男性コホートについて,戦争などの影響を受けていない30~55歳の年齢別死亡率から生存率を算出し推移を観察した。 さらに,戦争などの影響を受けなかったと仮定した場合の生存率の改善を傾向線で表現し,昭和ヒトケタを中心とした世代の観察された生存率と傾向線との差から,戦争などによるコホート効果を65歳までの生存率で定量的に推計した。 結果 1926~1938年に出生した男性において,30歳以降の生存率の停滞が明瞭に観察され,その相対的低下は1932年生まれにおいて最も顕著であった。 この年に出生した男性の30歳のうち65歳まで生存した者の割合は,戦争などの影響がなかったとしたら辿ったであろう生存率と比較して1. 87%低かった。 この世代の30歳時人口が約82万人であったことから,65歳まで到達できた者が約1. 5万人,あるべき数より少なかったことを意味する。 1926~1938年間全体では30歳男性1037万人に対して65歳到達者は,あるべき数より11. 7万人少なかった(1. 1%)。 また,30歳以降の生存率は,世代を追うごとに改善されてきたが,1929年出生者については,わずかながら前世代を下回る現象が確認され,さらに終戦時に乳幼児だった1942~1944年出生世代でも,30歳以降の生存率にわずかながら停滞現象が観察された。 結論 発育期を戦争中に過ごしたという「負い目」は30歳から65歳までの生存率を1%以上低下させる影響をもたらした。 戦後生まれ世代との格差は彼らが老齢に入るにつれてますます拡大している。 彼らがまだ中年だった頃に初めて発見された現象は一時的なものではなく,人生最後までつきまとう「この時期に生まれたるの不幸」であった。 キーワード 世代生命表,コホート効果,生存率,中高年死亡 第53巻第13号 2006年11月 訪問介護サービスを利用している独居高齢者の主観的健康感に 影響する社会関係要因とその独居年数による相違 中尾 寛子(ナカオ ヒロコ) 平松 正臣(ヒラマツ マサオミ) 目的 独居で介護保険の訪問介護サービスを利用している要援護高齢者の主観的健康感に影響する社会関係要因を明らかにし,さらに独居年数によってどのように異なるのかを検証する。 方法 対象は,中国地方のA県B市内4カ所のホームヘルプステーション(訪問介護事業所)で介護保険の訪問介護サービスを利用している独居高齢者51人である。 対象者の自宅を調査員が訪問介護員に同行訪問して,調査票を用いた個別の面接聞き取り調査を行い,年齢,婚姻歴,子どもの有無,要介護度,独居年数などの属性と主観的健康感,QOL(生活満足度尺度K)および社会関係についての情報を得た。 独居年数が明らかでなかった2人を除く対象者を独居年数が10年未満(短期)群(n=20)と10年以上(長期)群(n=29) の2群に分けて,グループごとに主観的健康感に関連する要因を社会関係の中から探り,その結果を2群間で比較した。 単変量解析とカテゴリカル回帰分析を実 施し,カテゴリカル回帰分析の従属変数は主観的健康感(よい[1]~よくない[4]),説明変数は年齢,性,要介護度,社会関係指標とした。 結果 カテゴリカル回帰分析から,両群ともに有意な関連が認められた。 独居年数10年未満群では「男性」「デイサービス・デイケアを利用」「近所づきあいに満足」「閉じこもり傾向なし」が,独居年数10年以上群では,「女性」「近所づきあいに満足」が主観的健康感を有意に高める傾向にあることを示した。 また,両群ともに「年齢」「要介護度」と主観的健康感との間に有意な関連はなかった。 主観的健康感に最も有意な関連性をもつのは「近所づきあいの満足度」であった。 結論 独居期間が短い要援護高齢者の心身の健康にとっては,「デイサービス・ デイケアの利用」や「閉じこもり予防事業への参加」がより高い効果を発揮する可能性が示された。 また,独居年数にかかわらず,独居要援護状態の高齢者の主 観的健康感には,離れて住む子どもや友人よりもむしろ「近隣住民との関係性」のほうが強い影響を及ぼすことが明らかになった。 これらのことから,デイサー ビス・デイケアや閉じこもり予防事業などの地域福祉サービスを独居開始の早い時点つまり「適切な時期」に利用につなげる援助と,本人自身が近隣住民と満足 できる関係性を築くことへの援助の両方が,要援護高齢者にとって高い健康感をもちながらひとり暮らしを続けるためには特に重要であると考えられた。 キーワード 独居要援護高齢者,主観的健康感,社会関係,独居年数,近所づきあいの満足度 第53巻第13号 2006年11月 島嶼地域住民の主観的健康感の関連要因に関する研究 志水 幸(シミズ コウ) 小関 久恵(コセキ ヒサエ) 嘉村 藍(カムラ アイ) 目的 サクセスフル・エイジングに資するべく,日常生活行動の典型例の抽出が可能な島嶼 しょ 地域住民を対象に,ライフスタイルを構成する多元的要素を包括する視点から主観的健康感に関連する要因を明らかにする。 方法 山形県酒田市飛島に居住する満40歳以上の住民208人を対象に,訪問面接調査法(一部,配票留置法)による悉皆調査を実施した。 調査項目は,基本属性,社会関連性指標,老研式活動能力指標,ソーシャルサポート,生活満足度,健康生活習慣に関する85項目を設定した。 さらに,多変量解析では,主観的健康感を目的変数とし,単変量解析で有意差が認められた項目を説明変数とするロジスティックモデルを構築し,強制投入法により変数の独立性について検討した。 結果 調査対象者のうち,192人(回収率92. 3%)から回答を得た。 壮年期ではISI(社会関連性指標)の「便利な道具の利用」の「実施群」が,高齢期ではISIの「訪問機会」「積極性」の「実施群」,LSI-Kの「去年と同じように元気である」の「肯定的回答群」が,壮年期・高齢期の両群ではLSI-Kの「物事を深刻に考える」の「肯定的回答群」において,主観的健康感が高いことが明らかになった。 結論 主観的健康感は加齢に伴い,身体的要因よりも精神的・社会的要因の影響を強く受けることが示唆された。 キーワード 主観的健康感,サクセスフル・エイジング,ライフスタイル,島嶼地域 第53巻第13号 2006年11月 家族介護者の介護負担感と関連する因子の研究(第2報) -マッチドペア法による介入可能な因子の探索- 平松 誠(ヒラマツ マコト) 近藤 克則(コンドウ カツノリ) 梅原 健一(ウメハラ ケンイチ) 久世 淳子(クゼ ジュンコ) 樋口 京子(ヒグチ キョウコ) 目的 介護負担感を軽減する支援策を探るために,交絡因子の条件を同一にするマッチドペア法を用いて,介護負担感と関連する介入可能な因子を検討した。 方法 対象は,A県下の7保険者の地域代表サンプルの介護者(7,278人)である。 回収数(率)3,610(49. 6%)のうち,主介護者によって回答された3,149人を分析対象とした。 今回,検討を行った介入可能な因子は,ソーシャルサポート,副介護者の有無,十分な介護情報の有無,趣味や気晴らし,介護者のGDS(Geriatric Depressive Scale-short form)-15項目短縮版,ストレス対処能力(SOC; Sense of Coherence)である。 また,第1報での検討をふまえ,8つの交絡因子をマッチさせたマッチドペア法を用いて,介護負担感が高い群(20以上)と,低い群(19以下)の2群間で差がみられる因子を検討した。 マッチさせた条件は,介護者の年齢,性別,続柄,障害老人の日常生活自立度,認知症老人の日常生活自立度,要介護度,1日の平均介護時間,目の離せない時間の8因子である。 結果 介護負担感が低い群には,情緒的サポートがあり,手段的サポートがあり,介護情報があり,趣味や気晴らし活動をしており,ストレス対処能力(SOC)が高く,GDSが低いものが,有意に多かった。 61),GDS(0. 57)や情緒的サポート(-0. 45)などの介護者の認知や主観を反映する因子で高く,一方,十分な介護の情報(0. 26),副介護者の有無(0. 08),趣味や気晴らし(0. 33)などの因子で低い傾向が示された。 結論 従来検討されてきたソーシャルサポートなどの客観的な側面の因子と介護負担感の関係よりも,むしろストレス対処能力やGDSなどの介護者の主観的な側面を反映する因子で関連性が大きかった。 このことは介護負担感の軽減にむけての支援策として客観的状況を変える支援だけではなく,認知や主観への介入も今後は検討すべきことを示唆していると思われる。 キーワード 要介護高齢者,介護負担感,心理,介護者支援,ストレス対処能力,うつ 第53巻第13号 2006年11月 幼稚園児の母親を対象とした育児不安の研究 本村 汎(モトムラ ヒロシ) 上原 あゆみ(ウエハラ アユミ) 目的 本研究では,「インフォーマルな支援」としての「夫からの協力」「夫とのコミュニケーション」「友人からの支援」,母親の「性役割分業意識」が,母親の育児不安にどのような影響を与えているかを明らかにし,その影響のメカニズムを検討することを目的とした。 方法 調査対象はA県H市の私立幼稚園に通園している幼児の母親から無作為に抽出された300名(有効回収率74. 3%)であり,調査方法は自計式質問紙法で,調査時期は平成15年10月末~11月末とした。 測定尺度としては9項目から構成された「育児不安」尺度と,支援測定尺度の副尺度である夫からの協力尺度(5項目),夫とのコミュニケーション尺度(5項目),友人からの支援尺度(3項目)を用い,そのいずれも4件法で測定した。 70以上に達している。 母親のパーソナリティの測定尺度としては,標準化されているPOMS(Psychiatric Outpatient Mood Scale)を用いた。 結果 1)一元配置分散分析によれば,インフォーマルな支援が増大すると,そ れに対応する形で母親の「育児不安」は減少していた。 2)一元配置分散分析のレベルでは,母親の「性役割分業意識」は育児不安になんらの影響も与えていな かったが,夫婦関係のありかた如何によっては,影響があることを示していた。 3)母親のパーソナリティとの関連では,いずれの「心理因子」も母親の育児不 安に影響を与え,「活力因子」以外の因子は,いずれも母親の育児不安に「負」の効果をもたらしていた。 4)重回帰分析は,「友人からの支援」と母親のパー ソナリティの「活力因子」が「育児不安」の減少に貢献していた。 結論 支援効果をあげていくためには支援の量を増大するだけでなく,母親のパーソナリティ特性に注目し,母親のネガティブな心理因子の「負」の効果を減少させるために,「活力因子」の強化に焦点をあてた支援の必要性が示された。 キーワード 育児不安,パーソナリティ構造,インフォーマルな支援,一元配置分散分析,重回帰分析 第53巻第15号 2006年12月 一般世帯および食物アレルギー患者世帯における食品表示などの利用状況 -妊産婦教室および乳幼児教室の参加者を対象として- 野村 真利香(ノムラ マリカ) 堀口 逸子(ホリグチ イツコ) 丸井 英二(マルイ エイジ) 目的 厚生労働省によって新たに提示された介護予防施策では,「一般高齢者」「特定高齢者」「要支援高齢者」「要介護高齢者」の4つの階層を用意し,対象と給付の関係を明確化した。 しかし対象者の選定には『基本チェックリスト』と『要介護認定方式』が並行的に運用され,そこから抽出される「特定高齢者」と「要支援高齢者」の境界や階層性の関係は,いまだに明らかにされていない。 本研究では,「要支援高齢者」の候補者である旧要支援,旧要介護1の認定者に対して,『基本チェックリスト』により試行的に判定し,「特定高齢者」と「要支援高齢者」との間の階層的な関係について検証を行った。 方法 対象は,東京都A市において旧要支援,旧要介護1の認定を受けた者のうち,介護保険以外の生活支援型サービスを利用している在宅高齢者767名である。 調査は,2006年2月に自記式の郵送調査によって実施し,回収率は92. 3%であった。 調査内容は,厚生労働省の『基本チェックリスト』およびIADL(手段的日常生活動作)5項目の遂行能力を問う項目を用いた。 本研究では,すべての調査項目に回答した456名(旧要支援:107名,旧要介護1:349名)を分析対象とした。 結果 旧要支援,旧要介護1の認定者に『基本チェックリスト』による判定を試行した結果,特定高齢者に選定されたのは,旧要支援では33. 6%,旧要介護1では57. 8%となり,「要支援高齢者」であるにもかかわらず「特定高齢者」には選定されないケース,つまり施策の想定とは逆の階層関係となるケースが,約半数に出現することが明らかとなった。 次にIADL5項目による自立者の割合を確認した結果,旧要支援,旧要介護1認定者の54. 8%がすべてのIADL項目が自立していた。 これに対して,IADLが非自立であった者の4分の1に当たる25. 7%が特定高齢者に選定されなかった。 結論 2つの異なる基準から抽出された特定高齢者と要支援高齢者の間には,階層関係が逆転しているケースが約半数にみられ,両者を階層的に位置づけるのは困難であることが明らかとなった。 その要因の1つは,新たに開発された基本チェックリストが,要介護認定との階層的な関係を十分に考慮せずに作成されたことにある。 もう1つは,要介護認定方式が,IADLの能力を適切にスクリーニングできず,自立(非該当)との境界が曖昧になっている点が示唆された。 今後,介護予防施策を一貫したシステムとして構築するためには,介護予防施策の対象者の統合も含めて,基本チェックリストと要介護認定方式の抜本的な見直しが不可欠である。 キーワード 介護予防,要介護認定方式,基本チェックリスト,給付区分,特定高齢者 第53巻第15号 2006年12月 介護保険施設におけるケアマネジメント実践の検証 真辺 一範(マナベ カズノリ) 目的 介護保険施設におけるケアマネジメントの実践内容を概念的モデルとの比較から検証し,施設ケアマネジメントのあり方を模索した。 方法 先行研究に基づきケアマネジメント実践の程度を測るための項目を用い,兵庫県内の介護保険施設491カ所に所属する施設ケアマネジャーを対象として,郵送によるアンケート調査を実施した。 質問紙の作成に際しては,回答者が理解しやすいように各質問項目を介護保険施設の現状に合うよう適切な表現に変更し,その実践度合いを5段階のリッカートスケールでたずねた。 有効回答数(率)は,330名(67. 2%)であった。 調査結果の分析は,施設ケアマネジメントの実践プロセスの枠組みを明らかにするためにそれぞれ因子分析(主因子法・バリマックス回転)を行った。 さらに実際の援助プロセスごとに回答者の属性による違いを明らかにするため,その因子分析で抽出されたそれぞれの因子を従属変数とし,属性を独立変数としたt検定,一元配置分散分析(F検定)および下位検定の多重比較(Tukey法)を行った。 また,因子分析の結果と概念的モデルを比較し,ケアマネジメント実践プロセスに関する分析を行った。 結果 因子分析により抽出された因子は「アセスメント」「モニタリング」「ケース発見」であった。 「アセスメント」に関しては,性別,年齢,基礎資格,基礎資格経験年数(基礎年数),ケアマネ人数,所属施設,勤務形態(専任兼任),事例検討形式の研修受講有無(事例研修)によって有意差がみられた。 特に所属施設においては「老人保健施設(以下,老健)」が「特別養護老人ホーム(以下,特養)」より有意に高かった。 また,「モニタリング」に関しては,担当ケース数,担当者会議の有無,着任経緯によって有意差がみられ,特に担当ケース数では「40~59件」が「0~39件」より有意に高かった。 「ケース発見」に関しては性別,演習形式の研修受講有無,事例検討形式の研修受講有無によって有意な差がみられた。 なお,相談相手の有無や講義形式の研修受講有無ではすべてのプロセスにおいて有意な差はみられなかった。 結論 1)施設ケアマネジメントの特徴は,「アセスメント」とその後に続く「目標設定とケア計画」「ケア計画実施(リンキング)」のプロセスが一体的に連動して実施されており,実践プロセスではその部分が明確に区別されていない。 2)「評価」については,具体的で実効性のある手法を開発し,実践レベルに導入できる取り組みが早急に必要である。 キーワード 施設ケアマネジメント,介護支援専門員の専門性,介護保険制度,施設ケアマネジメント実践の定義,研修システム 第53巻第15号 2006年12月 介護保険施設における施設ソーシャルワークの構造と規定要因 -介護老人福祉施設と介護老人保健施設の相談員業務の比較分析を通して- 和気 純子(ワケ ジュンコ) 目的 介護老人福祉施設と介護老人保健施設における相談員業務の比較分析を通して,介護保険施設における施設ソーシャルワークのあり方を検討するための基礎データを作成することを目的とする。 方法 無作為抽出(系統抽出法)した介護老人福祉施設500カ所および介護老人保健施設500カ所の生活相談員・支援相談員のうち,当該施設で最も経験年数の長い相談員を対象に郵送調査を実施した。 調査時期は,2004年11~12月,回収率は48. 4%である。 30項目の業務内容の頻度を5段階で尋ね,一元配置分散分析によって各業務頻度の比較を行った後,探索的因子分析によって因子構造を把握した。 その上で,各因子得点を従属変数とし,施設特性および相談員特性を独立変数とする重回帰分析を行い,相談員業務を規定する要因の異同について考察した。 結果 介護老人保健施設の相談員は,入退所をめぐる相談・調整業務に多くの時間を費やしているのに対し,介護老人福祉施設の相談員は利用者の日常生活支援や地域社会と関わる幅広い業務により頻繁に従事している。 業務の因子構造では類似点もみられるが,抽出された因子数や因子寄与率に差異が認められた。 各業務因子に影響を与える要因では,介護老人福祉施設の場合は施設特性の影響力が強く,介護老人保健施設では相談員特性のみが規定要因となっていることが判明した。 結論 施設としての役割や機能を異にする介護老人福祉施設と介護老人保健施設であるが,入所者の権利を擁護し,その生活の質を高めるために,いずれの施設にあっても施設ソーシャルワークを担う相談員が果たす役割はますます重要になっていくものと考えられる。 介護保険施設として,利用者のニーズに最も的確に応える相談員業務の設定と必要な専門性の確保が求められる。 キーワード 介護保険施設,介護老人福祉施設,介護老人保健施設,ソーシャルワーク,相談員 第53巻第15号 2006年12月 身体障害者福祉施設の施設職員が認識する 「自立」概念に関する研究 仁坂 元子(ニサカ モトコ) 岡田 進一(オカダ シンイチ) 髙橋 美樹(タカハシ ミキ) 樽井 康彦(タルイ ヤスヒコ) 白澤 政和(シラサワ マサカズ) 目的 本研究は,身体障害者福祉施設の施設職員(施設長を含む)が認識する自立の構造を明らかにすることが目的である。 方法 調査対象者は,近畿2府4県の身体障害者福祉施設150カ所の職員,施設長各1名ずつの計300名であり,調査方法は無記名の自記式郵送調査である。 調査期間は2005年2月14日から3月11日で,有効回答率は66. 0%であった。 調査項目は,基本属性,先行研究から抽出された自立に関連する項目を設定した。 施設職員が認識する自立概念を明らかにするため,分析方法にはバリマックス回転を伴う因子分析(主因子法)を用いた。 結果 本研究の分析から,施設職員が認識する自立概念は,「生活主体者という立場からの自己実現志向」「一個人として尊重されていることへの気づき」「社会制度の選択・開発過程への積極的関与」「身辺および経済面における自助志向」「他者との非依存的な人間関係の構築」の5因子からなることが明らかとなった。 結論 本研究は,自立を「身体的」や「経済的」側面から捉えていくことの限界を示唆した先行研究を支持する結果となった。 そして,施設職員は,自助志向の従来の自立観と自己実現などをキーワードとする新しい自立観という2つの立場を内包していることが明らかとなった。 今後,施設職員は,障害者に対する適切な自立支援を行っていくためにも,何を自立と考えるのかを明確にし,具体的な自立支援の方法を考えていくことが必要となる。 また,従来の自助志向の自立観も否定されるものではないが,その考え方が障害者から必ずしも支持されてきた自立観ではないことから,今日の自立支援の方向性として,個人として尊重されることや社会制度との関わりを意識した支援が求められる。 そして,社会制度の利用を自立と捉えることは,障害者自立支援法に基づいた支援を行っていくにあたり,非常に重要なことであり,障害者に対する「権利擁護」の考え方にもつながるものであると考えられる。 キーワード 身体障害者,施設職員,施設長,自立 第53巻第15号 2006年12月 高齢者のボランティア活動に関連する要因 岡本 秀明(オカモト ヒデアキ) 目的 人口高齢化の進行の中にあって元気な高齢者数も増加しているわが国では,高齢者は社会や地域に貢献する資源であるという観点を持ち,高齢社会を構築していくことが求められる。 本研究では,高齢者のボランティア活動に関連する要因を明らかにすることを目的とした。 方法 大阪市24区のうち8区から無作為抽出し,65~84歳の高齢者1,500人を対象に自記式質問票を用いた郵送調査を実施した。 有効回収数771人のうち,特定項目に欠損値のない671人を分析対象とした。 分析は,ボランティア活動の有無を従属変数としたロジスティック回帰分析を行った。 独立変数は,「家族・経済・他(4変数)」「健康(2変数)」「暮らし方の志向性(7変数)」「技術や経験(2変数)」「社会・環境的状況(2変数)」という5領域の計17変数とし,統制変数は,年齢と性別を投入した。 領域ごとに分析し,次に,統計学的な有意が認められた変数をすべて投入して分析を行った。 結果 ボランティア活動をしている者は24. 0%であり,年1~2回活動している者が最も多かった。 ボランティア活動への関心がある者は58. 8%,活動への参加意向がある者は48. 9%であった。 ロジスティック回帰分析を行った結果,ボランティア活動をしている者の特性として,「中年期にボランティア経験がある」「地域に貢献する活動をしたい」「ボランティア活動情報の認知の程度が高い」(p<0. 001),「技術・知識・資格がある」「親しい友人や仲間の数が多い」(p<0. 01),「主観的健康感が高い」(p<0. 05)ということが明らかになった。 結論 ボランティア活動への関心のある者は6割弱,参加意向のある者は5割弱であるのに対し,実際に活動している者は2割強にとどまっていた。 活動への関心や参加意向のある者を実際の活動に結びつけやすいよう環境を整備していくことにより,ボランティア活動に参加する高齢者が増加することが期待できる。 高齢期以前にボランティア経験を持てるような場の設定や啓発,活動への参加の機会に関する情報を多くの高齢者に認知してもらえる環境を整えていくことなどが求められる。 キーワード 高齢者,ボランティア,社会活動,社会参加 第54巻第1号 2007年1月 子どもの発達の全国調査にもとづく園児用 発達チェックリストの開発に関する研究 安梅 勅江(アンメ トキエ) 篠原 亮次(シノハラ リョウジ) 杉澤 悠圭(スギサワ ユウカ) 丸山 昭子(マルヤマ アキコ) 田中 裕(タナカ ヒロシ) 酒井 初恵(サカイ ハツエ) 宮崎 勝宣(ミヤザキ カツノブ) 西村 真美(ニシムラ マミ) 目的 全国の保育園児の発達状態について実態を調査し,それに基づいた園児用発達チェックリストを開発することを目的とした。 方法 対象は,長時間保育を含む全国98カ所の認可保育所を利用する22,819名の子どもである。 担当保育士が各々の子どもの発達状態について,園児用発達チェックリスト試案を用いて運動発達(粗大運動,微細運動),社会性発達(生活技術,対人技術),言語発達(表現,理解)の6領域,各領域32項目,全192項目について評価した。 すべての項目について,10%の子どもが実施可能となる月齢(10パーセンタイル値),50%の子どもが可能となる月齢(50パーセンタイル値),90%の子どもが可能となる月齢 90パーセンタイル値)を算出した。 結果 すべての項目について,10パーセンタイル値,50パーセンタイル値,90パーセンタイル値が試案の序列に添った形で抽出され,また基準月齢が10~90パーセンタイル値の範囲内にあることが確認された。 信頼性は各領域で82. 5~97. 9%であった。 結論 この園児用発達チェックリストが,現在の日本における園児の発達を評価する指標として妥当であることが示された。 キーワード 子どもの発達,保育,評価,園児,全国 第54巻第1号 2007年1月 高齢者を対象とした地域における運動教室の医療経済効果 神山 吉輝(カミヤマ ヨシキ) 白澤 貴子(シラサワ タカコ) 小出 昭太郎(コイデ ショウタロウ) 高橋 英孝(タカハシ エイコウ) 川口 毅(カワグチ タケシ) 久野 譜也(クノ シンヤ) 目的 地域における高齢者を対象にした運動教室について,開始前1年間と開始後の2年間以上のデータを用い,3年間以上の年間医療費の推移を示した形で,医療経済評価を行うことを目的とした。 方法 新潟県M市,富山県S市,埼玉県K市,愛媛県W町の健康運動教室参加者のうちの国民健康保険の被保険者(以下,国保加入者)を運動群とするとともに,国保加入者の中から運動教室に参加していない約3倍の人数を対照群として抽出し,両群の年間の医療費の推移を比較した。 医療費の増減の総和を明らかにするために,各年の1人当たり医療費をみるだけではなく,教室開始前の医療費に教室開始後の年間医療費を次々に加えていく累積医療費を算出し,運動群と対照群とで比較を行った。 結果 4市町において,運動群は対照群に比較して,運動教室の開始前から医療費が低いものの,累積医療費でみると,教室開始1年目,2年目とその差が広がっていくことが示された。 結論 教室開始前と開始後2年間以上の国民健康保険の医療費データを用い,運動群と対照群を比較することで,地域における高齢者を対象とした運動教室による医療経済効果の可能性が示唆された。 キーワード 高齢者,運動教室,筋力トレーニング,医療経済 第54巻第1号 2007年1月 地域福祉に対するコミュニティワーカーの意識構造 谷川 和昭(タニカワ カズアキ) 目的 地域福祉が学問として生誕したのは1970年代のことであるが,地域福祉の推進を専門とするコミュニティワーカーの意識構造を手がかりとして,未だ定かとなっていない地域福祉とは何かを明らかにすることが本研究の目的である。 そのため地域福祉の構成要件を提起し,その体系化の可能性について検討した。 方法 市区町村社会福祉協議会のコミュニティワーカーへの郵送調査(2003年2~3月)を行い,分析項目のすべてに欠測のない222票のデータを用いた。 探索的因子分析の手法を用いて,最初に地域福祉に関わる因子の抽出と解釈を行い,続いて地域福祉計画に関わる因子の抽出と解釈を行った。 また,両者間の関連の有無を相関分析によって確認した。 その後,地域福祉に関する質問33項目と地域福祉計画に関する質問32項目を合成した地域福祉概念に関する65項目の質問項目を用いて一次因子分析を行い検討した。 次に,この一次因子分析で析出された因子構造についてさらなる知見を得るため,二次因子分析を行い,因子の抽出と解釈を試みた。 また,一次因子分析による構成因子の特徴について考察するためクラスター分析を行った。 結果 地域福祉に関わる因子,地域福祉計画に関わる因子のいずれも抽出とその解釈が可能であった。 また地域福祉と地域福祉計画との関連が認められた(r=0. 834,p<0. 001)。 合成した地域福祉概念についての一次因子分析の結果,10個の因子が抽出され,その解釈は可能であった。 これら10個の因子による二次因子分析の結果も解釈が可能であった。 クラスター分析の結果,関係性が見いだせそうな組合せや独立した因子が明らかになった。 結論 分析結果から,「地域福祉の原理・原則」「新旧社会政策との調整」「予防的社会福祉の増進」「地域社会サービスの整備」「地域のコミュニケーション」「福祉のネットワーキング」「地域福祉圏域の設定」「福祉サービス利用への支援」「社会福祉の空間づくり」「地域における福祉の方向性」が地域福祉の構成要件として示された。 また,これらは「制度・政策・施策」「実践・方法・理念」の2つに集約された。 さらに,以上の要件のうち,「地域における福祉の方向性」が地域福祉の推進にとって重要と考えられた。 キーワード 地域福祉,地域福祉計画,地域福祉の構成要件,コミュニティワーカー,意識構造 第54巻第1号 2007年1月 東北地方の在宅高齢者における 地域・家庭での役割の実態と関連要因の検討 高橋 和子(タカハシ カズコ) 安村 誠司(ヤスムラ セイジ) 矢部 順子(ヤベ ジュンコ) 芳賀 博(ハガ ヒロシ) 目的 「虚弱高齢者」から「極めて元気な高齢者」まで,その体力レベルに応じた役割の創造と開発を目的に,東北地方における在宅高齢者の地域・家庭での役割の実態把握を行い,現状での役割にはどのような要因が影響しているのかを明らかにすることで,高齢者の役割の創造・開発における課題を検討する。 方法 福島県S市A地区の高齢者から無作為抽出した693人を対象に,郵送法による質問紙調査を行った。 高齢者の役割については,収入の伴う仕事の有無,シルバー人材センター・高齢者事業団の仕事の経験の有無,家の中での役割,地域の団体・組織・会とのかかわり,現在または最近行ったボランティア活動を把握した。 分析方法は,各質問の回答を2項目に分類して行った。 最初に各変数についてFisherの直接法を用いて性差を確認した。 次に役割の有無による属性の比較を行い,p値が0. 05未満となったものを投入し,変数減少法による多重ロジスティック回帰分析を行った。 結果 高齢者の役割のうち,収入の伴う仕事は女性よりも男性で有している割合が有意に高かった。 家の中での役割は,男性は「大工仕事や家の修繕」,女性は家事全般において実施している割合が高く,男女で有意差が認められた。 地域の団体・組織・会とのかかわりは,男女とも「町内会・自治会」「老人会・高齢者団体」に入っている割合が高かった。 ボランティア活動は,男女とも「美化・環境整備の活動」「農作業に関する活動」の実施割合が高かった。 高齢者の属性による役割の有無の比較では,収入の伴う仕事,家の中での役割,地域の団体・組織・会とのかかわり,ボランティア活動ともに,日常生活自立度のレベルにより役割の有無に差が認められ,自立者で割合が高かった。 また,役割を目的変数とした多重ロジスティック回帰分析の結果においても,現在の役割の有無には日常生活自立度が大きく影響していた。 結論 現在,高齢者が担っている家の中や地域での役割は,性や日常生活自立度で違いがあり,日常生活で介助を要する者は役割を持たない者が多いことがうかがわれた。 新たな役割の創造・開発を行う上で,性・年齢とともに高齢者の活動レベルに応じた役割を検討することの重要性が確認された。 キーワード 社会参加,社会活動,役割,在宅高齢者 第54巻第1号 2007年1月 高齢者福祉活動の必要性に関する地域住民の意識 渡辺 裕一(ワタナベ ユウイチ) 目的 近年,地域の高齢者福祉問題の解決に向けた地域住民の参加への期待は高まっている。 しかし,多くの地域住民の力は潜在化し,その期待にこたえられる状況にあるとは言えない。 地域住民が主体的にこれらの問題を共有し,解決に向けて働きかけることが求められており,その導入に高齢者福祉活動の必要性意識を持つという過程があると考えられる。 そこで,本研究では高齢者福祉活動の必要性に関する地域住民の意識の現状を把握し,その意識に影響を与えている要因を探索的に明らかにすることを目的とした。 独立変数には,「性別」「年齢」「家族構成」「配偶者」「学歴」「永住希望」「広報紙(市・区・自治会レベル)」「地域の集まり」「住居」「仕事の有無」「65歳以上の方と同居しているか」「介護の必要な方と同居しているか」を用いた。 結果 「介護予防」との間に有意な関連が認められた独立変数は,「学歴」「年齢」「地域の集まり」「配偶者」「住居」「仕事の有無」「広報紙(市・区・自治会レベル)」であった。 「高齢者交流」と各独立変数との間には有意な関連は認められず,「介護者交流」は,「年齢」「家族構成」「地域の集まり」「65歳以上の方と同居しているか」との間に有意な関連が認められた。 「学習機会」は「地域の集まり」「広報紙(市・区レベル)」との間に有意な関連が認められた。 結論 高齢者福祉活動の必要性意識に影響を与えている要因は,内的要因(年齢,性別,その他)と外的要因(広報紙,地域の集まり,その他)の2つに分類することができる。 内的要因に外的要因を重ねていく働きかけによって,地域住民の高齢者福祉活動に関する必要性意識を高めていくことができる可能性が示唆されたと言える。 キーワード 高齢者福祉活動,必要性意識,共有,地域住民,参加,エンパワメント 第54巻第2号 2007年2月 胃がんと肺がんにおける死亡年齢と罹患年齢の年次推移 高橋 菜穂(タカハシ ナホ) 川戸 美由紀(カワド ミユキ) 亀井 哲也(カメイ テツヤ) 谷脇 弘茂(タニワキ ヒロシゲ) 栗田 秀樹(クリタ ヒデキ) 橋本 修二(ハシモト シュウジ) 目的 胃がんと肺がんにおいて,人口構成の変化を調整した上で,死亡率と罹患率とともに,死亡年齢と罹患年齢の年次推移を検討した。 方法 1975~1999年の性・年齢階級別の死亡数と罹患数から,年齢調整死亡率,年齢調整罹患率,調整平均死亡年齢と調整平均罹患年齢を算出した。 結果 胃がんにおいて,1999年の平均死亡年齢は男で70. 9歳と女で73. 0歳,平均罹患年齢は男で67. 7歳と女で69. 7歳であった。 年齢調整死亡率と年齢調整罹患率は年次とともに低下傾向,調整平均死亡年齢と調整平均罹患年齢は上昇傾向であった。 肺がんにおいて,1999年の平均死亡年齢は男で72. 4歳と女で73. 8歳,平均罹患年齢は男で71. 1歳と女で71. 6歳であった。 年齢調整死亡率と年齢調整罹患率は上昇傾向であったが,1990年ごろから上昇の鈍化傾向あるいは横ばい傾向がみられた。 調整平均死亡年齢と調整平均罹患年齢は上昇傾向であったが,1990年ごろから男で上昇の鈍化傾向,女で横ばい傾向がみられた。 結論 胃がんと肺がんにおいて,死亡年齢と罹患年齢が年次とともに大きく変化していることを示した。 キーワード 胃がん,肺がん,死亡年齢,罹患年齢,年次推移 第54巻第2号 2007年2月 地区単位のソーシャル・キャピタルが主観的健康感に及ぼす影響 藤澤 由和(フジサワ ヨシカズ) 濱野 強(ハマノ ツヨシ) 小藪 明生(コヤブ アキオ) 目的 地区を単位としたソーシャル・キャピタル変数が全体的健康感に対してどの程度,影響を及ぼしているかに関して明らかにすることを目的とした。 方法 日本国内に居住する満20歳以上75歳未満の男女3,000人を調査対象者とし,抽出方法は層化二段無作為抽出法を用いた。 2004年2月に調査員による面接調査を実施し,1,910人(男性870人,女性1,040人)から回答を得た(回収率63. 7%)。 分析方法は,相関分析および性別,年齢,慢性疾患の有無,暮らし向き,ソーシャル・キャピタル(6項目)を独立変数,全体的健康感を従属変数とする重回帰分析を行った。 なお,分析においては,分析単位を地区としていることから,各変数について平均値および割合を用いて地区単位への集約を行った。 結果 全体的健康感と相関が示されたソーシャル・キャピタルは5項目であり,さらに重回帰分析を行った結果,「私の住んでいるこの地区はとても安全である」「私の近所の誰かが助けを必要としたときに,近所の人たちは手をさしのべることをいとわない」「急病の時など,すぐにかかれる医療機関があって安心できる地域である」「私の地域では,お互いに気軽に挨拶を交し合う」において統計的に有意な関連が示された(p<0. 05)。 なお,慢性疾患率および暮らし向きについても有意な関連が示された(p<0. 05)。 結論 本結果から,地区単位のソーシャル・キャピタルは,他の変数とともに全体的健康感に一定の影響を与えていることが明らかとなった。 慢性疾患率や暮らし向きなどの変数が全体的健康感に影響を与えているのは非常に理解しやすいものであるが,これらの変数と同様に複数のソーシャル・キャピタル変数が全体的健康感に同程度の影響を与えていた点が注目に値する。 今後は,ソーシャル・キャピタル概念の理論的検討,その健康への影響プロセス,そして規定要因としての分析上の問題を克服する必要があると考えられる。 キーワード ソーシャル・キャピタル,主観的健康感 第54巻第2号 2007年2月 都道府県における母子保健統計情報の収集・利活用状況に関する研究 鈴木 孝太(スズキ コウタ) 薬袋 淳子(ミナイ ジュンコ) 成 順月(チェン シュンユエ) 田中 太一郎(タナカ タイチロウ) 山縣 然太朗(ヤマガタ ゼンタロウ) 目的 現在わが国において,市町村から都道府県,国へと伝達されている母子保健統計情報は,人口動態調査,地域保健・老人保健事業報告のみである。 しかしながら今後,「健やか親子21」で提示している母子保健の取り組みなどについて目標値の設定・評価などを行う際には,それら以外の母子保健統計情報が必要である。 そこで本研究では,都道府県における母子保健統計・情報の集計実態について調査し,その現状を把握することを目的とした。 方法 都道府県の母子保健担当者の連絡先(E-mailアドレス)を,都道府県ホームページなどから検索した。 E-mailを用いて,担当者に母子保健統計情報の収集・利活用状況に関する調査票を送付し,回答をE-mailまたはFAXで回収した。 具体的な調査内容は,市町村における母子保健統計情報を都道府県が把握・集計するシステムの有無,その情報の内容,乳幼児健診の形態(集団・個別),情報公開の有無などである。 結果 回答は全都道府県から得られ,45都道府県(95. 7%)において市町村で集計したデータをまとめていた。 しかし,情報内容については,乳幼児健診の受診率(100%)およびその内容・結果(77. 8%)をほとんどの都道府県で集計している一方,妊婦の喫煙(6. 7%)や小児の事故(15. 6%)についてはあまり集計されていなかった。 このように集計している情報の内容は都道府県によりかなりばらつきがあり,また政令市については政令市以外の市町村と一括して集計していない道府県が大半であった。 結論 国としてまとめている人口動態調査,地域保健・老人保健事業報告以外の母子保健統計情報について,45都道府県において市町村が集計した情報をまとめていたが,その内容にはばらつきがあるため,調査内容について今後より精査する必要がある。 また今回の研究結果は,様々な母子保健の指標を評価するのに必要な,情報の標準化・規格化を目指すうえでの基礎資料となりうる。 キーワード 母子保健,乳幼児健診,健やか親子21,統計情報,情報公開 第54巻第2号 2007年2月 少子化の人口学的要因と社会経済的要因の解析 小島 里織(コジマ サオリ) 上木 隆人(ウエキ タカト) 柳川 洋(ヤナガワ ヒロシ) 目的 わが国の2000年出生率は1970年の約半分までに低下し,出生率低下の主な原因として晩婚化・晩産化が指摘される。 代表的な社会経済指標を取り上げ,出生率などとの相関を検討して,出生率低下に影響を及ぼす社会経済的要因を明らかにする。 方法 1970年から2000年までの人口動態統計と国勢調査のデータをもとにして,わが国の出生率などの年次推移を1970年を1とした比で算出した。 次に,25~29歳と35~39歳の有配偶率と有配偶出生率について,社会経済指標である第三次産業就業人口割合,15~44歳女子労働力,1人当たり県民所得との相関を,また20~24歳の有配偶率と有配偶出生率について進学率との相関を求めた。 結果 1 2000年の出生率は1970年と比べて,20~24歳と25~29歳では半減し,30~34歳と35~39歳では低下の後で上昇した。 有配偶率は全体に低下傾向で,20~24歳と25~29歳で半減した。 有配偶出生率は20~24歳と25~29歳で横ばい,30~34歳と35~39歳で低下の後に上昇した。 2 有配偶率や有配偶出生率と社会経済指標との相関は,25~29歳有配偶率は第三次産業就業人口割合と,25~29歳有配偶出生率は女子労働力や1人当たり県民所得と,35~39歳の有配偶率と有配偶出生率は第三次産業就業人口割合と相関がみられた。 20~24歳の有配偶率と有配偶出生率は進学率と負の相関を示した。 3 社会経済指標間の相関は,女子労働力は第三次産業就業人口割合や進学率と負の相関,1人当たり県民所得は進学率と正の相関を示した。 結論 女子労働力,第三次産業就業人口割合,1人当たり県民所得,進学率などの指標に現れる社会経済的要因が相互に関係しつつ,晩婚化,晩産化をもたらしたと考えられる。 出生率低下への対応は,女子労働の問題や,出産・育児や子どもの教育に関連する経済的負担,住宅事情に関連する問題などを年代ごとにとらえる必要があろう。 キーワード 出生率,有配偶率,有配偶出生率,第三次産業就業人口割合,女子労働力,進学率 第54巻第5号 2007年5月 都道府県別たばこ消費本数と主要死因別標準化死亡比との関連 竹森 幸一(タケモリコウイチ) 目的 都道府県別たばこ消費本数と主要死因別標準化死亡比(以下SMR)との関連を検討することにより,都道府県における喫煙の健康影響について探求することを目的とした。 方法 各都道府県の2002年,2003年,2004年のたばこ売渡本数から返還本数と課税免除本数を差し引いた値を同年の各都道府県男女別15歳以上人口で除して,男女別15歳以上1人当たりたばこ消費本数を求めた。 都道府県の男15歳以上1人当たりたばこ消費本数の年次間の相関と平均値の差をみた。 都道府県別15歳以上1人当たりたばこ消費本数と全死因,悪性新生物(総数,胃,大腸,肝及び肝内胆管,気管・気管支及び肺),心疾患(総数,急性心筋梗塞)および脳血管疾患の各SMRとの相関係数を男女別に求めた。 結果 男15歳以上1人当たりたばこ消費本数は年次間に高い相関がみられ,2002年から2004年にかけて有意に低下していた。 15歳以上1人当たりたばこ消費本数との間に,男の2002年で全死因,気管・気管支及び肺の各SMR,2003年で全死因,悪性新生物総数,気管・気管支及び肺の各SMR,2004年で気管・気管支及び肺のSMRに有意な正相関がみられた。 女では2003年で悪性新生物総数のSMRに有意な正相関がみられた。 15歳以上1人当たりたばこ消費本数と基本健康診査喫煙率,国民生活基礎調査喫煙率および国民栄養調査から計算した喫煙者指数との間に有意の正相関がみられた。 結論 都道府県別たばこ消費本数と主要死因別SMRとの相関関係から,気管・気管支及び肺などの主要死因で喫煙の影響を否定しえない結果が得られた。 キーワード たばこ消費本数,都道府県別標準化死亡比,悪性新生物,全死因 第54巻第2号 2007年2月 中都市在住高齢者の手段的ソーシャルサポート選好度とその構造 -大都市在住高齢者との比較の視点に基づいた考察- 権 泫珠(コン ヒョンジュ) 目的 中都市在住高齢者が自分自身に手段的ソーシャルサポートが必要になったとき,誰に対して,どの程度の支援を求めたいと考えているのかといった手段的ソーシャルサポート選好度およびその構造を明らかにすることを目的とした。 また,大都市在住高齢者を対象とした同様の先行研究の結果と比較し,高齢者の選好度の特徴を考察する。 方法 愛知県A市に在住する65歳以上の高齢者のうち,900人を無作為抽出し,自記式質問紙を用いた郵送調査を行った。 調査期間は,2004年11月1~15日であり,有効回収率は51. 6%(464票)であった。 分析方法は,手段的ソーシャルサポート選好度の構造を把握するために因子分析を行った。 また,因子ごとの平均値からそれぞれのサポート源に対する選好の程度を把握した。 その結果を大都市高齢者対象の先行研究と比較した。 結果 手段的サポートに対する選好度は,家事や介護サポートを家族に求めたいという選好度が最も高く,次いで,介護や経済サポートを行政や福祉機関に求めたいという選好度が高かった。 また,因子構造は,「フォーマルサポート源への選好」「家族以外のインフォーマルサポート源への選好」「家族への選好」「経済サポート/フォーマル機関への選好」の4因子となった。 因子ごとの平均値は,「家族への選好」が最も高く,次いで「経済サポート/フォーマル機関への選好」「フォーマルサポート源への選好」「家族以外のインフォーマルサポート源への選好」の順であった。 結論 研究結果は大都市高齢者を対象とした先行研究とも一致するものであり,高齢者の手段的ソーシャルサポート選好度の構造および選好順位は地域間での違いはみられず,一般化できる可能性が示唆された。 一方,「家族への選好」因子の平均値は,中都市高齢者の方で高く,地域差がみられた。 キーワード 中都市在住高齢者,ソーシャルサポート選好度,手段的ソーシャルサポート,大都市在住高齢者,地域差 第54巻第3号 2007年3月 静岡県における自殺死亡の地域格差および社会生活指標との関連 久保田 晃生(クボタ アキオ) 永田 順子(ナガタ ジュンコ) 杉山 眞澄(スギヤマ マスミ) 藤田 信(フジタ マコト) 目的 本研究の目的は,自殺死亡の低率県である静岡県内の自殺死亡の地域格差について確認するとともに,自殺死亡に関連する社会生活指標を検討し,今後の静岡県における自殺予防施策の基礎資料を得ることとした。 方法 静岡県内における男女別の自殺死亡標準化死亡比(SMR)(1999~2003年)をマップ化して,地域格差を確認した。 また,地域の社会生活指標を収集し,自殺死亡SMRとの関連について,主成分分析および重回帰分析を行い検討した。 結果 静岡県内の自殺死亡SMRは,男女とも同様の分布を示し,市よりも町の方が高い値を示した。 また,女性では自殺死亡SMRが200を超える地域が3町あり,男性より地域間の格差が認められた。 本研究の社会生活指標を主成分分析した結果,第1主成分は都市化の程度を分ける指標,第2主成分はサービス産業と生活の豊かさを分ける指標として解釈された。 さらに,自殺死亡SMRを加えた分析においても,因子構造は同様であった。 自殺死亡SMRを目的変数に,社会生活指標を説明変数に用いた重回帰分析を行った結果,男性では「小売店数(人口千対)」,女性では「離婚率(人口千対)」「第二次産業就業者比率(%)」「健康相談延べ人数(人口千対)」が選択された。 このうち,自殺死亡SMRとの単相関では,男性の「小売店数(人口千対)」のみ,有意な正の相関を認めた。 結論 静岡県の自殺死亡SMRは,男女とも都市化の程度が影響することが示唆された。 この状況は,秋田県,岐阜県との報告と同様であり,自殺予防には過疎地域への働きかけが重要であると考えられた。 キーワード 自殺,標準化死亡比,社会生活指標,地域格差 第54巻第3号 2007年3月 青森県および長野県の市町村別たばこ売渡本数と 主要死因別標準化死亡比との関連 竹森 幸一(タケモリ コウイチ) 目的 青森県および長野県の市町村別たばこ売渡本数と主要死因別標準化死亡比 以下SMR との関連を検討することにより, 市町村における喫煙の健康影響について探求することを目的とした。 方法 各市町村の2002年,2003年,2004年のたばこ売渡本数を同年の男女別15歳以上人口で除して,男女別15歳以上1人当たりたばこ売渡本数を求めた。 青森県および長野県の男15歳以上1人当たりたばこ売渡本数の年次間の相関と平均値の差をみた。 また各年の青森県と長野県の男15歳以上1人当たりたばこ売渡本数の県間の差をみた。 15歳以上1人当たりたばこ売渡本数と全死因,悪性新生物 総数,胃,大腸,肝及び肝内胆管,気管・気管支及び肺),心疾患 総数,急性心筋梗塞),脳血管疾患のSMRとの相関係数を青森県と長野県について男女別に求めた。 結果 男15歳以上1人当たりたばこ売渡本数は両県とも年次間に高い相関がみられ,2002年から2004年にかけて有意に低下し,2002年,2003年,2004年ともに青森県が長野県より有意に高かった。 15歳以上1人当たりたばこ売渡本数との間に,青森県の場合,男の2002年で悪性新生物総数,大腸,2003年で悪性新生物総数,胃,大腸,脳血管疾患,2004年で全死因,悪性新生物総数,胃,大腸,脳血管疾患に有意な正相関がみられた。 女では関連がみられなかった。 長野県の場合,男の2002年で胃,大腸,2003年で胃,大腸,2004年で大腸に有意な正相関がみられ,女の2002年で悪性新生物総数,大腸,2003年で悪性新生物総数,大腸,2004年で悪性新生物総数,大腸に有意な正相関がみられた。 結論 市町村別たばこ売渡本数と主要死因別SMRとの相関関係から,多くの主要死因で喫煙の影響を否定しえない結果が得られた。 キーワード たばこ売渡本数,市町村別標準化死亡比,悪性新生物,心疾患,脳血管疾患 第54巻第3号 2007年3月 医療費からみた国保ヘルスアップモデル事業の評価 -福島県二本松市における個別健康支援プログラムの検討- 小川 裕(オガワ ユタカ) 安村 誠司(ヤスムラ セイジ) 目的 生活習慣病の一次予防を目的とした個別健康支援プログラムに基づいて実施されたヘルスアップモデル事業を2年間の追跡により医療費の面から評価する。 方法 福島県二本松市における基本健康診査または国保人間ドック受診者のうち,脂質,血糖,血圧,BMIのいずれかで「要指導」または「要医療」であった者をモデル事業の対象者として介入群と対照群を設定し,介入年1年間とその後2年間の追跡が可能であった40~69歳のそれぞれ119人についてレセプト情報に基づき医療費に関する分析を行った。 結果 受療状況では,有意ではなかったが「レセプトが認められなかった」者が介入群では経時的に増え,介入後2年には対照群より多かったこと,「入院レセプトが認められた」者がいずれの年にも対照群に多く,その差が介入年より介入後に大きかったことが介入効果を示唆する結果であった。 また,レセプト件数,点数,日数の検討では,入院外のレセプト点数が対照群のみで有意な増加を示し,入院外と入院を合計した件数,点数,日数のいずれも介入2年後の増加率が対照群で高かった。 このうち点数の年齢別検討では,60歳以上で介入効果が大きいことが示唆された。 さらに介入年に入院外レセプトのみ認められた者について個人ごとにレセプト件数,点数,日数の変化を比較したところ,いずれも介入後に減少した者の割合は介入群で高く,60歳以上ではレセプト件数,点数,日数における減少者の割合が介入後2年でも維持される傾向がみられた。 介入年における入院外点数の「高」・「低」別に比較した検討では,「高」点数群において介入効果が高く,効果が持続される可能性が示唆された。 結論 実施した個別健康支援プログラムが,医療費関連指標を低下させること,とくに60歳代で入院外レセプト点数の比較的高い群で介入効果が大きくなる可能性が示唆された。 キーワード 生活習慣病,一次予防,個別健康支援プログラム,医療費,ヘルスアップモデル事業 第54巻第3号 2007年3月 国民栄養調査の解析による「健康日本21」目標達成の予測 -肥満を中心に- 若林 チヒロ(ワカバヤ シチヒロ) 尾島 俊之(オジマ トシユキ) 萱場 一則(カヤバ カズノリ) 三浦 宜彦(ミウラ ヨシヒコ) 柳川 洋(ヤナガワ ヒロシ) 目的 「健康日本21」で挙げた項目は現状のまま推移して2010年までに目標を達成するか否かを性年齢階級別の人口集団ごとに検討した。 特に肥満者割合とそれに関連する栄養・食生活,身体活動・運動の項目を中心に,今後強化すべき対策について検討した。 0 ,脂肪エネルギー比,日常生活における運動習慣のある者の割合,日常生活における歩数について性年齢階級別に1995年から2003年までの値で回帰分析を行い,2010年における予測値を算出して,「健康日本21」目標達成の可否を検討した。 結果 肥満者割合について2010年までに目標を達成できるのは女性の40歳代以下のみで,男性のすべての年齢階級と女性の50歳代以上では目標を達成することができないと予測された。 特に30歳代以上の男性の肥満者割合は増加傾向が強く,2010年には40%近い値になると予測された。 脂肪エネルギー比では40歳代以上,運動習慣者割合では男女共60歳代のみ,日常生活における歩数では20歳代男性と40歳代女性のみが目標を達成できると予測され,他の性年齢階級では目標達成は困難と予測された。 肥満者割合で目標達成できないと予測された人口集団のうち,脂肪エネルギー比では男性30歳代以下,運動習慣者割合では男性50歳代以下と女性50歳代,日常生活における歩数では男性30歳代以上と女性50歳代以上では目標達成できないと予測され,これら人口集団に対して対策を強化する必要があると考えられた。 結論 「健康日本21」で肥満者割合について挙げた目標の達成は大部分の性年齢階級で困難と予測された。 肥満に関連する栄養・食生活や身体活動・運動に関する項目でも目標達成困難な集団が多く,今後集団ごとにきめ細かな対策をとりいれる必要がある。 キーワード 健康日本21,国民栄養調査,肥満,健康政策,栄養・食生活,身体活動・運動 第54巻第3号 2007年3月 吹田市基本健診での生活習慣とメタボリックシンドロームに関する研究 奈倉 淳子(ナグラ ジュンコ) 小久保 喜弘(コクボ ヨシヒロ) 川西 克幸(カワニシ カツユキ) 小谷 泰(コタニ ヤスシ) 伊達ちぐさ 岡山(ダテ チグサ) 明 友池(オカヤマ アキラ) 目的 都市住民のメタボリックシンドローム(Mets)有病率とMets定義病態に関連する生活習慣の特徴を性・年齢ごとに評価した。 方法 平成16年度吹田市基本健康診査受診者のうち問診票で有効回答が得られた30~89歳の26,522人の男女を対象とした。 Mets有病率,Mets有病者での構成因子の有病率を求め,さらにMetsと関連する生活習慣の検討を行った。 結果 30~89歳でのMetsの有病率は,男性19. 4%,女性10. 7%であった。 Mets有病者のうち,若年群では肥満の有病率が高く(30歳代:男性82%,女性90%),高齢群では血圧高値の有病率が高い傾向にあった(80歳代:男性99%,女性98%)。 生活習慣では,「他の人より食べる量が多い」「早食いである」「睡眠が不規則である」「立位・歩行時間が1時間未満である」は,男女ともすべての年代でMetsと関連していた。 4項目のいずれにも該当しない対象者と1項目該当の対象者のMetsの多変量調整オッズ比は1. 29~2. 17の値をとり,2個では1. 66~4. 60,3個では3. 13~5. 09で,4個すべてに該当する対象者では5. 36であった。 結論 Metsの構成因子は年齢により異なっていたが,過食・早食い・不規則な睡眠・運動不足はすべての年代でMetsとの関連がみられ,これらを多く満たす人ほどMetsのリスクが高かったことから,これら4つの項目はMetsの予防・改善の保健指導の項目となりうる生活習慣と考えられた。 キーワード メタボリックシンドローム,有病率,生活習慣 第54巻第4号 2007年4月 生活習慣病予防事業による医療費への影響 亀 千保子(カメ チホコ) 馬場園 明(ババゾノ アキラ) 石原 礼子(イシハラ レイコ) 目的 現在,多くの自治体で生活習慣病予防事業が行われているが,無作為比較対照研究による介入前後での医療費抑制効果の報告はされていない。 そこで,本研究では,無作為比較対照研究による予防事業の介入前,介入中,介入後での医療費とその変化を比較し,介入による医療費への影響を明らかにすることを目的とした。 方法 対象者を目標達成型プログラム介入A群,従来型プログラム介入B群の2群に無作為抽出法により割付け,2群間および両群合わせた全体で,介入前々年,前年,介入年の介入前中後の3期間における平均入院外医療費(歯科は除く)についてウィルコクソン符号付順位検定により比較を行った。 なお,医療費は年齢に比例して高くなるため,医療費変化を介入前中後で比較し,増加抑制効果をみることで年齢による影響を考慮した。 群間差の比較は,ウィルコクソン順位和検定を行った。 介入中期間においては,傷病マグニチュード按分法(PDM法)ver. 3を用いて,傷病別にも同様の解析を行った。 さらに,複数・多・重複受診件数およびこれら受診件数の変化についても同様の解析を行った。 結果 介入中期間の平均入院外医療費は,両群および全体において平成14年度と比べて15年度には有意に増加,平成15年度と比べて16年度には,有意差はないが減少傾向がみられた。 医療費変化では,介入中期間の全体においてのみ有意な増加抑制が認められた。 有意な増加抑制は他の期間ではどの群においても認められなかった。 介入中期間における傷病別分析では,両群および全体で有意な入院外医療費減少と増加抑制が認められた傷病に重症な傷病は含まれていなかった。 結論 両群および全体において重症でない疾患の有意な平均入院外医療費減少と増加抑制につながり,複数受診件数も介入A群と全体において有意な増加抑制が認められた。 しかしながら,4カ月間の介入では,有意差をもって平均入院外医療費減少は示せず,介入中期間では全体における増加抑制効果は有意差をもって示せたもののプログラムA,B間の差を有意に示すに至らなかった。 生活習慣病におけるこれらの効果を明らかにするためには,無作為比較対照試験での長期間の追跡が必要であると考えられる。 方法 調査対象者は,A県で要介護高齢者を居宅で介護する家族介護者2,262名であった。 そして「介護に関する話し合いや勉強会」9項目(栄養,介護の仕方,介護保険,認知症の方との関わり方,認知症の知識,介護サービス,医療サービス,身体的な健康管理,介護予防教室のような集まり)の参加の有無(経験群,未経験群),未経験群の参加への意思(経験希望群,無関心群),家族介護者の主観的QOL尺度,要介護高齢者の認知障害の程度を把握するための日本語版SMQ等を調査した。 結果 1,462名の調査票が回収され(回収率64. 6%),調査項目に未回答のあった671名と日本語版SMQにおいて非認知症と評価された55名を除いた736名の認知症高齢者の家族介護者を分析対象とした。 介護に関する話し合いや勉強会の参加状況は,経験群で10. 7~23. 9%,未経験群のうち無関心群は40. 4~54. 4%,経験希望群は31. 1~45. 5%と参加経験者の割合が低かった。 介護に関する話し合いや勉強会9項目の参加状況および参加に対する意思を独立変数,主観的QOL尺度総得点を従属変数,主観的QOLと相関係数において有意であった家族介護者の年齢,家族介護者の健康状態,日本語版SMQを統制変数として共分散分析を行った結果,全項目において有意差が認められ,多重比較の結果から,特に認知症の方との関わり方,認知症の知識,介護の仕方の項目において,無関心群は経験群に比べて主観的QOLが低いことが示唆された。 結論 特に無関心群の家族介護者が,認知症高齢者の介護をひとりで抱え込まず,認知症の疾患や関わり方の知識を得る場,家族介護者同士の交流の場など介護に関する話し合いや勉強会に参加意欲や意思をもち,積極的に参加していくとともに,主観的QOLを高めていくこと,そのための効果的な開催方法を考案することが課題として考えられた。 キーワード 認知症高齢者,介護に関する話し合いや勉強会,家族介護者,主観的QOL 第54巻第4号 2007年4月 母親の育児関連Daily Hasslesと児に対するマルトリートメントの関連 唐 軼斐(ト ウジヒ) 矢嶋 裕樹(ヤジマ ユウキ) 中嶋 和夫(ナカジマ カズオ) 目的 母親の育児に関連したDaily Hassles(DH)の経験頻度およびストレス強度を明らかにし,Hillsonらのモデルに基づき,育児関連DHの経験頻度およびストレス強度と,虐待やネグレクトといったマルトリートメント(不適切な関わり)との関連を検討することを目的とした。 方法 2004年11月現在,S県S市内の協力の得られた保育所16カ所を利用していたすべての母親1,700人を対象に,無記名自記式による質問紙調査を実施した。 育児関連DHの測定には,Parenting Daily Hassles Scale(PDH)を日本語訳して使用した。 母親の児に対するマルトリートメントは,母親の子どもに対するマルトリートメント傾向指標を用いて測定した。 統計解析には構造方程式モデリング(Structural Equation Modeling: SEM)を使用し,育児関連DHの経験頻度が,それら育児関連DHのストレス強度を介して,児に対するマルトリートメントの実施頻度に影響を与えるといったモデルを構築し,そのモデルのデータに対する適合度と各変数間の関連を検討した。 結果 育児関連DHの経験率をみると,ほとんどの項目において8割以上の母親が経験していた。 また,育児関連DHに対するストレス強度得点も,米国の母親を対象とした先行研究とおおむね一致していた。 SEMの結果,育児関連DHの下位領域「育児タスク」の経験頻度が高い者ほど,ストレスを強く感じ,心理的虐待およびネグレクトの発生頻度が高かった。 また,育児関連DHの下位領域「挑戦すべき児の行動」の経験頻度が高い者ほど,ストレスを強く感じ,身体的虐待と心理的虐待の発生頻度が高かったことが明らかとなった。 考察 育児タスクが心理的虐待やネグレクトを促進していたことから,育児ストレス軽減のために,育児の代行機能を有する託児サービスの重要性が示唆された。 また,児の挑戦すべき行動が身体的虐待と心理的虐待と関連していたことから,母親が児の挑戦すべき行動に適切に対応できるように,地域育児教室や両親教室等の機会を利用して,児の発育や発達に関する情報提供や児の挑戦的な行動に対する母親の受容的な態度の養成を促す必要性が示唆された。 キーワード 児童虐待,ストレス,母親,育児 第54巻第4号 2007年4月 脳卒中患者における自宅退院の時代変遷に関する研究 -富山県脳卒中情報システム事業より- 須永 恭子(スナガ キョウコ) 成瀬 優知(ナルセ ユウチ) 遠藤 俊朗(エンドウ シュンロウ) 野村 忠雄(ノムラ タダオ) 野原 哲夫(ノハラ テツオ) 福田 孜(フクダ ツトム) 垣内 孝子(カキウチ タカコ) 木谷 隆一(キタニ リュウイチ) 飯田 博行(イイダ ヒロユキ) 瀬尾 迪夫(セオ ミチオ) 目的 入院患者数増と高齢化が進む脳卒中患者の自宅退院には,社会的支援が必要な場合が多く,在宅療養サービス利用の増加が予測される。 そこで,富山県脳卒中ケアシステム事業登録者の自宅退院割合と富山県の在宅療養支援サービスの充足・利用状況を把握し,社会的支援の影響下,脳卒中患者の自宅退院の動向を考察した。 方法 富山県脳卒中情報システム事業の登録者のうち,発症年が平成3年7月から平成15年12月で,退院時死亡と退院先未定を除いた14,952名を抽出した。 そのうち,30歳以上の14,040名と55歳以上の12,160名を分析の対象とした。 分析には,登録情報のうち,「退院先・年齢・発症年・自力による行動範囲・認知症状の有無」を使用した。 自宅退院の概況として30歳以上の性別・年齢別・発症年次(時代)別の各々について自宅退院割合を,自宅退院の時代変遷として,1991~1993年を基準に年齢調整自宅退院比と時代以外の影響を調整した自宅退院のオッズ比を求めた。 結果 退院先の割合は,自宅退院が最も高く69. 9%で,次いで転院,その他の順だった。 年齢別,時代別の動向では,男女ともに高齢と時代推移に伴い自宅退院割合はおおむね減少していた。 1991~1993年を基準とした時代別年齢調整自宅退院比では,男性の1994~1995年のみ1を越え,それ以外では男女ともに1未満であった。 自宅退院のオッズ比について,1991~1993年に対する各時代群の結果は,すべて1以下で,時代推移に伴い低下していたが,介護保険開始年の2000~2001年では,その低下の傾きがやや緩やかになっていた。 医療・福祉制度改正を考慮し,介護保険開始以降,各施設数・利用者数の推移を社会的支援の時代変遷として確認した。 富山県の療養型病床群の病床数・新患者数は経年的に増加し,平成12~15年の病床利用率は90%台であった。 また,介護老人福祉施設,介護老人保健施設の利用者数増加率は全国より高く,介護老人福祉施設の方が高かった。 結論 自宅退院割合の時代推移に伴う低下が明らかになった。 この低下を介護保険開始以降の在宅療養サービスにおける各施設数・利用状況から検討した結果,介護老人福祉施設・療養型病床群の施設充実とその利用が進む中,脳卒中患者は退院先の幅を広げ,自宅退院以外を選択していることが考えられた。 キーワード 脳卒中,自宅退院,脳卒中情報システム事業,介護保険 第54巻第5号 2007年5月 健診実施の適正間隔に関する検討 須賀 万智(スカマチ) 吉田 勝美(ヨシダカツミ) 目的 定期健診を効率的かつ効果的なものにするために,健診の内容(項目)を見直す動きがあるが,健診実施の適正間隔に関する検討もまた必要である。 本研究では,健診実施の適正間隔について,某事務系事業所の定期健診データベースを用いて,異常所見のない状態が連続している者における健診実施の省略の可否を検討した。 結果 A の1年後有所見率と2年間累積有所見率の比較について,男性は5項目すべてで有意差を認めた。 女性は高血糖について3年連続異常所見のない45~59歳群と2年連続異常所見のない肥満なし群,高中性脂肪について2年連続異常所見のない45~59歳群と3年連続異常所見のない肥満あり群,高尿酸について2年連続異常所見のない者のすべての群で有意差を認めず,それ以外については有意差を認めた。 B の2年間累積有所見率と2年後有所見率の比較について,男性は5項目すべてで有意差を認めた。 女性は高血糖について2年連続異常所見のない者の30~44歳群を除いたすべての群と3年連続異常所見のない者のすべての群,高コレステロールと高中性脂肪について3年連続異常所見のない45~59歳群,高尿酸について2年連続異常所見のない者および3年連続異常所見のない者のすべての群で有意差を認めず,それ以外については有意差を認めた。 結論 血圧,空腹時血糖,総コレステロール,中性脂肪,尿酸の5項目のうち,尿酸は2年連続異常所見がない女性において翌年の検査を省略しうるが,それ以外は少なくとも年1回検査することを原則にすべきと考えられた。 キーワード 定期健診,検査間隔,生活習慣病予防 第54巻第5号 2007年5月 介護予防施策における対象者抽出の課題 -特定高齢者と要支援高齢者の階層的な関係の検証- 石橋 智昭(イシバシトモアキ) 池上 直己(イケガミナオキ) 目的 厚生労働省によって新たに提示された介護予防施策では,「一般高齢者」「特定高齢者」「要支援高齢者」「要介護高齢者」の4つの階層を用意し,対象と給付の関係を明確化した。 しかし対象者の選定には『基本チェックリスト』と『要介護認定方式』が並行的に運用され,そこから抽出される「特定高齢者」と「要支援高齢者」の境界や階層性の関係は,いまだに明らかにされていない。 本研究では,「要支援高齢者」の候補者である旧要支援,旧要介護1の認定者に対して,『基本チェックリスト』により試行的に判定し,「特定高齢者」と「要支援高齢者」との間の階層的な関係について検証を行った。 方法 対象は,東京都A市において旧要支援,旧要介護1の認定を受けた者のうち,介護保険以外の生活支援型サービスを利用している在宅高齢者767名である。 調査は,2006年2月に自記式の郵送調査によって実施し,回収率は92. 3%であった。 調査内容は,厚生労働省の『基本チェックリスト』およびIADL(手段的日常生活動作)5項目の遂行能力を問う項目を用いた。 本研究では,すべての調査項目に回答した456名(旧要支援:107名,旧要介護1:349名)を分析対象とした。 結果 旧要支援,旧要介護1の認定者に『基本チェックリスト』による判定を試行した結果,特定高齢者に選定されたのは,旧要支援では33. 6%,旧要介護1では57. 8%となり,「要支援高齢者」であるにもかかわらず「特定高齢者」には選定されないケース,つまり施策の想定とは逆の階層関係となるケースが,約半数に出現することが明らかとなった。 次にIADL5項目による自立者の割合を確認した結果,旧要支援,旧要介護1認定者の54. 8%がすべてのIADL項目が自立していた。 これに対して,IADLが非自立であった者の4分の1に当たる25. 7%が特定高齢者に選定されなかった。 結論 2つの異なる基準から抽出された特定高齢者と要支援高齢者の間には,階層関係が逆転しているケースが約半数にみられ,両者を階層的に位置づけるのは困難であることが明らかとなった。 その要因の1つは,新たに開発された基本チェックリストが,要介護認定との階層的な関係を十分に考慮せずに作成されたことにある。 もう1つは,要介護認定方式が,IADLの能力を適切にスクリーニングできず,自立(非該当)との境界が曖昧になっている点が示唆された。 今後,介護予防施策を一貫したシステムとして構築するためには,介護予防施策の対象者の統合も含めて,基本チェックリストと要介護認定方式の抜本的な見直しが不可欠である。 キーワード 介護予防,要介護認定方式,基本チェックリスト,給付区分,特定高齢者 第54巻第5号 2007年5月 がん検診受診行動に関する市民意識調査 川上 ちひろ(カワカミ) 岡本 直幸(オカモトナオユキ) 大重 賢治(オオシゲケンジ) 杤久保 修(トチクボオサム) 目的 日本が世界一の長寿国であることはすでに周知の事実であるが,この長寿による人口の高齢化に伴い死亡原因も大きく変化し,昭和56年以降,死因の第1位はがんである。 がん対策は高齢化社会での重要な保健政策課題であり,なかでも,がん検診の受診率を向上させることは早期発見・早期治療を行う上で非常に重要になってきている。 本研究では,がん検診の受診行動に影響を与える要因について質問票による調査を実施し分析を行った。 方法 横浜市在住の40~69歳の男女3,000人を対象に無記名自記式による質問票調査を行った。 調査実施期間は平成18年2~3月であり,この間に調査票の配布,回収を行った。 本研究では40歳代の回答率が30%に届かなかったため,50・60歳代の回答について分析を行った。 50・60歳代への質問票送付は2,000通で,21通があて先不明等にて返送,611人より回答を得た(回答率30. 9%)。 主な調査項目は,1 がん検診の受診経験,2 病気の予防に対する責任,3 病気の予防に支払える金額,4 がん検診を受診する際の受診行動に影響を与える因子(コンジョイント分析)である。 本調査では,検診場所,自己負担額,検診の所要時間,検診の信頼性を受診行動に影響を与える因子として設定し分析した。 結果 1 がん検診の受診経験は,年1回受診(35. 8%),数年に1回受診(30. 3%),受診経験なし(33. 2%)であった。 2 病気の予防に対する責任について,責任者を個人・行政(市町村)・国の3者に分け,全体で100%になるように回答を求めた。 個人の責任が50%と回答した人が24. 5%と最も多く,次いで60~70%と回答した人が21. 3%だった。 3 世帯全体で1年間に病気の予防に支払える金額を尋ねた結果,1万円以上5万円未満との回答が,最も多く43. 7%であった。 4 仮想状況でのがん検診受診希望を質問した結果,がん検診の受診行動に影響を与える因子は検診にかかる時間と費用であった。 結論 病気の予防は個人の責任で行うべきとの回答者が多い反面,がん検診に費用や時間をかけることができないという回答が多かった。 このことを踏まえ,住民にとって受診行動を起こしやすくなるような検診システムを構築し受診率を向上させることが,早期発見・早期治療のための課題のひとつであると考えられる。 キーワード がん検診,受診率,質問票調査,受診行動,コンジョイント分析 第54巻第5号 2007年5月 保健医療福祉分野における地方自治体の施策の目標と指標 橋本 修二(ハシモトシュウジ) 逢見 憲一(オオミケンイチ) 曽根 智史(ソネトモフミ) 遠藤 弘良(エンドウヒロヨシ) 浅沼 一成(アサヌマカズナリ) 中嶋 潤(ナカジマジュン) 浜田 淳(ハマダジュン) 三觜 文雄(ミツハシフミオ) 藤崎 清道(フジサキキヨミチ) 目的 保健医療福祉分野において地方自治体の施策の推進上,その目指す目標と実施状況について,複数の地方自治体を広域的な視点から比較することが重要と考えられる。 ここでは,地方自治体の施策が目指す目標およびその実施状況を表す指標について,選定の基本的考え方を定めるとともに,具体案の作成を試みた。 方法 複数の専門家が議論を重ね,全員の合意によって選定の基本的考え方を定めた。 その基本的考え方に従って,保健医療福祉のあるべき姿や地域差の状況などを考慮しつつ,同様の進め方により具体案を作成した。 結果 基本的考え方において,選定のねらいは保健医療福祉分野における地方自治体による施策の実施状況を把握し,今後の施策の推進に資することと定めた。 目標の選定では地域住民の視点に基づくこと,基本的目標,目標,具体的目標の層的構造とした。 指標の選定では具体的目標に対応すること,結果指標,中間指標,取り組み指標の層的構造とした。 結果指標は具体的目標の達成状況を,取り組み指標は施策の投入した量と質を,中間指標はその中間段階の進捗状況を表すものとした。 具体案において,基本的目標は「健康で安心して暮らせる地域社会」「生きがいと尊厳をもって暮らせる地域社会」「安心して子育てできる地域社会」の3つとした。 基本的目標ごとに3つの目標,目標ごとに1~4の具体的目標とした。 具体的目標ごとに,1~4の結果指標,0~5の中間指標,1~5の取り組み指標を定めるとともに,評価・留意点を示した。 結論 目標と指標の選定の基本的考え方と具体案を提示した。 今後,実際の使用に向けて様々な面から検討を重ねることが重要であろう。 キーワード 指標,施策,保健医療福祉,地方自治体 第54巻第5号 2007年5月 質問紙健康調査票THIに対する新総合尺度の特性と有効性 浅野 弘明(アサノヒロアキ) 竹内 一夫(タケウチカズオ) 笹澤 吉明(ササザワヨシアキ) 大谷 哲也(オオタニテツヤ) 小山 洋(コヤマヒロシ) 鈴木 庄亮(スズキショウスケ) 目的 質問紙健康調査票THI(Total Health Index)は,妥当性や信頼性の検討が数多くなされ,様々な疫学調査で応用されるとともに,職場・地域・学校における健康増進活動にも利用されてきた。 THI調査に対するパソコン支援システムの開発を契機に,基準集団を見直し新基準集団を設定するとともに,従来の尺度に主成分分析を適用し構築した新総合尺度の利用を開始した。 その後の調査で新総合尺度の有効性が確認できたので,死亡傾向との関連性も含め報告する。 方法 2003年に設定した新基準集団のデータを用い,「多愁訴,呼吸器,目と皮膚,口と肛門,消化器,直情径行,虚構性,情緒不安定,抑うつ,攻撃性,神経質,生活不規則」の12尺度に対し主成分分析を適用し,T1,T2の2主成分を導出した。 必要な統計処理を行い,特徴を抽出するとともにその有効性を検証した。 また,7年後の死亡・転出データに対しCoxの比例ハザードモデルを適用し,T1,T2と死亡傾向の関連性についても検討した。 結果 第1主成分T1は,全尺度の変動をよく吸収していた。 特に,T1が5ptl(パーセンタイル値)未満あるいは95ptl以上の場合,12尺度の個人変動はほぼ平均的パターンに限定され,健康状態を総合的に判定する指標として好ましい性質を持つことが確認された。 さらに,死亡傾向とも統計的に有意な関連性が認められ,T1が中央値から95ptlまで上昇する(健康状態が悪くなる)と死亡リスクが1. 4倍になることが判明した。 これに対してT2は,1尺度並の情報しか有しておらず,さらに,死亡との関連も明確ではなかったが,心と体の健康バランスを示しており,T1を補足する指標として活用できることが示唆された。 考察・まとめ パソコンを利用した支援システム「THIプラス」の開発を契機に,アドバイスシートの返却を開始した。 その過程で,12尺度+3傾向値を要約する総合尺度が必要となった。 今回構築したT1は,総合尺度としてふさわしい性質を持つばかりでなく,身体表現性障害とも密接に関連しており,意義深い尺度になっていることが確認された。 また,T2は従来の尺度・傾向値にはない特徴を有しており,これらと併用できることが示唆された。 今回の知見を活用し,個人の心の健康対策や生活習慣病の予防に役立つ,より有効なアドバイスシステムを構築していきたいと考えている。 キーワード THI,質問紙健康調査票,総合尺度,死亡リスク 第54巻第4号 2007年4月 基準病床数制度による病床数への影響に関する研究 -入院需要量の変化に対する病床数の変化について- 溝口 達弘(ミゾグチ タツヒロ) 堀口 逸子(ホリグチ イツコ) 丸井 英二(マルイ エイジ) 目的 基準病床数制度が,病床数の増減に与えた影響を明らかにし,また,もし仮に,現状で基準病床数制度を廃止した場合に,どの程度病床が増床するのか検討することを目的とした。 方法 対象は,病床の種別にかかわらず病院における全病床および全入院患者とした。 病床供給の検討は,入院需要量の変化を考慮した上で行うこととし,入院需要量の変化として,予想される入院患者数の年次推移を推計し用いることとした。 推計は昭和59年,昭和62年,平成2年,平成5年,平成8年の5つの時点を基準として行った。 推計された5つの入院患者数の年次推移を,それぞれ基準とした時点のモデルと呼ぶこととし,各モデルの比較検討,実際の人口との関連および実際の病床数との比較,基準病床数制度導入前のモデルから求めた平成16年の病床数と実際の病床数との比較を行った。 結果 5つのモデルは,いずれも年々増加する結果となった。 平成16年時点において比較すると,多い方から,昭和62年モデル,平成2年モデル,昭和59年モデル,平成5年モデル,平成8年モデルの順であった。 いずれのモデルにおいても,総人口との相関が強く,それ以上に65歳以上人口との相関が強かった。 65歳未満人口とは負の相関が強かった。 基準病床数制度導入前のモデルから算出された病床数と実際の平成16年の病床数との差は,53~62万床であった。 結論 必要病床数制度が制定されて以降現在に至るまで,入院需要は高齢化による影響で常に増加傾向にあり,介入等何らかの要因がない限り,病床数も増加しようとする傾向があったと考えられた。 必要病床数制度導入以降,予想される入院需要の増加を上回る病床数の増加が一時的にあったものの,平成5年以降は,入院需要の増加に対して病床数は減少し,昭和59年時点と比べて限定された入院需要にしか対応できていないことが示唆された。 また,基準病床数制度を撤廃すると,平成16年現在で,約50万床以上増床する可能性があることが示唆された。 キーワード 医療計画,病床規制,基準病床数,必要病床数,入院需要 第54巻第6号 2007年6月 健康危機管理事件発生時のリスクコミュニケーションにおける 公的情報および報道内容の格差に関する研究 今村 知明(イマムラ トモアキ) 下田 智久(シモダ トモヒサ) 小田 清一(オダ セイイチ) 目的 過去の食品災禍事件における公的情報提供(文字情報)と報道内容の間に発生した情報格差を把握するとともに,その発生原因を分析することで,良好なリスクコミュニケーションの実施に資する。 方法 O157事件,BSE事件において,関係行政機関が提供した文字情報と国内主要紙の報道内容を比較し,格差の有無の確認,発生状況を把握・分析し,この原因について考察した。 結果 O157事件では,厚生省(当時)が中間報告したO157の感染源に関する調査結果について報告書の中で感染源の特定を否定したが,報道の中には「感染源が特定した」との印象を与えるものもあった。 BSE事件では,スクリーニング検査陽性(確定検査では陰性)の検体の発生に関する情報提供について,「偽陽性」と「疑陽性」を混同した報道も散見された。 結論 公的情報提供と報道内容の格差は,「事実の捉え方の相違」や「報道機関の表現方法の選択」により発生するものと推測される。 これらに起因する情報格差の発生を抑止するためには,関係行政機関が報道関係者と日頃からコミュニケーションを図るとともに,正確な情報伝達や発信情報の一元化を行うための体制の確立が必要である。 キーワード 大規模健康被害,健康危機管理,リスクコミュニケーション,報道 第54巻第6号 2007年6月 無職世帯における乳児死亡・周産期死亡・死産 西 基(ニシ モトイ) 三宅 浩次(ミヤケ ヒロツグ) 目的 わが国の無職世帯における乳児死亡・周産期死亡・自然死産・人工死産の特徴を検討する。 方法 1995年から2004年までの10年間の乳児死亡・周産期死亡・自然死産・人工死産につき,人口動態統計の世帯主の職業別の統計資料を基に,無職世帯に着目して分析した。 結果 「勤労者2の世帯」が,これらの指標すべてで最低(最良)の値を示したのに対し,無職世帯はすべてで最高(最悪)の値を示し,かつそれらの値は突出して高かった。 10年間の通算で,無職世帯の乳児死亡率は「すべての世帯」の4. 2倍,周産期死亡率は2. 3倍,自然死産率は2. 6倍,人工死産率は8. 4倍にのぼった。 無職世帯のこれらの率が「すべての世帯」と同等であったと仮定すると,今回の10年間で2,300人余りの乳児死亡,1,700件余りの周産期死亡,5,500件余りの自然死産,34,000件余りの人工死産が,それぞれ減少傾向はうかがえるものの,過剰に存在したと推測された。 母年齢階級別の検討では,若年における人工死産が多いことが目立った。 結論 世帯の収入が少ないことが,そうでなければ普通に出生・成長したであろう生命を喪失させる原因の1つと考えられ,無職世帯に対する経済的援助は,わが国の少子化を抑制する手段として有効であると思われた。 キーワード 無職,人口動態統計,乳児死亡,周産期死亡,死産 第54巻第6号 2007年6月 日本語版「ソーシャル・サポート尺度」の信頼性ならびに妥当性 -中高年者を対象とした検討- 岩佐 一(イワサ ハジメ) 権藤 恭之(ゴンドウ ヤスユキ) 増井 幸恵(マスイ ユキエ) 稲垣 宏樹(イナガキ ヒロキ) 河合 千恵子(カワアイ チエコ) 大塚 理加(オオツカ リカ) 小川 まどか(オガワ マドカ) 髙山 緑(タカヤマ ミドリ) 藺牟田 洋美(イムタ ヒロミ) 鈴木 隆雄(スズキ タカオ) 目的 本研究は,Zimet GDらが開発した「ソーシャル・サポート尺度」(Multidimensional Scale of Perceived Social Support)の日本語版を作成し,中高年者を対象として信頼性ならびに妥当性の検討,短縮版尺度の作成を行うことを目的とした。 方法 58~83歳の中高年者1,891人(男性760人,女性1,131人)を分析の対象とした。 ソーシャル・サポート尺度は12項目から成り,回答は7件法(1:「全くそう思わない」~7:「非常にそう思う」)で求め,ソーシャル・サポート尺度全体ならびに下位尺度ごとに平均値を算出し得点化した。 得点が高いほどソーシャル・サポートが高いことを意味する。 その他,居住形態,婚姻状況,親友の人数,親子関係満足度,夫婦関係満足度,General Health Questionnaire 28項目版(GHQ)を測定し分析に用いた。 結果 ソーシャル・サポート尺度の因子分析を行ったところ,原版と同様の3因子構造(「家族のサポート」「大切な人のサポート」「友人のサポート」)が確認された。 91,0. 94,0. 88,0. 90であり,十分な信頼性を有していることが示された。 ソーシャル・サポート尺度ならびに3つの下位尺度と居住形態,婚姻状況,親友の人数,親子関係満足度,夫婦関係満足度,GHQ間には関連が認められ,上記要因を外部基準とした場合の妥当性を有していることが示された。 また,7項目から成る「ソーシャル・サポート尺度短縮版」は,ソーシャル・サポート尺度12項目版と高い正の相関関係にあり,得点分布形状,性差ならびに年齢差は12項目版と同様の傾向を示し,信頼性ならびに妥当性を有していることが示された。 結論 ソーシャル・サポート尺度日本語版ならびに同短縮版は信頼性ならびに妥当性を備え,中高年者におけるソーシャル・サポートの測定指標として有用であることが考えられる。 キーワード ソーシャル・サポート尺度,中高年者,信頼性,妥当性,横断調査 第54巻第6号 2007年6月 幼児期における子育ち環境が学童期の子どもの心身の健康に及ぼす影響 安梅 勅江(アンメ トキエ) 篠原 亮次(シノハラ リョウジ) 杉澤 悠圭(スギサワ ユウカ) 丸山 昭子(マルヤマ アキコ) 田中 裕(タナカ ヒロシ) 酒井 初恵(サカイ ハツエ) 宮崎 勝宣(ミヤザキ カツノブ) 小林 昭雄(コバヤシ アキオ) 宮本 由加里(ミヤモト ユカリ) 天久 真吾(アマヒ サシンゴ) 埋橋 玲子(ウズハシ レイコ) 目的 本研究は,幼児期の子育ち環境が学童期の子どもの心身の健康にどのような影響を及ぼすのか実証的な根拠を得ることを目的とした。 方法 対象は,2005年に全国19カ所の保育園の卒園児調査に参加した134名であり,2002~2004年にその保育園に在籍した際,保育園児調査に参加した者131名を対象とした。 学童期の心身の健康に,幼児期に把握した保育専門職の評価に基づく発達状況,気になる行動,保育時間,保護者の回答に基づく育児評価,子どもと家族の属性が及ぼす影響を多重ロジスティック回帰分析により明らかにした。 結果 幼児期に「家庭で歌を歌う機会等に乏しい」場合,機会のある場合に比較して,学童期に「いらいらする」12. 20倍,「不機嫌で怒りっぽい」15. 69倍多くなっていた。 幼児期に「同世代の子どもを訪問する機会に乏しい」場合,機会がある場合に比較して,学童期に「疲れやすい」4. 83倍,幼児期に「育児支援者がいない」場合,いる場合と比較して,学童期に「疲れやすい」が5. 65倍,幼児期に「育児相談者がいない」場合,いる場合と比較して,学童期に「あまり頑張れない」が44. 05倍,幼児期に「配偶者の子育て協力が得られない」場合に,得られる場合と比較して,学童期に「勉強が手につかない」が33. 54倍,幼児期に「保護者の育児への自信がない」場合に,ある場合と比較して,学童期に「誰かに怒りをぶつけたい」が7. 03倍,多くなっていた。 考察 学童期の子どもの心身の健康と,幼児期の家庭における適切なかかわりや保護者へのサポートの関連性が示され,子どもと保護者を対象にした子育て支援の重要性が示唆された。 キーワード 学童,子育ち環境,コホート研究,子育て支援 第54巻第6号 2007年6月 健康保険組合被保険者の医療受診における所得効果 川添 希(カワゾエノゾミ) 馬場園 明(ババゾノアキラ) 目的 医療アクセスが良いことで高い評価を得てきたわが国の医療制度において,医療費の抑制を目的とした患者自己負担の引き上げが行われてきている。 公正な医療アクセスを保障することは国民皆保険制度において重要な課題であることから,医療受診における所得効果を検証することが重要である。 平成14年度末の健康保険組合のデータを用いて,被保険者本人,家族,幼児について,入院,外来,歯科別の受診行動への所得効果に影響を与える指標を明らかにすることを目的として本研究を行った。 方法 被保険者本人,家族,幼児について,入院,外来,歯科別の受診率,1件当たり診療日数,1人当たり医療費を受診の指標として用いた。 健康保険組合において受診に影響を与える組合特性としては,被保険者数,扶養率(扶養者数/被保険者数),老人加入率(老人加入者数/全加入者数),平均標準報酬月額,被保険者の平均年齢,性比(男性の被保険者数/女性の被保険者数)を選択した。 受診指標を目的変数,組合特性を説明変数とし,強制投入法で重回帰分析を行った。 影響は標準偏回帰係数によって定量化し,モデルは決定係数で検証した。 統計解析には,SPSSのPC版(13. 0J)を用いた。 結果 入院の受診指標については,被保険者本人,家族,幼児ともに平均標準報酬月額や扶養率との明らかな関連は認められなかった。 外来と歯科の受診率については,平均標準報酬月額と正の相関,扶養率と負の相関,外来と歯科の診療日数については,平均標準報酬月額と負の相関が認められた。 幼児の受診指標については,平均標準報酬月額との関連は認められなかった。 結論 外来や歯科受診において,所得が低ければ受診率が低くなり,受診日数が長くなる傾向が認められた。 これは,自己負担が一層重くなった場合,低所得者の医療アクセスを確保しなければ,必要な受診が控えられる可能性があることを示唆している。 また,生活習慣病など自覚症状に乏しい疾患では,自己負担が重くなると受診が抑制されることが予想され,予防事業などを充実させていくことが必要であると考えられる。 キーワード 受診指標,健康保険,強制加入,定率負担,高額療養費制度,所得効果 第54巻第6号 2007年6月 メタボリック・シンドロームからみた生活習慣病対策の重要性 鈴木 賢二(スズキ ケンジ) 石塚 範雄(イシヅ カノリオ) 枡田 喜文(マスダ ヨシフミ) 富所 直美(トミドコロ ナオミ) 森 誠(モリ マコト) 荒井 親雄(アライ チカオ) 柏倉 義弘(カシワクラ ヨシヒロ) 目的 メタボリックシンドロームを対象とした生活習慣病予防対策の重要性を検討し,当該対策を実現するための具体的な方法を考察する。 結果 1 いずれか1個保有群,2個集積群,3個以上集積群とも,1995~2004年度において増加傾向を示した。 2 心電図虚血性変化は,健常群に対して男性の3個集積群で8. 2~14. 5倍,4個集積群で10. 6~31. 7倍,眼底動脈硬化性変化は3個集積群で男性10. 0~56. 0倍,女性0~54. 2倍,4個集積群では男性24. 0~106. 8倍,女性0~83. 9倍のリスクを示した。 3 各集積パターンにおける心電図虚血性変化,眼底動脈硬化性変化の出現率は,男女とも全年齢層で集積数が多くなるに伴い高頻度となった。 考察 1 各病態の程度が軽くてもその集積が単独より危険度を増し,冠動脈硬化・眼底動脈硬化を合併しやすく,脳心血管疾患発症の基盤として重要となる。 2 メタボリックシンドロームの予備群を抽出するための健診は各制度とも受診率が低く,健診会場に出向かなければ受けられない従来の健診では受診率アップに限界がある。 キーワード メタボリックシンドローム,動脈硬化性所見,生活習慣病予防対策,健診受診率 第54巻第6号 2007年6月 小中学校における子ども虐待対応構造に関する考察 -子ども虐待に関する知識の組織内配分と意思決定手続きに注目して- 澁谷 昌史(シブヤマサシ) 目的 本研究は,公立小中学校において虐待対応に不可欠な法制度上の知識がどのように共有され,またどのように対応が進められているのかに焦点を当てながら,その虐待対応構造にかかる現状把握および提言を行うものである。 方法 全国の公立小中学校から5%の無作為抽出を行い(小学校1,158カ所,中学校515カ所),学校単位で回答する「基本調査票」「事例調査票」,教職員個人が回答する「意識調査票」の3種類の調査票を郵送法にて配布・回収した。 調査期間は平成17年6月24日より同年7月末日とした。 結果 小学校1,013カ所,中学校439カ所から回答があった(回収率はそれぞれ87. 5%,85. 2%)。 意識調査に回答した教職員は,小中学校あわせて17,056名であった。 主たる結果から,校長や教頭が虐待対応の知識を比較的多く所有する傾向にあり,同時に校内における虐待対応方針決定の鍵を握っているものと考えられた(ただし,中学校の場合は生徒指導主事が意思決定の要となっている場合も多かった)。 また,校内チーム体制と専門的知識の不足が,学校としての対応に不安定性をもたらしている可能性が示唆された。 結論 すべての教職員に対して研修機会を保障することで虐待対応の基本事項を周知するとともに,チーム体制整備の周知徹底や,虐待対応にかかる専門家派遣制度の創設など,小中学校における虐待対応構造に安定性をもたらす要素を加えていく必要があると提言した。 キーワード 子ども虐待,対応構造,小中学校 第54巻第7号 2007年7月 都道府県介護支援専門員相談窓口の運営実態および医師・弁護士による関与 吉江 悟(ヨシエ サトル) 目的 全国の都道府県に設置されている介護支援専門員向け相談窓口の運営状況や医師・弁護士による関与状況についての実態把握を行い,より効果的・効率的な相談窓口のあり方を検討することを行うことを目的とした。 方法 2005年1~2月に,都道府県ケアマネジメントリーダー活動等支援事業による相談窓口を開設している機関の相談員47名(各県1名)を対象として郵送質問紙調査を実施し,36名から回答を得た。 結果 36都道府県中,29都道府県(81%)で介護支援専門員相談窓口が設置されていた。 開設頻度や相談員の人数等,窓口の運営状況は多様であった。 相談内容については,個人情報を記録に残している場合が半数以上であり,相談への対応方法の中で,少数ではあるが相談員が直接利用者・家族へ連絡するという対応も取られていた。 専門職の関与状況については,医師・弁護士・臨床心理士といった介護以外の領域の専門職が関与している都道府県が少数ながらみられた。 また,医師や弁護士の関与に対しては,回答者の6割以上がその必要性を感じており,既に医師・弁護士が関与している都道府県においては,その割合はより高かった。 結論 本研究により,全国における都道府県介護支援専門員相談窓口の多様な実態が明らかになったが,個人情報に関しては,基本的には相談の匿名性が確保された範囲で窓口を運営するのが望ましい。 また,回答者の過半数が医師・弁護士の関与を望んでいた。 関与の仕方については,導入としては相談員に助言をするという間接的な関わりで十分だと考えられるが,弁護士や臨床心理士については,相談者への助言や面接等の直接的関与が有効である可能性がある。 キーワード 介護支援専門員,ケアマネジメント,相談窓口,医師,弁護士 第54巻第7号 2007年7月 保健医療福祉統計に基づく高齢者の平均自立期間の推移 加藤 昌弘(カトウ マサヒロ) 川戸 美由紀(カワド ミユキ) 橋本 修二(ハシモト シュウジ) 林 正幸(ハヤシ マサユキ) 中村 好一(ナカムラ ヨシカズ) 目的 保健医療福祉統計に基づく要介護者割合を用いて,1995年の高齢者の平均自立期間が橋本・宮下らにより算定(以下,旧法)されたが,それ以後は調査内容の変更に伴って,同一の定義による要介護者割合を求められない。 本研究では,いくつかの異なる定義による要介護者割合を用いて,1995年から2001年の平均自立期間の推移を検討した。 方法 資料は1995年・1998・2001の複数の統計から得た。 7通りの要介護者割合を用いて旧法と同じ方法で,平均自立期間を都道府県別に算定した。 9年であり,女でも同様にそれぞれが18. 4年と16. 9年であった。 87,女で0. 76であった。 8年と女が0. 6年であった。 65歳時平均余命に占める平均自立期間の割合には上昇傾向が認められなかった。 結論 要介護の定義には問題があるものの,平均自立期間は1995年から2001年の間で延長していることが示唆された。 今後,平均自立期間は介護保険の要介護度に基づいて算定することが考えられる。 キーワード 健康指標,健康寿命,平均自立期間,保健統計 第54巻第7号 2007年7月 高齢者におけるQuality of Lifeの縦断的変化に関する研究 -静岡県高齢者保健福祉圏域別の検討を中心として- 久保田 晃生(クボタ アキオ) 永田 順子(ナガタ ジュンコ) 杉山 眞澄(スグヤマ マスミ) 藤田 信(フジタ マコト) 高田 和子(タカダ カズコ) 太田 壽城(オオタ トシキ) 目的 本研究は,静岡県における大規模縦断調査の結果を分析し,高齢者のQOLを構成する要素が,6年間でどのように変化するのか明らかにした後,本県内圏域別に6年間のQOLの変化を算出し地域格差を確認した。 さらに,圏域別の6年間のQOLの変化と,社会生活指標との関連について分析を加え検討を行った。 これらにより,高齢者のQOLの維持・向上を図るための社会的な計画や施策を立案する際の参考になる基礎的な資料を得ることを目的とした。 方法 1999年10月1日時点で静岡県内に在住していた65歳以上の者を,静岡県内の全市町村から,性・年齢階級(65~74歳,75~84歳)別に75人ずつ層化無作為抽出して調査対象者とし(計22,000人),同年12月に郵送留置法で,QOLとライフスタイルについて調査した。 なお,有効回答が得られた者に対しては,3年後と6年後に再度,郵送留置法にて同内容を調査した。 この調査で得られた結果を基に,QOLの状態を得点化し,性・年齢階級別および圏域別の経年的な変化を観察した。 さらに,圏域別のQOLに関しては,社会生活指標との関連を分析した。 結果 高齢者のQOLは,6年間という比較的短い期間にも関わらず,加齢とともに低下することが明らかとなった。 QOLを構成する要素では,生活活動力で年齢階級差,精神的健康で性差が顕著に認められた。 また,QOLの変化が少なかった要素は,人的サポート満足感と経済的ゆとり満足感であった。 一方,圏域別ではQOLの明らかな差は認められなかったが,圏域別のQOLの縦断的変化には,「保健師数」「高齢者のいる世帯割合」「ショートステイ年間利用日数」が有意な関連を示した。 結論 短期間でも低下しやすい高齢者のQOLの維持・向上を図るためには,家族や保健活動による支援を受けながら,可能な限り家庭で生活できるような圏域および地域づくりが重要ではないかと考えられた。 キーワード 高齢者,QOL,社会生活指標,圏域差,縦断調査 第54巻第7号 2007年7月 保健師の支援による高齢者の食生活の変化および医療費推移との関連 神山 吉輝(カミヤマ ヨシキ) 小出 昭太郎(コイデ ショウタロウ) 川口 毅(カワグチ タケシ) 青木 啓子(アオキ ケイコ) 目的 保健師の高齢者に対する家庭訪問保健事業において行われた食生活指導について,高齢者の行動変容と医療経済効果の面から評価すること。 方法 三重県美里村(現,津市美里町)において行われた65歳以上の高齢者の全数訪問事業において,初年度と翌年の訪問時の保健師による食生活状況の記録と医療費データとを個人ごとにレコードリンケージし,高齢者の行動の変化および医療費の推移を追跡した。 結果 初年度に食生活指導があった者はなかった者に比べて,より大きな割合で食生活行動が変化していた。 食事で気を付けているものがなかった男性では,翌年までの食生活行動の変化の割合が小さかった。 食生活指導を受けて,翌年までに食行動が変化していた者は変化しなかった者に比べて,1人当たり累積医療費がより低く推移していた。 結論 保健師による高齢者に対する食生活指導が実際に高齢者の食生活行動を変化させていることが示唆された。 また,食生活指導後の食生活行動の変化が医療費の削減に繋がる可能性が示唆された。 キーワード 食生活,高齢者,保健師,訪問指導,行動変容,医療費.

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論文記事

札幌市保健所 所長三觜

第53巻第7号 2006年7月 介護保険3施設における施設内医療処置の状況 -公表統計データを用いた検討- 竹迫 弥生(タケザコ ヤヨイ) 田宮 菜奈子(タミヤ ナナコ) 梶井 英治(カジイ エイジ) 目的 介護老人福祉施設,介護老人保健施設,介護療養型医療施設の介護保険3施設内で医療処置を受けている者の在所者全体に対する割合を医療処置の種類別に明らかにする。 方法 厚生労働省が 2001 年に行った全国調査の公表データをもとに,施設種別ごと,要介護度別に,介護保険3施設内で行われた医療処置の状況について比較検討した。 結果 医療処置を受けている者の在所者全体に対する割合は,介護老人福祉施設と介護老人保健施設で約2割,介護療養型医療施設で約4割であった。 3施設ともに,要介護1~4の在所者では,医療処置を受ける者の割合は全体の3割以下であり,処置の内容としては,疼痛管理,モニター測定,点滴,膀胱カテーテルなどが高かった。 一方,要介護5の在所者では,介護老人福祉施設と介護老人保健施設で3割,介護療養型医療施設で6割の者が医療処置を受けており,処置の内容としては,経管栄養と喀痰吸引の割合が高かった。 また,経管栄養と喀痰吸引の処置を受けている者の割合は,在所者全体でも,要介護5の在所者のみでも,介護老人保健施設より介護老人福祉施設の方が高かった。 結論 施設内で何らかの医療処置を受けている在所者の割合は,介護療養型医療施設が介護老人福祉施設および介護老人保健施設の約2倍であった。 しかし,経管栄養と喀痰吸引の処置を受けている在所者の割合は,医療職員の少ない介護老人福祉施設の方が介護老人保健施設より高く,今後の課題と考えられた。 キーワード 介護保険施設,ナーシングホーム,医療処置,経管栄養,疼痛,褥瘡 第53巻第7号 2006年7月 地域がん登録事業におけるがん患者の 登録拒否に関する法的,実務的,倫理的検討 田中 英夫(タナカ ヒデオ) 目的 個人情報保護法制定に伴い,保健,衛生分野における個人情報の第三者提供のあり方に対する関心が高まっている。 地域がん登録事業におけるがん患者の登録拒否に関し,法的,実務的,倫理的側面から検討する。 方法 個人情報保護法の内容を医療・介護関係事業者用のルールとしてまとめられた「医療・介護ガイドライン」を法的検討の対象とする。 次に,地域がん登録事業にかかわる当事者間で扱う個人情報の流れを踏まえ,もし同事業に患者の登録拒否の意思表明を反映させる(オプトアウト)とすると,実務面でどのような状況が起きるかについて検討した。 また,登録拒否という行為を,複数の倫理的価値の対立面から考察した。 結果 「医療・介護ガイドライン」が示す個人情報の第三者提供に際しての本人同意原則の除外事例(地域がん登録でのがん患者,がん検診の精度管理での要精検者,児童虐待での親,医療事故調査での被害患者)は,いずれも共通してオプトアウトの容認と事業目的の遂行が両立し難い性質のものであると考えられることから,ガイドラインの意図に沿えば,同意認定手段としてのがん患者の拒否の有無の確認の効力は発生していないと考えられた。 オプトアウトを地域がん登録事業に導入すると,その実効性の確保のためには拒否者の個人識別情報を登録する必要が生じ,また拒否の内容,範囲によって,情報の取り扱いに関する相当の負担を医療現場に強いることが予測された。 結論 地域がん登録事業におけるオプトアウトの容認は,現行法の枠内では予定されない考えであると思われた。 また,もし実行に移した場合,実務面での障害が相当程度生じることが予測されるとともに新たな倫理的価値の対立を生むことが予想された。 キーワード 地域がん登録事業,個人情報保護法,第三者提供,オプトアウト,本人同意原則 , 倫理 第53巻第7号 2006年7月 食事の多様性と生活習慣,食品・栄養素摂取量との関連 -厚生労働省研究班による多目的コホート研究- 小林 実夏(コバヤシ ミナツ) 津金 昌一郎(ツガネ ショウイチロウ) 目的 住民ベースの大規模コホート研究( JPHC Study )5年後調査の断面データを用いて,多様な食品を摂取することと生活習慣,食品・栄養素摂取量との関連を明らかにすることを目的とした。 方法 対象者は 1995 年から 1999 年の間に 44 ~ 76 歳であった全国 11 保健所管内に居住する 42,227 名の男性と 51,345 名の女性である。 自記式質問票により,既往歴,飲酒,喫煙状況,運動習慣,食習慣,食品摂取量などの情報を収集した。 質問票に掲載されている 133 食品項目について,1日に何食品を摂取しているか算出した。 1日に摂取する食品の種類を5分位に分類し,群ごとの生活習慣,食品・栄養素摂取量を比較した。 結果 摂取食品数が多くなるほど,肥満ややせが少ない,喫煙率が低い,飲酒量が少ない,朝食の欠食率が少ない,習慣的な運動習慣があるなど,健康的な生活習慣との関連が明らかになった。 また,摂取食品数が多くなるほど,一人暮らしの割合が少ない,生活を楽しいと感じている人が多いなどの特徴が明らかになった。 一方,多様な食品を摂取する群ほどエネルギー摂取量は多く,栄養素・食品群摂取量も多く摂取しているものが多かったが、炭水化物,穀類,砂糖類の摂取は低く,アルコールや嗜好飲料の摂取も低かった。 結論 1日に摂取する食品に多様性があることは,健康的な生活習慣と関連があることが明らかになった。 また,多様な食品を摂取することと食物・栄養素摂取状況との関連も明らかになった。 キーワード 食事の多様性,生活習慣,食品・栄養素摂取,コホート 第53巻第7号 2006年7月 特別養護老人ホームの待機者の 入所希望時期に影響する要因の分析 岸田 研作(キシダ ケンサク) 谷垣 靜子(タニガキ シズコ) 目的 特別養護老人ホーム(以下,特養)の待機者の入所希望時期に影響する要因を明らかにすること。 方法 対象は,中国地方のA市に在住する無作為に抽出された 500 の特養待機者世帯である。 調査時期は 2004 年 10 月で,調査方法は郵送自記式である。 分析は,入所希望時期を被説明事象,世帯属性を独立変数とする順序ロジスティック回帰分析で行った。 結果 解析の対象となったのは,必要な変数に欠損値がない 199 世帯である(有効回収率 39. 8 %)。 在宅の待機者は, 27. 6 %であった。 入所希望時期の内訳は,「すぐにでも入所したい」( 30. 2 %),「できるだけ早く入所したい」( 23. 1 %),「しばらくは待つことができる」( 17. 6 %),「将来,必要になったときに入所したい」( 29. 1 %)であった。 早期の入所希望と関連していたのは,待機場所が老人保健施設または一般の病院であること,要介護度が3以上であることであった。 待機者本人の性別,年齢,世帯形態,待機期間,調査票記入者の属性と入所希望時期との関連はみられなかった。 考察 「将来,必要になったときに入所したい」と答えた者は,入所の順番が現時点でまわってきてもすぐには入所しないと考えられる。 したがって,入所希望時期を尋ねることで予約的な入所申請者を把握することは,計画的な施設整備を行う上で有益である。 老人保健施設や一般の病院での待機者世帯が早期の入所を希望する理由として,病院・施設から退所勧告を受けている可能性が考えられる。 また,要介護度が高い場合に早期の入所を希望した。 これは,在宅待機者の場合,家族の介護負担が大きいことを反映し,在宅外待機者の場合,要介護度が高い者の家族がすでに在宅介護を断念していることを反映していると考えられる。 キーワード 特別養護老人ホーム,待機者,入所希望時期,順序ロジスティック回帰分析 第53巻第8号 2006年8月 家族の介護意識と要介護者の自己決定阻害の関係に関する研究 -高齢者虐待の予防に向けて- 安梅 勅江(アンメ トキエ) 鈴木 英子(スズキ エイコ) 目的 高齢者虐待の予防のため,要介護者の自己決定阻害に焦点をあて,住民の介護意識,要介護者の自己決定阻害に関する意識および両者の関連を明らかにすることを目的とした。 方法 平成 12年に中部地方の大都市近郊の農村Sに在住する20歳以上の全住民を対象に質問紙調査を実施し,2,998名(有効回答率84. 7%)から回答を得た。 調査内容は,要介護者の自己決定の阻害に関連する意識と考えられる3項目(要介護者は「家族の意見に従うべき」「我慢すべき」「自己主張すべきでない」),介護意識4項目(「介護受容」「家族介護負担感」「世間体意識」「家族優先意識」),属性,介護の要不要,家族内の要介護者の有無,身体症状,入院・通院歴,日常生活動作能力,社会関連性,体力イメージ,サービス満足度,過去1年間のライフイベントであった。 結果 1 年齢・性別,要介護者の有無別,介護状態別に分析した結果,自己決定の阻害に関連する意識の割合は高年齢世代,介護経験あり,世間体を気にする場合に多くなっていた。 2 自己決定の阻害に関連する意識を目的変数とし,多重ロジスティック回帰分析を行った結果,いずれも「介護受容」「世間体意識」「家族介護負担感」「家族優先意識」のある場合に,ない場合に比較して要介護者は「家族の意見に従うべき」「我慢すべき」「自己主張すべきでない」とするオッズ比が高くなっていた。 結論 すべての地域住民を対象とした要介護者の自己決定を尊重するための啓発や,介護負担を軽減するためのサポート,介護の理解を深めるための情報提供や教育などが,地域における虐待リスクの軽減に有効である可能性が示唆された。 キーワード 高齢者虐待,自己決定,家族介護,予防 第53巻第8号 2006年8月 パンデミック時の抗ウイルス剤およびワクチンの 使用優先順位に関する調査研究 大日 康史(オオクサ ヤスシ) 菅原 民枝(スガワラ タミエ) 谷口 清州(タニグチ キヨス) 岡部 信彦(オカベ ノブヒコ) 目的 新型インフルエンザのパンデミック時には,抗インフルエンザウイルス薬や新型インフルエンザ用のワクチンが不足することが予想され,そのために治療あるいは予防のための薬剤の使用に関する優先順位付けを事前に行っておくことが重要となることから,現状での国民の意思を把握するために,一般住民調査を通じて優先順位について検討した。 対象と方法 2005年4月上旬に全国において実施された調査における回答を分析した。 調査内容は,12種類の人ロ集団に対して,優先順位付けを1位から12位まで行うことを求めた。 分析は優先順位について各順位での支配的な人口集団の分析と,代表的な人ロ集団である「高齢者」「妊婦,乳児の母親」「乳幼児・小学生」の最優先人口集団の選択に関する分析を行った。 結果 調査票は 880世帯に送付し,772世帯の20歳以上の成人1,220人から回収を得た。 優先順位付けに関しては,賛成,反対,わからないがほぼ同数であった。 1つ目の分析である優先順位は,第1位「乳幼児・小学生」,第2位「妊婦」,第3位「乳児の母親」,第4位「医療従事者」,第5位「60歳未満の慢性肺疾患患者,心疾患患者,腎疾患患者,代謝異常患者,免疫不全状態の患者」,第6位「特別養護老人ホーム・老人保健施設などの従業員」,第7位「健康な高齢者(65歳以上)」,第8位「警察・消防関係者」,第9位「通信・交通・電力・エネルギー業界関係者」,第10位「行政担当者」,第11位「他の項目に当てはまる人を除く健康な13歳以上65歳未満の人」,第12位「60歳以上の慢性肺疾患患者,心疾患患者,腎疾患患者,代謝異常患者,免疫不全状態の患者」,の順で選択されていた。 また,医療従事者と60歳未満の慢性肺疾患患者,心疾患患者,腎疾患患者,代謝異常患者,免疫不全状態の患者,特別養護老人ホーム・老人保健施設などの従業員と健康な高齢者(65歳以上),警察・消防関係者と通信・交通・電力・エネルギー業界関係者の間には有意な差はないので同じ順位であった。 また,この順位は抗インフルエンザウイルス剤,ワクチン接種の場合で共通であった。 2つ目の分析である代表的な人口集団における最優先人口集団に関する推定結果は,抗インフルエンザウイルス剤とワクチン接種において,優先順位で「幼児・小学生」を最優先とする確率は,幼児・小学生の同居家族はそうでない場合よりも,抗インフルエンザウイルス剤では9. 7ポイント,ワクチン接種では8. 0ポイント高かった。 逆に,「高齢者」を最優先とする確率は,高齢者はそうでない者よりも抗インフルエンザウイルス剤では4. 7ポイント,ワクチン接種では4. 8ポイント高かった。 結論 調査結果は,オランダでの優先順位に関する研究とは整合的であるが,新型インフルエンザ対策に関する検討小委員会報告での提言内容とは必ずしも整合的ではなかった。 キーワード パンデミックインフルエンザ,抗ウイルス剤,ワクチン,使用優先順位,パンデミックプラン 第53巻第8号 2006年8月 介護保険制度を利用した埼玉県の健康寿命の算出 池田 祐子(イケダ ユウコ) 生嶋 昌子(イクシマ マサコ) 長谷川 紀美子(ハセガワ キミコ) 徳留 明美(トクトメ アケ ミ) 高野 眞理子(タカノ マリコ) 峰岸 文江(ミネギシ フミエ) 丹野 瑳喜子(タンノ サキコ) 三浦 宜彦(ミウラ ヨシヒコ) 目的 埼玉県では,新たな健康づくり行動計画「すこやか彩の国 21プラン」を策定し,平成22年度を目標年とした健康づくり運動を推進中であり,このプランの達成度や効果が把握できる健康の総合指標として「埼玉県の健康寿命」を算出し,また同指標の算出が簡単に行えるソフトの作成を目的とする。 方法 生命表の作成には Chiangの方法を用い,「障害発生時点」を「介護保険制度における要介護等認定を受けた時点」としてとらえ,「要介護等認定を受けないで生活できる期間」を「健康寿命」とした。 また,平均余命に対する健康寿命の割合を健康割合とし,埼玉県全体と県内医療圏 13 別に分析した。 健康寿命算出ソフトの作成は,エクセルVBAマクロと関数を利用して行った。 結果 埼玉県の健康寿命は, 65歳男性で14. 73年,75歳で7. 78年,65歳女性で16. 35年,75歳で8. 13年であった。 65歳,75歳では女性の方が健康寿命が長いが,85歳になると,男性3. 09年,女性2. 43年と逆転した。 健康割合は,65歳男性で84. 5%,75歳で73. 1%であるが,女性はそれぞれ73. 4%,57. 4%で,65歳,75歳ともに女性の方が低かった。 医療圏別では,65歳健康寿命は男性が14. 16~15. 05年,女性が16. 01~16. 94年で,男女とも県南・県南東部で低かった。 65歳健康割合は,男性が83. 4~86. 2%,女性が71. 1~76. 7%で,男女とも県北部で高かった。 作成した健康寿命算出ソフトは,「埼玉県の健康寿命」をはじめ,平均寿命(余命)や健康割合などが医療圏別,市町村別に算出可能であり,最新データを追加することによって,今後も継続して活用することが可能である。 結論 介護保険制度を基に算出する健康寿命は,1)既存の統計資料の活用が可能であるため,継続的に算出可能で,経年評価ができる,2)全国的に統一された手順と基準に沿って要介護度の認定作業が行われていることから,自治体間の比較が可能である,3)健康づくり事業の達成度や効果が把握できる,などの特徴をもつ指標である。 また,作成した健康寿命算出ソフトは,エクセル上で稼働し,低コスト,簡単操作であり,集団の健康指標算出ツールとして利便性が高いものと言える。 キーワード 介護保険制度,健康寿命,健康割合,健康寿命算出ソフト 第53巻第8号 2006年8月 家庭における乳幼児のタバコ曝露の実態 -尿中ニコチン代謝物測定による検討- 矢野 公一(ヤノ コウイチ) 花井 潤師(ハナイ ジュンシ) 福士 勝(フクシ マサル) 菅原 有希(スガワラ ユキ) 毛利 優子(モウリ ユウコ) 高本 厚子(タカモト アツコ) 伊澤 栄子(イザワ エイコ) 藤田 晃三(フジタ コウゾウ) 目的 家庭における乳幼児のタバコ曝露の実態を,尿中ニコチン代謝物の測定によって明らかにすることを目的とした。 方法 2004年9~11月,札幌市南保健センターでの乳幼児健診児を対象に,36家族(38児)の母と児の尿中ニコチン代謝物(コチニン)を測定した。 結果 喫煙する 27家族中6家族の児がコチニン陽性であった。 陽性児の母はすべて喫煙者で,コチニン陽性であった。 母がコチニン陽性の児は20人で,このうち母乳栄養の9児中5児がコチニン陽性であった。 一方,非母乳栄養の11児では1児のみがコチニン陽性であった。 さらに,生尿と濾紙抽出液中の尿中コチニン濃度は良好な相関を示した。 キーワード 乳幼児,タバコ曝露,尿中コチニン,母乳栄養 第53巻第8号 2006年8月 施設入所高齢者におけるインフルエンザワクチンの 有効性と医療費削減効果の総合評価(予備解析結果) 井手 三郎(イデ サブロウ) 児玉 寛子(コダマ ヒロコ) 高山 直子(タカヤマ ナオコ) 堤 千代(ツツミ チヨ) 山崎 律子(ヤマサキ リツコ) 丸山 正人(マルヤマ マサト) 朔 義亮(サク ヨシスケ) 友田 信之(トモダ ノブユキ) 廣田 良夫(ヒロタ ヨシオ) 目的 インフルエンザワクチンの臨床的効果のみならず,個人レベルで実際の費用と効果に関するデータを積み上げて,ワクチン接種の医療費削減効果を検討する。 介護老人保健施設では89人(接種75,非接種14)を2003年1~3月の間,医療型療養病棟では92人 接種12,非接種80 を2003年12月~2004年3月の間,追跡観察した。 41,95%信頼区間0. 14-1. 17,p=0. 095)。 医療行為の実施率や超過医療費は,接種群において低い傾向を示したが,有意差を検出するには至らなかった。 59,95%信頼区間0. 07-4. 73,p=0. 619)。 また超過医療費の削減傾向も観察された。 3 両シーズンの観察結果をプールした解析において,インフルエンザ様疾患に対するワクチンの有効性は境界域の有意性を示した(ハザード比=0. 44,95%信頼区間0. 17-1. 12,p=0. 084)。 またワクチン接種は,インフルエンザ様疾患に関連する超過医療費を削減する傾向も観察された。 その他,ハイリスク者においては超過医療費が増大することが観察された。 結論 例数は不十分であるものの,インフルエンザワクチンは施設入所高齢者のインフルエンザ様疾患罹患防止に約 40~60%の有効率であることが示唆された。 また,インフルエンザ様疾患に関連する医療費の削減が期待される。 キーワード インフルエンザワクチン,有効性,費用対効果,医療費削減効果,後ろ向きコーホート研究,疫学 第53巻第10号 2006年9月 要介護認定者の日常生活自立度と生命予後との関連 寺西 敬子(テラニシ ケイコ) 下田 裕子(シモダ ユウコ) 新鞍 眞理子(ニイクラ マリコ) 山田 雅奈恵(ヤマダ カナエ) 田村 一美(タムラ ヒトミ) 廣田 和美(ヒロタ カズミ) 神谷 貞子(カミヤ サダコ) 岩本 寛美(イワモト ヒロミ) 上坂 かず子(コウサカ カズコ) 成瀬 優知(ナルセ ユウチ) 目的 要支援を含む新規要介護認定者において,性・年齢階級別に日常生活自立度と生命予後との関連を明らかにすることを目的とした。 方法 富山県のN郡3町村に居住し,2001 年4月から2004年12月に新規に要支援または要介護認定を受けた65歳以上の住民1,700人(男性616人,女性1,084人)を対象とした。 介護 保険認定審査会資料より初回認定時の情報として性,年齢,障害老人の日常生活自立度(ランクJ,A,B,C),主治医意見書に記載された診断名,2005 年3月現在の転帰(生存,転出,死亡)を把握した。 初回認定時の日常生活自立度別の累積生存率を,性・年齢階級別(65~74歳,75~84歳,85歳以 上)にKaplan-Meier法を用いて算出した。 生存曲線の有意性の検定にはlog-rank検定を行った。 また,性・年齢階級別に診断名と初回認定 時の年齢を共変量としたCoxの比例ハザードモデルを用いて,ランクJを基準とした日常生活自立度の死亡に対するハザード比を求めた。 結果 男性の65~74 歳,75~84歳,85歳以上の各年齢階級において日常生活自立度の違いによって累積生存率は有意に異なっていた。 同様に女性の各年齢階級においても有意 に異なっていた。 性・年齢階級別にそれぞれのランクJを基準として各日常生活自立度の死亡ハザード比を求めると,男女共に85歳以上以外の年齢階級で,ラ ンクCが最も高い死亡ハザード比を有意に示すことが共通して明らかとなった。 一方で,日常生活自立度の程度の低下による死亡ハザード比の上昇は性・年齢階 級別に異なる特徴を示し,年齢階級が上がると日常生活自立度の低さによる死亡ハザード比の上昇の程度が小さくなる傾向が,女性は男性よりも日常生活自立度 の違いによる死亡ハザード比の格差が小さい傾向が明らかとなった。 結論 要支援を含む要介護認定者の初回認定時の日常生活自立度の程度は,性・年齢階級別に解析し,診断名を調整しても生命予後と関連していることが明らかとなった。 また,その関連は性・年齢階級別に異なっていた。 グループホームの環境づくりにおいて,施設管理者などの自由に対する認識の 高さを反映していると考えられた。 また,外食も含めた近所や周辺地域との積極的な交流や入所者である認知症高齢者のストレスマネジメントの必要性が考えら れた。 キーワード 認知症高齢者,ホームライク,QOL,ブレインストーミング,KJ法 第53巻第10号 2006年9月 老人医療費と介護費の類似した 地域差の発生要因に関する分析 堀 真奈美(ホリ マナミ) 印南 一路(インナミ イチロ) 古城 隆雄(コジョウ タカオ) 目的 肥満は生活習慣病の原因として重要であり,生命予後を含めた健康の悪化要因とされる。 この肥満および体重変化が10年後の健康に及ぼす影響を,職域の定期健診結果と5年間の終末期を除く医療費を指標として検討した。 方法 対象は1992年度に定期健康診断を受けた40~59歳の男性で,2004年度末にも健在で健保に加入していた6,867名と,この間に死亡を理由に健保を脱退した182名である。 医療費は終末期の高額医療費を除くために1999~2003年度の5年間の診療報酬明細書から医科と調剤を用いて算出した。 結果 1992~1994年度の3年間の平均体重で求めたBMIを5分位で検討すると,医療費はBMIが大きいほど高額であった。 年齢調整累積死亡率が最も低かったのはBMI20. 9~22. 3の群であった。 2001~2003年度までの10年間の体重変化を5分位で検討すると,体重減少が最も大きい群で医療費は高額であった。 観察開始時のBMIで3群に分けて体重変化と医療費の関係をみても,体重の大きな減少は高額医療費と関連していた。 最も医療費が少ないのは,観察開始時BMIが小さい群では約3㎏増加,大きい群では約1㎏低下する群であった。 糖尿病では,観察開始時の肥満度に関係なく体重増加は高額医療費と関連した。 高額医療費を示す主な保険主傷病名は,虚血性心疾患,脳血管疾患,悪性新生物,高血圧などであり,糖尿病では体重増加にしたがってこれらの疾患頻度は増加傾向にあった。 喫煙に関しては,10年間の観察期間中の新たな禁煙群が最も医療費は大きかったが,この群で多くみられる体重増加は医療費に関係しなかった。 結論 肥満は10年後の終末期を除く医療費を高額とした。 死亡率が低かったのはBMI21~22の群であった。 10年間の体重の減少は医療費を高額とした。 体重低下と高額の医療費は重大な疾患に罹患したための二次的なものと考えるのが妥当である。 禁煙による体重増加は医療費を増加させなかった。 これらから男性では,「中年までの肥満の予防が重要であること」「BMI22~23を目標とした体重管理が好ましいこと」「糖尿病では体重の増加は高額の医療費をもたらすこと」「意図した体重の管理が重要であること」などが示唆される。 今後,意図した体重減少が長期的な健康に好ましいことを証明する研究が必要である。 キーワード 肥満,体重変化,定期健診,診療報酬明細書(レセプト),医療費,喫煙 第53巻第10号 2006年9月 地域在住高齢者における車両スピード認知 と身体能力との関係 内田 勇人(ウチダ ハヤト) 朝居 由香里(アサイ ユカリ) 藤原 佳典(フジワラ ヨシノリ) 新開 省二(シンカイ ショウジ) 目的 近年,公衆衛生領域では周産期の母親へのメンタルヘルス支援を行い,効果を挙げているが,ドメスティックバイオレンス(以下,DV)など多くの困難な出来事にさらされることによるメンタルヘルスの影響や,その援助への検討はいまだに取り組まれていない。 そのため様々な困難を抱えているであろう母子生活支援施設入所者を対象として,どのような支援が有効であるのかを明らかにすることを目的に調査を行った。 方法 東京都内母子生活支援施設(以下,支援施設)に入所中で調査協力の得られた母親を対象とし,自記式アンケート調査(匿名郵送回収)を行った。 調査項目は,基本的属性,ソーシャルサポート,メンタルヘルス(うつ評価尺度・解離性体験尺度),母親の子どもへの愛着(愛着形成障害評価尺度),子どもへの不適切な育児,実家との関係,パートナーとの関係など多面的な項目を設定した。 抑うつの要因については抑うつ傾向得点との関連が有意であった変数を独立変数,不適切な育児得点を従属変数として,強制投入法による重回帰分析を行った。 結果 143名から回答を得た。 調査結果から対象者の半数(49%)に抑うつ傾向がみられた。 また入所者の67. 4%がパートナーからの被暴力経験を持ち,95%がパートナーとの関係に葛藤性を抱えていた。 抑うつ傾向と各項目間では,ソーシャルサポート(がない),実家との関係(被虐待経験),解離傾向の有無,愛着障害得点,不適切な育児得点とに関連がみられた。 抑うつ傾向は子どもへの愛着障害にも影響し,さらに子どもへの攻撃性や放置などの育児行為にも影響していた。 結論 支援施設入所者の就労割合は78. 9%と高く,その約半数が抑うつ傾向を持ちつつ就労しており,生活・育児面にかなりの困難さを有しているであろうことが推測されたが,調査結果からも子どもへの愛着や不適切な育児への影響が確認された。 DVなどをはじめ,様々な困難を抱える母親には,子どもへの影響および世代間連鎖を阻止する視点からも,メンタルケアを含め経済・生活面への総合的支援が必要であることが示された。 キーワード 母子生活支援施設,抑うつ,ソーシャルサポート,愛着障害,不適切な育児,メンタルケア 第53巻第11号 2006年10月 一保健所管内の小・中学生を対象とした喫煙行動と関連要因に関する大規模調査研究(第2報) -小・中学生を対象とする禁煙外来のあり方について- 藤田 信(フジタ マコト) 目的 喫煙する小・中学生の禁煙外来に対する考えを明らかにして,禁煙外来受診を促進し,小・中学生の喫煙の解消に資することを目的とする。 方法 静岡県A保健所管内の小学校35校,2,428名,中学校17校,2,316名に対して,無記名自記式の調査票によるアンケート調査を実施した。 結果 過去に禁煙を試みた者は,小・中学生ともに約8割で,そのうち小学生で95%,中学生で78%の者が禁煙を達成していた。 過去に禁煙を試みたとき,誰にも相談しなかった者は小学生の男子女子ともに69%,中学生男子で71%,女子で75%であった。 現在の禁煙を試みる意思は,「今すぐ」「1カ月以内に」「3カ月以内に」やめたいとする者が,合わせて小学生の男子で69%,女子で57%,中学生の男子で43%,女子で38%であった。 禁煙外来受診時に希望する付き添いは,「父母」が小学生男子で34%,女子で27%,中学生男子で14%,女子で20%,「行きたくない」が同様に23%,23%,13%,11% であった。 禁煙外来に希望する担当医は,小学生では「学校医」と「顔見知りの医師」が比較的多く,中学生では「顔見知りの医師」と「顔見知りでない医師」 とでほぼ二分された。 禁煙外来受診の希望日時は,概して日曜日・祝日や夏休みなどの長期休業期間が多かった。 禁煙外来を安心して受診できる条件は,「学校 や氏名が分からないように」が小学生男子で44%,女子で46%,中学生男子で76%,女子で60%,「診察室は別で話が他に聞こえない」が同様に29%,36%,30%,34%であった。 保護者への喫煙と禁煙の告知について,「できない」が小学生男子で6%,女子で5%,中学生男子で20%,女子で11%,「話すつもりはない」が同様に9%,なし,27%,18%であった。 結論 小・中学生を対象とする禁煙外来は,匿名とし診察室を別にして話が他に聞こえない必要があり,診療日は日曜日・祝日または長期休業期間が望ましく,担当する医師は小学生では顔見知りの医師とすることが望ましい。 キーワード 禁煙外来,小・中学生,保健所,質問紙調査,喫煙の習慣性 第53巻第10号 2006年9月 主観的健康感と職業性ストレスとの関連について -MYヘルスアップ研究から- 豊川 智之(トヨカワ サトシ) 三好 裕司(ミヨシ ユウジ) 宮野 幸恵(ミヤノ ユキエ) 鈴木 寿子(スズキ トシコ) 須山 靖男(スヤマ ヤスオ) 井上 まり子(イノウエ マリコ) 井上 和男(イノウエ カズオ) 小林 廉毅(コバヤシ ヤスキ) 目的 金融保険系企業の従業員を対象としたMYヘルスアップ研究における調査により,労働者の主観的健康感(Self-Rated Health: SRH)と職業性ストレス,特に仕事の要求度とコントロールとの関連について検討した。 方法 職業性のストレス要因を,「高ストレイン」「パッシブ」「アクティブ」「低ストレイン」の4つに分け,これらを独立変数,SRH を従属変数とするロジスティック回帰分析モデルにより分析した。 共変量として年齢,職区分,婚姻状態,喫煙習慣,飲酒習慣,運動習慣,睡眠時間,現在治療 中の病気の有無,過去に治療した病気の有無を含め,「基本モデル」とした。 次に,周囲からの支援による,ストレスとSRHとの関連の変化を示すため,上 司,同僚,家族・友人からの支援を共変量としてモデルに入れ「支援ありモデル」とした。 結果 回帰モデル(支援ありモデル)によるオッズ比(OR) では,職業性ストレスについて,高ストレイン(男性OR;1. 88,女性OR;1. 70),パッシブ(男性OR;1. 23,女性OR;1. 40),アク ティブ(男性OR;1. 28,女性OR;1. 20)は,低ストレインと比較してSRHが低いことが示された。 女性では営業職が事務職に比べSRHが低いこ とが示された(OR;1. 85)。 男性では家族・友人からの支援(OR; 1. 80)がない場合,女性では上司(OR;1. 37)からの支援がない場合にSRHが低かった。 結論 仕事の要求度とコントロールによるストレスの違いに焦点を当てて分析を行った結果,高ストレインの労働者のSRH が低いことが明らかになった。 ストレスに関与する要因の中で,男性では家族・友人からの支援を得られない場合に,女性では上司や同僚からの支援を得られな い場合にSRHが低いことが示された。 男性では単身赴任していること,女性では独身でいることが低SRHと関連することが示され,これらの社会的関係性が SRHと結びついていることが示された。 キーワード 主観的健康感,職業性ストレス,カラセックモデル,社会的関係性 第53巻第11号 2006年10月 家族介護者の介護負担感と関連する因子の研究(第1報 -基本属性と介入困難な因子の検討- 平松 誠(ヒラマツ マコト) 近藤 克則(コンドウ カツノリ) 梅原 健一(ウメハラ ケンイチ) 久世 淳子(クゼ ジュンコ) 樋口 京子(ヒグチ キョウコ) 目的 介護負担感の関連因子を探る基礎作業として,年齢や性別などの介護者の基本属性,介護期間などの介入困難な因子について検討した。 方法 対象は,A県下の7保険者において,介護保険の在宅サービスを利用していたすべての要介護者の介護者(7,278人)である。 回収数(率)3,610(49. 6%)のうち,主介護者によって回答された3,149人を分析対象とした。 主観的介護負担感(8点から32点で,得点が高いほど介護負担感が高い)と主介護者の基本属性(性別,年齢,続柄),および介入困難な因子(要介護者の障害老人の日常生活自立度,認知症老人の日常生活自立度,要介護度,1日の平均介護時間,目の離せない時間,介護期間)の9因子との関連を検討した。 結果 介護負担感は,介護者が女性で,高齢,続柄が妻の場合に,有意に高かった。 しかし,例えば,男性の介護負担感の平均値は26. 3,女性は27. 4で,その差は0. 9点 と小さかった。 また,どの年齢・性別においても,障害が重く,介護時間が長くなるに伴い,介護負担感が有意に高くなる傾向がみられた。 ただし,その結果 は,介護負担感スケールで何点以上を「高い」とするのか,平均値でみるのかという変数の扱い方によっても変動した。 介護期間については,長いほど介護負担 感が高い傾向を示したが,統計学的な有意差は65歳未満の女性でのみみられた。 結論 介護負 担感は,介護者が女性で,高齢,続柄は妻で有意に高く,障害の重症度が重い群,もしくは介護時間が長い群で,介護負担感が高くなるという傾向が確認され た。 今後の介護負担感研究においては,介護負担感との間に統計学的に有意な関連が認められた(介護期間を除く)8つの交絡因子を考慮して分析を行うことが 望ましいと考えられた。 キーワード 要介護高齢者,家族介護,介護負担感,日常生活自立度,性差 第53巻第11号 2006年10月 藤沢市における個別健康支援プログラムの有効性の検討 鈴木 清美(スズキ キヨミ) 小堀 悦孝(コボリ ヨシタカ) 相馬 純子(ソウマ ジュンコ) 小野田 愛(オノダ アイ) 齋藤 義信(サイトウ ヨシノブ) 尾形 珠恵(オガタ タマエ) 李 廷秀(リ チョンスウ) 森 克美(モリ カツミ) 川久保 清(カワクボ キヨシ) 目的 藤沢市が厚生労働省から委託を受けて実施した「国保ヘルスアップモデル事業」(平成14~16年度)は,対象とする生活習慣病とその予備群を選定の上,健康度という概念と指標を設定し,個別健康支援プログラムの開発・実施と事業効果の分析・評価を行うものである。 本研究は,開発した藤沢市個別健康支援プログラムの有効性を検討することを目的とした。 方法 プログ ラムの有効性を検討するため,年1回の健康診断と健康相談を受けるコース1,コース1の内容に加えて半年後の効果測定と食生活相談を受けるコース2,コー ス2の内容に加えて週1回の運動トレーニングを行い,総合的に健康づくりを行うコース3の3種類のコースを設定した。 各コースについて,健診結果と生活習 慣調査結果のデータにより,正味2年間の介入前後の比較,事業に参加した介入群(979人)と対照群(4,570人)の変化量の比較を行った。 結果 介入群における介入前後の比較で数値データの変化をみると,コース2,3とも,体重,BMI,血清HDLコレステロール値が改善した。 またコース2では中性脂肪値が改善し,コース3では血圧値が改善した。 対照群との比較では,コース2,3とも,体重,BMI,収縮期血圧,血清総コレステロール値の変化が有意であった。 またコース2では中性脂肪値に,コース3では収縮期血圧,拡張期血圧,血清LDLコレステロール値に有意差があった。 生活習慣についてはコース1,2,3とも介入前後の比較で改善を示し,コース2,3は対照群との比較でも有意差があった。 結論 藤沢市 個別健康支援プログラムは,生活習慣の改善,身体状況の改善の両者において有効であることが実証された。 特にコース2参加者は中性脂肪値の改善が有意であ り,コース3参加者は血圧値の改善が有意であることが明らかになったことから,今後,この結果を踏まえた食生活および運動習慣を配慮した総合的健康づくり システムを構築していく方向性が示された。 キーワード 国保へルスアップモデル事業,個別健康支援プログラム,生活習慣病 第53巻第11号 2006年10月 地域福祉活動の住民満足度分析に関する研究 -地域福祉活動計画への活用- 増子 正(マスコ タダシ) 目的 地域福 祉は,住民の生活の満足度を向上させるという目標を有している。 本研究では,市町村社会福祉協議会が実施している地域福祉事業への住民満足度に影響を与え ている要因を分析して,地域福祉計画,地域福祉活動計画策定に反映させることで,住民ニーズに立脚した計画の策定とアカウンタビリティ(説明責任)確保の 遂行に寄与することを目的としている。 方法 著者が日本学術振興会の科学研究費補助を受けて開発した「ベンチマーク方式による社会福祉協議会の事業評価」の手法を活用して,秋田県A町在住の18歳以上の男女1,197名を対象に,同町社会福祉協議会が実施している地域福祉事業に対する住民意識調査の結果からデータベースを構築し,地域福祉活動や事業に対する住民の満足度に影響を及ぼしている要因を分析した。 結果 事業に対する満足度と,周知度,居住地,居住年数,年齢との関係を分析した結果,活動や事業に対する住民の周知度の違いが,それぞれの事業への期待度と満足度に大きく影響を及ぼしていて,事業に対する周知度が低い集団で満足度のスコアが極端に低いことがわかった。 結論 地域福祉計画,地域福祉活動計画の策定段階で,住民満足度を的確に分析し,ニーズ把握に活用することは,計画のアカウンタビリティ確保に有用であり,事業に対する住民の周知度を高めることが住民の生活の満足度の向上に寄与することが検証された。 計画策定の目標のなかに,地域福祉活動や事業に対する住民の認識度を向上させるための情報提供システムを再構築することの重要性が示唆された。 キーワード 地域福祉活動,住民満足度,地域福祉計画,地域福祉活動計画,事業評価 第53巻第11号 2006年10月 がん終末期患者の在宅医療・療養移行の課題 -病状説明,告知の現状- 沼田 久美子(ヌマタ クミコ) 清水 悟(シミズ サトル) 東間 紘(トウマ ヒロシ) 目的 終末期がん患者が在宅での医療・療養継続を希望した場合に,急性期病院(以下「急性期」)医師と地域での医療を担う(以下「地域」)医師の連携に重要となる課題およびそれぞれの役割を明らかにする。 方法 第7回日本在宅医学会大会に参加した医師を対象に調査用紙を配布・回収した。 医師は,急性期医師と地域医師の2群とし,それぞれ自記式での回答を求めた。 結果 調査対象医師数は185人で,回答者数123人(急性期医師35人,地域医師88人),回収率66. 5%であった。 急性期医師は年齢45. 2歳,医師経験18. 0年,在宅移行経験88. 6%,訪問診療経験77. 1%,地域医師は年齢47. 9歳,医師経験20. 2年,訪問診療経験93. 2%,在宅看取り経験93. 2%であった。 急性期医師の告知に関する回答は「病名はするが余命告知はしない」25. 7%,「病名・余命の告知をする」28. 6%,「家族の希望に沿う」が42. 9%であり,特に,訪問診療経験のない急性期医師は経験のある医師と比較して,余命告知をする割合が低かった(p<0. 05)。 また,「余命の告知をしないことで患者への対応に困難を感じた」との回答は急性期医師71. 4%,地域医師77. 3%とそれぞれ高率であった。 病状理解について,「退院時に患者・家族は病状理解ができている」と回答した急性期医師は85. 7%,地域医師では58. 0%と認識に差がみられたが,患者・家族の病状理解が不十分な時には急性期医師の80. 0%,地域医師では83. 0%が対応困難と感じていた。 また,「急性期医師よりの病状申し送り内容と患者の病状理解が一致していない」と地域医師の51. 2%が回答し,その医師は全員,対応困難を感じていた。 地域医師の回答で,退院時に「患者・家族が不安に思っていること」は「夜間の医療対応」71. 6%,「緊急時の病院対応」68. 2%,「介護への不安」46. 6%,「病状」が27. 3%であった。 多くの地域医師は,患者が余命告知をされていないことや病状理解が不十分なために対応困難を抱えており,患者・家族も退院に当たって病状について 大きな不安を抱いている。 急性期医師は在宅での医療・療養の特性を理解した上で,対応困難が生じると思われる事項を患者の入院中に改善し,患者・家族の置 かれている状況や療養上必要な情報を地域医師へ的確に引き継ぐことが重要である。 その上で,患者・家族の不安を地域医師と共有し,それぞれの役割を生かし た連携を行うことが望まれる。 キーワード 在宅医療,がん終末期患者,アンケート調査,在宅移行連携,医師の認識 第53巻第13号 2006年11月 昭和ヒトケタ男性の寿命 -世代生命表による生存分析- 岡本 悦司(オカモト エツジ) 久保 喜子(クボ ヨシコ) 目的 1980年代に社会的関心を集めた「昭和ヒトケタ短命説」について,その寿命への影響を世代生命表を用いて30歳以降の生存率により定量的に検証した。 方法 1920~1949年出生の男性コホートについて,戦争などの影響を受けていない30~55歳の年齢別死亡率から生存率を算出し推移を観察した。 さらに,戦争などの影響を受けなかったと仮定した場合の生存率の改善を傾向線で表現し,昭和ヒトケタを中心とした世代の観察された生存率と傾向線との差から,戦争などによるコホート効果を65歳までの生存率で定量的に推計した。 結果 1926~1938年に出生した男性において,30歳以降の生存率の停滞が明瞭に観察され,その相対的低下は1932年生まれにおいて最も顕著であった。 この年に出生した男性の30歳のうち65歳まで生存した者の割合は,戦争などの影響がなかったとしたら辿ったであろう生存率と比較して1. 87%低かった。 この世代の30歳時人口が約82万人であったことから,65歳まで到達できた者が約1. 5万人,あるべき数より少なかったことを意味する。 1926~1938年間全体では30歳男性1037万人に対して65歳到達者は,あるべき数より11. 7万人少なかった(1. 1%)。 また,30歳以降の生存率は,世代を追うごとに改善されてきたが,1929年出生者については,わずかながら前世代を下回る現象が確認され,さらに終戦時に乳幼児だった1942~1944年出生世代でも,30歳以降の生存率にわずかながら停滞現象が観察された。 結論 発育期を戦争中に過ごしたという「負い目」は30歳から65歳までの生存率を1%以上低下させる影響をもたらした。 戦後生まれ世代との格差は彼らが老齢に入るにつれてますます拡大している。 彼らがまだ中年だった頃に初めて発見された現象は一時的なものではなく,人生最後までつきまとう「この時期に生まれたるの不幸」であった。 キーワード 世代生命表,コホート効果,生存率,中高年死亡 第53巻第13号 2006年11月 訪問介護サービスを利用している独居高齢者の主観的健康感に 影響する社会関係要因とその独居年数による相違 中尾 寛子(ナカオ ヒロコ) 平松 正臣(ヒラマツ マサオミ) 目的 独居で介護保険の訪問介護サービスを利用している要援護高齢者の主観的健康感に影響する社会関係要因を明らかにし,さらに独居年数によってどのように異なるのかを検証する。 方法 対象は,中国地方のA県B市内4カ所のホームヘルプステーション(訪問介護事業所)で介護保険の訪問介護サービスを利用している独居高齢者51人である。 対象者の自宅を調査員が訪問介護員に同行訪問して,調査票を用いた個別の面接聞き取り調査を行い,年齢,婚姻歴,子どもの有無,要介護度,独居年数などの属性と主観的健康感,QOL(生活満足度尺度K)および社会関係についての情報を得た。 独居年数が明らかでなかった2人を除く対象者を独居年数が10年未満(短期)群(n=20)と10年以上(長期)群(n=29) の2群に分けて,グループごとに主観的健康感に関連する要因を社会関係の中から探り,その結果を2群間で比較した。 単変量解析とカテゴリカル回帰分析を実 施し,カテゴリカル回帰分析の従属変数は主観的健康感(よい[1]~よくない[4]),説明変数は年齢,性,要介護度,社会関係指標とした。 結果 カテゴリカル回帰分析から,両群ともに有意な関連が認められた。 独居年数10年未満群では「男性」「デイサービス・デイケアを利用」「近所づきあいに満足」「閉じこもり傾向なし」が,独居年数10年以上群では,「女性」「近所づきあいに満足」が主観的健康感を有意に高める傾向にあることを示した。 また,両群ともに「年齢」「要介護度」と主観的健康感との間に有意な関連はなかった。 主観的健康感に最も有意な関連性をもつのは「近所づきあいの満足度」であった。 結論 独居期間が短い要援護高齢者の心身の健康にとっては,「デイサービス・ デイケアの利用」や「閉じこもり予防事業への参加」がより高い効果を発揮する可能性が示された。 また,独居年数にかかわらず,独居要援護状態の高齢者の主 観的健康感には,離れて住む子どもや友人よりもむしろ「近隣住民との関係性」のほうが強い影響を及ぼすことが明らかになった。 これらのことから,デイサー ビス・デイケアや閉じこもり予防事業などの地域福祉サービスを独居開始の早い時点つまり「適切な時期」に利用につなげる援助と,本人自身が近隣住民と満足 できる関係性を築くことへの援助の両方が,要援護高齢者にとって高い健康感をもちながらひとり暮らしを続けるためには特に重要であると考えられた。 キーワード 独居要援護高齢者,主観的健康感,社会関係,独居年数,近所づきあいの満足度 第53巻第13号 2006年11月 島嶼地域住民の主観的健康感の関連要因に関する研究 志水 幸(シミズ コウ) 小関 久恵(コセキ ヒサエ) 嘉村 藍(カムラ アイ) 目的 サクセスフル・エイジングに資するべく,日常生活行動の典型例の抽出が可能な島嶼 しょ 地域住民を対象に,ライフスタイルを構成する多元的要素を包括する視点から主観的健康感に関連する要因を明らかにする。 方法 山形県酒田市飛島に居住する満40歳以上の住民208人を対象に,訪問面接調査法(一部,配票留置法)による悉皆調査を実施した。 調査項目は,基本属性,社会関連性指標,老研式活動能力指標,ソーシャルサポート,生活満足度,健康生活習慣に関する85項目を設定した。 さらに,多変量解析では,主観的健康感を目的変数とし,単変量解析で有意差が認められた項目を説明変数とするロジスティックモデルを構築し,強制投入法により変数の独立性について検討した。 結果 調査対象者のうち,192人(回収率92. 3%)から回答を得た。 壮年期ではISI(社会関連性指標)の「便利な道具の利用」の「実施群」が,高齢期ではISIの「訪問機会」「積極性」の「実施群」,LSI-Kの「去年と同じように元気である」の「肯定的回答群」が,壮年期・高齢期の両群ではLSI-Kの「物事を深刻に考える」の「肯定的回答群」において,主観的健康感が高いことが明らかになった。 結論 主観的健康感は加齢に伴い,身体的要因よりも精神的・社会的要因の影響を強く受けることが示唆された。 キーワード 主観的健康感,サクセスフル・エイジング,ライフスタイル,島嶼地域 第53巻第13号 2006年11月 家族介護者の介護負担感と関連する因子の研究(第2報) -マッチドペア法による介入可能な因子の探索- 平松 誠(ヒラマツ マコト) 近藤 克則(コンドウ カツノリ) 梅原 健一(ウメハラ ケンイチ) 久世 淳子(クゼ ジュンコ) 樋口 京子(ヒグチ キョウコ) 目的 介護負担感を軽減する支援策を探るために,交絡因子の条件を同一にするマッチドペア法を用いて,介護負担感と関連する介入可能な因子を検討した。 方法 対象は,A県下の7保険者の地域代表サンプルの介護者(7,278人)である。 回収数(率)3,610(49. 6%)のうち,主介護者によって回答された3,149人を分析対象とした。 今回,検討を行った介入可能な因子は,ソーシャルサポート,副介護者の有無,十分な介護情報の有無,趣味や気晴らし,介護者のGDS(Geriatric Depressive Scale-short form)-15項目短縮版,ストレス対処能力(SOC; Sense of Coherence)である。 また,第1報での検討をふまえ,8つの交絡因子をマッチさせたマッチドペア法を用いて,介護負担感が高い群(20以上)と,低い群(19以下)の2群間で差がみられる因子を検討した。 マッチさせた条件は,介護者の年齢,性別,続柄,障害老人の日常生活自立度,認知症老人の日常生活自立度,要介護度,1日の平均介護時間,目の離せない時間の8因子である。 結果 介護負担感が低い群には,情緒的サポートがあり,手段的サポートがあり,介護情報があり,趣味や気晴らし活動をしており,ストレス対処能力(SOC)が高く,GDSが低いものが,有意に多かった。 61),GDS(0. 57)や情緒的サポート(-0. 45)などの介護者の認知や主観を反映する因子で高く,一方,十分な介護の情報(0. 26),副介護者の有無(0. 08),趣味や気晴らし(0. 33)などの因子で低い傾向が示された。 結論 従来検討されてきたソーシャルサポートなどの客観的な側面の因子と介護負担感の関係よりも,むしろストレス対処能力やGDSなどの介護者の主観的な側面を反映する因子で関連性が大きかった。 このことは介護負担感の軽減にむけての支援策として客観的状況を変える支援だけではなく,認知や主観への介入も今後は検討すべきことを示唆していると思われる。 キーワード 要介護高齢者,介護負担感,心理,介護者支援,ストレス対処能力,うつ 第53巻第13号 2006年11月 幼稚園児の母親を対象とした育児不安の研究 本村 汎(モトムラ ヒロシ) 上原 あゆみ(ウエハラ アユミ) 目的 本研究では,「インフォーマルな支援」としての「夫からの協力」「夫とのコミュニケーション」「友人からの支援」,母親の「性役割分業意識」が,母親の育児不安にどのような影響を与えているかを明らかにし,その影響のメカニズムを検討することを目的とした。 方法 調査対象はA県H市の私立幼稚園に通園している幼児の母親から無作為に抽出された300名(有効回収率74. 3%)であり,調査方法は自計式質問紙法で,調査時期は平成15年10月末~11月末とした。 測定尺度としては9項目から構成された「育児不安」尺度と,支援測定尺度の副尺度である夫からの協力尺度(5項目),夫とのコミュニケーション尺度(5項目),友人からの支援尺度(3項目)を用い,そのいずれも4件法で測定した。 70以上に達している。 母親のパーソナリティの測定尺度としては,標準化されているPOMS(Psychiatric Outpatient Mood Scale)を用いた。 結果 1)一元配置分散分析によれば,インフォーマルな支援が増大すると,そ れに対応する形で母親の「育児不安」は減少していた。 2)一元配置分散分析のレベルでは,母親の「性役割分業意識」は育児不安になんらの影響も与えていな かったが,夫婦関係のありかた如何によっては,影響があることを示していた。 3)母親のパーソナリティとの関連では,いずれの「心理因子」も母親の育児不 安に影響を与え,「活力因子」以外の因子は,いずれも母親の育児不安に「負」の効果をもたらしていた。 4)重回帰分析は,「友人からの支援」と母親のパー ソナリティの「活力因子」が「育児不安」の減少に貢献していた。 結論 支援効果をあげていくためには支援の量を増大するだけでなく,母親のパーソナリティ特性に注目し,母親のネガティブな心理因子の「負」の効果を減少させるために,「活力因子」の強化に焦点をあてた支援の必要性が示された。 キーワード 育児不安,パーソナリティ構造,インフォーマルな支援,一元配置分散分析,重回帰分析 第53巻第15号 2006年12月 一般世帯および食物アレルギー患者世帯における食品表示などの利用状況 -妊産婦教室および乳幼児教室の参加者を対象として- 野村 真利香(ノムラ マリカ) 堀口 逸子(ホリグチ イツコ) 丸井 英二(マルイ エイジ) 目的 厚生労働省によって新たに提示された介護予防施策では,「一般高齢者」「特定高齢者」「要支援高齢者」「要介護高齢者」の4つの階層を用意し,対象と給付の関係を明確化した。 しかし対象者の選定には『基本チェックリスト』と『要介護認定方式』が並行的に運用され,そこから抽出される「特定高齢者」と「要支援高齢者」の境界や階層性の関係は,いまだに明らかにされていない。 本研究では,「要支援高齢者」の候補者である旧要支援,旧要介護1の認定者に対して,『基本チェックリスト』により試行的に判定し,「特定高齢者」と「要支援高齢者」との間の階層的な関係について検証を行った。 方法 対象は,東京都A市において旧要支援,旧要介護1の認定を受けた者のうち,介護保険以外の生活支援型サービスを利用している在宅高齢者767名である。 調査は,2006年2月に自記式の郵送調査によって実施し,回収率は92. 3%であった。 調査内容は,厚生労働省の『基本チェックリスト』およびIADL(手段的日常生活動作)5項目の遂行能力を問う項目を用いた。 本研究では,すべての調査項目に回答した456名(旧要支援:107名,旧要介護1:349名)を分析対象とした。 結果 旧要支援,旧要介護1の認定者に『基本チェックリスト』による判定を試行した結果,特定高齢者に選定されたのは,旧要支援では33. 6%,旧要介護1では57. 8%となり,「要支援高齢者」であるにもかかわらず「特定高齢者」には選定されないケース,つまり施策の想定とは逆の階層関係となるケースが,約半数に出現することが明らかとなった。 次にIADL5項目による自立者の割合を確認した結果,旧要支援,旧要介護1認定者の54. 8%がすべてのIADL項目が自立していた。 これに対して,IADLが非自立であった者の4分の1に当たる25. 7%が特定高齢者に選定されなかった。 結論 2つの異なる基準から抽出された特定高齢者と要支援高齢者の間には,階層関係が逆転しているケースが約半数にみられ,両者を階層的に位置づけるのは困難であることが明らかとなった。 その要因の1つは,新たに開発された基本チェックリストが,要介護認定との階層的な関係を十分に考慮せずに作成されたことにある。 もう1つは,要介護認定方式が,IADLの能力を適切にスクリーニングできず,自立(非該当)との境界が曖昧になっている点が示唆された。 今後,介護予防施策を一貫したシステムとして構築するためには,介護予防施策の対象者の統合も含めて,基本チェックリストと要介護認定方式の抜本的な見直しが不可欠である。 キーワード 介護予防,要介護認定方式,基本チェックリスト,給付区分,特定高齢者 第53巻第15号 2006年12月 介護保険施設におけるケアマネジメント実践の検証 真辺 一範(マナベ カズノリ) 目的 介護保険施設におけるケアマネジメントの実践内容を概念的モデルとの比較から検証し,施設ケアマネジメントのあり方を模索した。 方法 先行研究に基づきケアマネジメント実践の程度を測るための項目を用い,兵庫県内の介護保険施設491カ所に所属する施設ケアマネジャーを対象として,郵送によるアンケート調査を実施した。 質問紙の作成に際しては,回答者が理解しやすいように各質問項目を介護保険施設の現状に合うよう適切な表現に変更し,その実践度合いを5段階のリッカートスケールでたずねた。 有効回答数(率)は,330名(67. 2%)であった。 調査結果の分析は,施設ケアマネジメントの実践プロセスの枠組みを明らかにするためにそれぞれ因子分析(主因子法・バリマックス回転)を行った。 さらに実際の援助プロセスごとに回答者の属性による違いを明らかにするため,その因子分析で抽出されたそれぞれの因子を従属変数とし,属性を独立変数としたt検定,一元配置分散分析(F検定)および下位検定の多重比較(Tukey法)を行った。 また,因子分析の結果と概念的モデルを比較し,ケアマネジメント実践プロセスに関する分析を行った。 結果 因子分析により抽出された因子は「アセスメント」「モニタリング」「ケース発見」であった。 「アセスメント」に関しては,性別,年齢,基礎資格,基礎資格経験年数(基礎年数),ケアマネ人数,所属施設,勤務形態(専任兼任),事例検討形式の研修受講有無(事例研修)によって有意差がみられた。 特に所属施設においては「老人保健施設(以下,老健)」が「特別養護老人ホーム(以下,特養)」より有意に高かった。 また,「モニタリング」に関しては,担当ケース数,担当者会議の有無,着任経緯によって有意差がみられ,特に担当ケース数では「40~59件」が「0~39件」より有意に高かった。 「ケース発見」に関しては性別,演習形式の研修受講有無,事例検討形式の研修受講有無によって有意な差がみられた。 なお,相談相手の有無や講義形式の研修受講有無ではすべてのプロセスにおいて有意な差はみられなかった。 結論 1)施設ケアマネジメントの特徴は,「アセスメント」とその後に続く「目標設定とケア計画」「ケア計画実施(リンキング)」のプロセスが一体的に連動して実施されており,実践プロセスではその部分が明確に区別されていない。 2)「評価」については,具体的で実効性のある手法を開発し,実践レベルに導入できる取り組みが早急に必要である。 キーワード 施設ケアマネジメント,介護支援専門員の専門性,介護保険制度,施設ケアマネジメント実践の定義,研修システム 第53巻第15号 2006年12月 介護保険施設における施設ソーシャルワークの構造と規定要因 -介護老人福祉施設と介護老人保健施設の相談員業務の比較分析を通して- 和気 純子(ワケ ジュンコ) 目的 介護老人福祉施設と介護老人保健施設における相談員業務の比較分析を通して,介護保険施設における施設ソーシャルワークのあり方を検討するための基礎データを作成することを目的とする。 方法 無作為抽出(系統抽出法)した介護老人福祉施設500カ所および介護老人保健施設500カ所の生活相談員・支援相談員のうち,当該施設で最も経験年数の長い相談員を対象に郵送調査を実施した。 調査時期は,2004年11~12月,回収率は48. 4%である。 30項目の業務内容の頻度を5段階で尋ね,一元配置分散分析によって各業務頻度の比較を行った後,探索的因子分析によって因子構造を把握した。 その上で,各因子得点を従属変数とし,施設特性および相談員特性を独立変数とする重回帰分析を行い,相談員業務を規定する要因の異同について考察した。 結果 介護老人保健施設の相談員は,入退所をめぐる相談・調整業務に多くの時間を費やしているのに対し,介護老人福祉施設の相談員は利用者の日常生活支援や地域社会と関わる幅広い業務により頻繁に従事している。 業務の因子構造では類似点もみられるが,抽出された因子数や因子寄与率に差異が認められた。 各業務因子に影響を与える要因では,介護老人福祉施設の場合は施設特性の影響力が強く,介護老人保健施設では相談員特性のみが規定要因となっていることが判明した。 結論 施設としての役割や機能を異にする介護老人福祉施設と介護老人保健施設であるが,入所者の権利を擁護し,その生活の質を高めるために,いずれの施設にあっても施設ソーシャルワークを担う相談員が果たす役割はますます重要になっていくものと考えられる。 介護保険施設として,利用者のニーズに最も的確に応える相談員業務の設定と必要な専門性の確保が求められる。 キーワード 介護保険施設,介護老人福祉施設,介護老人保健施設,ソーシャルワーク,相談員 第53巻第15号 2006年12月 身体障害者福祉施設の施設職員が認識する 「自立」概念に関する研究 仁坂 元子(ニサカ モトコ) 岡田 進一(オカダ シンイチ) 髙橋 美樹(タカハシ ミキ) 樽井 康彦(タルイ ヤスヒコ) 白澤 政和(シラサワ マサカズ) 目的 本研究は,身体障害者福祉施設の施設職員(施設長を含む)が認識する自立の構造を明らかにすることが目的である。 方法 調査対象者は,近畿2府4県の身体障害者福祉施設150カ所の職員,施設長各1名ずつの計300名であり,調査方法は無記名の自記式郵送調査である。 調査期間は2005年2月14日から3月11日で,有効回答率は66. 0%であった。 調査項目は,基本属性,先行研究から抽出された自立に関連する項目を設定した。 施設職員が認識する自立概念を明らかにするため,分析方法にはバリマックス回転を伴う因子分析(主因子法)を用いた。 結果 本研究の分析から,施設職員が認識する自立概念は,「生活主体者という立場からの自己実現志向」「一個人として尊重されていることへの気づき」「社会制度の選択・開発過程への積極的関与」「身辺および経済面における自助志向」「他者との非依存的な人間関係の構築」の5因子からなることが明らかとなった。 結論 本研究は,自立を「身体的」や「経済的」側面から捉えていくことの限界を示唆した先行研究を支持する結果となった。 そして,施設職員は,自助志向の従来の自立観と自己実現などをキーワードとする新しい自立観という2つの立場を内包していることが明らかとなった。 今後,施設職員は,障害者に対する適切な自立支援を行っていくためにも,何を自立と考えるのかを明確にし,具体的な自立支援の方法を考えていくことが必要となる。 また,従来の自助志向の自立観も否定されるものではないが,その考え方が障害者から必ずしも支持されてきた自立観ではないことから,今日の自立支援の方向性として,個人として尊重されることや社会制度との関わりを意識した支援が求められる。 そして,社会制度の利用を自立と捉えることは,障害者自立支援法に基づいた支援を行っていくにあたり,非常に重要なことであり,障害者に対する「権利擁護」の考え方にもつながるものであると考えられる。 キーワード 身体障害者,施設職員,施設長,自立 第53巻第15号 2006年12月 高齢者のボランティア活動に関連する要因 岡本 秀明(オカモト ヒデアキ) 目的 人口高齢化の進行の中にあって元気な高齢者数も増加しているわが国では,高齢者は社会や地域に貢献する資源であるという観点を持ち,高齢社会を構築していくことが求められる。 本研究では,高齢者のボランティア活動に関連する要因を明らかにすることを目的とした。 方法 大阪市24区のうち8区から無作為抽出し,65~84歳の高齢者1,500人を対象に自記式質問票を用いた郵送調査を実施した。 有効回収数771人のうち,特定項目に欠損値のない671人を分析対象とした。 分析は,ボランティア活動の有無を従属変数としたロジスティック回帰分析を行った。 独立変数は,「家族・経済・他(4変数)」「健康(2変数)」「暮らし方の志向性(7変数)」「技術や経験(2変数)」「社会・環境的状況(2変数)」という5領域の計17変数とし,統制変数は,年齢と性別を投入した。 領域ごとに分析し,次に,統計学的な有意が認められた変数をすべて投入して分析を行った。 結果 ボランティア活動をしている者は24. 0%であり,年1~2回活動している者が最も多かった。 ボランティア活動への関心がある者は58. 8%,活動への参加意向がある者は48. 9%であった。 ロジスティック回帰分析を行った結果,ボランティア活動をしている者の特性として,「中年期にボランティア経験がある」「地域に貢献する活動をしたい」「ボランティア活動情報の認知の程度が高い」(p<0. 001),「技術・知識・資格がある」「親しい友人や仲間の数が多い」(p<0. 01),「主観的健康感が高い」(p<0. 05)ということが明らかになった。 結論 ボランティア活動への関心のある者は6割弱,参加意向のある者は5割弱であるのに対し,実際に活動している者は2割強にとどまっていた。 活動への関心や参加意向のある者を実際の活動に結びつけやすいよう環境を整備していくことにより,ボランティア活動に参加する高齢者が増加することが期待できる。 高齢期以前にボランティア経験を持てるような場の設定や啓発,活動への参加の機会に関する情報を多くの高齢者に認知してもらえる環境を整えていくことなどが求められる。 キーワード 高齢者,ボランティア,社会活動,社会参加 第54巻第1号 2007年1月 子どもの発達の全国調査にもとづく園児用 発達チェックリストの開発に関する研究 安梅 勅江(アンメ トキエ) 篠原 亮次(シノハラ リョウジ) 杉澤 悠圭(スギサワ ユウカ) 丸山 昭子(マルヤマ アキコ) 田中 裕(タナカ ヒロシ) 酒井 初恵(サカイ ハツエ) 宮崎 勝宣(ミヤザキ カツノブ) 西村 真美(ニシムラ マミ) 目的 全国の保育園児の発達状態について実態を調査し,それに基づいた園児用発達チェックリストを開発することを目的とした。 方法 対象は,長時間保育を含む全国98カ所の認可保育所を利用する22,819名の子どもである。 担当保育士が各々の子どもの発達状態について,園児用発達チェックリスト試案を用いて運動発達(粗大運動,微細運動),社会性発達(生活技術,対人技術),言語発達(表現,理解)の6領域,各領域32項目,全192項目について評価した。 すべての項目について,10%の子どもが実施可能となる月齢(10パーセンタイル値),50%の子どもが可能となる月齢(50パーセンタイル値),90%の子どもが可能となる月齢 90パーセンタイル値)を算出した。 結果 すべての項目について,10パーセンタイル値,50パーセンタイル値,90パーセンタイル値が試案の序列に添った形で抽出され,また基準月齢が10~90パーセンタイル値の範囲内にあることが確認された。 信頼性は各領域で82. 5~97. 9%であった。 結論 この園児用発達チェックリストが,現在の日本における園児の発達を評価する指標として妥当であることが示された。 キーワード 子どもの発達,保育,評価,園児,全国 第54巻第1号 2007年1月 高齢者を対象とした地域における運動教室の医療経済効果 神山 吉輝(カミヤマ ヨシキ) 白澤 貴子(シラサワ タカコ) 小出 昭太郎(コイデ ショウタロウ) 高橋 英孝(タカハシ エイコウ) 川口 毅(カワグチ タケシ) 久野 譜也(クノ シンヤ) 目的 地域における高齢者を対象にした運動教室について,開始前1年間と開始後の2年間以上のデータを用い,3年間以上の年間医療費の推移を示した形で,医療経済評価を行うことを目的とした。 方法 新潟県M市,富山県S市,埼玉県K市,愛媛県W町の健康運動教室参加者のうちの国民健康保険の被保険者(以下,国保加入者)を運動群とするとともに,国保加入者の中から運動教室に参加していない約3倍の人数を対照群として抽出し,両群の年間の医療費の推移を比較した。 医療費の増減の総和を明らかにするために,各年の1人当たり医療費をみるだけではなく,教室開始前の医療費に教室開始後の年間医療費を次々に加えていく累積医療費を算出し,運動群と対照群とで比較を行った。 結果 4市町において,運動群は対照群に比較して,運動教室の開始前から医療費が低いものの,累積医療費でみると,教室開始1年目,2年目とその差が広がっていくことが示された。 結論 教室開始前と開始後2年間以上の国民健康保険の医療費データを用い,運動群と対照群を比較することで,地域における高齢者を対象とした運動教室による医療経済効果の可能性が示唆された。 キーワード 高齢者,運動教室,筋力トレーニング,医療経済 第54巻第1号 2007年1月 地域福祉に対するコミュニティワーカーの意識構造 谷川 和昭(タニカワ カズアキ) 目的 地域福祉が学問として生誕したのは1970年代のことであるが,地域福祉の推進を専門とするコミュニティワーカーの意識構造を手がかりとして,未だ定かとなっていない地域福祉とは何かを明らかにすることが本研究の目的である。 そのため地域福祉の構成要件を提起し,その体系化の可能性について検討した。 方法 市区町村社会福祉協議会のコミュニティワーカーへの郵送調査(2003年2~3月)を行い,分析項目のすべてに欠測のない222票のデータを用いた。 探索的因子分析の手法を用いて,最初に地域福祉に関わる因子の抽出と解釈を行い,続いて地域福祉計画に関わる因子の抽出と解釈を行った。 また,両者間の関連の有無を相関分析によって確認した。 その後,地域福祉に関する質問33項目と地域福祉計画に関する質問32項目を合成した地域福祉概念に関する65項目の質問項目を用いて一次因子分析を行い検討した。 次に,この一次因子分析で析出された因子構造についてさらなる知見を得るため,二次因子分析を行い,因子の抽出と解釈を試みた。 また,一次因子分析による構成因子の特徴について考察するためクラスター分析を行った。 結果 地域福祉に関わる因子,地域福祉計画に関わる因子のいずれも抽出とその解釈が可能であった。 また地域福祉と地域福祉計画との関連が認められた(r=0. 834,p<0. 001)。 合成した地域福祉概念についての一次因子分析の結果,10個の因子が抽出され,その解釈は可能であった。 これら10個の因子による二次因子分析の結果も解釈が可能であった。 クラスター分析の結果,関係性が見いだせそうな組合せや独立した因子が明らかになった。 結論 分析結果から,「地域福祉の原理・原則」「新旧社会政策との調整」「予防的社会福祉の増進」「地域社会サービスの整備」「地域のコミュニケーション」「福祉のネットワーキング」「地域福祉圏域の設定」「福祉サービス利用への支援」「社会福祉の空間づくり」「地域における福祉の方向性」が地域福祉の構成要件として示された。 また,これらは「制度・政策・施策」「実践・方法・理念」の2つに集約された。 さらに,以上の要件のうち,「地域における福祉の方向性」が地域福祉の推進にとって重要と考えられた。 キーワード 地域福祉,地域福祉計画,地域福祉の構成要件,コミュニティワーカー,意識構造 第54巻第1号 2007年1月 東北地方の在宅高齢者における 地域・家庭での役割の実態と関連要因の検討 高橋 和子(タカハシ カズコ) 安村 誠司(ヤスムラ セイジ) 矢部 順子(ヤベ ジュンコ) 芳賀 博(ハガ ヒロシ) 目的 「虚弱高齢者」から「極めて元気な高齢者」まで,その体力レベルに応じた役割の創造と開発を目的に,東北地方における在宅高齢者の地域・家庭での役割の実態把握を行い,現状での役割にはどのような要因が影響しているのかを明らかにすることで,高齢者の役割の創造・開発における課題を検討する。 方法 福島県S市A地区の高齢者から無作為抽出した693人を対象に,郵送法による質問紙調査を行った。 高齢者の役割については,収入の伴う仕事の有無,シルバー人材センター・高齢者事業団の仕事の経験の有無,家の中での役割,地域の団体・組織・会とのかかわり,現在または最近行ったボランティア活動を把握した。 分析方法は,各質問の回答を2項目に分類して行った。 最初に各変数についてFisherの直接法を用いて性差を確認した。 次に役割の有無による属性の比較を行い,p値が0. 05未満となったものを投入し,変数減少法による多重ロジスティック回帰分析を行った。 結果 高齢者の役割のうち,収入の伴う仕事は女性よりも男性で有している割合が有意に高かった。 家の中での役割は,男性は「大工仕事や家の修繕」,女性は家事全般において実施している割合が高く,男女で有意差が認められた。 地域の団体・組織・会とのかかわりは,男女とも「町内会・自治会」「老人会・高齢者団体」に入っている割合が高かった。 ボランティア活動は,男女とも「美化・環境整備の活動」「農作業に関する活動」の実施割合が高かった。 高齢者の属性による役割の有無の比較では,収入の伴う仕事,家の中での役割,地域の団体・組織・会とのかかわり,ボランティア活動ともに,日常生活自立度のレベルにより役割の有無に差が認められ,自立者で割合が高かった。 また,役割を目的変数とした多重ロジスティック回帰分析の結果においても,現在の役割の有無には日常生活自立度が大きく影響していた。 結論 現在,高齢者が担っている家の中や地域での役割は,性や日常生活自立度で違いがあり,日常生活で介助を要する者は役割を持たない者が多いことがうかがわれた。 新たな役割の創造・開発を行う上で,性・年齢とともに高齢者の活動レベルに応じた役割を検討することの重要性が確認された。 キーワード 社会参加,社会活動,役割,在宅高齢者 第54巻第1号 2007年1月 高齢者福祉活動の必要性に関する地域住民の意識 渡辺 裕一(ワタナベ ユウイチ) 目的 近年,地域の高齢者福祉問題の解決に向けた地域住民の参加への期待は高まっている。 しかし,多くの地域住民の力は潜在化し,その期待にこたえられる状況にあるとは言えない。 地域住民が主体的にこれらの問題を共有し,解決に向けて働きかけることが求められており,その導入に高齢者福祉活動の必要性意識を持つという過程があると考えられる。 そこで,本研究では高齢者福祉活動の必要性に関する地域住民の意識の現状を把握し,その意識に影響を与えている要因を探索的に明らかにすることを目的とした。 独立変数には,「性別」「年齢」「家族構成」「配偶者」「学歴」「永住希望」「広報紙(市・区・自治会レベル)」「地域の集まり」「住居」「仕事の有無」「65歳以上の方と同居しているか」「介護の必要な方と同居しているか」を用いた。 結果 「介護予防」との間に有意な関連が認められた独立変数は,「学歴」「年齢」「地域の集まり」「配偶者」「住居」「仕事の有無」「広報紙(市・区・自治会レベル)」であった。 「高齢者交流」と各独立変数との間には有意な関連は認められず,「介護者交流」は,「年齢」「家族構成」「地域の集まり」「65歳以上の方と同居しているか」との間に有意な関連が認められた。 「学習機会」は「地域の集まり」「広報紙(市・区レベル)」との間に有意な関連が認められた。 結論 高齢者福祉活動の必要性意識に影響を与えている要因は,内的要因(年齢,性別,その他)と外的要因(広報紙,地域の集まり,その他)の2つに分類することができる。 内的要因に外的要因を重ねていく働きかけによって,地域住民の高齢者福祉活動に関する必要性意識を高めていくことができる可能性が示唆されたと言える。 キーワード 高齢者福祉活動,必要性意識,共有,地域住民,参加,エンパワメント 第54巻第2号 2007年2月 胃がんと肺がんにおける死亡年齢と罹患年齢の年次推移 高橋 菜穂(タカハシ ナホ) 川戸 美由紀(カワド ミユキ) 亀井 哲也(カメイ テツヤ) 谷脇 弘茂(タニワキ ヒロシゲ) 栗田 秀樹(クリタ ヒデキ) 橋本 修二(ハシモト シュウジ) 目的 胃がんと肺がんにおいて,人口構成の変化を調整した上で,死亡率と罹患率とともに,死亡年齢と罹患年齢の年次推移を検討した。 方法 1975~1999年の性・年齢階級別の死亡数と罹患数から,年齢調整死亡率,年齢調整罹患率,調整平均死亡年齢と調整平均罹患年齢を算出した。 結果 胃がんにおいて,1999年の平均死亡年齢は男で70. 9歳と女で73. 0歳,平均罹患年齢は男で67. 7歳と女で69. 7歳であった。 年齢調整死亡率と年齢調整罹患率は年次とともに低下傾向,調整平均死亡年齢と調整平均罹患年齢は上昇傾向であった。 肺がんにおいて,1999年の平均死亡年齢は男で72. 4歳と女で73. 8歳,平均罹患年齢は男で71. 1歳と女で71. 6歳であった。 年齢調整死亡率と年齢調整罹患率は上昇傾向であったが,1990年ごろから上昇の鈍化傾向あるいは横ばい傾向がみられた。 調整平均死亡年齢と調整平均罹患年齢は上昇傾向であったが,1990年ごろから男で上昇の鈍化傾向,女で横ばい傾向がみられた。 結論 胃がんと肺がんにおいて,死亡年齢と罹患年齢が年次とともに大きく変化していることを示した。 キーワード 胃がん,肺がん,死亡年齢,罹患年齢,年次推移 第54巻第2号 2007年2月 地区単位のソーシャル・キャピタルが主観的健康感に及ぼす影響 藤澤 由和(フジサワ ヨシカズ) 濱野 強(ハマノ ツヨシ) 小藪 明生(コヤブ アキオ) 目的 地区を単位としたソーシャル・キャピタル変数が全体的健康感に対してどの程度,影響を及ぼしているかに関して明らかにすることを目的とした。 方法 日本国内に居住する満20歳以上75歳未満の男女3,000人を調査対象者とし,抽出方法は層化二段無作為抽出法を用いた。 2004年2月に調査員による面接調査を実施し,1,910人(男性870人,女性1,040人)から回答を得た(回収率63. 7%)。 分析方法は,相関分析および性別,年齢,慢性疾患の有無,暮らし向き,ソーシャル・キャピタル(6項目)を独立変数,全体的健康感を従属変数とする重回帰分析を行った。 なお,分析においては,分析単位を地区としていることから,各変数について平均値および割合を用いて地区単位への集約を行った。 結果 全体的健康感と相関が示されたソーシャル・キャピタルは5項目であり,さらに重回帰分析を行った結果,「私の住んでいるこの地区はとても安全である」「私の近所の誰かが助けを必要としたときに,近所の人たちは手をさしのべることをいとわない」「急病の時など,すぐにかかれる医療機関があって安心できる地域である」「私の地域では,お互いに気軽に挨拶を交し合う」において統計的に有意な関連が示された(p<0. 05)。 なお,慢性疾患率および暮らし向きについても有意な関連が示された(p<0. 05)。 結論 本結果から,地区単位のソーシャル・キャピタルは,他の変数とともに全体的健康感に一定の影響を与えていることが明らかとなった。 慢性疾患率や暮らし向きなどの変数が全体的健康感に影響を与えているのは非常に理解しやすいものであるが,これらの変数と同様に複数のソーシャル・キャピタル変数が全体的健康感に同程度の影響を与えていた点が注目に値する。 今後は,ソーシャル・キャピタル概念の理論的検討,その健康への影響プロセス,そして規定要因としての分析上の問題を克服する必要があると考えられる。 キーワード ソーシャル・キャピタル,主観的健康感 第54巻第2号 2007年2月 都道府県における母子保健統計情報の収集・利活用状況に関する研究 鈴木 孝太(スズキ コウタ) 薬袋 淳子(ミナイ ジュンコ) 成 順月(チェン シュンユエ) 田中 太一郎(タナカ タイチロウ) 山縣 然太朗(ヤマガタ ゼンタロウ) 目的 現在わが国において,市町村から都道府県,国へと伝達されている母子保健統計情報は,人口動態調査,地域保健・老人保健事業報告のみである。 しかしながら今後,「健やか親子21」で提示している母子保健の取り組みなどについて目標値の設定・評価などを行う際には,それら以外の母子保健統計情報が必要である。 そこで本研究では,都道府県における母子保健統計・情報の集計実態について調査し,その現状を把握することを目的とした。 方法 都道府県の母子保健担当者の連絡先(E-mailアドレス)を,都道府県ホームページなどから検索した。 E-mailを用いて,担当者に母子保健統計情報の収集・利活用状況に関する調査票を送付し,回答をE-mailまたはFAXで回収した。 具体的な調査内容は,市町村における母子保健統計情報を都道府県が把握・集計するシステムの有無,その情報の内容,乳幼児健診の形態(集団・個別),情報公開の有無などである。 結果 回答は全都道府県から得られ,45都道府県(95. 7%)において市町村で集計したデータをまとめていた。 しかし,情報内容については,乳幼児健診の受診率(100%)およびその内容・結果(77. 8%)をほとんどの都道府県で集計している一方,妊婦の喫煙(6. 7%)や小児の事故(15. 6%)についてはあまり集計されていなかった。 このように集計している情報の内容は都道府県によりかなりばらつきがあり,また政令市については政令市以外の市町村と一括して集計していない道府県が大半であった。 結論 国としてまとめている人口動態調査,地域保健・老人保健事業報告以外の母子保健統計情報について,45都道府県において市町村が集計した情報をまとめていたが,その内容にはばらつきがあるため,調査内容について今後より精査する必要がある。 また今回の研究結果は,様々な母子保健の指標を評価するのに必要な,情報の標準化・規格化を目指すうえでの基礎資料となりうる。 キーワード 母子保健,乳幼児健診,健やか親子21,統計情報,情報公開 第54巻第2号 2007年2月 少子化の人口学的要因と社会経済的要因の解析 小島 里織(コジマ サオリ) 上木 隆人(ウエキ タカト) 柳川 洋(ヤナガワ ヒロシ) 目的 わが国の2000年出生率は1970年の約半分までに低下し,出生率低下の主な原因として晩婚化・晩産化が指摘される。 代表的な社会経済指標を取り上げ,出生率などとの相関を検討して,出生率低下に影響を及ぼす社会経済的要因を明らかにする。 方法 1970年から2000年までの人口動態統計と国勢調査のデータをもとにして,わが国の出生率などの年次推移を1970年を1とした比で算出した。 次に,25~29歳と35~39歳の有配偶率と有配偶出生率について,社会経済指標である第三次産業就業人口割合,15~44歳女子労働力,1人当たり県民所得との相関を,また20~24歳の有配偶率と有配偶出生率について進学率との相関を求めた。 結果 1 2000年の出生率は1970年と比べて,20~24歳と25~29歳では半減し,30~34歳と35~39歳では低下の後で上昇した。 有配偶率は全体に低下傾向で,20~24歳と25~29歳で半減した。 有配偶出生率は20~24歳と25~29歳で横ばい,30~34歳と35~39歳で低下の後に上昇した。 2 有配偶率や有配偶出生率と社会経済指標との相関は,25~29歳有配偶率は第三次産業就業人口割合と,25~29歳有配偶出生率は女子労働力や1人当たり県民所得と,35~39歳の有配偶率と有配偶出生率は第三次産業就業人口割合と相関がみられた。 20~24歳の有配偶率と有配偶出生率は進学率と負の相関を示した。 3 社会経済指標間の相関は,女子労働力は第三次産業就業人口割合や進学率と負の相関,1人当たり県民所得は進学率と正の相関を示した。 結論 女子労働力,第三次産業就業人口割合,1人当たり県民所得,進学率などの指標に現れる社会経済的要因が相互に関係しつつ,晩婚化,晩産化をもたらしたと考えられる。 出生率低下への対応は,女子労働の問題や,出産・育児や子どもの教育に関連する経済的負担,住宅事情に関連する問題などを年代ごとにとらえる必要があろう。 キーワード 出生率,有配偶率,有配偶出生率,第三次産業就業人口割合,女子労働力,進学率 第54巻第5号 2007年5月 都道府県別たばこ消費本数と主要死因別標準化死亡比との関連 竹森 幸一(タケモリコウイチ) 目的 都道府県別たばこ消費本数と主要死因別標準化死亡比(以下SMR)との関連を検討することにより,都道府県における喫煙の健康影響について探求することを目的とした。 方法 各都道府県の2002年,2003年,2004年のたばこ売渡本数から返還本数と課税免除本数を差し引いた値を同年の各都道府県男女別15歳以上人口で除して,男女別15歳以上1人当たりたばこ消費本数を求めた。 都道府県の男15歳以上1人当たりたばこ消費本数の年次間の相関と平均値の差をみた。 都道府県別15歳以上1人当たりたばこ消費本数と全死因,悪性新生物(総数,胃,大腸,肝及び肝内胆管,気管・気管支及び肺),心疾患(総数,急性心筋梗塞)および脳血管疾患の各SMRとの相関係数を男女別に求めた。 結果 男15歳以上1人当たりたばこ消費本数は年次間に高い相関がみられ,2002年から2004年にかけて有意に低下していた。 15歳以上1人当たりたばこ消費本数との間に,男の2002年で全死因,気管・気管支及び肺の各SMR,2003年で全死因,悪性新生物総数,気管・気管支及び肺の各SMR,2004年で気管・気管支及び肺のSMRに有意な正相関がみられた。 女では2003年で悪性新生物総数のSMRに有意な正相関がみられた。 15歳以上1人当たりたばこ消費本数と基本健康診査喫煙率,国民生活基礎調査喫煙率および国民栄養調査から計算した喫煙者指数との間に有意の正相関がみられた。 結論 都道府県別たばこ消費本数と主要死因別SMRとの相関関係から,気管・気管支及び肺などの主要死因で喫煙の影響を否定しえない結果が得られた。 キーワード たばこ消費本数,都道府県別標準化死亡比,悪性新生物,全死因 第54巻第2号 2007年2月 中都市在住高齢者の手段的ソーシャルサポート選好度とその構造 -大都市在住高齢者との比較の視点に基づいた考察- 権 泫珠(コン ヒョンジュ) 目的 中都市在住高齢者が自分自身に手段的ソーシャルサポートが必要になったとき,誰に対して,どの程度の支援を求めたいと考えているのかといった手段的ソーシャルサポート選好度およびその構造を明らかにすることを目的とした。 また,大都市在住高齢者を対象とした同様の先行研究の結果と比較し,高齢者の選好度の特徴を考察する。 方法 愛知県A市に在住する65歳以上の高齢者のうち,900人を無作為抽出し,自記式質問紙を用いた郵送調査を行った。 調査期間は,2004年11月1~15日であり,有効回収率は51. 6%(464票)であった。 分析方法は,手段的ソーシャルサポート選好度の構造を把握するために因子分析を行った。 また,因子ごとの平均値からそれぞれのサポート源に対する選好の程度を把握した。 その結果を大都市高齢者対象の先行研究と比較した。 結果 手段的サポートに対する選好度は,家事や介護サポートを家族に求めたいという選好度が最も高く,次いで,介護や経済サポートを行政や福祉機関に求めたいという選好度が高かった。 また,因子構造は,「フォーマルサポート源への選好」「家族以外のインフォーマルサポート源への選好」「家族への選好」「経済サポート/フォーマル機関への選好」の4因子となった。 因子ごとの平均値は,「家族への選好」が最も高く,次いで「経済サポート/フォーマル機関への選好」「フォーマルサポート源への選好」「家族以外のインフォーマルサポート源への選好」の順であった。 結論 研究結果は大都市高齢者を対象とした先行研究とも一致するものであり,高齢者の手段的ソーシャルサポート選好度の構造および選好順位は地域間での違いはみられず,一般化できる可能性が示唆された。 一方,「家族への選好」因子の平均値は,中都市高齢者の方で高く,地域差がみられた。 キーワード 中都市在住高齢者,ソーシャルサポート選好度,手段的ソーシャルサポート,大都市在住高齢者,地域差 第54巻第3号 2007年3月 静岡県における自殺死亡の地域格差および社会生活指標との関連 久保田 晃生(クボタ アキオ) 永田 順子(ナガタ ジュンコ) 杉山 眞澄(スギヤマ マスミ) 藤田 信(フジタ マコト) 目的 本研究の目的は,自殺死亡の低率県である静岡県内の自殺死亡の地域格差について確認するとともに,自殺死亡に関連する社会生活指標を検討し,今後の静岡県における自殺予防施策の基礎資料を得ることとした。 方法 静岡県内における男女別の自殺死亡標準化死亡比(SMR)(1999~2003年)をマップ化して,地域格差を確認した。 また,地域の社会生活指標を収集し,自殺死亡SMRとの関連について,主成分分析および重回帰分析を行い検討した。 結果 静岡県内の自殺死亡SMRは,男女とも同様の分布を示し,市よりも町の方が高い値を示した。 また,女性では自殺死亡SMRが200を超える地域が3町あり,男性より地域間の格差が認められた。 本研究の社会生活指標を主成分分析した結果,第1主成分は都市化の程度を分ける指標,第2主成分はサービス産業と生活の豊かさを分ける指標として解釈された。 さらに,自殺死亡SMRを加えた分析においても,因子構造は同様であった。 自殺死亡SMRを目的変数に,社会生活指標を説明変数に用いた重回帰分析を行った結果,男性では「小売店数(人口千対)」,女性では「離婚率(人口千対)」「第二次産業就業者比率(%)」「健康相談延べ人数(人口千対)」が選択された。 このうち,自殺死亡SMRとの単相関では,男性の「小売店数(人口千対)」のみ,有意な正の相関を認めた。 結論 静岡県の自殺死亡SMRは,男女とも都市化の程度が影響することが示唆された。 この状況は,秋田県,岐阜県との報告と同様であり,自殺予防には過疎地域への働きかけが重要であると考えられた。 キーワード 自殺,標準化死亡比,社会生活指標,地域格差 第54巻第3号 2007年3月 青森県および長野県の市町村別たばこ売渡本数と 主要死因別標準化死亡比との関連 竹森 幸一(タケモリ コウイチ) 目的 青森県および長野県の市町村別たばこ売渡本数と主要死因別標準化死亡比 以下SMR との関連を検討することにより, 市町村における喫煙の健康影響について探求することを目的とした。 方法 各市町村の2002年,2003年,2004年のたばこ売渡本数を同年の男女別15歳以上人口で除して,男女別15歳以上1人当たりたばこ売渡本数を求めた。 青森県および長野県の男15歳以上1人当たりたばこ売渡本数の年次間の相関と平均値の差をみた。 また各年の青森県と長野県の男15歳以上1人当たりたばこ売渡本数の県間の差をみた。 15歳以上1人当たりたばこ売渡本数と全死因,悪性新生物 総数,胃,大腸,肝及び肝内胆管,気管・気管支及び肺),心疾患 総数,急性心筋梗塞),脳血管疾患のSMRとの相関係数を青森県と長野県について男女別に求めた。 結果 男15歳以上1人当たりたばこ売渡本数は両県とも年次間に高い相関がみられ,2002年から2004年にかけて有意に低下し,2002年,2003年,2004年ともに青森県が長野県より有意に高かった。 15歳以上1人当たりたばこ売渡本数との間に,青森県の場合,男の2002年で悪性新生物総数,大腸,2003年で悪性新生物総数,胃,大腸,脳血管疾患,2004年で全死因,悪性新生物総数,胃,大腸,脳血管疾患に有意な正相関がみられた。 女では関連がみられなかった。 長野県の場合,男の2002年で胃,大腸,2003年で胃,大腸,2004年で大腸に有意な正相関がみられ,女の2002年で悪性新生物総数,大腸,2003年で悪性新生物総数,大腸,2004年で悪性新生物総数,大腸に有意な正相関がみられた。 結論 市町村別たばこ売渡本数と主要死因別SMRとの相関関係から,多くの主要死因で喫煙の影響を否定しえない結果が得られた。 キーワード たばこ売渡本数,市町村別標準化死亡比,悪性新生物,心疾患,脳血管疾患 第54巻第3号 2007年3月 医療費からみた国保ヘルスアップモデル事業の評価 -福島県二本松市における個別健康支援プログラムの検討- 小川 裕(オガワ ユタカ) 安村 誠司(ヤスムラ セイジ) 目的 生活習慣病の一次予防を目的とした個別健康支援プログラムに基づいて実施されたヘルスアップモデル事業を2年間の追跡により医療費の面から評価する。 方法 福島県二本松市における基本健康診査または国保人間ドック受診者のうち,脂質,血糖,血圧,BMIのいずれかで「要指導」または「要医療」であった者をモデル事業の対象者として介入群と対照群を設定し,介入年1年間とその後2年間の追跡が可能であった40~69歳のそれぞれ119人についてレセプト情報に基づき医療費に関する分析を行った。 結果 受療状況では,有意ではなかったが「レセプトが認められなかった」者が介入群では経時的に増え,介入後2年には対照群より多かったこと,「入院レセプトが認められた」者がいずれの年にも対照群に多く,その差が介入年より介入後に大きかったことが介入効果を示唆する結果であった。 また,レセプト件数,点数,日数の検討では,入院外のレセプト点数が対照群のみで有意な増加を示し,入院外と入院を合計した件数,点数,日数のいずれも介入2年後の増加率が対照群で高かった。 このうち点数の年齢別検討では,60歳以上で介入効果が大きいことが示唆された。 さらに介入年に入院外レセプトのみ認められた者について個人ごとにレセプト件数,点数,日数の変化を比較したところ,いずれも介入後に減少した者の割合は介入群で高く,60歳以上ではレセプト件数,点数,日数における減少者の割合が介入後2年でも維持される傾向がみられた。 介入年における入院外点数の「高」・「低」別に比較した検討では,「高」点数群において介入効果が高く,効果が持続される可能性が示唆された。 結論 実施した個別健康支援プログラムが,医療費関連指標を低下させること,とくに60歳代で入院外レセプト点数の比較的高い群で介入効果が大きくなる可能性が示唆された。 キーワード 生活習慣病,一次予防,個別健康支援プログラム,医療費,ヘルスアップモデル事業 第54巻第3号 2007年3月 国民栄養調査の解析による「健康日本21」目標達成の予測 -肥満を中心に- 若林 チヒロ(ワカバヤ シチヒロ) 尾島 俊之(オジマ トシユキ) 萱場 一則(カヤバ カズノリ) 三浦 宜彦(ミウラ ヨシヒコ) 柳川 洋(ヤナガワ ヒロシ) 目的 「健康日本21」で挙げた項目は現状のまま推移して2010年までに目標を達成するか否かを性年齢階級別の人口集団ごとに検討した。 特に肥満者割合とそれに関連する栄養・食生活,身体活動・運動の項目を中心に,今後強化すべき対策について検討した。 0 ,脂肪エネルギー比,日常生活における運動習慣のある者の割合,日常生活における歩数について性年齢階級別に1995年から2003年までの値で回帰分析を行い,2010年における予測値を算出して,「健康日本21」目標達成の可否を検討した。 結果 肥満者割合について2010年までに目標を達成できるのは女性の40歳代以下のみで,男性のすべての年齢階級と女性の50歳代以上では目標を達成することができないと予測された。 特に30歳代以上の男性の肥満者割合は増加傾向が強く,2010年には40%近い値になると予測された。 脂肪エネルギー比では40歳代以上,運動習慣者割合では男女共60歳代のみ,日常生活における歩数では20歳代男性と40歳代女性のみが目標を達成できると予測され,他の性年齢階級では目標達成は困難と予測された。 肥満者割合で目標達成できないと予測された人口集団のうち,脂肪エネルギー比では男性30歳代以下,運動習慣者割合では男性50歳代以下と女性50歳代,日常生活における歩数では男性30歳代以上と女性50歳代以上では目標達成できないと予測され,これら人口集団に対して対策を強化する必要があると考えられた。 結論 「健康日本21」で肥満者割合について挙げた目標の達成は大部分の性年齢階級で困難と予測された。 肥満に関連する栄養・食生活や身体活動・運動に関する項目でも目標達成困難な集団が多く,今後集団ごとにきめ細かな対策をとりいれる必要がある。 キーワード 健康日本21,国民栄養調査,肥満,健康政策,栄養・食生活,身体活動・運動 第54巻第3号 2007年3月 吹田市基本健診での生活習慣とメタボリックシンドロームに関する研究 奈倉 淳子(ナグラ ジュンコ) 小久保 喜弘(コクボ ヨシヒロ) 川西 克幸(カワニシ カツユキ) 小谷 泰(コタニ ヤスシ) 伊達ちぐさ 岡山(ダテ チグサ) 明 友池(オカヤマ アキラ) 目的 都市住民のメタボリックシンドローム(Mets)有病率とMets定義病態に関連する生活習慣の特徴を性・年齢ごとに評価した。 方法 平成16年度吹田市基本健康診査受診者のうち問診票で有効回答が得られた30~89歳の26,522人の男女を対象とした。 Mets有病率,Mets有病者での構成因子の有病率を求め,さらにMetsと関連する生活習慣の検討を行った。 結果 30~89歳でのMetsの有病率は,男性19. 4%,女性10. 7%であった。 Mets有病者のうち,若年群では肥満の有病率が高く(30歳代:男性82%,女性90%),高齢群では血圧高値の有病率が高い傾向にあった(80歳代:男性99%,女性98%)。 生活習慣では,「他の人より食べる量が多い」「早食いである」「睡眠が不規則である」「立位・歩行時間が1時間未満である」は,男女ともすべての年代でMetsと関連していた。 4項目のいずれにも該当しない対象者と1項目該当の対象者のMetsの多変量調整オッズ比は1. 29~2. 17の値をとり,2個では1. 66~4. 60,3個では3. 13~5. 09で,4個すべてに該当する対象者では5. 36であった。 結論 Metsの構成因子は年齢により異なっていたが,過食・早食い・不規則な睡眠・運動不足はすべての年代でMetsとの関連がみられ,これらを多く満たす人ほどMetsのリスクが高かったことから,これら4つの項目はMetsの予防・改善の保健指導の項目となりうる生活習慣と考えられた。 キーワード メタボリックシンドローム,有病率,生活習慣 第54巻第4号 2007年4月 生活習慣病予防事業による医療費への影響 亀 千保子(カメ チホコ) 馬場園 明(ババゾノ アキラ) 石原 礼子(イシハラ レイコ) 目的 現在,多くの自治体で生活習慣病予防事業が行われているが,無作為比較対照研究による介入前後での医療費抑制効果の報告はされていない。 そこで,本研究では,無作為比較対照研究による予防事業の介入前,介入中,介入後での医療費とその変化を比較し,介入による医療費への影響を明らかにすることを目的とした。 方法 対象者を目標達成型プログラム介入A群,従来型プログラム介入B群の2群に無作為抽出法により割付け,2群間および両群合わせた全体で,介入前々年,前年,介入年の介入前中後の3期間における平均入院外医療費(歯科は除く)についてウィルコクソン符号付順位検定により比較を行った。 なお,医療費は年齢に比例して高くなるため,医療費変化を介入前中後で比較し,増加抑制効果をみることで年齢による影響を考慮した。 群間差の比較は,ウィルコクソン順位和検定を行った。 介入中期間においては,傷病マグニチュード按分法(PDM法)ver. 3を用いて,傷病別にも同様の解析を行った。 さらに,複数・多・重複受診件数およびこれら受診件数の変化についても同様の解析を行った。 結果 介入中期間の平均入院外医療費は,両群および全体において平成14年度と比べて15年度には有意に増加,平成15年度と比べて16年度には,有意差はないが減少傾向がみられた。 医療費変化では,介入中期間の全体においてのみ有意な増加抑制が認められた。 有意な増加抑制は他の期間ではどの群においても認められなかった。 介入中期間における傷病別分析では,両群および全体で有意な入院外医療費減少と増加抑制が認められた傷病に重症な傷病は含まれていなかった。 結論 両群および全体において重症でない疾患の有意な平均入院外医療費減少と増加抑制につながり,複数受診件数も介入A群と全体において有意な増加抑制が認められた。 しかしながら,4カ月間の介入では,有意差をもって平均入院外医療費減少は示せず,介入中期間では全体における増加抑制効果は有意差をもって示せたもののプログラムA,B間の差を有意に示すに至らなかった。 生活習慣病におけるこれらの効果を明らかにするためには,無作為比較対照試験での長期間の追跡が必要であると考えられる。 方法 調査対象者は,A県で要介護高齢者を居宅で介護する家族介護者2,262名であった。 そして「介護に関する話し合いや勉強会」9項目(栄養,介護の仕方,介護保険,認知症の方との関わり方,認知症の知識,介護サービス,医療サービス,身体的な健康管理,介護予防教室のような集まり)の参加の有無(経験群,未経験群),未経験群の参加への意思(経験希望群,無関心群),家族介護者の主観的QOL尺度,要介護高齢者の認知障害の程度を把握するための日本語版SMQ等を調査した。 結果 1,462名の調査票が回収され(回収率64. 6%),調査項目に未回答のあった671名と日本語版SMQにおいて非認知症と評価された55名を除いた736名の認知症高齢者の家族介護者を分析対象とした。 介護に関する話し合いや勉強会の参加状況は,経験群で10. 7~23. 9%,未経験群のうち無関心群は40. 4~54. 4%,経験希望群は31. 1~45. 5%と参加経験者の割合が低かった。 介護に関する話し合いや勉強会9項目の参加状況および参加に対する意思を独立変数,主観的QOL尺度総得点を従属変数,主観的QOLと相関係数において有意であった家族介護者の年齢,家族介護者の健康状態,日本語版SMQを統制変数として共分散分析を行った結果,全項目において有意差が認められ,多重比較の結果から,特に認知症の方との関わり方,認知症の知識,介護の仕方の項目において,無関心群は経験群に比べて主観的QOLが低いことが示唆された。 結論 特に無関心群の家族介護者が,認知症高齢者の介護をひとりで抱え込まず,認知症の疾患や関わり方の知識を得る場,家族介護者同士の交流の場など介護に関する話し合いや勉強会に参加意欲や意思をもち,積極的に参加していくとともに,主観的QOLを高めていくこと,そのための効果的な開催方法を考案することが課題として考えられた。 キーワード 認知症高齢者,介護に関する話し合いや勉強会,家族介護者,主観的QOL 第54巻第4号 2007年4月 母親の育児関連Daily Hasslesと児に対するマルトリートメントの関連 唐 軼斐(ト ウジヒ) 矢嶋 裕樹(ヤジマ ユウキ) 中嶋 和夫(ナカジマ カズオ) 目的 母親の育児に関連したDaily Hassles(DH)の経験頻度およびストレス強度を明らかにし,Hillsonらのモデルに基づき,育児関連DHの経験頻度およびストレス強度と,虐待やネグレクトといったマルトリートメント(不適切な関わり)との関連を検討することを目的とした。 方法 2004年11月現在,S県S市内の協力の得られた保育所16カ所を利用していたすべての母親1,700人を対象に,無記名自記式による質問紙調査を実施した。 育児関連DHの測定には,Parenting Daily Hassles Scale(PDH)を日本語訳して使用した。 母親の児に対するマルトリートメントは,母親の子どもに対するマルトリートメント傾向指標を用いて測定した。 統計解析には構造方程式モデリング(Structural Equation Modeling: SEM)を使用し,育児関連DHの経験頻度が,それら育児関連DHのストレス強度を介して,児に対するマルトリートメントの実施頻度に影響を与えるといったモデルを構築し,そのモデルのデータに対する適合度と各変数間の関連を検討した。 結果 育児関連DHの経験率をみると,ほとんどの項目において8割以上の母親が経験していた。 また,育児関連DHに対するストレス強度得点も,米国の母親を対象とした先行研究とおおむね一致していた。 SEMの結果,育児関連DHの下位領域「育児タスク」の経験頻度が高い者ほど,ストレスを強く感じ,心理的虐待およびネグレクトの発生頻度が高かった。 また,育児関連DHの下位領域「挑戦すべき児の行動」の経験頻度が高い者ほど,ストレスを強く感じ,身体的虐待と心理的虐待の発生頻度が高かったことが明らかとなった。 考察 育児タスクが心理的虐待やネグレクトを促進していたことから,育児ストレス軽減のために,育児の代行機能を有する託児サービスの重要性が示唆された。 また,児の挑戦すべき行動が身体的虐待と心理的虐待と関連していたことから,母親が児の挑戦すべき行動に適切に対応できるように,地域育児教室や両親教室等の機会を利用して,児の発育や発達に関する情報提供や児の挑戦的な行動に対する母親の受容的な態度の養成を促す必要性が示唆された。 キーワード 児童虐待,ストレス,母親,育児 第54巻第4号 2007年4月 脳卒中患者における自宅退院の時代変遷に関する研究 -富山県脳卒中情報システム事業より- 須永 恭子(スナガ キョウコ) 成瀬 優知(ナルセ ユウチ) 遠藤 俊朗(エンドウ シュンロウ) 野村 忠雄(ノムラ タダオ) 野原 哲夫(ノハラ テツオ) 福田 孜(フクダ ツトム) 垣内 孝子(カキウチ タカコ) 木谷 隆一(キタニ リュウイチ) 飯田 博行(イイダ ヒロユキ) 瀬尾 迪夫(セオ ミチオ) 目的 入院患者数増と高齢化が進む脳卒中患者の自宅退院には,社会的支援が必要な場合が多く,在宅療養サービス利用の増加が予測される。 そこで,富山県脳卒中ケアシステム事業登録者の自宅退院割合と富山県の在宅療養支援サービスの充足・利用状況を把握し,社会的支援の影響下,脳卒中患者の自宅退院の動向を考察した。 方法 富山県脳卒中情報システム事業の登録者のうち,発症年が平成3年7月から平成15年12月で,退院時死亡と退院先未定を除いた14,952名を抽出した。 そのうち,30歳以上の14,040名と55歳以上の12,160名を分析の対象とした。 分析には,登録情報のうち,「退院先・年齢・発症年・自力による行動範囲・認知症状の有無」を使用した。 自宅退院の概況として30歳以上の性別・年齢別・発症年次(時代)別の各々について自宅退院割合を,自宅退院の時代変遷として,1991~1993年を基準に年齢調整自宅退院比と時代以外の影響を調整した自宅退院のオッズ比を求めた。 結果 退院先の割合は,自宅退院が最も高く69. 9%で,次いで転院,その他の順だった。 年齢別,時代別の動向では,男女ともに高齢と時代推移に伴い自宅退院割合はおおむね減少していた。 1991~1993年を基準とした時代別年齢調整自宅退院比では,男性の1994~1995年のみ1を越え,それ以外では男女ともに1未満であった。 自宅退院のオッズ比について,1991~1993年に対する各時代群の結果は,すべて1以下で,時代推移に伴い低下していたが,介護保険開始年の2000~2001年では,その低下の傾きがやや緩やかになっていた。 医療・福祉制度改正を考慮し,介護保険開始以降,各施設数・利用者数の推移を社会的支援の時代変遷として確認した。 富山県の療養型病床群の病床数・新患者数は経年的に増加し,平成12~15年の病床利用率は90%台であった。 また,介護老人福祉施設,介護老人保健施設の利用者数増加率は全国より高く,介護老人福祉施設の方が高かった。 結論 自宅退院割合の時代推移に伴う低下が明らかになった。 この低下を介護保険開始以降の在宅療養サービスにおける各施設数・利用状況から検討した結果,介護老人福祉施設・療養型病床群の施設充実とその利用が進む中,脳卒中患者は退院先の幅を広げ,自宅退院以外を選択していることが考えられた。 キーワード 脳卒中,自宅退院,脳卒中情報システム事業,介護保険 第54巻第5号 2007年5月 健診実施の適正間隔に関する検討 須賀 万智(スカマチ) 吉田 勝美(ヨシダカツミ) 目的 定期健診を効率的かつ効果的なものにするために,健診の内容(項目)を見直す動きがあるが,健診実施の適正間隔に関する検討もまた必要である。 本研究では,健診実施の適正間隔について,某事務系事業所の定期健診データベースを用いて,異常所見のない状態が連続している者における健診実施の省略の可否を検討した。 結果 A の1年後有所見率と2年間累積有所見率の比較について,男性は5項目すべてで有意差を認めた。 女性は高血糖について3年連続異常所見のない45~59歳群と2年連続異常所見のない肥満なし群,高中性脂肪について2年連続異常所見のない45~59歳群と3年連続異常所見のない肥満あり群,高尿酸について2年連続異常所見のない者のすべての群で有意差を認めず,それ以外については有意差を認めた。 B の2年間累積有所見率と2年後有所見率の比較について,男性は5項目すべてで有意差を認めた。 女性は高血糖について2年連続異常所見のない者の30~44歳群を除いたすべての群と3年連続異常所見のない者のすべての群,高コレステロールと高中性脂肪について3年連続異常所見のない45~59歳群,高尿酸について2年連続異常所見のない者および3年連続異常所見のない者のすべての群で有意差を認めず,それ以外については有意差を認めた。 結論 血圧,空腹時血糖,総コレステロール,中性脂肪,尿酸の5項目のうち,尿酸は2年連続異常所見がない女性において翌年の検査を省略しうるが,それ以外は少なくとも年1回検査することを原則にすべきと考えられた。 キーワード 定期健診,検査間隔,生活習慣病予防 第54巻第5号 2007年5月 介護予防施策における対象者抽出の課題 -特定高齢者と要支援高齢者の階層的な関係の検証- 石橋 智昭(イシバシトモアキ) 池上 直己(イケガミナオキ) 目的 厚生労働省によって新たに提示された介護予防施策では,「一般高齢者」「特定高齢者」「要支援高齢者」「要介護高齢者」の4つの階層を用意し,対象と給付の関係を明確化した。 しかし対象者の選定には『基本チェックリスト』と『要介護認定方式』が並行的に運用され,そこから抽出される「特定高齢者」と「要支援高齢者」の境界や階層性の関係は,いまだに明らかにされていない。 本研究では,「要支援高齢者」の候補者である旧要支援,旧要介護1の認定者に対して,『基本チェックリスト』により試行的に判定し,「特定高齢者」と「要支援高齢者」との間の階層的な関係について検証を行った。 方法 対象は,東京都A市において旧要支援,旧要介護1の認定を受けた者のうち,介護保険以外の生活支援型サービスを利用している在宅高齢者767名である。 調査は,2006年2月に自記式の郵送調査によって実施し,回収率は92. 3%であった。 調査内容は,厚生労働省の『基本チェックリスト』およびIADL(手段的日常生活動作)5項目の遂行能力を問う項目を用いた。 本研究では,すべての調査項目に回答した456名(旧要支援:107名,旧要介護1:349名)を分析対象とした。 結果 旧要支援,旧要介護1の認定者に『基本チェックリスト』による判定を試行した結果,特定高齢者に選定されたのは,旧要支援では33. 6%,旧要介護1では57. 8%となり,「要支援高齢者」であるにもかかわらず「特定高齢者」には選定されないケース,つまり施策の想定とは逆の階層関係となるケースが,約半数に出現することが明らかとなった。 次にIADL5項目による自立者の割合を確認した結果,旧要支援,旧要介護1認定者の54. 8%がすべてのIADL項目が自立していた。 これに対して,IADLが非自立であった者の4分の1に当たる25. 7%が特定高齢者に選定されなかった。 結論 2つの異なる基準から抽出された特定高齢者と要支援高齢者の間には,階層関係が逆転しているケースが約半数にみられ,両者を階層的に位置づけるのは困難であることが明らかとなった。 その要因の1つは,新たに開発された基本チェックリストが,要介護認定との階層的な関係を十分に考慮せずに作成されたことにある。 もう1つは,要介護認定方式が,IADLの能力を適切にスクリーニングできず,自立(非該当)との境界が曖昧になっている点が示唆された。 今後,介護予防施策を一貫したシステムとして構築するためには,介護予防施策の対象者の統合も含めて,基本チェックリストと要介護認定方式の抜本的な見直しが不可欠である。 キーワード 介護予防,要介護認定方式,基本チェックリスト,給付区分,特定高齢者 第54巻第5号 2007年5月 がん検診受診行動に関する市民意識調査 川上 ちひろ(カワカミ) 岡本 直幸(オカモトナオユキ) 大重 賢治(オオシゲケンジ) 杤久保 修(トチクボオサム) 目的 日本が世界一の長寿国であることはすでに周知の事実であるが,この長寿による人口の高齢化に伴い死亡原因も大きく変化し,昭和56年以降,死因の第1位はがんである。 がん対策は高齢化社会での重要な保健政策課題であり,なかでも,がん検診の受診率を向上させることは早期発見・早期治療を行う上で非常に重要になってきている。 本研究では,がん検診の受診行動に影響を与える要因について質問票による調査を実施し分析を行った。 方法 横浜市在住の40~69歳の男女3,000人を対象に無記名自記式による質問票調査を行った。 調査実施期間は平成18年2~3月であり,この間に調査票の配布,回収を行った。 本研究では40歳代の回答率が30%に届かなかったため,50・60歳代の回答について分析を行った。 50・60歳代への質問票送付は2,000通で,21通があて先不明等にて返送,611人より回答を得た(回答率30. 9%)。 主な調査項目は,1 がん検診の受診経験,2 病気の予防に対する責任,3 病気の予防に支払える金額,4 がん検診を受診する際の受診行動に影響を与える因子(コンジョイント分析)である。 本調査では,検診場所,自己負担額,検診の所要時間,検診の信頼性を受診行動に影響を与える因子として設定し分析した。 結果 1 がん検診の受診経験は,年1回受診(35. 8%),数年に1回受診(30. 3%),受診経験なし(33. 2%)であった。 2 病気の予防に対する責任について,責任者を個人・行政(市町村)・国の3者に分け,全体で100%になるように回答を求めた。 個人の責任が50%と回答した人が24. 5%と最も多く,次いで60~70%と回答した人が21. 3%だった。 3 世帯全体で1年間に病気の予防に支払える金額を尋ねた結果,1万円以上5万円未満との回答が,最も多く43. 7%であった。 4 仮想状況でのがん検診受診希望を質問した結果,がん検診の受診行動に影響を与える因子は検診にかかる時間と費用であった。 結論 病気の予防は個人の責任で行うべきとの回答者が多い反面,がん検診に費用や時間をかけることができないという回答が多かった。 このことを踏まえ,住民にとって受診行動を起こしやすくなるような検診システムを構築し受診率を向上させることが,早期発見・早期治療のための課題のひとつであると考えられる。 キーワード がん検診,受診率,質問票調査,受診行動,コンジョイント分析 第54巻第5号 2007年5月 保健医療福祉分野における地方自治体の施策の目標と指標 橋本 修二(ハシモトシュウジ) 逢見 憲一(オオミケンイチ) 曽根 智史(ソネトモフミ) 遠藤 弘良(エンドウヒロヨシ) 浅沼 一成(アサヌマカズナリ) 中嶋 潤(ナカジマジュン) 浜田 淳(ハマダジュン) 三觜 文雄(ミツハシフミオ) 藤崎 清道(フジサキキヨミチ) 目的 保健医療福祉分野において地方自治体の施策の推進上,その目指す目標と実施状況について,複数の地方自治体を広域的な視点から比較することが重要と考えられる。 ここでは,地方自治体の施策が目指す目標およびその実施状況を表す指標について,選定の基本的考え方を定めるとともに,具体案の作成を試みた。 方法 複数の専門家が議論を重ね,全員の合意によって選定の基本的考え方を定めた。 その基本的考え方に従って,保健医療福祉のあるべき姿や地域差の状況などを考慮しつつ,同様の進め方により具体案を作成した。 結果 基本的考え方において,選定のねらいは保健医療福祉分野における地方自治体による施策の実施状況を把握し,今後の施策の推進に資することと定めた。 目標の選定では地域住民の視点に基づくこと,基本的目標,目標,具体的目標の層的構造とした。 指標の選定では具体的目標に対応すること,結果指標,中間指標,取り組み指標の層的構造とした。 結果指標は具体的目標の達成状況を,取り組み指標は施策の投入した量と質を,中間指標はその中間段階の進捗状況を表すものとした。 具体案において,基本的目標は「健康で安心して暮らせる地域社会」「生きがいと尊厳をもって暮らせる地域社会」「安心して子育てできる地域社会」の3つとした。 基本的目標ごとに3つの目標,目標ごとに1~4の具体的目標とした。 具体的目標ごとに,1~4の結果指標,0~5の中間指標,1~5の取り組み指標を定めるとともに,評価・留意点を示した。 結論 目標と指標の選定の基本的考え方と具体案を提示した。 今後,実際の使用に向けて様々な面から検討を重ねることが重要であろう。 キーワード 指標,施策,保健医療福祉,地方自治体 第54巻第5号 2007年5月 質問紙健康調査票THIに対する新総合尺度の特性と有効性 浅野 弘明(アサノヒロアキ) 竹内 一夫(タケウチカズオ) 笹澤 吉明(ササザワヨシアキ) 大谷 哲也(オオタニテツヤ) 小山 洋(コヤマヒロシ) 鈴木 庄亮(スズキショウスケ) 目的 質問紙健康調査票THI(Total Health Index)は,妥当性や信頼性の検討が数多くなされ,様々な疫学調査で応用されるとともに,職場・地域・学校における健康増進活動にも利用されてきた。 THI調査に対するパソコン支援システムの開発を契機に,基準集団を見直し新基準集団を設定するとともに,従来の尺度に主成分分析を適用し構築した新総合尺度の利用を開始した。 その後の調査で新総合尺度の有効性が確認できたので,死亡傾向との関連性も含め報告する。 方法 2003年に設定した新基準集団のデータを用い,「多愁訴,呼吸器,目と皮膚,口と肛門,消化器,直情径行,虚構性,情緒不安定,抑うつ,攻撃性,神経質,生活不規則」の12尺度に対し主成分分析を適用し,T1,T2の2主成分を導出した。 必要な統計処理を行い,特徴を抽出するとともにその有効性を検証した。 また,7年後の死亡・転出データに対しCoxの比例ハザードモデルを適用し,T1,T2と死亡傾向の関連性についても検討した。 結果 第1主成分T1は,全尺度の変動をよく吸収していた。 特に,T1が5ptl(パーセンタイル値)未満あるいは95ptl以上の場合,12尺度の個人変動はほぼ平均的パターンに限定され,健康状態を総合的に判定する指標として好ましい性質を持つことが確認された。 さらに,死亡傾向とも統計的に有意な関連性が認められ,T1が中央値から95ptlまで上昇する(健康状態が悪くなる)と死亡リスクが1. 4倍になることが判明した。 これに対してT2は,1尺度並の情報しか有しておらず,さらに,死亡との関連も明確ではなかったが,心と体の健康バランスを示しており,T1を補足する指標として活用できることが示唆された。 考察・まとめ パソコンを利用した支援システム「THIプラス」の開発を契機に,アドバイスシートの返却を開始した。 その過程で,12尺度+3傾向値を要約する総合尺度が必要となった。 今回構築したT1は,総合尺度としてふさわしい性質を持つばかりでなく,身体表現性障害とも密接に関連しており,意義深い尺度になっていることが確認された。 また,T2は従来の尺度・傾向値にはない特徴を有しており,これらと併用できることが示唆された。 今回の知見を活用し,個人の心の健康対策や生活習慣病の予防に役立つ,より有効なアドバイスシステムを構築していきたいと考えている。 キーワード THI,質問紙健康調査票,総合尺度,死亡リスク 第54巻第4号 2007年4月 基準病床数制度による病床数への影響に関する研究 -入院需要量の変化に対する病床数の変化について- 溝口 達弘(ミゾグチ タツヒロ) 堀口 逸子(ホリグチ イツコ) 丸井 英二(マルイ エイジ) 目的 基準病床数制度が,病床数の増減に与えた影響を明らかにし,また,もし仮に,現状で基準病床数制度を廃止した場合に,どの程度病床が増床するのか検討することを目的とした。 方法 対象は,病床の種別にかかわらず病院における全病床および全入院患者とした。 病床供給の検討は,入院需要量の変化を考慮した上で行うこととし,入院需要量の変化として,予想される入院患者数の年次推移を推計し用いることとした。 推計は昭和59年,昭和62年,平成2年,平成5年,平成8年の5つの時点を基準として行った。 推計された5つの入院患者数の年次推移を,それぞれ基準とした時点のモデルと呼ぶこととし,各モデルの比較検討,実際の人口との関連および実際の病床数との比較,基準病床数制度導入前のモデルから求めた平成16年の病床数と実際の病床数との比較を行った。 結果 5つのモデルは,いずれも年々増加する結果となった。 平成16年時点において比較すると,多い方から,昭和62年モデル,平成2年モデル,昭和59年モデル,平成5年モデル,平成8年モデルの順であった。 いずれのモデルにおいても,総人口との相関が強く,それ以上に65歳以上人口との相関が強かった。 65歳未満人口とは負の相関が強かった。 基準病床数制度導入前のモデルから算出された病床数と実際の平成16年の病床数との差は,53~62万床であった。 結論 必要病床数制度が制定されて以降現在に至るまで,入院需要は高齢化による影響で常に増加傾向にあり,介入等何らかの要因がない限り,病床数も増加しようとする傾向があったと考えられた。 必要病床数制度導入以降,予想される入院需要の増加を上回る病床数の増加が一時的にあったものの,平成5年以降は,入院需要の増加に対して病床数は減少し,昭和59年時点と比べて限定された入院需要にしか対応できていないことが示唆された。 また,基準病床数制度を撤廃すると,平成16年現在で,約50万床以上増床する可能性があることが示唆された。 キーワード 医療計画,病床規制,基準病床数,必要病床数,入院需要 第54巻第6号 2007年6月 健康危機管理事件発生時のリスクコミュニケーションにおける 公的情報および報道内容の格差に関する研究 今村 知明(イマムラ トモアキ) 下田 智久(シモダ トモヒサ) 小田 清一(オダ セイイチ) 目的 過去の食品災禍事件における公的情報提供(文字情報)と報道内容の間に発生した情報格差を把握するとともに,その発生原因を分析することで,良好なリスクコミュニケーションの実施に資する。 方法 O157事件,BSE事件において,関係行政機関が提供した文字情報と国内主要紙の報道内容を比較し,格差の有無の確認,発生状況を把握・分析し,この原因について考察した。 結果 O157事件では,厚生省(当時)が中間報告したO157の感染源に関する調査結果について報告書の中で感染源の特定を否定したが,報道の中には「感染源が特定した」との印象を与えるものもあった。 BSE事件では,スクリーニング検査陽性(確定検査では陰性)の検体の発生に関する情報提供について,「偽陽性」と「疑陽性」を混同した報道も散見された。 結論 公的情報提供と報道内容の格差は,「事実の捉え方の相違」や「報道機関の表現方法の選択」により発生するものと推測される。 これらに起因する情報格差の発生を抑止するためには,関係行政機関が報道関係者と日頃からコミュニケーションを図るとともに,正確な情報伝達や発信情報の一元化を行うための体制の確立が必要である。 キーワード 大規模健康被害,健康危機管理,リスクコミュニケーション,報道 第54巻第6号 2007年6月 無職世帯における乳児死亡・周産期死亡・死産 西 基(ニシ モトイ) 三宅 浩次(ミヤケ ヒロツグ) 目的 わが国の無職世帯における乳児死亡・周産期死亡・自然死産・人工死産の特徴を検討する。 方法 1995年から2004年までの10年間の乳児死亡・周産期死亡・自然死産・人工死産につき,人口動態統計の世帯主の職業別の統計資料を基に,無職世帯に着目して分析した。 結果 「勤労者2の世帯」が,これらの指標すべてで最低(最良)の値を示したのに対し,無職世帯はすべてで最高(最悪)の値を示し,かつそれらの値は突出して高かった。 10年間の通算で,無職世帯の乳児死亡率は「すべての世帯」の4. 2倍,周産期死亡率は2. 3倍,自然死産率は2. 6倍,人工死産率は8. 4倍にのぼった。 無職世帯のこれらの率が「すべての世帯」と同等であったと仮定すると,今回の10年間で2,300人余りの乳児死亡,1,700件余りの周産期死亡,5,500件余りの自然死産,34,000件余りの人工死産が,それぞれ減少傾向はうかがえるものの,過剰に存在したと推測された。 母年齢階級別の検討では,若年における人工死産が多いことが目立った。 結論 世帯の収入が少ないことが,そうでなければ普通に出生・成長したであろう生命を喪失させる原因の1つと考えられ,無職世帯に対する経済的援助は,わが国の少子化を抑制する手段として有効であると思われた。 キーワード 無職,人口動態統計,乳児死亡,周産期死亡,死産 第54巻第6号 2007年6月 日本語版「ソーシャル・サポート尺度」の信頼性ならびに妥当性 -中高年者を対象とした検討- 岩佐 一(イワサ ハジメ) 権藤 恭之(ゴンドウ ヤスユキ) 増井 幸恵(マスイ ユキエ) 稲垣 宏樹(イナガキ ヒロキ) 河合 千恵子(カワアイ チエコ) 大塚 理加(オオツカ リカ) 小川 まどか(オガワ マドカ) 髙山 緑(タカヤマ ミドリ) 藺牟田 洋美(イムタ ヒロミ) 鈴木 隆雄(スズキ タカオ) 目的 本研究は,Zimet GDらが開発した「ソーシャル・サポート尺度」(Multidimensional Scale of Perceived Social Support)の日本語版を作成し,中高年者を対象として信頼性ならびに妥当性の検討,短縮版尺度の作成を行うことを目的とした。 方法 58~83歳の中高年者1,891人(男性760人,女性1,131人)を分析の対象とした。 ソーシャル・サポート尺度は12項目から成り,回答は7件法(1:「全くそう思わない」~7:「非常にそう思う」)で求め,ソーシャル・サポート尺度全体ならびに下位尺度ごとに平均値を算出し得点化した。 得点が高いほどソーシャル・サポートが高いことを意味する。 その他,居住形態,婚姻状況,親友の人数,親子関係満足度,夫婦関係満足度,General Health Questionnaire 28項目版(GHQ)を測定し分析に用いた。 結果 ソーシャル・サポート尺度の因子分析を行ったところ,原版と同様の3因子構造(「家族のサポート」「大切な人のサポート」「友人のサポート」)が確認された。 91,0. 94,0. 88,0. 90であり,十分な信頼性を有していることが示された。 ソーシャル・サポート尺度ならびに3つの下位尺度と居住形態,婚姻状況,親友の人数,親子関係満足度,夫婦関係満足度,GHQ間には関連が認められ,上記要因を外部基準とした場合の妥当性を有していることが示された。 また,7項目から成る「ソーシャル・サポート尺度短縮版」は,ソーシャル・サポート尺度12項目版と高い正の相関関係にあり,得点分布形状,性差ならびに年齢差は12項目版と同様の傾向を示し,信頼性ならびに妥当性を有していることが示された。 結論 ソーシャル・サポート尺度日本語版ならびに同短縮版は信頼性ならびに妥当性を備え,中高年者におけるソーシャル・サポートの測定指標として有用であることが考えられる。 キーワード ソーシャル・サポート尺度,中高年者,信頼性,妥当性,横断調査 第54巻第6号 2007年6月 幼児期における子育ち環境が学童期の子どもの心身の健康に及ぼす影響 安梅 勅江(アンメ トキエ) 篠原 亮次(シノハラ リョウジ) 杉澤 悠圭(スギサワ ユウカ) 丸山 昭子(マルヤマ アキコ) 田中 裕(タナカ ヒロシ) 酒井 初恵(サカイ ハツエ) 宮崎 勝宣(ミヤザキ カツノブ) 小林 昭雄(コバヤシ アキオ) 宮本 由加里(ミヤモト ユカリ) 天久 真吾(アマヒ サシンゴ) 埋橋 玲子(ウズハシ レイコ) 目的 本研究は,幼児期の子育ち環境が学童期の子どもの心身の健康にどのような影響を及ぼすのか実証的な根拠を得ることを目的とした。 方法 対象は,2005年に全国19カ所の保育園の卒園児調査に参加した134名であり,2002~2004年にその保育園に在籍した際,保育園児調査に参加した者131名を対象とした。 学童期の心身の健康に,幼児期に把握した保育専門職の評価に基づく発達状況,気になる行動,保育時間,保護者の回答に基づく育児評価,子どもと家族の属性が及ぼす影響を多重ロジスティック回帰分析により明らかにした。 結果 幼児期に「家庭で歌を歌う機会等に乏しい」場合,機会のある場合に比較して,学童期に「いらいらする」12. 20倍,「不機嫌で怒りっぽい」15. 69倍多くなっていた。 幼児期に「同世代の子どもを訪問する機会に乏しい」場合,機会がある場合に比較して,学童期に「疲れやすい」4. 83倍,幼児期に「育児支援者がいない」場合,いる場合と比較して,学童期に「疲れやすい」が5. 65倍,幼児期に「育児相談者がいない」場合,いる場合と比較して,学童期に「あまり頑張れない」が44. 05倍,幼児期に「配偶者の子育て協力が得られない」場合に,得られる場合と比較して,学童期に「勉強が手につかない」が33. 54倍,幼児期に「保護者の育児への自信がない」場合に,ある場合と比較して,学童期に「誰かに怒りをぶつけたい」が7. 03倍,多くなっていた。 考察 学童期の子どもの心身の健康と,幼児期の家庭における適切なかかわりや保護者へのサポートの関連性が示され,子どもと保護者を対象にした子育て支援の重要性が示唆された。 キーワード 学童,子育ち環境,コホート研究,子育て支援 第54巻第6号 2007年6月 健康保険組合被保険者の医療受診における所得効果 川添 希(カワゾエノゾミ) 馬場園 明(ババゾノアキラ) 目的 医療アクセスが良いことで高い評価を得てきたわが国の医療制度において,医療費の抑制を目的とした患者自己負担の引き上げが行われてきている。 公正な医療アクセスを保障することは国民皆保険制度において重要な課題であることから,医療受診における所得効果を検証することが重要である。 平成14年度末の健康保険組合のデータを用いて,被保険者本人,家族,幼児について,入院,外来,歯科別の受診行動への所得効果に影響を与える指標を明らかにすることを目的として本研究を行った。 方法 被保険者本人,家族,幼児について,入院,外来,歯科別の受診率,1件当たり診療日数,1人当たり医療費を受診の指標として用いた。 健康保険組合において受診に影響を与える組合特性としては,被保険者数,扶養率(扶養者数/被保険者数),老人加入率(老人加入者数/全加入者数),平均標準報酬月額,被保険者の平均年齢,性比(男性の被保険者数/女性の被保険者数)を選択した。 受診指標を目的変数,組合特性を説明変数とし,強制投入法で重回帰分析を行った。 影響は標準偏回帰係数によって定量化し,モデルは決定係数で検証した。 統計解析には,SPSSのPC版(13. 0J)を用いた。 結果 入院の受診指標については,被保険者本人,家族,幼児ともに平均標準報酬月額や扶養率との明らかな関連は認められなかった。 外来と歯科の受診率については,平均標準報酬月額と正の相関,扶養率と負の相関,外来と歯科の診療日数については,平均標準報酬月額と負の相関が認められた。 幼児の受診指標については,平均標準報酬月額との関連は認められなかった。 結論 外来や歯科受診において,所得が低ければ受診率が低くなり,受診日数が長くなる傾向が認められた。 これは,自己負担が一層重くなった場合,低所得者の医療アクセスを確保しなければ,必要な受診が控えられる可能性があることを示唆している。 また,生活習慣病など自覚症状に乏しい疾患では,自己負担が重くなると受診が抑制されることが予想され,予防事業などを充実させていくことが必要であると考えられる。 キーワード 受診指標,健康保険,強制加入,定率負担,高額療養費制度,所得効果 第54巻第6号 2007年6月 メタボリック・シンドロームからみた生活習慣病対策の重要性 鈴木 賢二(スズキ ケンジ) 石塚 範雄(イシヅ カノリオ) 枡田 喜文(マスダ ヨシフミ) 富所 直美(トミドコロ ナオミ) 森 誠(モリ マコト) 荒井 親雄(アライ チカオ) 柏倉 義弘(カシワクラ ヨシヒロ) 目的 メタボリックシンドロームを対象とした生活習慣病予防対策の重要性を検討し,当該対策を実現するための具体的な方法を考察する。 結果 1 いずれか1個保有群,2個集積群,3個以上集積群とも,1995~2004年度において増加傾向を示した。 2 心電図虚血性変化は,健常群に対して男性の3個集積群で8. 2~14. 5倍,4個集積群で10. 6~31. 7倍,眼底動脈硬化性変化は3個集積群で男性10. 0~56. 0倍,女性0~54. 2倍,4個集積群では男性24. 0~106. 8倍,女性0~83. 9倍のリスクを示した。 3 各集積パターンにおける心電図虚血性変化,眼底動脈硬化性変化の出現率は,男女とも全年齢層で集積数が多くなるに伴い高頻度となった。 考察 1 各病態の程度が軽くてもその集積が単独より危険度を増し,冠動脈硬化・眼底動脈硬化を合併しやすく,脳心血管疾患発症の基盤として重要となる。 2 メタボリックシンドロームの予備群を抽出するための健診は各制度とも受診率が低く,健診会場に出向かなければ受けられない従来の健診では受診率アップに限界がある。 キーワード メタボリックシンドローム,動脈硬化性所見,生活習慣病予防対策,健診受診率 第54巻第6号 2007年6月 小中学校における子ども虐待対応構造に関する考察 -子ども虐待に関する知識の組織内配分と意思決定手続きに注目して- 澁谷 昌史(シブヤマサシ) 目的 本研究は,公立小中学校において虐待対応に不可欠な法制度上の知識がどのように共有され,またどのように対応が進められているのかに焦点を当てながら,その虐待対応構造にかかる現状把握および提言を行うものである。 方法 全国の公立小中学校から5%の無作為抽出を行い(小学校1,158カ所,中学校515カ所),学校単位で回答する「基本調査票」「事例調査票」,教職員個人が回答する「意識調査票」の3種類の調査票を郵送法にて配布・回収した。 調査期間は平成17年6月24日より同年7月末日とした。 結果 小学校1,013カ所,中学校439カ所から回答があった(回収率はそれぞれ87. 5%,85. 2%)。 意識調査に回答した教職員は,小中学校あわせて17,056名であった。 主たる結果から,校長や教頭が虐待対応の知識を比較的多く所有する傾向にあり,同時に校内における虐待対応方針決定の鍵を握っているものと考えられた(ただし,中学校の場合は生徒指導主事が意思決定の要となっている場合も多かった)。 また,校内チーム体制と専門的知識の不足が,学校としての対応に不安定性をもたらしている可能性が示唆された。 結論 すべての教職員に対して研修機会を保障することで虐待対応の基本事項を周知するとともに,チーム体制整備の周知徹底や,虐待対応にかかる専門家派遣制度の創設など,小中学校における虐待対応構造に安定性をもたらす要素を加えていく必要があると提言した。 キーワード 子ども虐待,対応構造,小中学校 第54巻第7号 2007年7月 都道府県介護支援専門員相談窓口の運営実態および医師・弁護士による関与 吉江 悟(ヨシエ サトル) 目的 全国の都道府県に設置されている介護支援専門員向け相談窓口の運営状況や医師・弁護士による関与状況についての実態把握を行い,より効果的・効率的な相談窓口のあり方を検討することを行うことを目的とした。 方法 2005年1~2月に,都道府県ケアマネジメントリーダー活動等支援事業による相談窓口を開設している機関の相談員47名(各県1名)を対象として郵送質問紙調査を実施し,36名から回答を得た。 結果 36都道府県中,29都道府県(81%)で介護支援専門員相談窓口が設置されていた。 開設頻度や相談員の人数等,窓口の運営状況は多様であった。 相談内容については,個人情報を記録に残している場合が半数以上であり,相談への対応方法の中で,少数ではあるが相談員が直接利用者・家族へ連絡するという対応も取られていた。 専門職の関与状況については,医師・弁護士・臨床心理士といった介護以外の領域の専門職が関与している都道府県が少数ながらみられた。 また,医師や弁護士の関与に対しては,回答者の6割以上がその必要性を感じており,既に医師・弁護士が関与している都道府県においては,その割合はより高かった。 結論 本研究により,全国における都道府県介護支援専門員相談窓口の多様な実態が明らかになったが,個人情報に関しては,基本的には相談の匿名性が確保された範囲で窓口を運営するのが望ましい。 また,回答者の過半数が医師・弁護士の関与を望んでいた。 関与の仕方については,導入としては相談員に助言をするという間接的な関わりで十分だと考えられるが,弁護士や臨床心理士については,相談者への助言や面接等の直接的関与が有効である可能性がある。 キーワード 介護支援専門員,ケアマネジメント,相談窓口,医師,弁護士 第54巻第7号 2007年7月 保健医療福祉統計に基づく高齢者の平均自立期間の推移 加藤 昌弘(カトウ マサヒロ) 川戸 美由紀(カワド ミユキ) 橋本 修二(ハシモト シュウジ) 林 正幸(ハヤシ マサユキ) 中村 好一(ナカムラ ヨシカズ) 目的 保健医療福祉統計に基づく要介護者割合を用いて,1995年の高齢者の平均自立期間が橋本・宮下らにより算定(以下,旧法)されたが,それ以後は調査内容の変更に伴って,同一の定義による要介護者割合を求められない。 本研究では,いくつかの異なる定義による要介護者割合を用いて,1995年から2001年の平均自立期間の推移を検討した。 方法 資料は1995年・1998・2001の複数の統計から得た。 7通りの要介護者割合を用いて旧法と同じ方法で,平均自立期間を都道府県別に算定した。 9年であり,女でも同様にそれぞれが18. 4年と16. 9年であった。 87,女で0. 76であった。 8年と女が0. 6年であった。 65歳時平均余命に占める平均自立期間の割合には上昇傾向が認められなかった。 結論 要介護の定義には問題があるものの,平均自立期間は1995年から2001年の間で延長していることが示唆された。 今後,平均自立期間は介護保険の要介護度に基づいて算定することが考えられる。 キーワード 健康指標,健康寿命,平均自立期間,保健統計 第54巻第7号 2007年7月 高齢者におけるQuality of Lifeの縦断的変化に関する研究 -静岡県高齢者保健福祉圏域別の検討を中心として- 久保田 晃生(クボタ アキオ) 永田 順子(ナガタ ジュンコ) 杉山 眞澄(スグヤマ マスミ) 藤田 信(フジタ マコト) 高田 和子(タカダ カズコ) 太田 壽城(オオタ トシキ) 目的 本研究は,静岡県における大規模縦断調査の結果を分析し,高齢者のQOLを構成する要素が,6年間でどのように変化するのか明らかにした後,本県内圏域別に6年間のQOLの変化を算出し地域格差を確認した。 さらに,圏域別の6年間のQOLの変化と,社会生活指標との関連について分析を加え検討を行った。 これらにより,高齢者のQOLの維持・向上を図るための社会的な計画や施策を立案する際の参考になる基礎的な資料を得ることを目的とした。 方法 1999年10月1日時点で静岡県内に在住していた65歳以上の者を,静岡県内の全市町村から,性・年齢階級(65~74歳,75~84歳)別に75人ずつ層化無作為抽出して調査対象者とし(計22,000人),同年12月に郵送留置法で,QOLとライフスタイルについて調査した。 なお,有効回答が得られた者に対しては,3年後と6年後に再度,郵送留置法にて同内容を調査した。 この調査で得られた結果を基に,QOLの状態を得点化し,性・年齢階級別および圏域別の経年的な変化を観察した。 さらに,圏域別のQOLに関しては,社会生活指標との関連を分析した。 結果 高齢者のQOLは,6年間という比較的短い期間にも関わらず,加齢とともに低下することが明らかとなった。 QOLを構成する要素では,生活活動力で年齢階級差,精神的健康で性差が顕著に認められた。 また,QOLの変化が少なかった要素は,人的サポート満足感と経済的ゆとり満足感であった。 一方,圏域別ではQOLの明らかな差は認められなかったが,圏域別のQOLの縦断的変化には,「保健師数」「高齢者のいる世帯割合」「ショートステイ年間利用日数」が有意な関連を示した。 結論 短期間でも低下しやすい高齢者のQOLの維持・向上を図るためには,家族や保健活動による支援を受けながら,可能な限り家庭で生活できるような圏域および地域づくりが重要ではないかと考えられた。 キーワード 高齢者,QOL,社会生活指標,圏域差,縦断調査 第54巻第7号 2007年7月 保健師の支援による高齢者の食生活の変化および医療費推移との関連 神山 吉輝(カミヤマ ヨシキ) 小出 昭太郎(コイデ ショウタロウ) 川口 毅(カワグチ タケシ) 青木 啓子(アオキ ケイコ) 目的 保健師の高齢者に対する家庭訪問保健事業において行われた食生活指導について,高齢者の行動変容と医療経済効果の面から評価すること。 方法 三重県美里村(現,津市美里町)において行われた65歳以上の高齢者の全数訪問事業において,初年度と翌年の訪問時の保健師による食生活状況の記録と医療費データとを個人ごとにレコードリンケージし,高齢者の行動の変化および医療費の推移を追跡した。 結果 初年度に食生活指導があった者はなかった者に比べて,より大きな割合で食生活行動が変化していた。 食事で気を付けているものがなかった男性では,翌年までの食生活行動の変化の割合が小さかった。 食生活指導を受けて,翌年までに食行動が変化していた者は変化しなかった者に比べて,1人当たり累積医療費がより低く推移していた。 結論 保健師による高齢者に対する食生活指導が実際に高齢者の食生活行動を変化させていることが示唆された。 また,食生活指導後の食生活行動の変化が医療費の削減に繋がる可能性が示唆された。 キーワード 食生活,高齢者,保健師,訪問指導,行動変容,医療費.

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論文記事

札幌市保健所 所長三觜

第53巻第7号 2006年7月 介護保険3施設における施設内医療処置の状況 -公表統計データを用いた検討- 竹迫 弥生(タケザコ ヤヨイ) 田宮 菜奈子(タミヤ ナナコ) 梶井 英治(カジイ エイジ) 目的 介護老人福祉施設,介護老人保健施設,介護療養型医療施設の介護保険3施設内で医療処置を受けている者の在所者全体に対する割合を医療処置の種類別に明らかにする。 方法 厚生労働省が 2001 年に行った全国調査の公表データをもとに,施設種別ごと,要介護度別に,介護保険3施設内で行われた医療処置の状況について比較検討した。 結果 医療処置を受けている者の在所者全体に対する割合は,介護老人福祉施設と介護老人保健施設で約2割,介護療養型医療施設で約4割であった。 3施設ともに,要介護1~4の在所者では,医療処置を受ける者の割合は全体の3割以下であり,処置の内容としては,疼痛管理,モニター測定,点滴,膀胱カテーテルなどが高かった。 一方,要介護5の在所者では,介護老人福祉施設と介護老人保健施設で3割,介護療養型医療施設で6割の者が医療処置を受けており,処置の内容としては,経管栄養と喀痰吸引の割合が高かった。 また,経管栄養と喀痰吸引の処置を受けている者の割合は,在所者全体でも,要介護5の在所者のみでも,介護老人保健施設より介護老人福祉施設の方が高かった。 結論 施設内で何らかの医療処置を受けている在所者の割合は,介護療養型医療施設が介護老人福祉施設および介護老人保健施設の約2倍であった。 しかし,経管栄養と喀痰吸引の処置を受けている在所者の割合は,医療職員の少ない介護老人福祉施設の方が介護老人保健施設より高く,今後の課題と考えられた。 キーワード 介護保険施設,ナーシングホーム,医療処置,経管栄養,疼痛,褥瘡 第53巻第7号 2006年7月 地域がん登録事業におけるがん患者の 登録拒否に関する法的,実務的,倫理的検討 田中 英夫(タナカ ヒデオ) 目的 個人情報保護法制定に伴い,保健,衛生分野における個人情報の第三者提供のあり方に対する関心が高まっている。 地域がん登録事業におけるがん患者の登録拒否に関し,法的,実務的,倫理的側面から検討する。 方法 個人情報保護法の内容を医療・介護関係事業者用のルールとしてまとめられた「医療・介護ガイドライン」を法的検討の対象とする。 次に,地域がん登録事業にかかわる当事者間で扱う個人情報の流れを踏まえ,もし同事業に患者の登録拒否の意思表明を反映させる(オプトアウト)とすると,実務面でどのような状況が起きるかについて検討した。 また,登録拒否という行為を,複数の倫理的価値の対立面から考察した。 結果 「医療・介護ガイドライン」が示す個人情報の第三者提供に際しての本人同意原則の除外事例(地域がん登録でのがん患者,がん検診の精度管理での要精検者,児童虐待での親,医療事故調査での被害患者)は,いずれも共通してオプトアウトの容認と事業目的の遂行が両立し難い性質のものであると考えられることから,ガイドラインの意図に沿えば,同意認定手段としてのがん患者の拒否の有無の確認の効力は発生していないと考えられた。 オプトアウトを地域がん登録事業に導入すると,その実効性の確保のためには拒否者の個人識別情報を登録する必要が生じ,また拒否の内容,範囲によって,情報の取り扱いに関する相当の負担を医療現場に強いることが予測された。 結論 地域がん登録事業におけるオプトアウトの容認は,現行法の枠内では予定されない考えであると思われた。 また,もし実行に移した場合,実務面での障害が相当程度生じることが予測されるとともに新たな倫理的価値の対立を生むことが予想された。 キーワード 地域がん登録事業,個人情報保護法,第三者提供,オプトアウト,本人同意原則 , 倫理 第53巻第7号 2006年7月 食事の多様性と生活習慣,食品・栄養素摂取量との関連 -厚生労働省研究班による多目的コホート研究- 小林 実夏(コバヤシ ミナツ) 津金 昌一郎(ツガネ ショウイチロウ) 目的 住民ベースの大規模コホート研究( JPHC Study )5年後調査の断面データを用いて,多様な食品を摂取することと生活習慣,食品・栄養素摂取量との関連を明らかにすることを目的とした。 方法 対象者は 1995 年から 1999 年の間に 44 ~ 76 歳であった全国 11 保健所管内に居住する 42,227 名の男性と 51,345 名の女性である。 自記式質問票により,既往歴,飲酒,喫煙状況,運動習慣,食習慣,食品摂取量などの情報を収集した。 質問票に掲載されている 133 食品項目について,1日に何食品を摂取しているか算出した。 1日に摂取する食品の種類を5分位に分類し,群ごとの生活習慣,食品・栄養素摂取量を比較した。 結果 摂取食品数が多くなるほど,肥満ややせが少ない,喫煙率が低い,飲酒量が少ない,朝食の欠食率が少ない,習慣的な運動習慣があるなど,健康的な生活習慣との関連が明らかになった。 また,摂取食品数が多くなるほど,一人暮らしの割合が少ない,生活を楽しいと感じている人が多いなどの特徴が明らかになった。 一方,多様な食品を摂取する群ほどエネルギー摂取量は多く,栄養素・食品群摂取量も多く摂取しているものが多かったが、炭水化物,穀類,砂糖類の摂取は低く,アルコールや嗜好飲料の摂取も低かった。 結論 1日に摂取する食品に多様性があることは,健康的な生活習慣と関連があることが明らかになった。 また,多様な食品を摂取することと食物・栄養素摂取状況との関連も明らかになった。 キーワード 食事の多様性,生活習慣,食品・栄養素摂取,コホート 第53巻第7号 2006年7月 特別養護老人ホームの待機者の 入所希望時期に影響する要因の分析 岸田 研作(キシダ ケンサク) 谷垣 靜子(タニガキ シズコ) 目的 特別養護老人ホーム(以下,特養)の待機者の入所希望時期に影響する要因を明らかにすること。 方法 対象は,中国地方のA市に在住する無作為に抽出された 500 の特養待機者世帯である。 調査時期は 2004 年 10 月で,調査方法は郵送自記式である。 分析は,入所希望時期を被説明事象,世帯属性を独立変数とする順序ロジスティック回帰分析で行った。 結果 解析の対象となったのは,必要な変数に欠損値がない 199 世帯である(有効回収率 39. 8 %)。 在宅の待機者は, 27. 6 %であった。 入所希望時期の内訳は,「すぐにでも入所したい」( 30. 2 %),「できるだけ早く入所したい」( 23. 1 %),「しばらくは待つことができる」( 17. 6 %),「将来,必要になったときに入所したい」( 29. 1 %)であった。 早期の入所希望と関連していたのは,待機場所が老人保健施設または一般の病院であること,要介護度が3以上であることであった。 待機者本人の性別,年齢,世帯形態,待機期間,調査票記入者の属性と入所希望時期との関連はみられなかった。 考察 「将来,必要になったときに入所したい」と答えた者は,入所の順番が現時点でまわってきてもすぐには入所しないと考えられる。 したがって,入所希望時期を尋ねることで予約的な入所申請者を把握することは,計画的な施設整備を行う上で有益である。 老人保健施設や一般の病院での待機者世帯が早期の入所を希望する理由として,病院・施設から退所勧告を受けている可能性が考えられる。 また,要介護度が高い場合に早期の入所を希望した。 これは,在宅待機者の場合,家族の介護負担が大きいことを反映し,在宅外待機者の場合,要介護度が高い者の家族がすでに在宅介護を断念していることを反映していると考えられる。 キーワード 特別養護老人ホーム,待機者,入所希望時期,順序ロジスティック回帰分析 第53巻第8号 2006年8月 家族の介護意識と要介護者の自己決定阻害の関係に関する研究 -高齢者虐待の予防に向けて- 安梅 勅江(アンメ トキエ) 鈴木 英子(スズキ エイコ) 目的 高齢者虐待の予防のため,要介護者の自己決定阻害に焦点をあて,住民の介護意識,要介護者の自己決定阻害に関する意識および両者の関連を明らかにすることを目的とした。 方法 平成 12年に中部地方の大都市近郊の農村Sに在住する20歳以上の全住民を対象に質問紙調査を実施し,2,998名(有効回答率84. 7%)から回答を得た。 調査内容は,要介護者の自己決定の阻害に関連する意識と考えられる3項目(要介護者は「家族の意見に従うべき」「我慢すべき」「自己主張すべきでない」),介護意識4項目(「介護受容」「家族介護負担感」「世間体意識」「家族優先意識」),属性,介護の要不要,家族内の要介護者の有無,身体症状,入院・通院歴,日常生活動作能力,社会関連性,体力イメージ,サービス満足度,過去1年間のライフイベントであった。 結果 1 年齢・性別,要介護者の有無別,介護状態別に分析した結果,自己決定の阻害に関連する意識の割合は高年齢世代,介護経験あり,世間体を気にする場合に多くなっていた。 2 自己決定の阻害に関連する意識を目的変数とし,多重ロジスティック回帰分析を行った結果,いずれも「介護受容」「世間体意識」「家族介護負担感」「家族優先意識」のある場合に,ない場合に比較して要介護者は「家族の意見に従うべき」「我慢すべき」「自己主張すべきでない」とするオッズ比が高くなっていた。 結論 すべての地域住民を対象とした要介護者の自己決定を尊重するための啓発や,介護負担を軽減するためのサポート,介護の理解を深めるための情報提供や教育などが,地域における虐待リスクの軽減に有効である可能性が示唆された。 キーワード 高齢者虐待,自己決定,家族介護,予防 第53巻第8号 2006年8月 パンデミック時の抗ウイルス剤およびワクチンの 使用優先順位に関する調査研究 大日 康史(オオクサ ヤスシ) 菅原 民枝(スガワラ タミエ) 谷口 清州(タニグチ キヨス) 岡部 信彦(オカベ ノブヒコ) 目的 新型インフルエンザのパンデミック時には,抗インフルエンザウイルス薬や新型インフルエンザ用のワクチンが不足することが予想され,そのために治療あるいは予防のための薬剤の使用に関する優先順位付けを事前に行っておくことが重要となることから,現状での国民の意思を把握するために,一般住民調査を通じて優先順位について検討した。 対象と方法 2005年4月上旬に全国において実施された調査における回答を分析した。 調査内容は,12種類の人ロ集団に対して,優先順位付けを1位から12位まで行うことを求めた。 分析は優先順位について各順位での支配的な人口集団の分析と,代表的な人ロ集団である「高齢者」「妊婦,乳児の母親」「乳幼児・小学生」の最優先人口集団の選択に関する分析を行った。 結果 調査票は 880世帯に送付し,772世帯の20歳以上の成人1,220人から回収を得た。 優先順位付けに関しては,賛成,反対,わからないがほぼ同数であった。 1つ目の分析である優先順位は,第1位「乳幼児・小学生」,第2位「妊婦」,第3位「乳児の母親」,第4位「医療従事者」,第5位「60歳未満の慢性肺疾患患者,心疾患患者,腎疾患患者,代謝異常患者,免疫不全状態の患者」,第6位「特別養護老人ホーム・老人保健施設などの従業員」,第7位「健康な高齢者(65歳以上)」,第8位「警察・消防関係者」,第9位「通信・交通・電力・エネルギー業界関係者」,第10位「行政担当者」,第11位「他の項目に当てはまる人を除く健康な13歳以上65歳未満の人」,第12位「60歳以上の慢性肺疾患患者,心疾患患者,腎疾患患者,代謝異常患者,免疫不全状態の患者」,の順で選択されていた。 また,医療従事者と60歳未満の慢性肺疾患患者,心疾患患者,腎疾患患者,代謝異常患者,免疫不全状態の患者,特別養護老人ホーム・老人保健施設などの従業員と健康な高齢者(65歳以上),警察・消防関係者と通信・交通・電力・エネルギー業界関係者の間には有意な差はないので同じ順位であった。 また,この順位は抗インフルエンザウイルス剤,ワクチン接種の場合で共通であった。 2つ目の分析である代表的な人口集団における最優先人口集団に関する推定結果は,抗インフルエンザウイルス剤とワクチン接種において,優先順位で「幼児・小学生」を最優先とする確率は,幼児・小学生の同居家族はそうでない場合よりも,抗インフルエンザウイルス剤では9. 7ポイント,ワクチン接種では8. 0ポイント高かった。 逆に,「高齢者」を最優先とする確率は,高齢者はそうでない者よりも抗インフルエンザウイルス剤では4. 7ポイント,ワクチン接種では4. 8ポイント高かった。 結論 調査結果は,オランダでの優先順位に関する研究とは整合的であるが,新型インフルエンザ対策に関する検討小委員会報告での提言内容とは必ずしも整合的ではなかった。 キーワード パンデミックインフルエンザ,抗ウイルス剤,ワクチン,使用優先順位,パンデミックプラン 第53巻第8号 2006年8月 介護保険制度を利用した埼玉県の健康寿命の算出 池田 祐子(イケダ ユウコ) 生嶋 昌子(イクシマ マサコ) 長谷川 紀美子(ハセガワ キミコ) 徳留 明美(トクトメ アケ ミ) 高野 眞理子(タカノ マリコ) 峰岸 文江(ミネギシ フミエ) 丹野 瑳喜子(タンノ サキコ) 三浦 宜彦(ミウラ ヨシヒコ) 目的 埼玉県では,新たな健康づくり行動計画「すこやか彩の国 21プラン」を策定し,平成22年度を目標年とした健康づくり運動を推進中であり,このプランの達成度や効果が把握できる健康の総合指標として「埼玉県の健康寿命」を算出し,また同指標の算出が簡単に行えるソフトの作成を目的とする。 方法 生命表の作成には Chiangの方法を用い,「障害発生時点」を「介護保険制度における要介護等認定を受けた時点」としてとらえ,「要介護等認定を受けないで生活できる期間」を「健康寿命」とした。 また,平均余命に対する健康寿命の割合を健康割合とし,埼玉県全体と県内医療圏 13 別に分析した。 健康寿命算出ソフトの作成は,エクセルVBAマクロと関数を利用して行った。 結果 埼玉県の健康寿命は, 65歳男性で14. 73年,75歳で7. 78年,65歳女性で16. 35年,75歳で8. 13年であった。 65歳,75歳では女性の方が健康寿命が長いが,85歳になると,男性3. 09年,女性2. 43年と逆転した。 健康割合は,65歳男性で84. 5%,75歳で73. 1%であるが,女性はそれぞれ73. 4%,57. 4%で,65歳,75歳ともに女性の方が低かった。 医療圏別では,65歳健康寿命は男性が14. 16~15. 05年,女性が16. 01~16. 94年で,男女とも県南・県南東部で低かった。 65歳健康割合は,男性が83. 4~86. 2%,女性が71. 1~76. 7%で,男女とも県北部で高かった。 作成した健康寿命算出ソフトは,「埼玉県の健康寿命」をはじめ,平均寿命(余命)や健康割合などが医療圏別,市町村別に算出可能であり,最新データを追加することによって,今後も継続して活用することが可能である。 結論 介護保険制度を基に算出する健康寿命は,1)既存の統計資料の活用が可能であるため,継続的に算出可能で,経年評価ができる,2)全国的に統一された手順と基準に沿って要介護度の認定作業が行われていることから,自治体間の比較が可能である,3)健康づくり事業の達成度や効果が把握できる,などの特徴をもつ指標である。 また,作成した健康寿命算出ソフトは,エクセル上で稼働し,低コスト,簡単操作であり,集団の健康指標算出ツールとして利便性が高いものと言える。 キーワード 介護保険制度,健康寿命,健康割合,健康寿命算出ソフト 第53巻第8号 2006年8月 家庭における乳幼児のタバコ曝露の実態 -尿中ニコチン代謝物測定による検討- 矢野 公一(ヤノ コウイチ) 花井 潤師(ハナイ ジュンシ) 福士 勝(フクシ マサル) 菅原 有希(スガワラ ユキ) 毛利 優子(モウリ ユウコ) 高本 厚子(タカモト アツコ) 伊澤 栄子(イザワ エイコ) 藤田 晃三(フジタ コウゾウ) 目的 家庭における乳幼児のタバコ曝露の実態を,尿中ニコチン代謝物の測定によって明らかにすることを目的とした。 方法 2004年9~11月,札幌市南保健センターでの乳幼児健診児を対象に,36家族(38児)の母と児の尿中ニコチン代謝物(コチニン)を測定した。 結果 喫煙する 27家族中6家族の児がコチニン陽性であった。 陽性児の母はすべて喫煙者で,コチニン陽性であった。 母がコチニン陽性の児は20人で,このうち母乳栄養の9児中5児がコチニン陽性であった。 一方,非母乳栄養の11児では1児のみがコチニン陽性であった。 さらに,生尿と濾紙抽出液中の尿中コチニン濃度は良好な相関を示した。 キーワード 乳幼児,タバコ曝露,尿中コチニン,母乳栄養 第53巻第8号 2006年8月 施設入所高齢者におけるインフルエンザワクチンの 有効性と医療費削減効果の総合評価(予備解析結果) 井手 三郎(イデ サブロウ) 児玉 寛子(コダマ ヒロコ) 高山 直子(タカヤマ ナオコ) 堤 千代(ツツミ チヨ) 山崎 律子(ヤマサキ リツコ) 丸山 正人(マルヤマ マサト) 朔 義亮(サク ヨシスケ) 友田 信之(トモダ ノブユキ) 廣田 良夫(ヒロタ ヨシオ) 目的 インフルエンザワクチンの臨床的効果のみならず,個人レベルで実際の費用と効果に関するデータを積み上げて,ワクチン接種の医療費削減効果を検討する。 介護老人保健施設では89人(接種75,非接種14)を2003年1~3月の間,医療型療養病棟では92人 接種12,非接種80 を2003年12月~2004年3月の間,追跡観察した。 41,95%信頼区間0. 14-1. 17,p=0. 095)。 医療行為の実施率や超過医療費は,接種群において低い傾向を示したが,有意差を検出するには至らなかった。 59,95%信頼区間0. 07-4. 73,p=0. 619)。 また超過医療費の削減傾向も観察された。 3 両シーズンの観察結果をプールした解析において,インフルエンザ様疾患に対するワクチンの有効性は境界域の有意性を示した(ハザード比=0. 44,95%信頼区間0. 17-1. 12,p=0. 084)。 またワクチン接種は,インフルエンザ様疾患に関連する超過医療費を削減する傾向も観察された。 その他,ハイリスク者においては超過医療費が増大することが観察された。 結論 例数は不十分であるものの,インフルエンザワクチンは施設入所高齢者のインフルエンザ様疾患罹患防止に約 40~60%の有効率であることが示唆された。 また,インフルエンザ様疾患に関連する医療費の削減が期待される。 キーワード インフルエンザワクチン,有効性,費用対効果,医療費削減効果,後ろ向きコーホート研究,疫学 第53巻第10号 2006年9月 要介護認定者の日常生活自立度と生命予後との関連 寺西 敬子(テラニシ ケイコ) 下田 裕子(シモダ ユウコ) 新鞍 眞理子(ニイクラ マリコ) 山田 雅奈恵(ヤマダ カナエ) 田村 一美(タムラ ヒトミ) 廣田 和美(ヒロタ カズミ) 神谷 貞子(カミヤ サダコ) 岩本 寛美(イワモト ヒロミ) 上坂 かず子(コウサカ カズコ) 成瀬 優知(ナルセ ユウチ) 目的 要支援を含む新規要介護認定者において,性・年齢階級別に日常生活自立度と生命予後との関連を明らかにすることを目的とした。 方法 富山県のN郡3町村に居住し,2001 年4月から2004年12月に新規に要支援または要介護認定を受けた65歳以上の住民1,700人(男性616人,女性1,084人)を対象とした。 介護 保険認定審査会資料より初回認定時の情報として性,年齢,障害老人の日常生活自立度(ランクJ,A,B,C),主治医意見書に記載された診断名,2005 年3月現在の転帰(生存,転出,死亡)を把握した。 初回認定時の日常生活自立度別の累積生存率を,性・年齢階級別(65~74歳,75~84歳,85歳以 上)にKaplan-Meier法を用いて算出した。 生存曲線の有意性の検定にはlog-rank検定を行った。 また,性・年齢階級別に診断名と初回認定 時の年齢を共変量としたCoxの比例ハザードモデルを用いて,ランクJを基準とした日常生活自立度の死亡に対するハザード比を求めた。 結果 男性の65~74 歳,75~84歳,85歳以上の各年齢階級において日常生活自立度の違いによって累積生存率は有意に異なっていた。 同様に女性の各年齢階級においても有意 に異なっていた。 性・年齢階級別にそれぞれのランクJを基準として各日常生活自立度の死亡ハザード比を求めると,男女共に85歳以上以外の年齢階級で,ラ ンクCが最も高い死亡ハザード比を有意に示すことが共通して明らかとなった。 一方で,日常生活自立度の程度の低下による死亡ハザード比の上昇は性・年齢階 級別に異なる特徴を示し,年齢階級が上がると日常生活自立度の低さによる死亡ハザード比の上昇の程度が小さくなる傾向が,女性は男性よりも日常生活自立度 の違いによる死亡ハザード比の格差が小さい傾向が明らかとなった。 結論 要支援を含む要介護認定者の初回認定時の日常生活自立度の程度は,性・年齢階級別に解析し,診断名を調整しても生命予後と関連していることが明らかとなった。 また,その関連は性・年齢階級別に異なっていた。 グループホームの環境づくりにおいて,施設管理者などの自由に対する認識の 高さを反映していると考えられた。 また,外食も含めた近所や周辺地域との積極的な交流や入所者である認知症高齢者のストレスマネジメントの必要性が考えら れた。 キーワード 認知症高齢者,ホームライク,QOL,ブレインストーミング,KJ法 第53巻第10号 2006年9月 老人医療費と介護費の類似した 地域差の発生要因に関する分析 堀 真奈美(ホリ マナミ) 印南 一路(インナミ イチロ) 古城 隆雄(コジョウ タカオ) 目的 肥満は生活習慣病の原因として重要であり,生命予後を含めた健康の悪化要因とされる。 この肥満および体重変化が10年後の健康に及ぼす影響を,職域の定期健診結果と5年間の終末期を除く医療費を指標として検討した。 方法 対象は1992年度に定期健康診断を受けた40~59歳の男性で,2004年度末にも健在で健保に加入していた6,867名と,この間に死亡を理由に健保を脱退した182名である。 医療費は終末期の高額医療費を除くために1999~2003年度の5年間の診療報酬明細書から医科と調剤を用いて算出した。 結果 1992~1994年度の3年間の平均体重で求めたBMIを5分位で検討すると,医療費はBMIが大きいほど高額であった。 年齢調整累積死亡率が最も低かったのはBMI20. 9~22. 3の群であった。 2001~2003年度までの10年間の体重変化を5分位で検討すると,体重減少が最も大きい群で医療費は高額であった。 観察開始時のBMIで3群に分けて体重変化と医療費の関係をみても,体重の大きな減少は高額医療費と関連していた。 最も医療費が少ないのは,観察開始時BMIが小さい群では約3㎏増加,大きい群では約1㎏低下する群であった。 糖尿病では,観察開始時の肥満度に関係なく体重増加は高額医療費と関連した。 高額医療費を示す主な保険主傷病名は,虚血性心疾患,脳血管疾患,悪性新生物,高血圧などであり,糖尿病では体重増加にしたがってこれらの疾患頻度は増加傾向にあった。 喫煙に関しては,10年間の観察期間中の新たな禁煙群が最も医療費は大きかったが,この群で多くみられる体重増加は医療費に関係しなかった。 結論 肥満は10年後の終末期を除く医療費を高額とした。 死亡率が低かったのはBMI21~22の群であった。 10年間の体重の減少は医療費を高額とした。 体重低下と高額の医療費は重大な疾患に罹患したための二次的なものと考えるのが妥当である。 禁煙による体重増加は医療費を増加させなかった。 これらから男性では,「中年までの肥満の予防が重要であること」「BMI22~23を目標とした体重管理が好ましいこと」「糖尿病では体重の増加は高額の医療費をもたらすこと」「意図した体重の管理が重要であること」などが示唆される。 今後,意図した体重減少が長期的な健康に好ましいことを証明する研究が必要である。 キーワード 肥満,体重変化,定期健診,診療報酬明細書(レセプト),医療費,喫煙 第53巻第10号 2006年9月 地域在住高齢者における車両スピード認知 と身体能力との関係 内田 勇人(ウチダ ハヤト) 朝居 由香里(アサイ ユカリ) 藤原 佳典(フジワラ ヨシノリ) 新開 省二(シンカイ ショウジ) 目的 近年,公衆衛生領域では周産期の母親へのメンタルヘルス支援を行い,効果を挙げているが,ドメスティックバイオレンス(以下,DV)など多くの困難な出来事にさらされることによるメンタルヘルスの影響や,その援助への検討はいまだに取り組まれていない。 そのため様々な困難を抱えているであろう母子生活支援施設入所者を対象として,どのような支援が有効であるのかを明らかにすることを目的に調査を行った。 方法 東京都内母子生活支援施設(以下,支援施設)に入所中で調査協力の得られた母親を対象とし,自記式アンケート調査(匿名郵送回収)を行った。 調査項目は,基本的属性,ソーシャルサポート,メンタルヘルス(うつ評価尺度・解離性体験尺度),母親の子どもへの愛着(愛着形成障害評価尺度),子どもへの不適切な育児,実家との関係,パートナーとの関係など多面的な項目を設定した。 抑うつの要因については抑うつ傾向得点との関連が有意であった変数を独立変数,不適切な育児得点を従属変数として,強制投入法による重回帰分析を行った。 結果 143名から回答を得た。 調査結果から対象者の半数(49%)に抑うつ傾向がみられた。 また入所者の67. 4%がパートナーからの被暴力経験を持ち,95%がパートナーとの関係に葛藤性を抱えていた。 抑うつ傾向と各項目間では,ソーシャルサポート(がない),実家との関係(被虐待経験),解離傾向の有無,愛着障害得点,不適切な育児得点とに関連がみられた。 抑うつ傾向は子どもへの愛着障害にも影響し,さらに子どもへの攻撃性や放置などの育児行為にも影響していた。 結論 支援施設入所者の就労割合は78. 9%と高く,その約半数が抑うつ傾向を持ちつつ就労しており,生活・育児面にかなりの困難さを有しているであろうことが推測されたが,調査結果からも子どもへの愛着や不適切な育児への影響が確認された。 DVなどをはじめ,様々な困難を抱える母親には,子どもへの影響および世代間連鎖を阻止する視点からも,メンタルケアを含め経済・生活面への総合的支援が必要であることが示された。 キーワード 母子生活支援施設,抑うつ,ソーシャルサポート,愛着障害,不適切な育児,メンタルケア 第53巻第11号 2006年10月 一保健所管内の小・中学生を対象とした喫煙行動と関連要因に関する大規模調査研究(第2報) -小・中学生を対象とする禁煙外来のあり方について- 藤田 信(フジタ マコト) 目的 喫煙する小・中学生の禁煙外来に対する考えを明らかにして,禁煙外来受診を促進し,小・中学生の喫煙の解消に資することを目的とする。 方法 静岡県A保健所管内の小学校35校,2,428名,中学校17校,2,316名に対して,無記名自記式の調査票によるアンケート調査を実施した。 結果 過去に禁煙を試みた者は,小・中学生ともに約8割で,そのうち小学生で95%,中学生で78%の者が禁煙を達成していた。 過去に禁煙を試みたとき,誰にも相談しなかった者は小学生の男子女子ともに69%,中学生男子で71%,女子で75%であった。 現在の禁煙を試みる意思は,「今すぐ」「1カ月以内に」「3カ月以内に」やめたいとする者が,合わせて小学生の男子で69%,女子で57%,中学生の男子で43%,女子で38%であった。 禁煙外来受診時に希望する付き添いは,「父母」が小学生男子で34%,女子で27%,中学生男子で14%,女子で20%,「行きたくない」が同様に23%,23%,13%,11% であった。 禁煙外来に希望する担当医は,小学生では「学校医」と「顔見知りの医師」が比較的多く,中学生では「顔見知りの医師」と「顔見知りでない医師」 とでほぼ二分された。 禁煙外来受診の希望日時は,概して日曜日・祝日や夏休みなどの長期休業期間が多かった。 禁煙外来を安心して受診できる条件は,「学校 や氏名が分からないように」が小学生男子で44%,女子で46%,中学生男子で76%,女子で60%,「診察室は別で話が他に聞こえない」が同様に29%,36%,30%,34%であった。 保護者への喫煙と禁煙の告知について,「できない」が小学生男子で6%,女子で5%,中学生男子で20%,女子で11%,「話すつもりはない」が同様に9%,なし,27%,18%であった。 結論 小・中学生を対象とする禁煙外来は,匿名とし診察室を別にして話が他に聞こえない必要があり,診療日は日曜日・祝日または長期休業期間が望ましく,担当する医師は小学生では顔見知りの医師とすることが望ましい。 キーワード 禁煙外来,小・中学生,保健所,質問紙調査,喫煙の習慣性 第53巻第10号 2006年9月 主観的健康感と職業性ストレスとの関連について -MYヘルスアップ研究から- 豊川 智之(トヨカワ サトシ) 三好 裕司(ミヨシ ユウジ) 宮野 幸恵(ミヤノ ユキエ) 鈴木 寿子(スズキ トシコ) 須山 靖男(スヤマ ヤスオ) 井上 まり子(イノウエ マリコ) 井上 和男(イノウエ カズオ) 小林 廉毅(コバヤシ ヤスキ) 目的 金融保険系企業の従業員を対象としたMYヘルスアップ研究における調査により,労働者の主観的健康感(Self-Rated Health: SRH)と職業性ストレス,特に仕事の要求度とコントロールとの関連について検討した。 方法 職業性のストレス要因を,「高ストレイン」「パッシブ」「アクティブ」「低ストレイン」の4つに分け,これらを独立変数,SRH を従属変数とするロジスティック回帰分析モデルにより分析した。 共変量として年齢,職区分,婚姻状態,喫煙習慣,飲酒習慣,運動習慣,睡眠時間,現在治療 中の病気の有無,過去に治療した病気の有無を含め,「基本モデル」とした。 次に,周囲からの支援による,ストレスとSRHとの関連の変化を示すため,上 司,同僚,家族・友人からの支援を共変量としてモデルに入れ「支援ありモデル」とした。 結果 回帰モデル(支援ありモデル)によるオッズ比(OR) では,職業性ストレスについて,高ストレイン(男性OR;1. 88,女性OR;1. 70),パッシブ(男性OR;1. 23,女性OR;1. 40),アク ティブ(男性OR;1. 28,女性OR;1. 20)は,低ストレインと比較してSRHが低いことが示された。 女性では営業職が事務職に比べSRHが低いこ とが示された(OR;1. 85)。 男性では家族・友人からの支援(OR; 1. 80)がない場合,女性では上司(OR;1. 37)からの支援がない場合にSRHが低かった。 結論 仕事の要求度とコントロールによるストレスの違いに焦点を当てて分析を行った結果,高ストレインの労働者のSRH が低いことが明らかになった。 ストレスに関与する要因の中で,男性では家族・友人からの支援を得られない場合に,女性では上司や同僚からの支援を得られな い場合にSRHが低いことが示された。 男性では単身赴任していること,女性では独身でいることが低SRHと関連することが示され,これらの社会的関係性が SRHと結びついていることが示された。 キーワード 主観的健康感,職業性ストレス,カラセックモデル,社会的関係性 第53巻第11号 2006年10月 家族介護者の介護負担感と関連する因子の研究(第1報 -基本属性と介入困難な因子の検討- 平松 誠(ヒラマツ マコト) 近藤 克則(コンドウ カツノリ) 梅原 健一(ウメハラ ケンイチ) 久世 淳子(クゼ ジュンコ) 樋口 京子(ヒグチ キョウコ) 目的 介護負担感の関連因子を探る基礎作業として,年齢や性別などの介護者の基本属性,介護期間などの介入困難な因子について検討した。 方法 対象は,A県下の7保険者において,介護保険の在宅サービスを利用していたすべての要介護者の介護者(7,278人)である。 回収数(率)3,610(49. 6%)のうち,主介護者によって回答された3,149人を分析対象とした。 主観的介護負担感(8点から32点で,得点が高いほど介護負担感が高い)と主介護者の基本属性(性別,年齢,続柄),および介入困難な因子(要介護者の障害老人の日常生活自立度,認知症老人の日常生活自立度,要介護度,1日の平均介護時間,目の離せない時間,介護期間)の9因子との関連を検討した。 結果 介護負担感は,介護者が女性で,高齢,続柄が妻の場合に,有意に高かった。 しかし,例えば,男性の介護負担感の平均値は26. 3,女性は27. 4で,その差は0. 9点 と小さかった。 また,どの年齢・性別においても,障害が重く,介護時間が長くなるに伴い,介護負担感が有意に高くなる傾向がみられた。 ただし,その結果 は,介護負担感スケールで何点以上を「高い」とするのか,平均値でみるのかという変数の扱い方によっても変動した。 介護期間については,長いほど介護負担 感が高い傾向を示したが,統計学的な有意差は65歳未満の女性でのみみられた。 結論 介護負 担感は,介護者が女性で,高齢,続柄は妻で有意に高く,障害の重症度が重い群,もしくは介護時間が長い群で,介護負担感が高くなるという傾向が確認され た。 今後の介護負担感研究においては,介護負担感との間に統計学的に有意な関連が認められた(介護期間を除く)8つの交絡因子を考慮して分析を行うことが 望ましいと考えられた。 キーワード 要介護高齢者,家族介護,介護負担感,日常生活自立度,性差 第53巻第11号 2006年10月 藤沢市における個別健康支援プログラムの有効性の検討 鈴木 清美(スズキ キヨミ) 小堀 悦孝(コボリ ヨシタカ) 相馬 純子(ソウマ ジュンコ) 小野田 愛(オノダ アイ) 齋藤 義信(サイトウ ヨシノブ) 尾形 珠恵(オガタ タマエ) 李 廷秀(リ チョンスウ) 森 克美(モリ カツミ) 川久保 清(カワクボ キヨシ) 目的 藤沢市が厚生労働省から委託を受けて実施した「国保ヘルスアップモデル事業」(平成14~16年度)は,対象とする生活習慣病とその予備群を選定の上,健康度という概念と指標を設定し,個別健康支援プログラムの開発・実施と事業効果の分析・評価を行うものである。 本研究は,開発した藤沢市個別健康支援プログラムの有効性を検討することを目的とした。 方法 プログ ラムの有効性を検討するため,年1回の健康診断と健康相談を受けるコース1,コース1の内容に加えて半年後の効果測定と食生活相談を受けるコース2,コー ス2の内容に加えて週1回の運動トレーニングを行い,総合的に健康づくりを行うコース3の3種類のコースを設定した。 各コースについて,健診結果と生活習 慣調査結果のデータにより,正味2年間の介入前後の比較,事業に参加した介入群(979人)と対照群(4,570人)の変化量の比較を行った。 結果 介入群における介入前後の比較で数値データの変化をみると,コース2,3とも,体重,BMI,血清HDLコレステロール値が改善した。 またコース2では中性脂肪値が改善し,コース3では血圧値が改善した。 対照群との比較では,コース2,3とも,体重,BMI,収縮期血圧,血清総コレステロール値の変化が有意であった。 またコース2では中性脂肪値に,コース3では収縮期血圧,拡張期血圧,血清LDLコレステロール値に有意差があった。 生活習慣についてはコース1,2,3とも介入前後の比較で改善を示し,コース2,3は対照群との比較でも有意差があった。 結論 藤沢市 個別健康支援プログラムは,生活習慣の改善,身体状況の改善の両者において有効であることが実証された。 特にコース2参加者は中性脂肪値の改善が有意であ り,コース3参加者は血圧値の改善が有意であることが明らかになったことから,今後,この結果を踏まえた食生活および運動習慣を配慮した総合的健康づくり システムを構築していく方向性が示された。 キーワード 国保へルスアップモデル事業,個別健康支援プログラム,生活習慣病 第53巻第11号 2006年10月 地域福祉活動の住民満足度分析に関する研究 -地域福祉活動計画への活用- 増子 正(マスコ タダシ) 目的 地域福 祉は,住民の生活の満足度を向上させるという目標を有している。 本研究では,市町村社会福祉協議会が実施している地域福祉事業への住民満足度に影響を与え ている要因を分析して,地域福祉計画,地域福祉活動計画策定に反映させることで,住民ニーズに立脚した計画の策定とアカウンタビリティ(説明責任)確保の 遂行に寄与することを目的としている。 方法 著者が日本学術振興会の科学研究費補助を受けて開発した「ベンチマーク方式による社会福祉協議会の事業評価」の手法を活用して,秋田県A町在住の18歳以上の男女1,197名を対象に,同町社会福祉協議会が実施している地域福祉事業に対する住民意識調査の結果からデータベースを構築し,地域福祉活動や事業に対する住民の満足度に影響を及ぼしている要因を分析した。 結果 事業に対する満足度と,周知度,居住地,居住年数,年齢との関係を分析した結果,活動や事業に対する住民の周知度の違いが,それぞれの事業への期待度と満足度に大きく影響を及ぼしていて,事業に対する周知度が低い集団で満足度のスコアが極端に低いことがわかった。 結論 地域福祉計画,地域福祉活動計画の策定段階で,住民満足度を的確に分析し,ニーズ把握に活用することは,計画のアカウンタビリティ確保に有用であり,事業に対する住民の周知度を高めることが住民の生活の満足度の向上に寄与することが検証された。 計画策定の目標のなかに,地域福祉活動や事業に対する住民の認識度を向上させるための情報提供システムを再構築することの重要性が示唆された。 キーワード 地域福祉活動,住民満足度,地域福祉計画,地域福祉活動計画,事業評価 第53巻第11号 2006年10月 がん終末期患者の在宅医療・療養移行の課題 -病状説明,告知の現状- 沼田 久美子(ヌマタ クミコ) 清水 悟(シミズ サトル) 東間 紘(トウマ ヒロシ) 目的 終末期がん患者が在宅での医療・療養継続を希望した場合に,急性期病院(以下「急性期」)医師と地域での医療を担う(以下「地域」)医師の連携に重要となる課題およびそれぞれの役割を明らかにする。 方法 第7回日本在宅医学会大会に参加した医師を対象に調査用紙を配布・回収した。 医師は,急性期医師と地域医師の2群とし,それぞれ自記式での回答を求めた。 結果 調査対象医師数は185人で,回答者数123人(急性期医師35人,地域医師88人),回収率66. 5%であった。 急性期医師は年齢45. 2歳,医師経験18. 0年,在宅移行経験88. 6%,訪問診療経験77. 1%,地域医師は年齢47. 9歳,医師経験20. 2年,訪問診療経験93. 2%,在宅看取り経験93. 2%であった。 急性期医師の告知に関する回答は「病名はするが余命告知はしない」25. 7%,「病名・余命の告知をする」28. 6%,「家族の希望に沿う」が42. 9%であり,特に,訪問診療経験のない急性期医師は経験のある医師と比較して,余命告知をする割合が低かった(p<0. 05)。 また,「余命の告知をしないことで患者への対応に困難を感じた」との回答は急性期医師71. 4%,地域医師77. 3%とそれぞれ高率であった。 病状理解について,「退院時に患者・家族は病状理解ができている」と回答した急性期医師は85. 7%,地域医師では58. 0%と認識に差がみられたが,患者・家族の病状理解が不十分な時には急性期医師の80. 0%,地域医師では83. 0%が対応困難と感じていた。 また,「急性期医師よりの病状申し送り内容と患者の病状理解が一致していない」と地域医師の51. 2%が回答し,その医師は全員,対応困難を感じていた。 地域医師の回答で,退院時に「患者・家族が不安に思っていること」は「夜間の医療対応」71. 6%,「緊急時の病院対応」68. 2%,「介護への不安」46. 6%,「病状」が27. 3%であった。 多くの地域医師は,患者が余命告知をされていないことや病状理解が不十分なために対応困難を抱えており,患者・家族も退院に当たって病状について 大きな不安を抱いている。 急性期医師は在宅での医療・療養の特性を理解した上で,対応困難が生じると思われる事項を患者の入院中に改善し,患者・家族の置 かれている状況や療養上必要な情報を地域医師へ的確に引き継ぐことが重要である。 その上で,患者・家族の不安を地域医師と共有し,それぞれの役割を生かし た連携を行うことが望まれる。 キーワード 在宅医療,がん終末期患者,アンケート調査,在宅移行連携,医師の認識 第53巻第13号 2006年11月 昭和ヒトケタ男性の寿命 -世代生命表による生存分析- 岡本 悦司(オカモト エツジ) 久保 喜子(クボ ヨシコ) 目的 1980年代に社会的関心を集めた「昭和ヒトケタ短命説」について,その寿命への影響を世代生命表を用いて30歳以降の生存率により定量的に検証した。 方法 1920~1949年出生の男性コホートについて,戦争などの影響を受けていない30~55歳の年齢別死亡率から生存率を算出し推移を観察した。 さらに,戦争などの影響を受けなかったと仮定した場合の生存率の改善を傾向線で表現し,昭和ヒトケタを中心とした世代の観察された生存率と傾向線との差から,戦争などによるコホート効果を65歳までの生存率で定量的に推計した。 結果 1926~1938年に出生した男性において,30歳以降の生存率の停滞が明瞭に観察され,その相対的低下は1932年生まれにおいて最も顕著であった。 この年に出生した男性の30歳のうち65歳まで生存した者の割合は,戦争などの影響がなかったとしたら辿ったであろう生存率と比較して1. 87%低かった。 この世代の30歳時人口が約82万人であったことから,65歳まで到達できた者が約1. 5万人,あるべき数より少なかったことを意味する。 1926~1938年間全体では30歳男性1037万人に対して65歳到達者は,あるべき数より11. 7万人少なかった(1. 1%)。 また,30歳以降の生存率は,世代を追うごとに改善されてきたが,1929年出生者については,わずかながら前世代を下回る現象が確認され,さらに終戦時に乳幼児だった1942~1944年出生世代でも,30歳以降の生存率にわずかながら停滞現象が観察された。 結論 発育期を戦争中に過ごしたという「負い目」は30歳から65歳までの生存率を1%以上低下させる影響をもたらした。 戦後生まれ世代との格差は彼らが老齢に入るにつれてますます拡大している。 彼らがまだ中年だった頃に初めて発見された現象は一時的なものではなく,人生最後までつきまとう「この時期に生まれたるの不幸」であった。 キーワード 世代生命表,コホート効果,生存率,中高年死亡 第53巻第13号 2006年11月 訪問介護サービスを利用している独居高齢者の主観的健康感に 影響する社会関係要因とその独居年数による相違 中尾 寛子(ナカオ ヒロコ) 平松 正臣(ヒラマツ マサオミ) 目的 独居で介護保険の訪問介護サービスを利用している要援護高齢者の主観的健康感に影響する社会関係要因を明らかにし,さらに独居年数によってどのように異なるのかを検証する。 方法 対象は,中国地方のA県B市内4カ所のホームヘルプステーション(訪問介護事業所)で介護保険の訪問介護サービスを利用している独居高齢者51人である。 対象者の自宅を調査員が訪問介護員に同行訪問して,調査票を用いた個別の面接聞き取り調査を行い,年齢,婚姻歴,子どもの有無,要介護度,独居年数などの属性と主観的健康感,QOL(生活満足度尺度K)および社会関係についての情報を得た。 独居年数が明らかでなかった2人を除く対象者を独居年数が10年未満(短期)群(n=20)と10年以上(長期)群(n=29) の2群に分けて,グループごとに主観的健康感に関連する要因を社会関係の中から探り,その結果を2群間で比較した。 単変量解析とカテゴリカル回帰分析を実 施し,カテゴリカル回帰分析の従属変数は主観的健康感(よい[1]~よくない[4]),説明変数は年齢,性,要介護度,社会関係指標とした。 結果 カテゴリカル回帰分析から,両群ともに有意な関連が認められた。 独居年数10年未満群では「男性」「デイサービス・デイケアを利用」「近所づきあいに満足」「閉じこもり傾向なし」が,独居年数10年以上群では,「女性」「近所づきあいに満足」が主観的健康感を有意に高める傾向にあることを示した。 また,両群ともに「年齢」「要介護度」と主観的健康感との間に有意な関連はなかった。 主観的健康感に最も有意な関連性をもつのは「近所づきあいの満足度」であった。 結論 独居期間が短い要援護高齢者の心身の健康にとっては,「デイサービス・ デイケアの利用」や「閉じこもり予防事業への参加」がより高い効果を発揮する可能性が示された。 また,独居年数にかかわらず,独居要援護状態の高齢者の主 観的健康感には,離れて住む子どもや友人よりもむしろ「近隣住民との関係性」のほうが強い影響を及ぼすことが明らかになった。 これらのことから,デイサー ビス・デイケアや閉じこもり予防事業などの地域福祉サービスを独居開始の早い時点つまり「適切な時期」に利用につなげる援助と,本人自身が近隣住民と満足 できる関係性を築くことへの援助の両方が,要援護高齢者にとって高い健康感をもちながらひとり暮らしを続けるためには特に重要であると考えられた。 キーワード 独居要援護高齢者,主観的健康感,社会関係,独居年数,近所づきあいの満足度 第53巻第13号 2006年11月 島嶼地域住民の主観的健康感の関連要因に関する研究 志水 幸(シミズ コウ) 小関 久恵(コセキ ヒサエ) 嘉村 藍(カムラ アイ) 目的 サクセスフル・エイジングに資するべく,日常生活行動の典型例の抽出が可能な島嶼 しょ 地域住民を対象に,ライフスタイルを構成する多元的要素を包括する視点から主観的健康感に関連する要因を明らかにする。 方法 山形県酒田市飛島に居住する満40歳以上の住民208人を対象に,訪問面接調査法(一部,配票留置法)による悉皆調査を実施した。 調査項目は,基本属性,社会関連性指標,老研式活動能力指標,ソーシャルサポート,生活満足度,健康生活習慣に関する85項目を設定した。 さらに,多変量解析では,主観的健康感を目的変数とし,単変量解析で有意差が認められた項目を説明変数とするロジスティックモデルを構築し,強制投入法により変数の独立性について検討した。 結果 調査対象者のうち,192人(回収率92. 3%)から回答を得た。 壮年期ではISI(社会関連性指標)の「便利な道具の利用」の「実施群」が,高齢期ではISIの「訪問機会」「積極性」の「実施群」,LSI-Kの「去年と同じように元気である」の「肯定的回答群」が,壮年期・高齢期の両群ではLSI-Kの「物事を深刻に考える」の「肯定的回答群」において,主観的健康感が高いことが明らかになった。 結論 主観的健康感は加齢に伴い,身体的要因よりも精神的・社会的要因の影響を強く受けることが示唆された。 キーワード 主観的健康感,サクセスフル・エイジング,ライフスタイル,島嶼地域 第53巻第13号 2006年11月 家族介護者の介護負担感と関連する因子の研究(第2報) -マッチドペア法による介入可能な因子の探索- 平松 誠(ヒラマツ マコト) 近藤 克則(コンドウ カツノリ) 梅原 健一(ウメハラ ケンイチ) 久世 淳子(クゼ ジュンコ) 樋口 京子(ヒグチ キョウコ) 目的 介護負担感を軽減する支援策を探るために,交絡因子の条件を同一にするマッチドペア法を用いて,介護負担感と関連する介入可能な因子を検討した。 方法 対象は,A県下の7保険者の地域代表サンプルの介護者(7,278人)である。 回収数(率)3,610(49. 6%)のうち,主介護者によって回答された3,149人を分析対象とした。 今回,検討を行った介入可能な因子は,ソーシャルサポート,副介護者の有無,十分な介護情報の有無,趣味や気晴らし,介護者のGDS(Geriatric Depressive Scale-short form)-15項目短縮版,ストレス対処能力(SOC; Sense of Coherence)である。 また,第1報での検討をふまえ,8つの交絡因子をマッチさせたマッチドペア法を用いて,介護負担感が高い群(20以上)と,低い群(19以下)の2群間で差がみられる因子を検討した。 マッチさせた条件は,介護者の年齢,性別,続柄,障害老人の日常生活自立度,認知症老人の日常生活自立度,要介護度,1日の平均介護時間,目の離せない時間の8因子である。 結果 介護負担感が低い群には,情緒的サポートがあり,手段的サポートがあり,介護情報があり,趣味や気晴らし活動をしており,ストレス対処能力(SOC)が高く,GDSが低いものが,有意に多かった。 61),GDS(0. 57)や情緒的サポート(-0. 45)などの介護者の認知や主観を反映する因子で高く,一方,十分な介護の情報(0. 26),副介護者の有無(0. 08),趣味や気晴らし(0. 33)などの因子で低い傾向が示された。 結論 従来検討されてきたソーシャルサポートなどの客観的な側面の因子と介護負担感の関係よりも,むしろストレス対処能力やGDSなどの介護者の主観的な側面を反映する因子で関連性が大きかった。 このことは介護負担感の軽減にむけての支援策として客観的状況を変える支援だけではなく,認知や主観への介入も今後は検討すべきことを示唆していると思われる。 キーワード 要介護高齢者,介護負担感,心理,介護者支援,ストレス対処能力,うつ 第53巻第13号 2006年11月 幼稚園児の母親を対象とした育児不安の研究 本村 汎(モトムラ ヒロシ) 上原 あゆみ(ウエハラ アユミ) 目的 本研究では,「インフォーマルな支援」としての「夫からの協力」「夫とのコミュニケーション」「友人からの支援」,母親の「性役割分業意識」が,母親の育児不安にどのような影響を与えているかを明らかにし,その影響のメカニズムを検討することを目的とした。 方法 調査対象はA県H市の私立幼稚園に通園している幼児の母親から無作為に抽出された300名(有効回収率74. 3%)であり,調査方法は自計式質問紙法で,調査時期は平成15年10月末~11月末とした。 測定尺度としては9項目から構成された「育児不安」尺度と,支援測定尺度の副尺度である夫からの協力尺度(5項目),夫とのコミュニケーション尺度(5項目),友人からの支援尺度(3項目)を用い,そのいずれも4件法で測定した。 70以上に達している。 母親のパーソナリティの測定尺度としては,標準化されているPOMS(Psychiatric Outpatient Mood Scale)を用いた。 結果 1)一元配置分散分析によれば,インフォーマルな支援が増大すると,そ れに対応する形で母親の「育児不安」は減少していた。 2)一元配置分散分析のレベルでは,母親の「性役割分業意識」は育児不安になんらの影響も与えていな かったが,夫婦関係のありかた如何によっては,影響があることを示していた。 3)母親のパーソナリティとの関連では,いずれの「心理因子」も母親の育児不 安に影響を与え,「活力因子」以外の因子は,いずれも母親の育児不安に「負」の効果をもたらしていた。 4)重回帰分析は,「友人からの支援」と母親のパー ソナリティの「活力因子」が「育児不安」の減少に貢献していた。 結論 支援効果をあげていくためには支援の量を増大するだけでなく,母親のパーソナリティ特性に注目し,母親のネガティブな心理因子の「負」の効果を減少させるために,「活力因子」の強化に焦点をあてた支援の必要性が示された。 キーワード 育児不安,パーソナリティ構造,インフォーマルな支援,一元配置分散分析,重回帰分析 第53巻第15号 2006年12月 一般世帯および食物アレルギー患者世帯における食品表示などの利用状況 -妊産婦教室および乳幼児教室の参加者を対象として- 野村 真利香(ノムラ マリカ) 堀口 逸子(ホリグチ イツコ) 丸井 英二(マルイ エイジ) 目的 厚生労働省によって新たに提示された介護予防施策では,「一般高齢者」「特定高齢者」「要支援高齢者」「要介護高齢者」の4つの階層を用意し,対象と給付の関係を明確化した。 しかし対象者の選定には『基本チェックリスト』と『要介護認定方式』が並行的に運用され,そこから抽出される「特定高齢者」と「要支援高齢者」の境界や階層性の関係は,いまだに明らかにされていない。 本研究では,「要支援高齢者」の候補者である旧要支援,旧要介護1の認定者に対して,『基本チェックリスト』により試行的に判定し,「特定高齢者」と「要支援高齢者」との間の階層的な関係について検証を行った。 方法 対象は,東京都A市において旧要支援,旧要介護1の認定を受けた者のうち,介護保険以外の生活支援型サービスを利用している在宅高齢者767名である。 調査は,2006年2月に自記式の郵送調査によって実施し,回収率は92. 3%であった。 調査内容は,厚生労働省の『基本チェックリスト』およびIADL(手段的日常生活動作)5項目の遂行能力を問う項目を用いた。 本研究では,すべての調査項目に回答した456名(旧要支援:107名,旧要介護1:349名)を分析対象とした。 結果 旧要支援,旧要介護1の認定者に『基本チェックリスト』による判定を試行した結果,特定高齢者に選定されたのは,旧要支援では33. 6%,旧要介護1では57. 8%となり,「要支援高齢者」であるにもかかわらず「特定高齢者」には選定されないケース,つまり施策の想定とは逆の階層関係となるケースが,約半数に出現することが明らかとなった。 次にIADL5項目による自立者の割合を確認した結果,旧要支援,旧要介護1認定者の54. 8%がすべてのIADL項目が自立していた。 これに対して,IADLが非自立であった者の4分の1に当たる25. 7%が特定高齢者に選定されなかった。 結論 2つの異なる基準から抽出された特定高齢者と要支援高齢者の間には,階層関係が逆転しているケースが約半数にみられ,両者を階層的に位置づけるのは困難であることが明らかとなった。 その要因の1つは,新たに開発された基本チェックリストが,要介護認定との階層的な関係を十分に考慮せずに作成されたことにある。 もう1つは,要介護認定方式が,IADLの能力を適切にスクリーニングできず,自立(非該当)との境界が曖昧になっている点が示唆された。 今後,介護予防施策を一貫したシステムとして構築するためには,介護予防施策の対象者の統合も含めて,基本チェックリストと要介護認定方式の抜本的な見直しが不可欠である。 キーワード 介護予防,要介護認定方式,基本チェックリスト,給付区分,特定高齢者 第53巻第15号 2006年12月 介護保険施設におけるケアマネジメント実践の検証 真辺 一範(マナベ カズノリ) 目的 介護保険施設におけるケアマネジメントの実践内容を概念的モデルとの比較から検証し,施設ケアマネジメントのあり方を模索した。 方法 先行研究に基づきケアマネジメント実践の程度を測るための項目を用い,兵庫県内の介護保険施設491カ所に所属する施設ケアマネジャーを対象として,郵送によるアンケート調査を実施した。 質問紙の作成に際しては,回答者が理解しやすいように各質問項目を介護保険施設の現状に合うよう適切な表現に変更し,その実践度合いを5段階のリッカートスケールでたずねた。 有効回答数(率)は,330名(67. 2%)であった。 調査結果の分析は,施設ケアマネジメントの実践プロセスの枠組みを明らかにするためにそれぞれ因子分析(主因子法・バリマックス回転)を行った。 さらに実際の援助プロセスごとに回答者の属性による違いを明らかにするため,その因子分析で抽出されたそれぞれの因子を従属変数とし,属性を独立変数としたt検定,一元配置分散分析(F検定)および下位検定の多重比較(Tukey法)を行った。 また,因子分析の結果と概念的モデルを比較し,ケアマネジメント実践プロセスに関する分析を行った。 結果 因子分析により抽出された因子は「アセスメント」「モニタリング」「ケース発見」であった。 「アセスメント」に関しては,性別,年齢,基礎資格,基礎資格経験年数(基礎年数),ケアマネ人数,所属施設,勤務形態(専任兼任),事例検討形式の研修受講有無(事例研修)によって有意差がみられた。 特に所属施設においては「老人保健施設(以下,老健)」が「特別養護老人ホーム(以下,特養)」より有意に高かった。 また,「モニタリング」に関しては,担当ケース数,担当者会議の有無,着任経緯によって有意差がみられ,特に担当ケース数では「40~59件」が「0~39件」より有意に高かった。 「ケース発見」に関しては性別,演習形式の研修受講有無,事例検討形式の研修受講有無によって有意な差がみられた。 なお,相談相手の有無や講義形式の研修受講有無ではすべてのプロセスにおいて有意な差はみられなかった。 結論 1)施設ケアマネジメントの特徴は,「アセスメント」とその後に続く「目標設定とケア計画」「ケア計画実施(リンキング)」のプロセスが一体的に連動して実施されており,実践プロセスではその部分が明確に区別されていない。 2)「評価」については,具体的で実効性のある手法を開発し,実践レベルに導入できる取り組みが早急に必要である。 キーワード 施設ケアマネジメント,介護支援専門員の専門性,介護保険制度,施設ケアマネジメント実践の定義,研修システム 第53巻第15号 2006年12月 介護保険施設における施設ソーシャルワークの構造と規定要因 -介護老人福祉施設と介護老人保健施設の相談員業務の比較分析を通して- 和気 純子(ワケ ジュンコ) 目的 介護老人福祉施設と介護老人保健施設における相談員業務の比較分析を通して,介護保険施設における施設ソーシャルワークのあり方を検討するための基礎データを作成することを目的とする。 方法 無作為抽出(系統抽出法)した介護老人福祉施設500カ所および介護老人保健施設500カ所の生活相談員・支援相談員のうち,当該施設で最も経験年数の長い相談員を対象に郵送調査を実施した。 調査時期は,2004年11~12月,回収率は48. 4%である。 30項目の業務内容の頻度を5段階で尋ね,一元配置分散分析によって各業務頻度の比較を行った後,探索的因子分析によって因子構造を把握した。 その上で,各因子得点を従属変数とし,施設特性および相談員特性を独立変数とする重回帰分析を行い,相談員業務を規定する要因の異同について考察した。 結果 介護老人保健施設の相談員は,入退所をめぐる相談・調整業務に多くの時間を費やしているのに対し,介護老人福祉施設の相談員は利用者の日常生活支援や地域社会と関わる幅広い業務により頻繁に従事している。 業務の因子構造では類似点もみられるが,抽出された因子数や因子寄与率に差異が認められた。 各業務因子に影響を与える要因では,介護老人福祉施設の場合は施設特性の影響力が強く,介護老人保健施設では相談員特性のみが規定要因となっていることが判明した。 結論 施設としての役割や機能を異にする介護老人福祉施設と介護老人保健施設であるが,入所者の権利を擁護し,その生活の質を高めるために,いずれの施設にあっても施設ソーシャルワークを担う相談員が果たす役割はますます重要になっていくものと考えられる。 介護保険施設として,利用者のニーズに最も的確に応える相談員業務の設定と必要な専門性の確保が求められる。 キーワード 介護保険施設,介護老人福祉施設,介護老人保健施設,ソーシャルワーク,相談員 第53巻第15号 2006年12月 身体障害者福祉施設の施設職員が認識する 「自立」概念に関する研究 仁坂 元子(ニサカ モトコ) 岡田 進一(オカダ シンイチ) 髙橋 美樹(タカハシ ミキ) 樽井 康彦(タルイ ヤスヒコ) 白澤 政和(シラサワ マサカズ) 目的 本研究は,身体障害者福祉施設の施設職員(施設長を含む)が認識する自立の構造を明らかにすることが目的である。 方法 調査対象者は,近畿2府4県の身体障害者福祉施設150カ所の職員,施設長各1名ずつの計300名であり,調査方法は無記名の自記式郵送調査である。 調査期間は2005年2月14日から3月11日で,有効回答率は66. 0%であった。 調査項目は,基本属性,先行研究から抽出された自立に関連する項目を設定した。 施設職員が認識する自立概念を明らかにするため,分析方法にはバリマックス回転を伴う因子分析(主因子法)を用いた。 結果 本研究の分析から,施設職員が認識する自立概念は,「生活主体者という立場からの自己実現志向」「一個人として尊重されていることへの気づき」「社会制度の選択・開発過程への積極的関与」「身辺および経済面における自助志向」「他者との非依存的な人間関係の構築」の5因子からなることが明らかとなった。 結論 本研究は,自立を「身体的」や「経済的」側面から捉えていくことの限界を示唆した先行研究を支持する結果となった。 そして,施設職員は,自助志向の従来の自立観と自己実現などをキーワードとする新しい自立観という2つの立場を内包していることが明らかとなった。 今後,施設職員は,障害者に対する適切な自立支援を行っていくためにも,何を自立と考えるのかを明確にし,具体的な自立支援の方法を考えていくことが必要となる。 また,従来の自助志向の自立観も否定されるものではないが,その考え方が障害者から必ずしも支持されてきた自立観ではないことから,今日の自立支援の方向性として,個人として尊重されることや社会制度との関わりを意識した支援が求められる。 そして,社会制度の利用を自立と捉えることは,障害者自立支援法に基づいた支援を行っていくにあたり,非常に重要なことであり,障害者に対する「権利擁護」の考え方にもつながるものであると考えられる。 キーワード 身体障害者,施設職員,施設長,自立 第53巻第15号 2006年12月 高齢者のボランティア活動に関連する要因 岡本 秀明(オカモト ヒデアキ) 目的 人口高齢化の進行の中にあって元気な高齢者数も増加しているわが国では,高齢者は社会や地域に貢献する資源であるという観点を持ち,高齢社会を構築していくことが求められる。 本研究では,高齢者のボランティア活動に関連する要因を明らかにすることを目的とした。 方法 大阪市24区のうち8区から無作為抽出し,65~84歳の高齢者1,500人を対象に自記式質問票を用いた郵送調査を実施した。 有効回収数771人のうち,特定項目に欠損値のない671人を分析対象とした。 分析は,ボランティア活動の有無を従属変数としたロジスティック回帰分析を行った。 独立変数は,「家族・経済・他(4変数)」「健康(2変数)」「暮らし方の志向性(7変数)」「技術や経験(2変数)」「社会・環境的状況(2変数)」という5領域の計17変数とし,統制変数は,年齢と性別を投入した。 領域ごとに分析し,次に,統計学的な有意が認められた変数をすべて投入して分析を行った。 結果 ボランティア活動をしている者は24. 0%であり,年1~2回活動している者が最も多かった。 ボランティア活動への関心がある者は58. 8%,活動への参加意向がある者は48. 9%であった。 ロジスティック回帰分析を行った結果,ボランティア活動をしている者の特性として,「中年期にボランティア経験がある」「地域に貢献する活動をしたい」「ボランティア活動情報の認知の程度が高い」(p<0. 001),「技術・知識・資格がある」「親しい友人や仲間の数が多い」(p<0. 01),「主観的健康感が高い」(p<0. 05)ということが明らかになった。 結論 ボランティア活動への関心のある者は6割弱,参加意向のある者は5割弱であるのに対し,実際に活動している者は2割強にとどまっていた。 活動への関心や参加意向のある者を実際の活動に結びつけやすいよう環境を整備していくことにより,ボランティア活動に参加する高齢者が増加することが期待できる。 高齢期以前にボランティア経験を持てるような場の設定や啓発,活動への参加の機会に関する情報を多くの高齢者に認知してもらえる環境を整えていくことなどが求められる。 キーワード 高齢者,ボランティア,社会活動,社会参加 第54巻第1号 2007年1月 子どもの発達の全国調査にもとづく園児用 発達チェックリストの開発に関する研究 安梅 勅江(アンメ トキエ) 篠原 亮次(シノハラ リョウジ) 杉澤 悠圭(スギサワ ユウカ) 丸山 昭子(マルヤマ アキコ) 田中 裕(タナカ ヒロシ) 酒井 初恵(サカイ ハツエ) 宮崎 勝宣(ミヤザキ カツノブ) 西村 真美(ニシムラ マミ) 目的 全国の保育園児の発達状態について実態を調査し,それに基づいた園児用発達チェックリストを開発することを目的とした。 方法 対象は,長時間保育を含む全国98カ所の認可保育所を利用する22,819名の子どもである。 担当保育士が各々の子どもの発達状態について,園児用発達チェックリスト試案を用いて運動発達(粗大運動,微細運動),社会性発達(生活技術,対人技術),言語発達(表現,理解)の6領域,各領域32項目,全192項目について評価した。 すべての項目について,10%の子どもが実施可能となる月齢(10パーセンタイル値),50%の子どもが可能となる月齢(50パーセンタイル値),90%の子どもが可能となる月齢 90パーセンタイル値)を算出した。 結果 すべての項目について,10パーセンタイル値,50パーセンタイル値,90パーセンタイル値が試案の序列に添った形で抽出され,また基準月齢が10~90パーセンタイル値の範囲内にあることが確認された。 信頼性は各領域で82. 5~97. 9%であった。 結論 この園児用発達チェックリストが,現在の日本における園児の発達を評価する指標として妥当であることが示された。 キーワード 子どもの発達,保育,評価,園児,全国 第54巻第1号 2007年1月 高齢者を対象とした地域における運動教室の医療経済効果 神山 吉輝(カミヤマ ヨシキ) 白澤 貴子(シラサワ タカコ) 小出 昭太郎(コイデ ショウタロウ) 高橋 英孝(タカハシ エイコウ) 川口 毅(カワグチ タケシ) 久野 譜也(クノ シンヤ) 目的 地域における高齢者を対象にした運動教室について,開始前1年間と開始後の2年間以上のデータを用い,3年間以上の年間医療費の推移を示した形で,医療経済評価を行うことを目的とした。 方法 新潟県M市,富山県S市,埼玉県K市,愛媛県W町の健康運動教室参加者のうちの国民健康保険の被保険者(以下,国保加入者)を運動群とするとともに,国保加入者の中から運動教室に参加していない約3倍の人数を対照群として抽出し,両群の年間の医療費の推移を比較した。 医療費の増減の総和を明らかにするために,各年の1人当たり医療費をみるだけではなく,教室開始前の医療費に教室開始後の年間医療費を次々に加えていく累積医療費を算出し,運動群と対照群とで比較を行った。 結果 4市町において,運動群は対照群に比較して,運動教室の開始前から医療費が低いものの,累積医療費でみると,教室開始1年目,2年目とその差が広がっていくことが示された。 結論 教室開始前と開始後2年間以上の国民健康保険の医療費データを用い,運動群と対照群を比較することで,地域における高齢者を対象とした運動教室による医療経済効果の可能性が示唆された。 キーワード 高齢者,運動教室,筋力トレーニング,医療経済 第54巻第1号 2007年1月 地域福祉に対するコミュニティワーカーの意識構造 谷川 和昭(タニカワ カズアキ) 目的 地域福祉が学問として生誕したのは1970年代のことであるが,地域福祉の推進を専門とするコミュニティワーカーの意識構造を手がかりとして,未だ定かとなっていない地域福祉とは何かを明らかにすることが本研究の目的である。 そのため地域福祉の構成要件を提起し,その体系化の可能性について検討した。 方法 市区町村社会福祉協議会のコミュニティワーカーへの郵送調査(2003年2~3月)を行い,分析項目のすべてに欠測のない222票のデータを用いた。 探索的因子分析の手法を用いて,最初に地域福祉に関わる因子の抽出と解釈を行い,続いて地域福祉計画に関わる因子の抽出と解釈を行った。 また,両者間の関連の有無を相関分析によって確認した。 その後,地域福祉に関する質問33項目と地域福祉計画に関する質問32項目を合成した地域福祉概念に関する65項目の質問項目を用いて一次因子分析を行い検討した。 次に,この一次因子分析で析出された因子構造についてさらなる知見を得るため,二次因子分析を行い,因子の抽出と解釈を試みた。 また,一次因子分析による構成因子の特徴について考察するためクラスター分析を行った。 結果 地域福祉に関わる因子,地域福祉計画に関わる因子のいずれも抽出とその解釈が可能であった。 また地域福祉と地域福祉計画との関連が認められた(r=0. 834,p<0. 001)。 合成した地域福祉概念についての一次因子分析の結果,10個の因子が抽出され,その解釈は可能であった。 これら10個の因子による二次因子分析の結果も解釈が可能であった。 クラスター分析の結果,関係性が見いだせそうな組合せや独立した因子が明らかになった。 結論 分析結果から,「地域福祉の原理・原則」「新旧社会政策との調整」「予防的社会福祉の増進」「地域社会サービスの整備」「地域のコミュニケーション」「福祉のネットワーキング」「地域福祉圏域の設定」「福祉サービス利用への支援」「社会福祉の空間づくり」「地域における福祉の方向性」が地域福祉の構成要件として示された。 また,これらは「制度・政策・施策」「実践・方法・理念」の2つに集約された。 さらに,以上の要件のうち,「地域における福祉の方向性」が地域福祉の推進にとって重要と考えられた。 キーワード 地域福祉,地域福祉計画,地域福祉の構成要件,コミュニティワーカー,意識構造 第54巻第1号 2007年1月 東北地方の在宅高齢者における 地域・家庭での役割の実態と関連要因の検討 高橋 和子(タカハシ カズコ) 安村 誠司(ヤスムラ セイジ) 矢部 順子(ヤベ ジュンコ) 芳賀 博(ハガ ヒロシ) 目的 「虚弱高齢者」から「極めて元気な高齢者」まで,その体力レベルに応じた役割の創造と開発を目的に,東北地方における在宅高齢者の地域・家庭での役割の実態把握を行い,現状での役割にはどのような要因が影響しているのかを明らかにすることで,高齢者の役割の創造・開発における課題を検討する。 方法 福島県S市A地区の高齢者から無作為抽出した693人を対象に,郵送法による質問紙調査を行った。 高齢者の役割については,収入の伴う仕事の有無,シルバー人材センター・高齢者事業団の仕事の経験の有無,家の中での役割,地域の団体・組織・会とのかかわり,現在または最近行ったボランティア活動を把握した。 分析方法は,各質問の回答を2項目に分類して行った。 最初に各変数についてFisherの直接法を用いて性差を確認した。 次に役割の有無による属性の比較を行い,p値が0. 05未満となったものを投入し,変数減少法による多重ロジスティック回帰分析を行った。 結果 高齢者の役割のうち,収入の伴う仕事は女性よりも男性で有している割合が有意に高かった。 家の中での役割は,男性は「大工仕事や家の修繕」,女性は家事全般において実施している割合が高く,男女で有意差が認められた。 地域の団体・組織・会とのかかわりは,男女とも「町内会・自治会」「老人会・高齢者団体」に入っている割合が高かった。 ボランティア活動は,男女とも「美化・環境整備の活動」「農作業に関する活動」の実施割合が高かった。 高齢者の属性による役割の有無の比較では,収入の伴う仕事,家の中での役割,地域の団体・組織・会とのかかわり,ボランティア活動ともに,日常生活自立度のレベルにより役割の有無に差が認められ,自立者で割合が高かった。 また,役割を目的変数とした多重ロジスティック回帰分析の結果においても,現在の役割の有無には日常生活自立度が大きく影響していた。 結論 現在,高齢者が担っている家の中や地域での役割は,性や日常生活自立度で違いがあり,日常生活で介助を要する者は役割を持たない者が多いことがうかがわれた。 新たな役割の創造・開発を行う上で,性・年齢とともに高齢者の活動レベルに応じた役割を検討することの重要性が確認された。 キーワード 社会参加,社会活動,役割,在宅高齢者 第54巻第1号 2007年1月 高齢者福祉活動の必要性に関する地域住民の意識 渡辺 裕一(ワタナベ ユウイチ) 目的 近年,地域の高齢者福祉問題の解決に向けた地域住民の参加への期待は高まっている。 しかし,多くの地域住民の力は潜在化し,その期待にこたえられる状況にあるとは言えない。 地域住民が主体的にこれらの問題を共有し,解決に向けて働きかけることが求められており,その導入に高齢者福祉活動の必要性意識を持つという過程があると考えられる。 そこで,本研究では高齢者福祉活動の必要性に関する地域住民の意識の現状を把握し,その意識に影響を与えている要因を探索的に明らかにすることを目的とした。 独立変数には,「性別」「年齢」「家族構成」「配偶者」「学歴」「永住希望」「広報紙(市・区・自治会レベル)」「地域の集まり」「住居」「仕事の有無」「65歳以上の方と同居しているか」「介護の必要な方と同居しているか」を用いた。 結果 「介護予防」との間に有意な関連が認められた独立変数は,「学歴」「年齢」「地域の集まり」「配偶者」「住居」「仕事の有無」「広報紙(市・区・自治会レベル)」であった。 「高齢者交流」と各独立変数との間には有意な関連は認められず,「介護者交流」は,「年齢」「家族構成」「地域の集まり」「65歳以上の方と同居しているか」との間に有意な関連が認められた。 「学習機会」は「地域の集まり」「広報紙(市・区レベル)」との間に有意な関連が認められた。 結論 高齢者福祉活動の必要性意識に影響を与えている要因は,内的要因(年齢,性別,その他)と外的要因(広報紙,地域の集まり,その他)の2つに分類することができる。 内的要因に外的要因を重ねていく働きかけによって,地域住民の高齢者福祉活動に関する必要性意識を高めていくことができる可能性が示唆されたと言える。 キーワード 高齢者福祉活動,必要性意識,共有,地域住民,参加,エンパワメント 第54巻第2号 2007年2月 胃がんと肺がんにおける死亡年齢と罹患年齢の年次推移 高橋 菜穂(タカハシ ナホ) 川戸 美由紀(カワド ミユキ) 亀井 哲也(カメイ テツヤ) 谷脇 弘茂(タニワキ ヒロシゲ) 栗田 秀樹(クリタ ヒデキ) 橋本 修二(ハシモト シュウジ) 目的 胃がんと肺がんにおいて,人口構成の変化を調整した上で,死亡率と罹患率とともに,死亡年齢と罹患年齢の年次推移を検討した。 方法 1975~1999年の性・年齢階級別の死亡数と罹患数から,年齢調整死亡率,年齢調整罹患率,調整平均死亡年齢と調整平均罹患年齢を算出した。 結果 胃がんにおいて,1999年の平均死亡年齢は男で70. 9歳と女で73. 0歳,平均罹患年齢は男で67. 7歳と女で69. 7歳であった。 年齢調整死亡率と年齢調整罹患率は年次とともに低下傾向,調整平均死亡年齢と調整平均罹患年齢は上昇傾向であった。 肺がんにおいて,1999年の平均死亡年齢は男で72. 4歳と女で73. 8歳,平均罹患年齢は男で71. 1歳と女で71. 6歳であった。 年齢調整死亡率と年齢調整罹患率は上昇傾向であったが,1990年ごろから上昇の鈍化傾向あるいは横ばい傾向がみられた。 調整平均死亡年齢と調整平均罹患年齢は上昇傾向であったが,1990年ごろから男で上昇の鈍化傾向,女で横ばい傾向がみられた。 結論 胃がんと肺がんにおいて,死亡年齢と罹患年齢が年次とともに大きく変化していることを示した。 キーワード 胃がん,肺がん,死亡年齢,罹患年齢,年次推移 第54巻第2号 2007年2月 地区単位のソーシャル・キャピタルが主観的健康感に及ぼす影響 藤澤 由和(フジサワ ヨシカズ) 濱野 強(ハマノ ツヨシ) 小藪 明生(コヤブ アキオ) 目的 地区を単位としたソーシャル・キャピタル変数が全体的健康感に対してどの程度,影響を及ぼしているかに関して明らかにすることを目的とした。 方法 日本国内に居住する満20歳以上75歳未満の男女3,000人を調査対象者とし,抽出方法は層化二段無作為抽出法を用いた。 2004年2月に調査員による面接調査を実施し,1,910人(男性870人,女性1,040人)から回答を得た(回収率63. 7%)。 分析方法は,相関分析および性別,年齢,慢性疾患の有無,暮らし向き,ソーシャル・キャピタル(6項目)を独立変数,全体的健康感を従属変数とする重回帰分析を行った。 なお,分析においては,分析単位を地区としていることから,各変数について平均値および割合を用いて地区単位への集約を行った。 結果 全体的健康感と相関が示されたソーシャル・キャピタルは5項目であり,さらに重回帰分析を行った結果,「私の住んでいるこの地区はとても安全である」「私の近所の誰かが助けを必要としたときに,近所の人たちは手をさしのべることをいとわない」「急病の時など,すぐにかかれる医療機関があって安心できる地域である」「私の地域では,お互いに気軽に挨拶を交し合う」において統計的に有意な関連が示された(p<0. 05)。 なお,慢性疾患率および暮らし向きについても有意な関連が示された(p<0. 05)。 結論 本結果から,地区単位のソーシャル・キャピタルは,他の変数とともに全体的健康感に一定の影響を与えていることが明らかとなった。 慢性疾患率や暮らし向きなどの変数が全体的健康感に影響を与えているのは非常に理解しやすいものであるが,これらの変数と同様に複数のソーシャル・キャピタル変数が全体的健康感に同程度の影響を与えていた点が注目に値する。 今後は,ソーシャル・キャピタル概念の理論的検討,その健康への影響プロセス,そして規定要因としての分析上の問題を克服する必要があると考えられる。 キーワード ソーシャル・キャピタル,主観的健康感 第54巻第2号 2007年2月 都道府県における母子保健統計情報の収集・利活用状況に関する研究 鈴木 孝太(スズキ コウタ) 薬袋 淳子(ミナイ ジュンコ) 成 順月(チェン シュンユエ) 田中 太一郎(タナカ タイチロウ) 山縣 然太朗(ヤマガタ ゼンタロウ) 目的 現在わが国において,市町村から都道府県,国へと伝達されている母子保健統計情報は,人口動態調査,地域保健・老人保健事業報告のみである。 しかしながら今後,「健やか親子21」で提示している母子保健の取り組みなどについて目標値の設定・評価などを行う際には,それら以外の母子保健統計情報が必要である。 そこで本研究では,都道府県における母子保健統計・情報の集計実態について調査し,その現状を把握することを目的とした。 方法 都道府県の母子保健担当者の連絡先(E-mailアドレス)を,都道府県ホームページなどから検索した。 E-mailを用いて,担当者に母子保健統計情報の収集・利活用状況に関する調査票を送付し,回答をE-mailまたはFAXで回収した。 具体的な調査内容は,市町村における母子保健統計情報を都道府県が把握・集計するシステムの有無,その情報の内容,乳幼児健診の形態(集団・個別),情報公開の有無などである。 結果 回答は全都道府県から得られ,45都道府県(95. 7%)において市町村で集計したデータをまとめていた。 しかし,情報内容については,乳幼児健診の受診率(100%)およびその内容・結果(77. 8%)をほとんどの都道府県で集計している一方,妊婦の喫煙(6. 7%)や小児の事故(15. 6%)についてはあまり集計されていなかった。 このように集計している情報の内容は都道府県によりかなりばらつきがあり,また政令市については政令市以外の市町村と一括して集計していない道府県が大半であった。 結論 国としてまとめている人口動態調査,地域保健・老人保健事業報告以外の母子保健統計情報について,45都道府県において市町村が集計した情報をまとめていたが,その内容にはばらつきがあるため,調査内容について今後より精査する必要がある。 また今回の研究結果は,様々な母子保健の指標を評価するのに必要な,情報の標準化・規格化を目指すうえでの基礎資料となりうる。 キーワード 母子保健,乳幼児健診,健やか親子21,統計情報,情報公開 第54巻第2号 2007年2月 少子化の人口学的要因と社会経済的要因の解析 小島 里織(コジマ サオリ) 上木 隆人(ウエキ タカト) 柳川 洋(ヤナガワ ヒロシ) 目的 わが国の2000年出生率は1970年の約半分までに低下し,出生率低下の主な原因として晩婚化・晩産化が指摘される。 代表的な社会経済指標を取り上げ,出生率などとの相関を検討して,出生率低下に影響を及ぼす社会経済的要因を明らかにする。 方法 1970年から2000年までの人口動態統計と国勢調査のデータをもとにして,わが国の出生率などの年次推移を1970年を1とした比で算出した。 次に,25~29歳と35~39歳の有配偶率と有配偶出生率について,社会経済指標である第三次産業就業人口割合,15~44歳女子労働力,1人当たり県民所得との相関を,また20~24歳の有配偶率と有配偶出生率について進学率との相関を求めた。 結果 1 2000年の出生率は1970年と比べて,20~24歳と25~29歳では半減し,30~34歳と35~39歳では低下の後で上昇した。 有配偶率は全体に低下傾向で,20~24歳と25~29歳で半減した。 有配偶出生率は20~24歳と25~29歳で横ばい,30~34歳と35~39歳で低下の後に上昇した。 2 有配偶率や有配偶出生率と社会経済指標との相関は,25~29歳有配偶率は第三次産業就業人口割合と,25~29歳有配偶出生率は女子労働力や1人当たり県民所得と,35~39歳の有配偶率と有配偶出生率は第三次産業就業人口割合と相関がみられた。 20~24歳の有配偶率と有配偶出生率は進学率と負の相関を示した。 3 社会経済指標間の相関は,女子労働力は第三次産業就業人口割合や進学率と負の相関,1人当たり県民所得は進学率と正の相関を示した。 結論 女子労働力,第三次産業就業人口割合,1人当たり県民所得,進学率などの指標に現れる社会経済的要因が相互に関係しつつ,晩婚化,晩産化をもたらしたと考えられる。 出生率低下への対応は,女子労働の問題や,出産・育児や子どもの教育に関連する経済的負担,住宅事情に関連する問題などを年代ごとにとらえる必要があろう。 キーワード 出生率,有配偶率,有配偶出生率,第三次産業就業人口割合,女子労働力,進学率 第54巻第5号 2007年5月 都道府県別たばこ消費本数と主要死因別標準化死亡比との関連 竹森 幸一(タケモリコウイチ) 目的 都道府県別たばこ消費本数と主要死因別標準化死亡比(以下SMR)との関連を検討することにより,都道府県における喫煙の健康影響について探求することを目的とした。 方法 各都道府県の2002年,2003年,2004年のたばこ売渡本数から返還本数と課税免除本数を差し引いた値を同年の各都道府県男女別15歳以上人口で除して,男女別15歳以上1人当たりたばこ消費本数を求めた。 都道府県の男15歳以上1人当たりたばこ消費本数の年次間の相関と平均値の差をみた。 都道府県別15歳以上1人当たりたばこ消費本数と全死因,悪性新生物(総数,胃,大腸,肝及び肝内胆管,気管・気管支及び肺),心疾患(総数,急性心筋梗塞)および脳血管疾患の各SMRとの相関係数を男女別に求めた。 結果 男15歳以上1人当たりたばこ消費本数は年次間に高い相関がみられ,2002年から2004年にかけて有意に低下していた。 15歳以上1人当たりたばこ消費本数との間に,男の2002年で全死因,気管・気管支及び肺の各SMR,2003年で全死因,悪性新生物総数,気管・気管支及び肺の各SMR,2004年で気管・気管支及び肺のSMRに有意な正相関がみられた。 女では2003年で悪性新生物総数のSMRに有意な正相関がみられた。 15歳以上1人当たりたばこ消費本数と基本健康診査喫煙率,国民生活基礎調査喫煙率および国民栄養調査から計算した喫煙者指数との間に有意の正相関がみられた。 結論 都道府県別たばこ消費本数と主要死因別SMRとの相関関係から,気管・気管支及び肺などの主要死因で喫煙の影響を否定しえない結果が得られた。 キーワード たばこ消費本数,都道府県別標準化死亡比,悪性新生物,全死因 第54巻第2号 2007年2月 中都市在住高齢者の手段的ソーシャルサポート選好度とその構造 -大都市在住高齢者との比較の視点に基づいた考察- 権 泫珠(コン ヒョンジュ) 目的 中都市在住高齢者が自分自身に手段的ソーシャルサポートが必要になったとき,誰に対して,どの程度の支援を求めたいと考えているのかといった手段的ソーシャルサポート選好度およびその構造を明らかにすることを目的とした。 また,大都市在住高齢者を対象とした同様の先行研究の結果と比較し,高齢者の選好度の特徴を考察する。 方法 愛知県A市に在住する65歳以上の高齢者のうち,900人を無作為抽出し,自記式質問紙を用いた郵送調査を行った。 調査期間は,2004年11月1~15日であり,有効回収率は51. 6%(464票)であった。 分析方法は,手段的ソーシャルサポート選好度の構造を把握するために因子分析を行った。 また,因子ごとの平均値からそれぞれのサポート源に対する選好の程度を把握した。 その結果を大都市高齢者対象の先行研究と比較した。 結果 手段的サポートに対する選好度は,家事や介護サポートを家族に求めたいという選好度が最も高く,次いで,介護や経済サポートを行政や福祉機関に求めたいという選好度が高かった。 また,因子構造は,「フォーマルサポート源への選好」「家族以外のインフォーマルサポート源への選好」「家族への選好」「経済サポート/フォーマル機関への選好」の4因子となった。 因子ごとの平均値は,「家族への選好」が最も高く,次いで「経済サポート/フォーマル機関への選好」「フォーマルサポート源への選好」「家族以外のインフォーマルサポート源への選好」の順であった。 結論 研究結果は大都市高齢者を対象とした先行研究とも一致するものであり,高齢者の手段的ソーシャルサポート選好度の構造および選好順位は地域間での違いはみられず,一般化できる可能性が示唆された。 一方,「家族への選好」因子の平均値は,中都市高齢者の方で高く,地域差がみられた。 キーワード 中都市在住高齢者,ソーシャルサポート選好度,手段的ソーシャルサポート,大都市在住高齢者,地域差 第54巻第3号 2007年3月 静岡県における自殺死亡の地域格差および社会生活指標との関連 久保田 晃生(クボタ アキオ) 永田 順子(ナガタ ジュンコ) 杉山 眞澄(スギヤマ マスミ) 藤田 信(フジタ マコト) 目的 本研究の目的は,自殺死亡の低率県である静岡県内の自殺死亡の地域格差について確認するとともに,自殺死亡に関連する社会生活指標を検討し,今後の静岡県における自殺予防施策の基礎資料を得ることとした。 方法 静岡県内における男女別の自殺死亡標準化死亡比(SMR)(1999~2003年)をマップ化して,地域格差を確認した。 また,地域の社会生活指標を収集し,自殺死亡SMRとの関連について,主成分分析および重回帰分析を行い検討した。 結果 静岡県内の自殺死亡SMRは,男女とも同様の分布を示し,市よりも町の方が高い値を示した。 また,女性では自殺死亡SMRが200を超える地域が3町あり,男性より地域間の格差が認められた。 本研究の社会生活指標を主成分分析した結果,第1主成分は都市化の程度を分ける指標,第2主成分はサービス産業と生活の豊かさを分ける指標として解釈された。 さらに,自殺死亡SMRを加えた分析においても,因子構造は同様であった。 自殺死亡SMRを目的変数に,社会生活指標を説明変数に用いた重回帰分析を行った結果,男性では「小売店数(人口千対)」,女性では「離婚率(人口千対)」「第二次産業就業者比率(%)」「健康相談延べ人数(人口千対)」が選択された。 このうち,自殺死亡SMRとの単相関では,男性の「小売店数(人口千対)」のみ,有意な正の相関を認めた。 結論 静岡県の自殺死亡SMRは,男女とも都市化の程度が影響することが示唆された。 この状況は,秋田県,岐阜県との報告と同様であり,自殺予防には過疎地域への働きかけが重要であると考えられた。 キーワード 自殺,標準化死亡比,社会生活指標,地域格差 第54巻第3号 2007年3月 青森県および長野県の市町村別たばこ売渡本数と 主要死因別標準化死亡比との関連 竹森 幸一(タケモリ コウイチ) 目的 青森県および長野県の市町村別たばこ売渡本数と主要死因別標準化死亡比 以下SMR との関連を検討することにより, 市町村における喫煙の健康影響について探求することを目的とした。 方法 各市町村の2002年,2003年,2004年のたばこ売渡本数を同年の男女別15歳以上人口で除して,男女別15歳以上1人当たりたばこ売渡本数を求めた。 青森県および長野県の男15歳以上1人当たりたばこ売渡本数の年次間の相関と平均値の差をみた。 また各年の青森県と長野県の男15歳以上1人当たりたばこ売渡本数の県間の差をみた。 15歳以上1人当たりたばこ売渡本数と全死因,悪性新生物 総数,胃,大腸,肝及び肝内胆管,気管・気管支及び肺),心疾患 総数,急性心筋梗塞),脳血管疾患のSMRとの相関係数を青森県と長野県について男女別に求めた。 結果 男15歳以上1人当たりたばこ売渡本数は両県とも年次間に高い相関がみられ,2002年から2004年にかけて有意に低下し,2002年,2003年,2004年ともに青森県が長野県より有意に高かった。 15歳以上1人当たりたばこ売渡本数との間に,青森県の場合,男の2002年で悪性新生物総数,大腸,2003年で悪性新生物総数,胃,大腸,脳血管疾患,2004年で全死因,悪性新生物総数,胃,大腸,脳血管疾患に有意な正相関がみられた。 女では関連がみられなかった。 長野県の場合,男の2002年で胃,大腸,2003年で胃,大腸,2004年で大腸に有意な正相関がみられ,女の2002年で悪性新生物総数,大腸,2003年で悪性新生物総数,大腸,2004年で悪性新生物総数,大腸に有意な正相関がみられた。 結論 市町村別たばこ売渡本数と主要死因別SMRとの相関関係から,多くの主要死因で喫煙の影響を否定しえない結果が得られた。 キーワード たばこ売渡本数,市町村別標準化死亡比,悪性新生物,心疾患,脳血管疾患 第54巻第3号 2007年3月 医療費からみた国保ヘルスアップモデル事業の評価 -福島県二本松市における個別健康支援プログラムの検討- 小川 裕(オガワ ユタカ) 安村 誠司(ヤスムラ セイジ) 目的 生活習慣病の一次予防を目的とした個別健康支援プログラムに基づいて実施されたヘルスアップモデル事業を2年間の追跡により医療費の面から評価する。 方法 福島県二本松市における基本健康診査または国保人間ドック受診者のうち,脂質,血糖,血圧,BMIのいずれかで「要指導」または「要医療」であった者をモデル事業の対象者として介入群と対照群を設定し,介入年1年間とその後2年間の追跡が可能であった40~69歳のそれぞれ119人についてレセプト情報に基づき医療費に関する分析を行った。 結果 受療状況では,有意ではなかったが「レセプトが認められなかった」者が介入群では経時的に増え,介入後2年には対照群より多かったこと,「入院レセプトが認められた」者がいずれの年にも対照群に多く,その差が介入年より介入後に大きかったことが介入効果を示唆する結果であった。 また,レセプト件数,点数,日数の検討では,入院外のレセプト点数が対照群のみで有意な増加を示し,入院外と入院を合計した件数,点数,日数のいずれも介入2年後の増加率が対照群で高かった。 このうち点数の年齢別検討では,60歳以上で介入効果が大きいことが示唆された。 さらに介入年に入院外レセプトのみ認められた者について個人ごとにレセプト件数,点数,日数の変化を比較したところ,いずれも介入後に減少した者の割合は介入群で高く,60歳以上ではレセプト件数,点数,日数における減少者の割合が介入後2年でも維持される傾向がみられた。 介入年における入院外点数の「高」・「低」別に比較した検討では,「高」点数群において介入効果が高く,効果が持続される可能性が示唆された。 結論 実施した個別健康支援プログラムが,医療費関連指標を低下させること,とくに60歳代で入院外レセプト点数の比較的高い群で介入効果が大きくなる可能性が示唆された。 キーワード 生活習慣病,一次予防,個別健康支援プログラム,医療費,ヘルスアップモデル事業 第54巻第3号 2007年3月 国民栄養調査の解析による「健康日本21」目標達成の予測 -肥満を中心に- 若林 チヒロ(ワカバヤ シチヒロ) 尾島 俊之(オジマ トシユキ) 萱場 一則(カヤバ カズノリ) 三浦 宜彦(ミウラ ヨシヒコ) 柳川 洋(ヤナガワ ヒロシ) 目的 「健康日本21」で挙げた項目は現状のまま推移して2010年までに目標を達成するか否かを性年齢階級別の人口集団ごとに検討した。 特に肥満者割合とそれに関連する栄養・食生活,身体活動・運動の項目を中心に,今後強化すべき対策について検討した。 0 ,脂肪エネルギー比,日常生活における運動習慣のある者の割合,日常生活における歩数について性年齢階級別に1995年から2003年までの値で回帰分析を行い,2010年における予測値を算出して,「健康日本21」目標達成の可否を検討した。 結果 肥満者割合について2010年までに目標を達成できるのは女性の40歳代以下のみで,男性のすべての年齢階級と女性の50歳代以上では目標を達成することができないと予測された。 特に30歳代以上の男性の肥満者割合は増加傾向が強く,2010年には40%近い値になると予測された。 脂肪エネルギー比では40歳代以上,運動習慣者割合では男女共60歳代のみ,日常生活における歩数では20歳代男性と40歳代女性のみが目標を達成できると予測され,他の性年齢階級では目標達成は困難と予測された。 肥満者割合で目標達成できないと予測された人口集団のうち,脂肪エネルギー比では男性30歳代以下,運動習慣者割合では男性50歳代以下と女性50歳代,日常生活における歩数では男性30歳代以上と女性50歳代以上では目標達成できないと予測され,これら人口集団に対して対策を強化する必要があると考えられた。 結論 「健康日本21」で肥満者割合について挙げた目標の達成は大部分の性年齢階級で困難と予測された。 肥満に関連する栄養・食生活や身体活動・運動に関する項目でも目標達成困難な集団が多く,今後集団ごとにきめ細かな対策をとりいれる必要がある。 キーワード 健康日本21,国民栄養調査,肥満,健康政策,栄養・食生活,身体活動・運動 第54巻第3号 2007年3月 吹田市基本健診での生活習慣とメタボリックシンドロームに関する研究 奈倉 淳子(ナグラ ジュンコ) 小久保 喜弘(コクボ ヨシヒロ) 川西 克幸(カワニシ カツユキ) 小谷 泰(コタニ ヤスシ) 伊達ちぐさ 岡山(ダテ チグサ) 明 友池(オカヤマ アキラ) 目的 都市住民のメタボリックシンドローム(Mets)有病率とMets定義病態に関連する生活習慣の特徴を性・年齢ごとに評価した。 方法 平成16年度吹田市基本健康診査受診者のうち問診票で有効回答が得られた30~89歳の26,522人の男女を対象とした。 Mets有病率,Mets有病者での構成因子の有病率を求め,さらにMetsと関連する生活習慣の検討を行った。 結果 30~89歳でのMetsの有病率は,男性19. 4%,女性10. 7%であった。 Mets有病者のうち,若年群では肥満の有病率が高く(30歳代:男性82%,女性90%),高齢群では血圧高値の有病率が高い傾向にあった(80歳代:男性99%,女性98%)。 生活習慣では,「他の人より食べる量が多い」「早食いである」「睡眠が不規則である」「立位・歩行時間が1時間未満である」は,男女ともすべての年代でMetsと関連していた。 4項目のいずれにも該当しない対象者と1項目該当の対象者のMetsの多変量調整オッズ比は1. 29~2. 17の値をとり,2個では1. 66~4. 60,3個では3. 13~5. 09で,4個すべてに該当する対象者では5. 36であった。 結論 Metsの構成因子は年齢により異なっていたが,過食・早食い・不規則な睡眠・運動不足はすべての年代でMetsとの関連がみられ,これらを多く満たす人ほどMetsのリスクが高かったことから,これら4つの項目はMetsの予防・改善の保健指導の項目となりうる生活習慣と考えられた。 キーワード メタボリックシンドローム,有病率,生活習慣 第54巻第4号 2007年4月 生活習慣病予防事業による医療費への影響 亀 千保子(カメ チホコ) 馬場園 明(ババゾノ アキラ) 石原 礼子(イシハラ レイコ) 目的 現在,多くの自治体で生活習慣病予防事業が行われているが,無作為比較対照研究による介入前後での医療費抑制効果の報告はされていない。 そこで,本研究では,無作為比較対照研究による予防事業の介入前,介入中,介入後での医療費とその変化を比較し,介入による医療費への影響を明らかにすることを目的とした。 方法 対象者を目標達成型プログラム介入A群,従来型プログラム介入B群の2群に無作為抽出法により割付け,2群間および両群合わせた全体で,介入前々年,前年,介入年の介入前中後の3期間における平均入院外医療費(歯科は除く)についてウィルコクソン符号付順位検定により比較を行った。 なお,医療費は年齢に比例して高くなるため,医療費変化を介入前中後で比較し,増加抑制効果をみることで年齢による影響を考慮した。 群間差の比較は,ウィルコクソン順位和検定を行った。 介入中期間においては,傷病マグニチュード按分法(PDM法)ver. 3を用いて,傷病別にも同様の解析を行った。 さらに,複数・多・重複受診件数およびこれら受診件数の変化についても同様の解析を行った。 結果 介入中期間の平均入院外医療費は,両群および全体において平成14年度と比べて15年度には有意に増加,平成15年度と比べて16年度には,有意差はないが減少傾向がみられた。 医療費変化では,介入中期間の全体においてのみ有意な増加抑制が認められた。 有意な増加抑制は他の期間ではどの群においても認められなかった。 介入中期間における傷病別分析では,両群および全体で有意な入院外医療費減少と増加抑制が認められた傷病に重症な傷病は含まれていなかった。 結論 両群および全体において重症でない疾患の有意な平均入院外医療費減少と増加抑制につながり,複数受診件数も介入A群と全体において有意な増加抑制が認められた。 しかしながら,4カ月間の介入では,有意差をもって平均入院外医療費減少は示せず,介入中期間では全体における増加抑制効果は有意差をもって示せたもののプログラムA,B間の差を有意に示すに至らなかった。 生活習慣病におけるこれらの効果を明らかにするためには,無作為比較対照試験での長期間の追跡が必要であると考えられる。 方法 調査対象者は,A県で要介護高齢者を居宅で介護する家族介護者2,262名であった。 そして「介護に関する話し合いや勉強会」9項目(栄養,介護の仕方,介護保険,認知症の方との関わり方,認知症の知識,介護サービス,医療サービス,身体的な健康管理,介護予防教室のような集まり)の参加の有無(経験群,未経験群),未経験群の参加への意思(経験希望群,無関心群),家族介護者の主観的QOL尺度,要介護高齢者の認知障害の程度を把握するための日本語版SMQ等を調査した。 結果 1,462名の調査票が回収され(回収率64. 6%),調査項目に未回答のあった671名と日本語版SMQにおいて非認知症と評価された55名を除いた736名の認知症高齢者の家族介護者を分析対象とした。 介護に関する話し合いや勉強会の参加状況は,経験群で10. 7~23. 9%,未経験群のうち無関心群は40. 4~54. 4%,経験希望群は31. 1~45. 5%と参加経験者の割合が低かった。 介護に関する話し合いや勉強会9項目の参加状況および参加に対する意思を独立変数,主観的QOL尺度総得点を従属変数,主観的QOLと相関係数において有意であった家族介護者の年齢,家族介護者の健康状態,日本語版SMQを統制変数として共分散分析を行った結果,全項目において有意差が認められ,多重比較の結果から,特に認知症の方との関わり方,認知症の知識,介護の仕方の項目において,無関心群は経験群に比べて主観的QOLが低いことが示唆された。 結論 特に無関心群の家族介護者が,認知症高齢者の介護をひとりで抱え込まず,認知症の疾患や関わり方の知識を得る場,家族介護者同士の交流の場など介護に関する話し合いや勉強会に参加意欲や意思をもち,積極的に参加していくとともに,主観的QOLを高めていくこと,そのための効果的な開催方法を考案することが課題として考えられた。 キーワード 認知症高齢者,介護に関する話し合いや勉強会,家族介護者,主観的QOL 第54巻第4号 2007年4月 母親の育児関連Daily Hasslesと児に対するマルトリートメントの関連 唐 軼斐(ト ウジヒ) 矢嶋 裕樹(ヤジマ ユウキ) 中嶋 和夫(ナカジマ カズオ) 目的 母親の育児に関連したDaily Hassles(DH)の経験頻度およびストレス強度を明らかにし,Hillsonらのモデルに基づき,育児関連DHの経験頻度およびストレス強度と,虐待やネグレクトといったマルトリートメント(不適切な関わり)との関連を検討することを目的とした。 方法 2004年11月現在,S県S市内の協力の得られた保育所16カ所を利用していたすべての母親1,700人を対象に,無記名自記式による質問紙調査を実施した。 育児関連DHの測定には,Parenting Daily Hassles Scale(PDH)を日本語訳して使用した。 母親の児に対するマルトリートメントは,母親の子どもに対するマルトリートメント傾向指標を用いて測定した。 統計解析には構造方程式モデリング(Structural Equation Modeling: SEM)を使用し,育児関連DHの経験頻度が,それら育児関連DHのストレス強度を介して,児に対するマルトリートメントの実施頻度に影響を与えるといったモデルを構築し,そのモデルのデータに対する適合度と各変数間の関連を検討した。 結果 育児関連DHの経験率をみると,ほとんどの項目において8割以上の母親が経験していた。 また,育児関連DHに対するストレス強度得点も,米国の母親を対象とした先行研究とおおむね一致していた。 SEMの結果,育児関連DHの下位領域「育児タスク」の経験頻度が高い者ほど,ストレスを強く感じ,心理的虐待およびネグレクトの発生頻度が高かった。 また,育児関連DHの下位領域「挑戦すべき児の行動」の経験頻度が高い者ほど,ストレスを強く感じ,身体的虐待と心理的虐待の発生頻度が高かったことが明らかとなった。 考察 育児タスクが心理的虐待やネグレクトを促進していたことから,育児ストレス軽減のために,育児の代行機能を有する託児サービスの重要性が示唆された。 また,児の挑戦すべき行動が身体的虐待と心理的虐待と関連していたことから,母親が児の挑戦すべき行動に適切に対応できるように,地域育児教室や両親教室等の機会を利用して,児の発育や発達に関する情報提供や児の挑戦的な行動に対する母親の受容的な態度の養成を促す必要性が示唆された。 キーワード 児童虐待,ストレス,母親,育児 第54巻第4号 2007年4月 脳卒中患者における自宅退院の時代変遷に関する研究 -富山県脳卒中情報システム事業より- 須永 恭子(スナガ キョウコ) 成瀬 優知(ナルセ ユウチ) 遠藤 俊朗(エンドウ シュンロウ) 野村 忠雄(ノムラ タダオ) 野原 哲夫(ノハラ テツオ) 福田 孜(フクダ ツトム) 垣内 孝子(カキウチ タカコ) 木谷 隆一(キタニ リュウイチ) 飯田 博行(イイダ ヒロユキ) 瀬尾 迪夫(セオ ミチオ) 目的 入院患者数増と高齢化が進む脳卒中患者の自宅退院には,社会的支援が必要な場合が多く,在宅療養サービス利用の増加が予測される。 そこで,富山県脳卒中ケアシステム事業登録者の自宅退院割合と富山県の在宅療養支援サービスの充足・利用状況を把握し,社会的支援の影響下,脳卒中患者の自宅退院の動向を考察した。 方法 富山県脳卒中情報システム事業の登録者のうち,発症年が平成3年7月から平成15年12月で,退院時死亡と退院先未定を除いた14,952名を抽出した。 そのうち,30歳以上の14,040名と55歳以上の12,160名を分析の対象とした。 分析には,登録情報のうち,「退院先・年齢・発症年・自力による行動範囲・認知症状の有無」を使用した。 自宅退院の概況として30歳以上の性別・年齢別・発症年次(時代)別の各々について自宅退院割合を,自宅退院の時代変遷として,1991~1993年を基準に年齢調整自宅退院比と時代以外の影響を調整した自宅退院のオッズ比を求めた。 結果 退院先の割合は,自宅退院が最も高く69. 9%で,次いで転院,その他の順だった。 年齢別,時代別の動向では,男女ともに高齢と時代推移に伴い自宅退院割合はおおむね減少していた。 1991~1993年を基準とした時代別年齢調整自宅退院比では,男性の1994~1995年のみ1を越え,それ以外では男女ともに1未満であった。 自宅退院のオッズ比について,1991~1993年に対する各時代群の結果は,すべて1以下で,時代推移に伴い低下していたが,介護保険開始年の2000~2001年では,その低下の傾きがやや緩やかになっていた。 医療・福祉制度改正を考慮し,介護保険開始以降,各施設数・利用者数の推移を社会的支援の時代変遷として確認した。 富山県の療養型病床群の病床数・新患者数は経年的に増加し,平成12~15年の病床利用率は90%台であった。 また,介護老人福祉施設,介護老人保健施設の利用者数増加率は全国より高く,介護老人福祉施設の方が高かった。 結論 自宅退院割合の時代推移に伴う低下が明らかになった。 この低下を介護保険開始以降の在宅療養サービスにおける各施設数・利用状況から検討した結果,介護老人福祉施設・療養型病床群の施設充実とその利用が進む中,脳卒中患者は退院先の幅を広げ,自宅退院以外を選択していることが考えられた。 キーワード 脳卒中,自宅退院,脳卒中情報システム事業,介護保険 第54巻第5号 2007年5月 健診実施の適正間隔に関する検討 須賀 万智(スカマチ) 吉田 勝美(ヨシダカツミ) 目的 定期健診を効率的かつ効果的なものにするために,健診の内容(項目)を見直す動きがあるが,健診実施の適正間隔に関する検討もまた必要である。 本研究では,健診実施の適正間隔について,某事務系事業所の定期健診データベースを用いて,異常所見のない状態が連続している者における健診実施の省略の可否を検討した。 結果 A の1年後有所見率と2年間累積有所見率の比較について,男性は5項目すべてで有意差を認めた。 女性は高血糖について3年連続異常所見のない45~59歳群と2年連続異常所見のない肥満なし群,高中性脂肪について2年連続異常所見のない45~59歳群と3年連続異常所見のない肥満あり群,高尿酸について2年連続異常所見のない者のすべての群で有意差を認めず,それ以外については有意差を認めた。 B の2年間累積有所見率と2年後有所見率の比較について,男性は5項目すべてで有意差を認めた。 女性は高血糖について2年連続異常所見のない者の30~44歳群を除いたすべての群と3年連続異常所見のない者のすべての群,高コレステロールと高中性脂肪について3年連続異常所見のない45~59歳群,高尿酸について2年連続異常所見のない者および3年連続異常所見のない者のすべての群で有意差を認めず,それ以外については有意差を認めた。 結論 血圧,空腹時血糖,総コレステロール,中性脂肪,尿酸の5項目のうち,尿酸は2年連続異常所見がない女性において翌年の検査を省略しうるが,それ以外は少なくとも年1回検査することを原則にすべきと考えられた。 キーワード 定期健診,検査間隔,生活習慣病予防 第54巻第5号 2007年5月 介護予防施策における対象者抽出の課題 -特定高齢者と要支援高齢者の階層的な関係の検証- 石橋 智昭(イシバシトモアキ) 池上 直己(イケガミナオキ) 目的 厚生労働省によって新たに提示された介護予防施策では,「一般高齢者」「特定高齢者」「要支援高齢者」「要介護高齢者」の4つの階層を用意し,対象と給付の関係を明確化した。 しかし対象者の選定には『基本チェックリスト』と『要介護認定方式』が並行的に運用され,そこから抽出される「特定高齢者」と「要支援高齢者」の境界や階層性の関係は,いまだに明らかにされていない。 本研究では,「要支援高齢者」の候補者である旧要支援,旧要介護1の認定者に対して,『基本チェックリスト』により試行的に判定し,「特定高齢者」と「要支援高齢者」との間の階層的な関係について検証を行った。 方法 対象は,東京都A市において旧要支援,旧要介護1の認定を受けた者のうち,介護保険以外の生活支援型サービスを利用している在宅高齢者767名である。 調査は,2006年2月に自記式の郵送調査によって実施し,回収率は92. 3%であった。 調査内容は,厚生労働省の『基本チェックリスト』およびIADL(手段的日常生活動作)5項目の遂行能力を問う項目を用いた。 本研究では,すべての調査項目に回答した456名(旧要支援:107名,旧要介護1:349名)を分析対象とした。 結果 旧要支援,旧要介護1の認定者に『基本チェックリスト』による判定を試行した結果,特定高齢者に選定されたのは,旧要支援では33. 6%,旧要介護1では57. 8%となり,「要支援高齢者」であるにもかかわらず「特定高齢者」には選定されないケース,つまり施策の想定とは逆の階層関係となるケースが,約半数に出現することが明らかとなった。 次にIADL5項目による自立者の割合を確認した結果,旧要支援,旧要介護1認定者の54. 8%がすべてのIADL項目が自立していた。 これに対して,IADLが非自立であった者の4分の1に当たる25. 7%が特定高齢者に選定されなかった。 結論 2つの異なる基準から抽出された特定高齢者と要支援高齢者の間には,階層関係が逆転しているケースが約半数にみられ,両者を階層的に位置づけるのは困難であることが明らかとなった。 その要因の1つは,新たに開発された基本チェックリストが,要介護認定との階層的な関係を十分に考慮せずに作成されたことにある。 もう1つは,要介護認定方式が,IADLの能力を適切にスクリーニングできず,自立(非該当)との境界が曖昧になっている点が示唆された。 今後,介護予防施策を一貫したシステムとして構築するためには,介護予防施策の対象者の統合も含めて,基本チェックリストと要介護認定方式の抜本的な見直しが不可欠である。 キーワード 介護予防,要介護認定方式,基本チェックリスト,給付区分,特定高齢者 第54巻第5号 2007年5月 がん検診受診行動に関する市民意識調査 川上 ちひろ(カワカミ) 岡本 直幸(オカモトナオユキ) 大重 賢治(オオシゲケンジ) 杤久保 修(トチクボオサム) 目的 日本が世界一の長寿国であることはすでに周知の事実であるが,この長寿による人口の高齢化に伴い死亡原因も大きく変化し,昭和56年以降,死因の第1位はがんである。 がん対策は高齢化社会での重要な保健政策課題であり,なかでも,がん検診の受診率を向上させることは早期発見・早期治療を行う上で非常に重要になってきている。 本研究では,がん検診の受診行動に影響を与える要因について質問票による調査を実施し分析を行った。 方法 横浜市在住の40~69歳の男女3,000人を対象に無記名自記式による質問票調査を行った。 調査実施期間は平成18年2~3月であり,この間に調査票の配布,回収を行った。 本研究では40歳代の回答率が30%に届かなかったため,50・60歳代の回答について分析を行った。 50・60歳代への質問票送付は2,000通で,21通があて先不明等にて返送,611人より回答を得た(回答率30. 9%)。 主な調査項目は,1 がん検診の受診経験,2 病気の予防に対する責任,3 病気の予防に支払える金額,4 がん検診を受診する際の受診行動に影響を与える因子(コンジョイント分析)である。 本調査では,検診場所,自己負担額,検診の所要時間,検診の信頼性を受診行動に影響を与える因子として設定し分析した。 結果 1 がん検診の受診経験は,年1回受診(35. 8%),数年に1回受診(30. 3%),受診経験なし(33. 2%)であった。 2 病気の予防に対する責任について,責任者を個人・行政(市町村)・国の3者に分け,全体で100%になるように回答を求めた。 個人の責任が50%と回答した人が24. 5%と最も多く,次いで60~70%と回答した人が21. 3%だった。 3 世帯全体で1年間に病気の予防に支払える金額を尋ねた結果,1万円以上5万円未満との回答が,最も多く43. 7%であった。 4 仮想状況でのがん検診受診希望を質問した結果,がん検診の受診行動に影響を与える因子は検診にかかる時間と費用であった。 結論 病気の予防は個人の責任で行うべきとの回答者が多い反面,がん検診に費用や時間をかけることができないという回答が多かった。 このことを踏まえ,住民にとって受診行動を起こしやすくなるような検診システムを構築し受診率を向上させることが,早期発見・早期治療のための課題のひとつであると考えられる。 キーワード がん検診,受診率,質問票調査,受診行動,コンジョイント分析 第54巻第5号 2007年5月 保健医療福祉分野における地方自治体の施策の目標と指標 橋本 修二(ハシモトシュウジ) 逢見 憲一(オオミケンイチ) 曽根 智史(ソネトモフミ) 遠藤 弘良(エンドウヒロヨシ) 浅沼 一成(アサヌマカズナリ) 中嶋 潤(ナカジマジュン) 浜田 淳(ハマダジュン) 三觜 文雄(ミツハシフミオ) 藤崎 清道(フジサキキヨミチ) 目的 保健医療福祉分野において地方自治体の施策の推進上,その目指す目標と実施状況について,複数の地方自治体を広域的な視点から比較することが重要と考えられる。 ここでは,地方自治体の施策が目指す目標およびその実施状況を表す指標について,選定の基本的考え方を定めるとともに,具体案の作成を試みた。 方法 複数の専門家が議論を重ね,全員の合意によって選定の基本的考え方を定めた。 その基本的考え方に従って,保健医療福祉のあるべき姿や地域差の状況などを考慮しつつ,同様の進め方により具体案を作成した。 結果 基本的考え方において,選定のねらいは保健医療福祉分野における地方自治体による施策の実施状況を把握し,今後の施策の推進に資することと定めた。 目標の選定では地域住民の視点に基づくこと,基本的目標,目標,具体的目標の層的構造とした。 指標の選定では具体的目標に対応すること,結果指標,中間指標,取り組み指標の層的構造とした。 結果指標は具体的目標の達成状況を,取り組み指標は施策の投入した量と質を,中間指標はその中間段階の進捗状況を表すものとした。 具体案において,基本的目標は「健康で安心して暮らせる地域社会」「生きがいと尊厳をもって暮らせる地域社会」「安心して子育てできる地域社会」の3つとした。 基本的目標ごとに3つの目標,目標ごとに1~4の具体的目標とした。 具体的目標ごとに,1~4の結果指標,0~5の中間指標,1~5の取り組み指標を定めるとともに,評価・留意点を示した。 結論 目標と指標の選定の基本的考え方と具体案を提示した。 今後,実際の使用に向けて様々な面から検討を重ねることが重要であろう。 キーワード 指標,施策,保健医療福祉,地方自治体 第54巻第5号 2007年5月 質問紙健康調査票THIに対する新総合尺度の特性と有効性 浅野 弘明(アサノヒロアキ) 竹内 一夫(タケウチカズオ) 笹澤 吉明(ササザワヨシアキ) 大谷 哲也(オオタニテツヤ) 小山 洋(コヤマヒロシ) 鈴木 庄亮(スズキショウスケ) 目的 質問紙健康調査票THI(Total Health Index)は,妥当性や信頼性の検討が数多くなされ,様々な疫学調査で応用されるとともに,職場・地域・学校における健康増進活動にも利用されてきた。 THI調査に対するパソコン支援システムの開発を契機に,基準集団を見直し新基準集団を設定するとともに,従来の尺度に主成分分析を適用し構築した新総合尺度の利用を開始した。 その後の調査で新総合尺度の有効性が確認できたので,死亡傾向との関連性も含め報告する。 方法 2003年に設定した新基準集団のデータを用い,「多愁訴,呼吸器,目と皮膚,口と肛門,消化器,直情径行,虚構性,情緒不安定,抑うつ,攻撃性,神経質,生活不規則」の12尺度に対し主成分分析を適用し,T1,T2の2主成分を導出した。 必要な統計処理を行い,特徴を抽出するとともにその有効性を検証した。 また,7年後の死亡・転出データに対しCoxの比例ハザードモデルを適用し,T1,T2と死亡傾向の関連性についても検討した。 結果 第1主成分T1は,全尺度の変動をよく吸収していた。 特に,T1が5ptl(パーセンタイル値)未満あるいは95ptl以上の場合,12尺度の個人変動はほぼ平均的パターンに限定され,健康状態を総合的に判定する指標として好ましい性質を持つことが確認された。 さらに,死亡傾向とも統計的に有意な関連性が認められ,T1が中央値から95ptlまで上昇する(健康状態が悪くなる)と死亡リスクが1. 4倍になることが判明した。 これに対してT2は,1尺度並の情報しか有しておらず,さらに,死亡との関連も明確ではなかったが,心と体の健康バランスを示しており,T1を補足する指標として活用できることが示唆された。 考察・まとめ パソコンを利用した支援システム「THIプラス」の開発を契機に,アドバイスシートの返却を開始した。 その過程で,12尺度+3傾向値を要約する総合尺度が必要となった。 今回構築したT1は,総合尺度としてふさわしい性質を持つばかりでなく,身体表現性障害とも密接に関連しており,意義深い尺度になっていることが確認された。 また,T2は従来の尺度・傾向値にはない特徴を有しており,これらと併用できることが示唆された。 今回の知見を活用し,個人の心の健康対策や生活習慣病の予防に役立つ,より有効なアドバイスシステムを構築していきたいと考えている。 キーワード THI,質問紙健康調査票,総合尺度,死亡リスク 第54巻第4号 2007年4月 基準病床数制度による病床数への影響に関する研究 -入院需要量の変化に対する病床数の変化について- 溝口 達弘(ミゾグチ タツヒロ) 堀口 逸子(ホリグチ イツコ) 丸井 英二(マルイ エイジ) 目的 基準病床数制度が,病床数の増減に与えた影響を明らかにし,また,もし仮に,現状で基準病床数制度を廃止した場合に,どの程度病床が増床するのか検討することを目的とした。 方法 対象は,病床の種別にかかわらず病院における全病床および全入院患者とした。 病床供給の検討は,入院需要量の変化を考慮した上で行うこととし,入院需要量の変化として,予想される入院患者数の年次推移を推計し用いることとした。 推計は昭和59年,昭和62年,平成2年,平成5年,平成8年の5つの時点を基準として行った。 推計された5つの入院患者数の年次推移を,それぞれ基準とした時点のモデルと呼ぶこととし,各モデルの比較検討,実際の人口との関連および実際の病床数との比較,基準病床数制度導入前のモデルから求めた平成16年の病床数と実際の病床数との比較を行った。 結果 5つのモデルは,いずれも年々増加する結果となった。 平成16年時点において比較すると,多い方から,昭和62年モデル,平成2年モデル,昭和59年モデル,平成5年モデル,平成8年モデルの順であった。 いずれのモデルにおいても,総人口との相関が強く,それ以上に65歳以上人口との相関が強かった。 65歳未満人口とは負の相関が強かった。 基準病床数制度導入前のモデルから算出された病床数と実際の平成16年の病床数との差は,53~62万床であった。 結論 必要病床数制度が制定されて以降現在に至るまで,入院需要は高齢化による影響で常に増加傾向にあり,介入等何らかの要因がない限り,病床数も増加しようとする傾向があったと考えられた。 必要病床数制度導入以降,予想される入院需要の増加を上回る病床数の増加が一時的にあったものの,平成5年以降は,入院需要の増加に対して病床数は減少し,昭和59年時点と比べて限定された入院需要にしか対応できていないことが示唆された。 また,基準病床数制度を撤廃すると,平成16年現在で,約50万床以上増床する可能性があることが示唆された。 キーワード 医療計画,病床規制,基準病床数,必要病床数,入院需要 第54巻第6号 2007年6月 健康危機管理事件発生時のリスクコミュニケーションにおける 公的情報および報道内容の格差に関する研究 今村 知明(イマムラ トモアキ) 下田 智久(シモダ トモヒサ) 小田 清一(オダ セイイチ) 目的 過去の食品災禍事件における公的情報提供(文字情報)と報道内容の間に発生した情報格差を把握するとともに,その発生原因を分析することで,良好なリスクコミュニケーションの実施に資する。 方法 O157事件,BSE事件において,関係行政機関が提供した文字情報と国内主要紙の報道内容を比較し,格差の有無の確認,発生状況を把握・分析し,この原因について考察した。 結果 O157事件では,厚生省(当時)が中間報告したO157の感染源に関する調査結果について報告書の中で感染源の特定を否定したが,報道の中には「感染源が特定した」との印象を与えるものもあった。 BSE事件では,スクリーニング検査陽性(確定検査では陰性)の検体の発生に関する情報提供について,「偽陽性」と「疑陽性」を混同した報道も散見された。 結論 公的情報提供と報道内容の格差は,「事実の捉え方の相違」や「報道機関の表現方法の選択」により発生するものと推測される。 これらに起因する情報格差の発生を抑止するためには,関係行政機関が報道関係者と日頃からコミュニケーションを図るとともに,正確な情報伝達や発信情報の一元化を行うための体制の確立が必要である。 キーワード 大規模健康被害,健康危機管理,リスクコミュニケーション,報道 第54巻第6号 2007年6月 無職世帯における乳児死亡・周産期死亡・死産 西 基(ニシ モトイ) 三宅 浩次(ミヤケ ヒロツグ) 目的 わが国の無職世帯における乳児死亡・周産期死亡・自然死産・人工死産の特徴を検討する。 方法 1995年から2004年までの10年間の乳児死亡・周産期死亡・自然死産・人工死産につき,人口動態統計の世帯主の職業別の統計資料を基に,無職世帯に着目して分析した。 結果 「勤労者2の世帯」が,これらの指標すべてで最低(最良)の値を示したのに対し,無職世帯はすべてで最高(最悪)の値を示し,かつそれらの値は突出して高かった。 10年間の通算で,無職世帯の乳児死亡率は「すべての世帯」の4. 2倍,周産期死亡率は2. 3倍,自然死産率は2. 6倍,人工死産率は8. 4倍にのぼった。 無職世帯のこれらの率が「すべての世帯」と同等であったと仮定すると,今回の10年間で2,300人余りの乳児死亡,1,700件余りの周産期死亡,5,500件余りの自然死産,34,000件余りの人工死産が,それぞれ減少傾向はうかがえるものの,過剰に存在したと推測された。 母年齢階級別の検討では,若年における人工死産が多いことが目立った。 結論 世帯の収入が少ないことが,そうでなければ普通に出生・成長したであろう生命を喪失させる原因の1つと考えられ,無職世帯に対する経済的援助は,わが国の少子化を抑制する手段として有効であると思われた。 キーワード 無職,人口動態統計,乳児死亡,周産期死亡,死産 第54巻第6号 2007年6月 日本語版「ソーシャル・サポート尺度」の信頼性ならびに妥当性 -中高年者を対象とした検討- 岩佐 一(イワサ ハジメ) 権藤 恭之(ゴンドウ ヤスユキ) 増井 幸恵(マスイ ユキエ) 稲垣 宏樹(イナガキ ヒロキ) 河合 千恵子(カワアイ チエコ) 大塚 理加(オオツカ リカ) 小川 まどか(オガワ マドカ) 髙山 緑(タカヤマ ミドリ) 藺牟田 洋美(イムタ ヒロミ) 鈴木 隆雄(スズキ タカオ) 目的 本研究は,Zimet GDらが開発した「ソーシャル・サポート尺度」(Multidimensional Scale of Perceived Social Support)の日本語版を作成し,中高年者を対象として信頼性ならびに妥当性の検討,短縮版尺度の作成を行うことを目的とした。 方法 58~83歳の中高年者1,891人(男性760人,女性1,131人)を分析の対象とした。 ソーシャル・サポート尺度は12項目から成り,回答は7件法(1:「全くそう思わない」~7:「非常にそう思う」)で求め,ソーシャル・サポート尺度全体ならびに下位尺度ごとに平均値を算出し得点化した。 得点が高いほどソーシャル・サポートが高いことを意味する。 その他,居住形態,婚姻状況,親友の人数,親子関係満足度,夫婦関係満足度,General Health Questionnaire 28項目版(GHQ)を測定し分析に用いた。 結果 ソーシャル・サポート尺度の因子分析を行ったところ,原版と同様の3因子構造(「家族のサポート」「大切な人のサポート」「友人のサポート」)が確認された。 91,0. 94,0. 88,0. 90であり,十分な信頼性を有していることが示された。 ソーシャル・サポート尺度ならびに3つの下位尺度と居住形態,婚姻状況,親友の人数,親子関係満足度,夫婦関係満足度,GHQ間には関連が認められ,上記要因を外部基準とした場合の妥当性を有していることが示された。 また,7項目から成る「ソーシャル・サポート尺度短縮版」は,ソーシャル・サポート尺度12項目版と高い正の相関関係にあり,得点分布形状,性差ならびに年齢差は12項目版と同様の傾向を示し,信頼性ならびに妥当性を有していることが示された。 結論 ソーシャル・サポート尺度日本語版ならびに同短縮版は信頼性ならびに妥当性を備え,中高年者におけるソーシャル・サポートの測定指標として有用であることが考えられる。 キーワード ソーシャル・サポート尺度,中高年者,信頼性,妥当性,横断調査 第54巻第6号 2007年6月 幼児期における子育ち環境が学童期の子どもの心身の健康に及ぼす影響 安梅 勅江(アンメ トキエ) 篠原 亮次(シノハラ リョウジ) 杉澤 悠圭(スギサワ ユウカ) 丸山 昭子(マルヤマ アキコ) 田中 裕(タナカ ヒロシ) 酒井 初恵(サカイ ハツエ) 宮崎 勝宣(ミヤザキ カツノブ) 小林 昭雄(コバヤシ アキオ) 宮本 由加里(ミヤモト ユカリ) 天久 真吾(アマヒ サシンゴ) 埋橋 玲子(ウズハシ レイコ) 目的 本研究は,幼児期の子育ち環境が学童期の子どもの心身の健康にどのような影響を及ぼすのか実証的な根拠を得ることを目的とした。 方法 対象は,2005年に全国19カ所の保育園の卒園児調査に参加した134名であり,2002~2004年にその保育園に在籍した際,保育園児調査に参加した者131名を対象とした。 学童期の心身の健康に,幼児期に把握した保育専門職の評価に基づく発達状況,気になる行動,保育時間,保護者の回答に基づく育児評価,子どもと家族の属性が及ぼす影響を多重ロジスティック回帰分析により明らかにした。 結果 幼児期に「家庭で歌を歌う機会等に乏しい」場合,機会のある場合に比較して,学童期に「いらいらする」12. 20倍,「不機嫌で怒りっぽい」15. 69倍多くなっていた。 幼児期に「同世代の子どもを訪問する機会に乏しい」場合,機会がある場合に比較して,学童期に「疲れやすい」4. 83倍,幼児期に「育児支援者がいない」場合,いる場合と比較して,学童期に「疲れやすい」が5. 65倍,幼児期に「育児相談者がいない」場合,いる場合と比較して,学童期に「あまり頑張れない」が44. 05倍,幼児期に「配偶者の子育て協力が得られない」場合に,得られる場合と比較して,学童期に「勉強が手につかない」が33. 54倍,幼児期に「保護者の育児への自信がない」場合に,ある場合と比較して,学童期に「誰かに怒りをぶつけたい」が7. 03倍,多くなっていた。 考察 学童期の子どもの心身の健康と,幼児期の家庭における適切なかかわりや保護者へのサポートの関連性が示され,子どもと保護者を対象にした子育て支援の重要性が示唆された。 キーワード 学童,子育ち環境,コホート研究,子育て支援 第54巻第6号 2007年6月 健康保険組合被保険者の医療受診における所得効果 川添 希(カワゾエノゾミ) 馬場園 明(ババゾノアキラ) 目的 医療アクセスが良いことで高い評価を得てきたわが国の医療制度において,医療費の抑制を目的とした患者自己負担の引き上げが行われてきている。 公正な医療アクセスを保障することは国民皆保険制度において重要な課題であることから,医療受診における所得効果を検証することが重要である。 平成14年度末の健康保険組合のデータを用いて,被保険者本人,家族,幼児について,入院,外来,歯科別の受診行動への所得効果に影響を与える指標を明らかにすることを目的として本研究を行った。 方法 被保険者本人,家族,幼児について,入院,外来,歯科別の受診率,1件当たり診療日数,1人当たり医療費を受診の指標として用いた。 健康保険組合において受診に影響を与える組合特性としては,被保険者数,扶養率(扶養者数/被保険者数),老人加入率(老人加入者数/全加入者数),平均標準報酬月額,被保険者の平均年齢,性比(男性の被保険者数/女性の被保険者数)を選択した。 受診指標を目的変数,組合特性を説明変数とし,強制投入法で重回帰分析を行った。 影響は標準偏回帰係数によって定量化し,モデルは決定係数で検証した。 統計解析には,SPSSのPC版(13. 0J)を用いた。 結果 入院の受診指標については,被保険者本人,家族,幼児ともに平均標準報酬月額や扶養率との明らかな関連は認められなかった。 外来と歯科の受診率については,平均標準報酬月額と正の相関,扶養率と負の相関,外来と歯科の診療日数については,平均標準報酬月額と負の相関が認められた。 幼児の受診指標については,平均標準報酬月額との関連は認められなかった。 結論 外来や歯科受診において,所得が低ければ受診率が低くなり,受診日数が長くなる傾向が認められた。 これは,自己負担が一層重くなった場合,低所得者の医療アクセスを確保しなければ,必要な受診が控えられる可能性があることを示唆している。 また,生活習慣病など自覚症状に乏しい疾患では,自己負担が重くなると受診が抑制されることが予想され,予防事業などを充実させていくことが必要であると考えられる。 キーワード 受診指標,健康保険,強制加入,定率負担,高額療養費制度,所得効果 第54巻第6号 2007年6月 メタボリック・シンドロームからみた生活習慣病対策の重要性 鈴木 賢二(スズキ ケンジ) 石塚 範雄(イシヅ カノリオ) 枡田 喜文(マスダ ヨシフミ) 富所 直美(トミドコロ ナオミ) 森 誠(モリ マコト) 荒井 親雄(アライ チカオ) 柏倉 義弘(カシワクラ ヨシヒロ) 目的 メタボリックシンドロームを対象とした生活習慣病予防対策の重要性を検討し,当該対策を実現するための具体的な方法を考察する。 結果 1 いずれか1個保有群,2個集積群,3個以上集積群とも,1995~2004年度において増加傾向を示した。 2 心電図虚血性変化は,健常群に対して男性の3個集積群で8. 2~14. 5倍,4個集積群で10. 6~31. 7倍,眼底動脈硬化性変化は3個集積群で男性10. 0~56. 0倍,女性0~54. 2倍,4個集積群では男性24. 0~106. 8倍,女性0~83. 9倍のリスクを示した。 3 各集積パターンにおける心電図虚血性変化,眼底動脈硬化性変化の出現率は,男女とも全年齢層で集積数が多くなるに伴い高頻度となった。 考察 1 各病態の程度が軽くてもその集積が単独より危険度を増し,冠動脈硬化・眼底動脈硬化を合併しやすく,脳心血管疾患発症の基盤として重要となる。 2 メタボリックシンドロームの予備群を抽出するための健診は各制度とも受診率が低く,健診会場に出向かなければ受けられない従来の健診では受診率アップに限界がある。 キーワード メタボリックシンドローム,動脈硬化性所見,生活習慣病予防対策,健診受診率 第54巻第6号 2007年6月 小中学校における子ども虐待対応構造に関する考察 -子ども虐待に関する知識の組織内配分と意思決定手続きに注目して- 澁谷 昌史(シブヤマサシ) 目的 本研究は,公立小中学校において虐待対応に不可欠な法制度上の知識がどのように共有され,またどのように対応が進められているのかに焦点を当てながら,その虐待対応構造にかかる現状把握および提言を行うものである。 方法 全国の公立小中学校から5%の無作為抽出を行い(小学校1,158カ所,中学校515カ所),学校単位で回答する「基本調査票」「事例調査票」,教職員個人が回答する「意識調査票」の3種類の調査票を郵送法にて配布・回収した。 調査期間は平成17年6月24日より同年7月末日とした。 結果 小学校1,013カ所,中学校439カ所から回答があった(回収率はそれぞれ87. 5%,85. 2%)。 意識調査に回答した教職員は,小中学校あわせて17,056名であった。 主たる結果から,校長や教頭が虐待対応の知識を比較的多く所有する傾向にあり,同時に校内における虐待対応方針決定の鍵を握っているものと考えられた(ただし,中学校の場合は生徒指導主事が意思決定の要となっている場合も多かった)。 また,校内チーム体制と専門的知識の不足が,学校としての対応に不安定性をもたらしている可能性が示唆された。 結論 すべての教職員に対して研修機会を保障することで虐待対応の基本事項を周知するとともに,チーム体制整備の周知徹底や,虐待対応にかかる専門家派遣制度の創設など,小中学校における虐待対応構造に安定性をもたらす要素を加えていく必要があると提言した。 キーワード 子ども虐待,対応構造,小中学校 第54巻第7号 2007年7月 都道府県介護支援専門員相談窓口の運営実態および医師・弁護士による関与 吉江 悟(ヨシエ サトル) 目的 全国の都道府県に設置されている介護支援専門員向け相談窓口の運営状況や医師・弁護士による関与状況についての実態把握を行い,より効果的・効率的な相談窓口のあり方を検討することを行うことを目的とした。 方法 2005年1~2月に,都道府県ケアマネジメントリーダー活動等支援事業による相談窓口を開設している機関の相談員47名(各県1名)を対象として郵送質問紙調査を実施し,36名から回答を得た。 結果 36都道府県中,29都道府県(81%)で介護支援専門員相談窓口が設置されていた。 開設頻度や相談員の人数等,窓口の運営状況は多様であった。 相談内容については,個人情報を記録に残している場合が半数以上であり,相談への対応方法の中で,少数ではあるが相談員が直接利用者・家族へ連絡するという対応も取られていた。 専門職の関与状況については,医師・弁護士・臨床心理士といった介護以外の領域の専門職が関与している都道府県が少数ながらみられた。 また,医師や弁護士の関与に対しては,回答者の6割以上がその必要性を感じており,既に医師・弁護士が関与している都道府県においては,その割合はより高かった。 結論 本研究により,全国における都道府県介護支援専門員相談窓口の多様な実態が明らかになったが,個人情報に関しては,基本的には相談の匿名性が確保された範囲で窓口を運営するのが望ましい。 また,回答者の過半数が医師・弁護士の関与を望んでいた。 関与の仕方については,導入としては相談員に助言をするという間接的な関わりで十分だと考えられるが,弁護士や臨床心理士については,相談者への助言や面接等の直接的関与が有効である可能性がある。 キーワード 介護支援専門員,ケアマネジメント,相談窓口,医師,弁護士 第54巻第7号 2007年7月 保健医療福祉統計に基づく高齢者の平均自立期間の推移 加藤 昌弘(カトウ マサヒロ) 川戸 美由紀(カワド ミユキ) 橋本 修二(ハシモト シュウジ) 林 正幸(ハヤシ マサユキ) 中村 好一(ナカムラ ヨシカズ) 目的 保健医療福祉統計に基づく要介護者割合を用いて,1995年の高齢者の平均自立期間が橋本・宮下らにより算定(以下,旧法)されたが,それ以後は調査内容の変更に伴って,同一の定義による要介護者割合を求められない。 本研究では,いくつかの異なる定義による要介護者割合を用いて,1995年から2001年の平均自立期間の推移を検討した。 方法 資料は1995年・1998・2001の複数の統計から得た。 7通りの要介護者割合を用いて旧法と同じ方法で,平均自立期間を都道府県別に算定した。 9年であり,女でも同様にそれぞれが18. 4年と16. 9年であった。 87,女で0. 76であった。 8年と女が0. 6年であった。 65歳時平均余命に占める平均自立期間の割合には上昇傾向が認められなかった。 結論 要介護の定義には問題があるものの,平均自立期間は1995年から2001年の間で延長していることが示唆された。 今後,平均自立期間は介護保険の要介護度に基づいて算定することが考えられる。 キーワード 健康指標,健康寿命,平均自立期間,保健統計 第54巻第7号 2007年7月 高齢者におけるQuality of Lifeの縦断的変化に関する研究 -静岡県高齢者保健福祉圏域別の検討を中心として- 久保田 晃生(クボタ アキオ) 永田 順子(ナガタ ジュンコ) 杉山 眞澄(スグヤマ マスミ) 藤田 信(フジタ マコト) 高田 和子(タカダ カズコ) 太田 壽城(オオタ トシキ) 目的 本研究は,静岡県における大規模縦断調査の結果を分析し,高齢者のQOLを構成する要素が,6年間でどのように変化するのか明らかにした後,本県内圏域別に6年間のQOLの変化を算出し地域格差を確認した。 さらに,圏域別の6年間のQOLの変化と,社会生活指標との関連について分析を加え検討を行った。 これらにより,高齢者のQOLの維持・向上を図るための社会的な計画や施策を立案する際の参考になる基礎的な資料を得ることを目的とした。 方法 1999年10月1日時点で静岡県内に在住していた65歳以上の者を,静岡県内の全市町村から,性・年齢階級(65~74歳,75~84歳)別に75人ずつ層化無作為抽出して調査対象者とし(計22,000人),同年12月に郵送留置法で,QOLとライフスタイルについて調査した。 なお,有効回答が得られた者に対しては,3年後と6年後に再度,郵送留置法にて同内容を調査した。 この調査で得られた結果を基に,QOLの状態を得点化し,性・年齢階級別および圏域別の経年的な変化を観察した。 さらに,圏域別のQOLに関しては,社会生活指標との関連を分析した。 結果 高齢者のQOLは,6年間という比較的短い期間にも関わらず,加齢とともに低下することが明らかとなった。 QOLを構成する要素では,生活活動力で年齢階級差,精神的健康で性差が顕著に認められた。 また,QOLの変化が少なかった要素は,人的サポート満足感と経済的ゆとり満足感であった。 一方,圏域別ではQOLの明らかな差は認められなかったが,圏域別のQOLの縦断的変化には,「保健師数」「高齢者のいる世帯割合」「ショートステイ年間利用日数」が有意な関連を示した。 結論 短期間でも低下しやすい高齢者のQOLの維持・向上を図るためには,家族や保健活動による支援を受けながら,可能な限り家庭で生活できるような圏域および地域づくりが重要ではないかと考えられた。 キーワード 高齢者,QOL,社会生活指標,圏域差,縦断調査 第54巻第7号 2007年7月 保健師の支援による高齢者の食生活の変化および医療費推移との関連 神山 吉輝(カミヤマ ヨシキ) 小出 昭太郎(コイデ ショウタロウ) 川口 毅(カワグチ タケシ) 青木 啓子(アオキ ケイコ) 目的 保健師の高齢者に対する家庭訪問保健事業において行われた食生活指導について,高齢者の行動変容と医療経済効果の面から評価すること。 方法 三重県美里村(現,津市美里町)において行われた65歳以上の高齢者の全数訪問事業において,初年度と翌年の訪問時の保健師による食生活状況の記録と医療費データとを個人ごとにレコードリンケージし,高齢者の行動の変化および医療費の推移を追跡した。 結果 初年度に食生活指導があった者はなかった者に比べて,より大きな割合で食生活行動が変化していた。 食事で気を付けているものがなかった男性では,翌年までの食生活行動の変化の割合が小さかった。 食生活指導を受けて,翌年までに食行動が変化していた者は変化しなかった者に比べて,1人当たり累積医療費がより低く推移していた。 結論 保健師による高齢者に対する食生活指導が実際に高齢者の食生活行動を変化させていることが示唆された。 また,食生活指導後の食生活行動の変化が医療費の削減に繋がる可能性が示唆された。 キーワード 食生活,高齢者,保健師,訪問指導,行動変容,医療費.

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